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カテゴリ:お知らせ,団通信

●東海第二原発の再稼働を阻止する谷萩陽一団員の当選へご支援を  丸 山 幸 司

 2019年石川県・能登5月集会案内特集(その2)  
▼プレ企画/全体会 /分科会/特別企画

●米軍基地内での人権侵害への対抗―目取真国賠訴訟判決  齋 藤 祐 介

●「ある懲戒請求者との対話」  宋  惠 燕

●滋賀における弾圧事件対策のびのび選挙学習会  玉 木 昌 美

●「軍隊のない国家」は本当にあるのだ!!  大 久 保 賢 一

●独自の天皇制論議 その2「慰安婦問題」は天皇の謝罪で解決できるか  伊 藤 嘉 章

●「治安維持法拘禁精神病」― 伊藤千代子の生涯  後 藤 富 士 子

●映画「時の行路―翼もがれても」製作上映へのご協力のお願い  尾 林 芳 匡

 


東海第二原発の再稼働を阻止する谷萩陽一団員の当選へご支援を  茨城県 丸 山 幸 司

 茨城県水戸市に戸張順平団員とともに法律事務所を開設して三五年、これまで政治に関しては常に裏方に回ってきた、水戸翔合同法律事務所の所長谷萩陽一団員が、このたび水戸市長選挙への出馬を決意しました。
 谷萩団員の出馬をあと押ししたのは、現市長が計画している市民会館の建設によって立ち退きを迫られることになる地権者の法律相談でした。いわゆる「ハコ物」の建設計画ですが、長年営業し暮らし続けてきた地権者を追い出す手続きは着々と進み、立ち退きに反対する地権者の悩みと苦悩は極限状態にありました。なんとかして計画をストップさせたいという気持ちが、谷萩団員の背中を押しました。
 私は、我が事務所の所長がこうした決断をしたことを心底「かっこいい」と思います。所長は日頃は猫背で小股で歩いていますし、会議中に居眠りしながら話を聞いていることもあります。しかし、そういうことが全部吹き飛んでしまうくらい男気のある決断でした。 
 日頃はさほど威厳が感じられない所長ですが、日弁連副会長や茨城中学高校PTA会長などの要職も歴任してこられました。そこに至る過程では、弁護士会活動でも市民活動でもPTA活動でも、さらに私生活での子どものお弁当作りであっても、すべて真摯に取り組んで来た長年の努力があったと思います。地元では、茨城の市民オンブズマンの設立に関与し現在でも幹事の地位にありますし、憲法問題でもネットワークの代表、学童クラブのNPO法人の理事長も務めています。多忙をぼやきながら、居眠りしながら、それでも必死に依頼者、市民運動、住民運動、地域や社会の要請に応えてきた三五年間の積み重ねが、今回の市長選の結果に結実することを後輩団員として心から願っています。
 同時に、全国の団員の皆様方に、こうした谷萩団員へのご支援を心からお願いしたいと思います。
 今回の水戸市長選挙は、首都圏から最も近く、しかも我が国で最も古い原発の一つである東海第二原発の再稼働を阻止する選挙でもあり、全国的な意義があります。
 福島第一原発事故後、水戸市は、東海第二原発の周辺自治体として、日本原子力発電株式会社との間で新協定を締結し、再稼働前の実質的な事前了解権を得ることができました。水戸市一市であっても再稼働に反対すれば、日本原電は東海第二原発を再稼働することができないのです。
 現職の市長は、日本原電との新協定締結にイニシアティブを発揮した市長であり、「実効性のある広域避難計画の策定及び市民理解の得られない再稼働は認められない」と公約しており、一部には期待の声もあります。しかし、既に東海第二原発は新規制基準にも二〇年延長の審査にも合格していますので、現時点で再稼働反対を表明できないというのでは、見識に欠けると言わざるを得ませんし、安心して今後四年間を任せることはできません
 広範な住民世論を背景に、ぜひとも大逆転して水戸市民の生活を守る民主市政を誕生させ、安倍政権退陣の運動の一翼を担いたいと決意しております。全国のみなさまのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
【カンパの送付先】
    ゆうちょ銀行〇六八支店・普通預金五四六一八〇四
    やはぎ陽一はばたき後援会
【連絡先】
〒三一〇―〇〇六二 茨城県水戸市大町三―一―二四
          水戸翔合同法律事務所
          電 話〇二九―二三一―四五五五 
          FAX〇二九―二三二―〇五三二
メールアドレス    kawakami@habataki-lo.jp

 

二〇一九年 石川県・能登 五月集会特集~ その2 ~

今号では、プレ企画と全体会・各分科会の詳細・特別企画のご案内をいたします。
【プレ企画】
五月二五日(土)午後一時~五時(予定)

1 新人弁護士学習会
【石川県支部企画】
◎講演 菅野昭夫団員
 菅野昭夫団員は二〇期・一九六八年に弁護士登録し、以来、スモン訴訟等の社会的な大事件を担当する他、アメリカにて社会運動に取り組む弁護士団体であるナショナル・ロイヤーズ・ギルド(NLG)との交流を行う等、国内外において様々な活動に従事してこられました。
 菅野昭夫団員のこれまでのご経験を講演して頂き、新入・若手団員の今後の弁護士人生の一助となればと思います。

【本部企画】
◎学習会・パネルディスカッション
・神保大地団員(北海道支部)
「新人弁護士が学習会を成功させるために必要なこと」
 新入・若手団員の皆様は様々な内容で、学習会の講師をする機会があると思います。
 そこで「あすわか(明日の自由を守る若手弁護士の会)」の共同代表であり、様々な分野について各地で学習会を行い、好評を得ている神保団員に、学習会を成功させる秘訣を聞きたいと思います。この秘訣をもとに新入・若手団員の皆様も学習会を成功へと導いてください。ちなみに神保団員の特技は少林寺拳法だそうです。
・舩尾遼団員(東京支部)
「社会運動を見守る弁護士が知っておきたいポイント」
 弁護士は担当する事件処理のみならず、社会をよりよくしようとする市民活動を裏で支えることも必要です。そこで、国会前での戦争法反対集会等、様々な社会運動において、見守り弁護活動をされてきた舩尾団員から、その経験談及び私達弁護士が知っておきたいポイントをレクチャーして頂く予定です。舩尾団員は若手団員からの信頼が厚く、若手からのいかなる質問にも丁寧に答えて頂けるそうです。
・パネルディスカッション
 後半は新入団員の皆さんからの質問に、講師の団員が「何でも」答えるパネルディスカッションを行います。多忙な中、どのように「ワーク・ライフバランス」を確保しているのか等、入団して数か月たった今だからこその悩みや・団活動のやりがいについて、考える機会になればと思います。 事務局次長 江 夏 大 樹

2 将来問題
「人権課題に取り組む団員を増やすために」
 近年、新入団員が減少しています。その原因として、法曹志願者数、司法試験合格者数の減少もありますが、修習生が人権課題に取り組む弁護士像を知る機会のないまま、早期にその他の事務所の内定を得る傾向が強まっていることもあります。
 また、各地の団事務所から若手弁護士にいかに定着してもらうかについて悩む声があがっており、他方で、若手弁護士から将来の経営に不安を感じる声も寄せられています。
 このような現状を踏まえ、今年の五月集会では、団が法曹志願者に接近し、入団者を確保し、若手弁護士に事務所に定着してもらうためにどのような取り組みをするべきかについて、各地の実情を踏まえながら多面的に議論をすることにしました。
 昨年は支部代表者会議の一部を充てる形で議論しましたが、今年は支部代表者に限らず広く有志で集まり将来問題について議論します。問題意識のある方、特に若手の方のご参加をお待ちしております。 事務局次長 緒 方   蘭

3 法律事務所事務局員交流会
[ 全体会 ](午後一時~三時)
 事務局交流会での全体会の内容が決まりました。弁護士講演では沖縄支部の新垣勉団員に沖縄の基地問題の現状や地域における団事務所の役割をお話しいただきます。事務局講演では、北大阪法律事務所の三澤裕香さんに団事務所における事務局の役割をお話しいただきます。各事務所、諸事情等で事務局の参加が難しくなっていると聞いておりますが、どちらの講演も非常に魅力的な内容となっていますので、積極的な参加をよろしくお願い致します。 事務局交流会世話人 深 澤   亮(東京東部法律事務所)

[ 分科会 ]午後三時一五分~五時
①新人事務局交流会
 新しく法律事務の世界に足を踏み入れた事務局員の皆さん、事務所の雰囲気には慣れてきましたか?
 年度が変わって間もなくの時期、おそらくまだ半年勤められていない方が大半かと思います。なにぶんアナログな業界なので、今まで触れてこなかったことが山ほどあることでしょう。日常業務だけでも精一杯になってしまいそうですが、自由法曹団所属の事務所ですと、運動にも力を入れているはず。もうどうしたらいいの?ということばかりなのではないでしょうか。
 そんな新人事務局の皆さんが一堂に会するのがこの新人事務局交流会です。ましてや全国から、ともなると滅多にない機会。是非、先輩たちには聞けない疑問点・不安点を交流しあいましょう(とはいえ、初めまして同士だとなんとも話しづらいかと思いますので、是非事前アンケートにご協力ください!)。
 私も世話人として参加しますが、まだ五年目、新人に毛が生えた程度です。気軽に話しかけて頂ければと思います。
 では、五月集会にてお待ちしています。 事務局交流会世話人 西 銘 宏 太(旬報法律事務所)

②活動交流分科会
 安倍首相は自衛隊員募集のための若者の名簿の提出に協力しない地方自治体があるなどといろいろと口実をつけ、改憲に執念を見せています。憲法改正を阻むための三〇〇〇万署名に取り組んでいる事務所はどのような方法で署名を集めたのでしょうか。すでに事務所ニュースに同封するなどし、現在はなかなか数を増やせない悩みもあるかと思います。そうした事務所での活動等、様々な活動に取り組む中で工夫していること、悩んでいること、成果をあげたこと、失敗したなどを率直に交流できればと考えています。他の地域の事務局の方と交流する機会はそう多くなく貴重なものです。今後の活動の参考になるような分科会にしたいと思いますので、ぜひご参加下さい。 事務局交流会世話人 北 原   新(東京法律事務所)

③私たちの仕事を考える経験交流分科会
 今回、久しぶりに仕事についての経験交流分科会を企画しました。
 全国各地から法律事務職員があつまる貴重な機会です。仕事のやり方、職場環境などについて話しませんか。地域によって、事務所によって全く違う点があり、それぞれの状況や苦労話しを聞くだけでも、参考になると思います。
 主なテーマとして、弁護士の日程管理や法律相談予約など職場のIT化、セキュリティー対策(防犯面、インターネット関連)、事務局研修(弁護士会主催等の外部研修、所内研修)などの活用を取り上げたいと思っています。詳しくは後日アンケートを取りますのでそちらへのご協力もよろしくお願いします。
 みなさんが聞きたいことや工夫していること、失敗したことなどをフランクに意見交換・情報収集の場にできればと考えています。
明日からの仕事にいかせるような分科会にしたいと思いますので、ぜひご参加下さい。
事務局交流会世話人 日 向   彩(三多摩法律事務所)

【研究討論集会・第一日目】
五月二六日(日)午後一時~五時(予定)
全体会 午後一時~三時〇〇分
  一日目の全体会で記念講演をお願いしている廣渡清吾先生(東京大学名誉教授)は、日本学術会議会長などを歴任され、現在、「安全保障関連法に反対する学者の会」や「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」でも先頭に立って活躍されています。その経験や運動の課題などをお話いただき、七月に予定されている参議院選挙、そして安倍改憲阻止のため、議論・討論を深めていきたいと思います。 事務局長 森   孝 博

分科会 午後三時一五分~五時〇〇分
(1)憲法分科会(一日目)
 昨年、安倍首相は、憲法改正推進本部長に下村元文部科学相を起用するなど、改憲シフトを敷き、改憲への強い執念を持って、臨時国会に臨みました。しかし、臨時国会には、改憲案の提出すらできませんでした。これは、下村氏の「職場放棄」発言などもありましたが、「安倍九条改憲NO!全国市民アクション」の三〇〇〇万人署名をはじめ、九条改憲反対の幅広い運動の力によるものです。
 一方で、安倍首相は、大軍拡、米軍との一体化、戦争法の実践を、推し進めようとしています。昨年一二月、防衛計画の大綱の改定が行われ、今月二日、戦争法の実践として、エジプト東部のシナイ半島の多国籍監視軍(MFO)司令部に、自衛官二人を派遣する実施計画が閣議決定されました。防衛予算は、過去最高を更新し、自衛隊は、他国への攻撃を可能とする兵器を保有しようとしています。参議院選前に、改憲発議を行うことは、日程的には、タイトになったとの評価もありますが、安倍首相は、通常国会において、自身の悲願である明文改憲の発議を諦めてはいません。このような情勢のもと、通常国会での改憲案の国会提出を阻止し、安倍政権を退陣に追い込む運動を強化する必要があります。
 憲法・平和分科会では、憲法改悪阻止についての団の活動、全国の団員の活動の報告を通じて、この間の情勢認識を共有化し、「安倍九条改憲NO!」をどのように訴え、共感を広げていくのかを議論します。参加いただき大いに運動の経験を交流し、議論を深め、今後の取り組みにつなげましょう。 事務局次長 尾 﨑 彰 俊

(2)労働分科会(一日目)
 労働分科会一日目は、労働契約法二〇条に関する裁判例の全国交流討論会を行います。
 昨年から今年にかけて、長澤運輸事件、郵政ユニオン東京事件、郵政ユニオン関西事件、メトロコマース事件、大阪医科大学事件などの、労働契約法二〇条に関する重要な判決が相次いで出されています。これらの弁護団には、団員も多く参加しており、数々の成果が出されています。
 基本給や賞与などの差異についても、不合理な格差として認める判決も出されるようになってきておりますが、多くの判決では、本給及び賞与等の相違を不合理と認めないことが多く、また、認容額が低額であることなどといった課題が残されています。
 今回の分科会では、全国で労契法二〇条の裁判に携わる団員の成果や問題意識を共有し、真の意味での均等待遇を獲得するための討論を行いたいと思います。
 これまでの知見の蓄積を踏まえ、充実した議論を行うために、多くの団員の参加をお願いします。  事務局次長 深 井 剛 志

(3)原発分科会
 原発問題員会では、寺西俊一一橋大学教授をお呼びして、講演及び議論を行います。
 寺西俊一先生は、日本環境会議の理事長を務めておられ、環境経済学の立場から、福島原発事故に対して政策提言をされている先生です。
 福島原発被害救済訴訟の現状の問題、克服すべき課題、今後の運動の在り方について、議論を行います。
 各地の被害救済訴訟の弁護団の報告や、脱原発弁護団の報告も交えて、原発問題をどのように捉えるのか議論を深めたいと思います。
 多くの団員の参加をお願いいたします。 事務局次長 深 井 剛 志

(4)国際分科会
 日本にいる外国人は約二五六万人、労働者は一二七万人になっています(ともに二〇一七年)。労働者の主たるものは非熟練労働者であり、非熟練労働の担い手は、技能実習生、アルバイト留学生等、本来は、労働者の受入れを目的としない制度によって入国した人々です。
 技能実習生は実習先が拘束され職場移転の自由が認められないため、不当な扱いを受けていたり、留学生がいろいろな事情から長時間労働を余儀なくされ週二八時間の就労制限を超えて在留資格を失ったりするなど、本来の目的から逸脱して就労させることを目的に外国人を受け入れたことが、当該外国人への人権侵害という形で現れてきています。
 政府は建設業、農業、介護等の分野から人手不足との声をうけ、就労を目的とした新たな在留資格を創設する方針を示しているが、外国人を期間限定の労働力とだけ見ており、外国人の人権に適った受入制度とはなっていない。
 そこで、本分科会では、日本にいる外国人の人権問題に焦点をあて、移住外国人に対する援助活動をされてきた首都圏移住労働者ユニオンの本多ミヨ子氏を講師に招き、在日外国人の実態をお聴きした上で、外国人の人権擁護の取り組みを進める機会にしたいと思います。また、各地で取り組まれている活動の報告等もあわせて行い、今後の取りくみの参考にしたいと考えます。
事務局次長 星 野 文 紀

(5)貧困・社会保障分科会
 安倍政権のもとで「社会保障制度の改悪」が進められています。安倍政権の七年間で削減された社会保障費は、約四兆二七二〇億円にも達します。二〇一八年一〇月からは、三年間で合計二一〇億円(うち国費一六〇億円)に及ぶ生活扶助基準の引き下げも行われます。
 そして、二〇一九年、安倍政権は「改憲」「消費税増税」とともに「社会保障費のさらなる削減」を進めようとしています。このような状況の中で、私たちは安倍政権により進められてきた「社会保障制度の改悪」による国民生活への影響を明らかにし、現在の日本における社会保障制度の課題を把握する必要があります。
 そこで、本分科会では、貧困問題の調査研究を重ねてこられました唐鎌直義教授(立命館大学産業社会学部)に、国民生活の実態、日本の社会保障制度の課題と目指すべき社会保障制度等をお話いただき、貧困をなくすために私たちがどのように取組みを進めるべきかを考える機会にしたいと思います。
 また、各地で取り組まれている裁判や運動の報告等もあわせて行い、私たちの今後の取組みに活かせる分科会にしたいと考えております。
 多くの皆さまのご参加をお待ちしております。 事務局次長 鹿 島 裕 輔

【研究討論集会・第二日目】
五月二七日(月)午前九時~一二時三〇分(予定)
分科会 午前九時〇〇分~一一時一五分

(1)憲法分科会(二日目)
 一日目をご参照ください。

(2)労働分科会(二日目)
 労働分科会二日目は、昨年成立した働き方改革一括法の廃止、活用に関する取り組みについての意見交換及び事件報告を行います。
 前半は、昨年成立した高度プロフェッショナル制度をいかに導入させないためのたたかいをするか、残業時間の上限規制についていかなる労使交渉を行うべきかなどといった導入阻止、活用方法についての議論から、いかに高度プロを廃止し、上限規制の例外規定を撤廃させるたたかいを行っていくかについての議論を行います。
 また、解雇の金銭解決制度や、ハラスメント禁止立法の審議状況を報告し、今後の立法闘争のための議論を行います。
 後半は、この一年間における全国各地の裁判闘争の結果を共有し、さらなる裁判闘争のための議論を行います。
 多くの皆様のご参加をお待ちしております。 事務局次長 深 井 剛 志

(3)ヘイト・スピーチ分科会
 二〇一九年石川県・能登五月集会分科会二日目(二七日午前)には、「ヘイト・スピーチ分科会」を開催します。
 同分科会の目的は、大きく三つ。
 第一に、二〇一六年に施行された所謂「不当な差別的言動解消法」(所謂ヘイト・スピーチ解消法)の施行三年という時期を踏まえ、各地の状況はどうなのかを明らかにします。
 まず、神原が同法の実施状況、条例制定の状況について概括的な報告を致します。次に、地域の取り組みのひとつの例として、この問題を追い続けている神奈川新聞の石橋学記者を講師としていらして頂き、神奈川県・川崎地域の運動の状況と条例作りの概況をお話頂きます。これに続けて、東京で先端的な条例として知られる国立市人権平和条例の報告、その他の地域、弁護士会の取り組みの報告を求めます。
 第二の柱。狭義のヘイト・スピーチに限らず、差別に関連する裁判はどうなっているか。朝鮮学校の裁判の現況や、話題になった「大量懲戒請求」裁判の現況もご報告頂きます(前者は交渉中)。
 第三の柱。可能であれば、自由法曹団として、「ヘイト・スピーチ」問題をどう捉えるのか、理論的な問題も討論したい。なんらかの叩き台も用意します。
 何をどこまでできるかは、今後どの程度の参加者を得られるかによりますが、とにかくホットなトピック満載ですので、みなさん、是非ご参加ください。 神奈川支部 神 原   元

《特別企画》
五月二六日(日)夕食懇親会後~
その1・給費制復活問題
 現在登録一年目の七一期の代から修習の費用が支給され、給費制が部分的に復活しましたが、新六五期から七〇期までの元修習生ら(いわゆる「谷間世代」)に対する遡及適用は予定されていません。昨年七月にはついに新六五期の修習貸与金の返済が始まってしまいましたが、今も政治的解決の可能性があります。
 各地の団員が五月集会に集まる機会を活かして、問題点を共有し、今後の給費制復活に向けた運動について自由に話し合います。
 給費制の問題は法曹界全体の問題ですので、いわゆる「谷間世代」に限らず、給費を受けた世代や七一期の方々もぜひご参加ください。
 昨年七月から給費制廃止第一期である新六五期の貸与金の返済がスタートするなど、給費制問題の状況は刻々と変化しています。いわゆる「谷間世代」の問題を中心に現状を共有し、今後の運動について各地の団員で議論します。 事務局次長 緒 方   蘭

その2・仁比ネット交流会
 昨年一〇月の福岡・八幡総会の時に開催した自由法曹団員の国会議員(仁比、山添両議員)を囲んでの交流会は、お陰様で参加者九〇名を超えて大盛況でした。「「主戦場」である法廷外の闘争になくてはならない団所属の国会議員の価値を再認識した」など、多くの好評をいただきました。
 安倍強権政治の下で、国政への「忖度」が顕著な裁判所とも闘わなければならない昨今、団員が関わるさまざまな事件を解決するための共通課題は「安倍政治を終わらせること」ではないでしょうか。
 五月集会は参議院議員選挙(仁比改選)も間近です。今回も仁比、山添の両議員が参加予定です。安倍政権を倒し、憲法、自由・民主主義を守るために国民の先頭に立つ仁比団員を我々の代表として再び国会に送り出すために、前回同様、自由闊達な意見交換を行いたいと思います。
 お酒も用意していますので、二次会気分でお気軽にご参加ください。 福岡支部 國 嶋 洋 伸

 

米軍基地内での人権侵害への対抗~目取真国賠訴訟判決  沖縄支部 齋 藤 祐 介

1 裁判の概要
 芥川賞作家の目取真俊さんが、二〇一六年四月一日午前九時二二分、辺野古新基地建設への会場での抗議活動中、キャンプシュワブの憲兵隊に身体を拘束され(刑特法二条違反)、八時間後の午後五時二二分に海上保安官に引き渡されて緊急逮捕されるまで、濡れたウエットスーツのまま、逮捕理由の告知もされず、弁護人への連絡も拒絶されたまま基地内で監禁されたことに対して提起した国賠訴訟である。二〇一六年五月一二日那覇地裁に国賠訴訟を提訴。二〇一九年三月一九日判決言渡し。
2 争点等
①国会が憲法三三条に違反する刑特法一二条二項を立法し、これを六〇年以上放置した行為は違法か。刑特法一二条二項は、日本の捜査機関が米軍から引渡しを受ける被疑者について、罪種の制限を設けずに緊急逮捕できるとしている。刑特法二条違反(米軍使用区域を犯す罪)の法定刑は、一年以下の懲役又は二〇〇〇円(罰金等臨時措置法により二万円)以下の罰金若しくは科料である。最高裁一九五五年一二月一四日大法廷判決は、刑訴法二一〇条一項の緊急逮捕について、厳格な制約の下、死刑、無期、長期三年以上の懲役・禁錮にあたる罪状の重い一定の犯罪のみについて、緊急やむを得ない場合に限り緊急逮捕を認めることは憲法三三条の趣旨に反するものではないとする。しかし、刑特法一二条二項は微罪でも無令状で緊急逮捕できると規定しており、この規定は憲法三三条に違反するのではないか。
②海上保安官が、原告の身柄を直ちに引き受けなかったことは違法か。日本の捜査機関が直ちに引き受けなければ、米軍に拘束された者は、司法審査も受けず、憲法・刑事訴訟法上の権利(弁護人との接見や黙秘権の告知など)も保障されないまま抑留されるので違憲・違法ではないか。
③米軍が拘束後、直ちに日本側に引き渡さなかったことが違法か。
④米軍が身体拘束後、身体拘束理由の告知を怠り、弁護人との接見をさせなかったことは違法か。憲法三四条は、拘禁又は抑留された者はその理由を直ちに告げられるとともに、弁護人に依頼する権利を保障しており、この規定は米軍と市民との関係においても適用又は類推適用されるのではないか。
⑤海上保安官による緊急逮捕が違法か否か。八時間後の緊急逮捕はもはや緊急性の要件を満たさないうえ、違法に米軍に監禁を継続させた間に収集した証拠を根拠に緊急逮捕するもので違法ではないのか。
⑥損害の範囲・金額
3 判決内容
①刑特法一二条二項が、軽微事犯についてすら緊急逮捕を許容しているとも読める点において、その対象犯罪がいささか広きに失している感は否めない。しかし、憲法三三条は、現行犯である場合を除いて、令状によらなければ逮捕されない旨規定しているに留まり、刑特法一二条二項により米軍から身柄が引き渡されるべき者は、実際上、現行犯として身柄を拘束された者である場合がほとんどであることがうかがわれ、本件のように米軍に現行犯的身柄拘束をされた者の引渡しに適用される限りにおいて、憲法三三条の趣旨に反しない。
②司法審査を受けないまま身柄拘束が長期化すれば憲法三三条の趣旨に反するから、米軍から引き渡す旨の通知を受けた司法警察員は、職務上直ちにその身柄を引き受けるべき高度の注意義務を負う。本件では、米軍から引き渡す旨の通知を受けてから二時間以内には引き受けることができたといえ、それを超えて海上保安官が引受けを遅延させたことは違法である。
③④米軍の長時間監禁、逮捕理由の不告知、弁護士への連絡拒絶について、それが違法であったとしても、そのことによる損害は、上記②で述べた海上保安官の違法行為による損害と完全に重なり合ううえ、米軍の不法行為の賠償責任を負う法主体は被告国であるから(民特法一条)、海上保安官の引受遅延行為が違法であるとの認定に重ねて、米軍の行為の適否を判断する要を見ない。
⑤刑特法一二条二項による緊急逮捕が、司法審査を受けないままでも身柄拘束が長期化していないものとして合憲であるといえるためには、それに先立つ身柄の引受けも直ちに行われていることが必要不可欠である。本件では、身柄の引受けが合理的理由なく遅延している以上、これに引き続く緊急逮捕も憲法三三条に適合した適法なものであると解する余地はなく違法である。
⑥海上保安官による違法な引受遅延行為の慰謝料三万円、違法な緊急逮捕の慰謝料三万円、弁護士費用損害二万円を認める(認容額八万円)。
4 コメント
 刑特法一二条二項の憲法三三条適合性について正面から憲法判断を行った点、及び海上保安官の引受遅延行為を違法とした点、緊急逮捕行為が憲法三三条に違反すると判断した点については、事実を適正に評価して判決したものとして評価できる。
 米軍関係では、通常の憲法秩序では考えられないことがしばしば起こるが、目取真さんの長時間拘束もそのうちの一つであった。二時間以内に引き渡されるのでなければ違法とした判決がされたことは重要だが、本来、憲法三四条からすれば、米軍基地内における拘束においても、逮捕理由の告知や弁護人の援助が得られるべきである。その点で本判決が逮捕理由の不告知と弁護士への連絡拒絶について憲法三四条との適合性判断を回避したことは残念である。控訴の有無は未定である。

 

「ある懲戒請求者との対話」  神奈川支部 宋   惠 燕

1 おかげさまで、現在(二〇一九年三月二六日時点)、目標額を超える三一七万五六〇〇円のカンパがあつまりました。皆さま、本当にありがとうございました。
 ところで、私と神原団員に提訴をしてきた七二〇名のうち、六〇代後半の男性が訴えを取り下げました。そこで、先日、その男性と連絡を取り、事務所にきてもらい、直接話をうかがいました。
2 まず、今回の件について謝罪をうけました。
 彼は、早稲田大学を卒業し、小規模なゼネコンに就職し、四〇代半ばで独立をして成功し、現在は、年金生活をしています。もともと、青年商工会議所の幹部も務め、安倍政権を支持しており、左翼嫌いで、右翼的な思想の持ち主だということでした。
 今から五年前に「余命三年時事日記」のブログを知ったそうです。
 余命のブログには、自民党の議員が関与しており、自衛隊の幹部との面談もしたようなことが書いてあったことから、「余命三年」というのは、安倍晋三と密に繋がっている大物右翼だと思ったそうです。
 そして、安倍総理が、今、表舞台で頑張っているのだから、日本を取り戻すために、自分は裏からサポートしようと思って、大量懲戒請求に関わったとのことでした。
  「余命三年時事日記」は日本語として意味をなしていない部分が多く散見され、明らかにおかしな文章であるにもかかわらず、学歴も高く教養もあるような方がどうして信じたのかと聞いたところ、「今となっては恥ずかしいのですが、日本語を母語としない人が読めないようにわざと読みにくく書いていると信じた」そうです。
 二〇一四年七月、入管に通報をすれば在日コリアン強制送還できて報奨金がでるという記事を読んだときに、自分の知っている韓国人がいたこともあり、通報をしなかったそうです。本当に強制送還されると信じたからこそ、通報しなかったとのことです。
 これまで、朝鮮学校の問題については、ほとんど考えることもなかったけれども、ブログには、朝鮮学校が憲法違反だと書いてあったので、それを信じたとのことでした。そして、それに反対する弁護士会についてはけしからんと思ったし、また、ブログを鵜呑みにし、ヘイトスピーチについても日本人ばかりが何も言えない、と思ったということでした。
 弁護士を懲戒請求することによって、その弁護士に対して不利であること、負担をかけて業務を邪魔することをわかっていてやったし、個人のことを全くかんがえていなかったことについては反省していると言っていました。
 彼の言葉の中で一番印象的だったのは以下の部分です。
 「今回の一連の行為について、洗脳というほど「余命三年」を信じていたわけではない。ただ、ヒトラーやナチスは、一般人がそれほど洗脳されていなくても、狂乱の中で、高揚して加担したというのはあった。それのミニ版みたいなものに、自分は入り込んだのではないかと思っている。
 自分の中の承認欲求や、劣等意識みたいなものをスケープゴートにし、自己合理化をした。私は自分を騙したのではないか、私がもっていた黒い部分だったのではないか。
 ここ数年、大きな手術もし、多くの病気をしているので、気持ちを安らかに死にたい、自分はもっとちゃんとした人間にであったと戻っていきたいと思った。だから、自分ができることは協力したいと思っている。
 多分、私がやるべきことは、金銭的な解決ではなく、このことをしっかりと後始末することだ」
3 私たちとしても、彼と金銭的な和解よりも、裁判の協力をしてもらうこと、マスコミの取材協力もしてもらうということで、和解をしようと思っています。
 彼は、本当に正直に話をしてくれたと思います。
 彼はナチスを例えに出していましたが、こういう一般の普通の人が、関東大震災で、「日本を守るため」高揚した気分の下、自分はいいことをしていると信じて、朝鮮人を虐殺したのと同じだと感じました。
4 統計的にみても、ヘイトスピーチやヘイトデモは、安倍政権時に増加します。また、懲戒請求者の多くは、靖国神社の奉納にも寄付をしており、右翼的な思想を持った人たちの集団です。ヘイトスピーチ問題を解決するためにも、ヘイト発言を容認する安倍政権を打倒する必要があると思います。

 

滋賀における弾圧事件対策 のびのび選挙学習会  滋賀支部 玉 木 昌 美

 二月の大津常幹でこの問題について発言したので滋賀における取組みについて報告する。
 国民救援会滋賀県本部と自由法曹団滋賀支部は地方議員選挙や参議院選挙を前に活動を展開した。
 まずは、「のびのび選挙学習会」である。二〇一九年二月九日には国民救援会甲賀支部で近藤公人団員を講師に学習会を開催し、二月二一日には同草津栗東支部で、三月一三日には同滋賀県本部で私が講師を担当して学習会を開催した。
 「弾圧事件対策」を全面に出すと「弾圧されるのが恐いから活動するのはやめておこう」になるので、「のびのび選挙」という言い方をしている。学習会では選挙の重要性にふれ、のびのびと政治活動・選挙活動を旺盛に展開しよう、公選法等の学習をしたうえ、警戒心を怠らず活動しようと提起している。
 滋賀における一番の教訓的な事件は湖東民商ポスター弾圧事件である。三名の民商会員が「みんなの民商」というポスターを電柱等に貼ったことが滋賀県屋外広告物条例違反で検挙された。最高裁まで闘ったが、その結果は罰金刑が確定し、無罪判決を獲得することはできなかった。三名はひととおり貼ったあと、余ったポスターをさらに貼ろうとした。このとき、パトカーの姿を見ているのに警戒心を持たず、一旦休止することをせずに精力的に貼り続けて弾圧された。もし、弾圧の心得を多少とも意識していたら避けることができた事件であった。
 滋賀においては、前回の参議院議員選挙を野党共闘で闘ったが、選挙前、市民の会しがの湖北地域の集会について候補者を全面に打ち出したビラを新聞折り込みしたところ、長浜警察から呼び出しを受けることがあった。前回の衆議院議員選挙では、自民党が夥しいポスターを張り巡らし、選挙が始まっても放置したが、警告や検挙されることはなかった。「革新票を減らすことはできる。」という警察幹部の言葉どおり、捜査は偏頗である。最近では、知り合いにメールで「共産党の候補者をよろしく。」と送ったことが警告される事例も発生している。
 国民救援会滋賀県本部では、これまで「選挙干渉・弾圧をはね返す五つの心得」を作成し、配布しており、今回これを増刷して各団体に配布することにした。これは、不当な逮捕には「黙秘」で闘うことや「救援会の弁護士を呼べ」と要求すること等基本的なことや連絡先が書かれている。折り畳めば定期券くらいの大きさであり、手帳に挟み、活動する前には目を通すように要請している。五分で読め、力を発揮すると思う。また、選挙活動のセンターではそれをポスターにして掲示するように指示している。さらに、団、救援会、県労連で「選挙運動の権利を守る共同センター」を再開し、県選管や滋賀県警に要請するとともに、「謀略や警察の干渉などの情報を」と呼びかけている。
 団員は、国民救援会が発行している『80問80答』や団京都支部が発行した『自由にできる選挙活動』を一読しておき、対応する必要がある。いずれも必読文献である。
 もっとも、『80問80答』は名著であるが、なにせ古い。たとえば、緊急事態のために一〇円玉をもって活動し、「いざという時は公衆電話からセンター等へ連絡を。」となっているが、現在では街中には公衆電話がない。また、みんなが持っている携帯電話は緊急の連絡には便利であるが、検挙された場合、そこにある全ての情報、すなわち交友関係、支持連絡事項等を捜査側が掌握することになる。携帯電話をどうするのかは重要な問題であるが、あまり議論されていない。私は、活動時、理想的には情報の入っていない連絡専用の携帯電話を用意すべきという意見であるが、実際にはその対応はむずかしい。また、軽微事件において刑事訴訟法二一七条の関係で身分を明かして逮捕を免れるのか、という問題もある。認めれば、「黙秘する」方針の例外となる。私は、現場で判断して対応することが難しいので原則通り「黙秘」を貫くことがよいと思うが、異論があるかもしれない。団常幹で改訂版の作成をお願いしたところである。
 学習会のたびに、手弁当で運動を展開する国民の手足を縛る戸別訪問の禁止等、ことさら必要な情報を国民に提供させず、国民が議論できないような状況にしている公選法に憤りを覚える。民主主義を否定する公選法を直ちに改正すべきである。

 

「軍隊のない国家」は本当にあるのだ!!  埼玉支部 大  久  保  賢  一

はじめに
 自民党の改憲草案は憲法九条二項を廃止して、国防軍を持とうと提案している。その理由は、軍隊を持たないなどというのは、ユートピア思想だからだという。ユートピアとは、どこにもない場所、想像上の理想郷などとされている(広辞苑)。要するに、自民党は、軍隊を持たないなどというのは、空想的だ、非現実的だというのである。だから、戦力放棄などは放棄しようと提案しているのである。
 けれども、世界には、軍隊を持たない国が現実に存在している。軍隊を持たない国家というのは、決して、空想的ではないのである。現実に存在するものをないこととするのは、明らかに虚偽(フェイク)である。
 「軍隊のない国家」の日本における研究の第一人者は、東京造形大学教授の前田朗さんである。その前田さんが依拠している先行研究者の一人は、クリストフ・バーベイというスイスの弁護士である。以下の記述は、前田さんの「軍隊のない国家・二七の国々と人びと」(日本評論社・二〇〇八年)と「軍隊のない国家研究の最前線」(日本国際法律家協会機関誌インタージュリスト一八九号(二〇一六年八月)から一九二号(二〇一七年五月))に依拠してのものである。
軍隊のない国家
 もともと、前田さんもバーベイも軍隊のない国は二七ヵ国としていたが、現在は二六ヵ国としている。まず前田説で列挙すると次のとおりである。アンドラ、クック諸島、コスタリカ、ドミニカ、グレナダ、アイスランド、キリバス、リヒテンシュタイン、マーシャル諸島、モーリシャス、ミクロネシア、モナコ、ナウル、ニウエ、パラオ、パナマ、サモア、サンマリノ、ソロモン諸島、セントキッツ・ネービス、セントルシア、セントヴィンセント・グレナディス、トゥバル、ヴァヌアツ、ヴァチカン、ルクセンブルグである。バーペイはハイチを入れ、ルクセンブルクを入れていない。ハイチには国連軍が駐留し、ルクセンブルグはNATOに人を派遣しているので、それをどう評価するかによる違いである。また、モルディブは再軍備したので外されている。私にはどこにあるのかを示せと言われてもわからない国もある。けれども、オリンピックの入場行進の時に聞いたことがある国も多い。
国家の数
 外務省のHPによると、現在世界の国は一九六とされている。これは日本が国家承認した国の数に日本を加えた数字である。また、国連加盟国は一九三ヵ国である。北朝鮮は国家承認してないので、国連加盟国ではあるが、日本政府にとっては国家ではないようである。それはともかくとして、私たちは、世界一九六ヵ国のうち二六ヵ国(約一三パーセント)に軍隊がないということを確認しなければならない。
 なお、二人は、軍隊とは他国の武力行使を防止し、軍事行動を行うために、政府によって設置された武力と理解しているようである。日本政府は軍隊を「武力を行使する組織」としているので、ほぼ共通しているといえよう。警察は、公共の安全と犯罪捜査を任務とする組織であり、小規模の保安部隊が設置されることもあるが軍隊ではない。小規模の保安部隊があっても軍隊のない国に数えられるのである。
 これらの軍隊を持たない国のうち、一九ヵ国は軍隊を持たずに建国され、国家ができてから非軍事化したのは七ヵ国であるという。日本の自衛隊が解散するとき、二人はどちらと数えるのであろうか。再軍備したモルディブのような国もあるけれど、また、それぞれの国の歴史的背景や地理的条件、政治情勢などの違いはあるとしても、軍隊を持たないままに国家運営をしている国家は存在しているのである。
 ちなみに、一九四六年制定の日本国憲法は、九条二項で戦力と交戦権を放棄しているけれど、これは、世界史の上では決して初めてのことではないようである。例えば、スイスとオーストリアの間にある小国リヒテンシュタインは一八六八年に軍隊を廃止し、一九二一年憲法で非武装を明示しているという。そして、ナチスドイツと国境を接した時にも武装しなかったという。日本国憲法の非武装平和主義には先例があったのだ。
 ところで、バーベイは日本について「憲法九条において軍隊を明示的に禁止する基準を有するが、実際には世界で最も強力な軍隊を保有している」と評価し、前田さんは、「憲法に軍隊を持たないと書いてあるのに、実際には軍隊を持っている世界で唯一の国」と皮肉交じりに書いている。このような事態を解消するためには、憲法という最高規範に現実を合わせることであろう。変えるべきは、憲法ではなく、違憲の状態である。そしてそれは決して夢物語でないことは、世界の現実が証明しているのである。
 私たちは、世界には二六ヵ国も軍隊のない国があることを確認し、憲法九条はユートビア思想などと言いたてるのは情報操作であることを見抜き、併せて、日本のような「大国」が軍隊のない国になれば、人類史を大きく転換することになるであろうことに確信を持ちたいと思う。(二〇一九年一月一一日記)

 

独自の天皇制論議 その2「慰安婦問題」は天皇の謝罪で解決できるか  東京支部 伊 藤 嘉 章

始めに
 天皇公選論という暴論(一六六〇号)を「独自の天皇制論議 その一」と後つけで付記しますので、本稿は「その2」となります。
韓国国会議長の発言
 「日本を代表する首相か、間もなく退位される天皇が望ましいと思う。一言でいいのだ。……天皇がおばあさんの手を握り、申し訳なかったと一言言えば、問題は解消されるであろう。」との発言に安倍首相は怒り狂ったという。
 安倍首相の怒りは、次の二点から、当然ではないか。
解決済の問題である。
 二〇一五年一二月二八日の、日本の岸田外務大臣と韓国の尹炳世外交部長官による「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。」という共同記者発表による日韓合意で解決済の問題を蒸し返しているからである。
 仮に、二〇一五年一二月二八日の共同記者発表による日韓合意が法的拘束力のない政治的合意である、あるいは、この合意はあくまでも問題解決の出発点であるとしても、さらなる解決の任にあたるのは政治家の仕事である。
天皇は無能力者である。
 「天皇は、この憲法に定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」(憲法第四条一項)。
 あと、天皇にできるのは、プライベートな行為だけである。平成天皇は大きな勘違いをしているのではないか。
 天皇が「象徴としての行為」として、戦跡地に行って慰霊をしたり、被災地に行って被災者に寄り添うなどの行為は憲法違反にほかならない。いずれも政治家の仕事です。
 多くの学者がいう「象徴としての行為」とか「準国事行為」などはないのです。
象徴とは
 憲法一条には、「天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であ」ると定めている。
 象徴とは、広辞苑第二版補訂版によれば、中江兆民が明治一六年に作り出した言葉のようで、「主として抽象的な事物を示すに役立つ形象または心像。想像力に訴える何らかの類似によって抽象的な或る事物を表す記号とみなされる感性的形象」とあります。難しい説明でよくわからないのですが、「ハトが平和の象徴」とあります。ハトという鳥の存在自体が象徴なのです。ハトは象徴として何かの行為はしないと思います。
 天皇の存在自体が象徴なのではないか。とすれば、憲法の厳格な解釈からすれば、天皇は皇居にいて、国事行為として書類に判子を押す仕事だけをしていればいいのです。あとは、プライベートな行為だけでいいのです。そのために、内廷費という手当が出ています(皇室経済法第四条)。
「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の違憲性
 同法の一条には、「天皇陛下が、昭和六十四年一月七日の御即位以来二十八年を超える長期にわたり、国事行為のほか、全国各地への御訪問、被災地のお見舞いをはじめとする象徴としての公的な御活動に精励してこられた中、八十三歳という御高齢……以下続く」とある。
 法律の条文中の異様な敬語の羅列に対する嫌悪感を吐露することは控えますが、「象徴としての公的な御活動」などという憲法にない活動を認めたこの法律は憲法違反なのではないか。
法改正と禁中並びに公家諸法度
 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」などという法律を廃止して、皇室典範を改正して天皇に定年制を設けるべきではないでしょうか。
 そして、江戸時代の禁中並びに公家諸法度の一条「天子諸芸能之事第一御学問也」を復活して、よけいなことができないようにする。相撲が見たくなった場合に、国技館に行けば、相撲協会の関係者など多くの人の迷惑になるのだから皇居のテレビで見ることが望ましいと思います。
 守川団員のいうように(一六六一号)、天皇が靖国神社に行って、英霊の御霊に寄り添うなどの憲法違反をされても困ります。
天皇の政治利用への怒りと憲法擁護義務の履行
 最後に本論に戻ります。
 「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」(第九九条)。
 「天皇がおばあさんの手を握り、申し訳なかったと一言言」うことは、政治世界の行為に他ならない。判子を押す国事行為と、あとはプライベートな行為しかできない天皇には、到底なしえない仕事である。憲法違反そのものである。
 安倍総理は、このような憲法違反の言説に対して、怒り狂うことによって、天皇による謝罪を拒否したのである。このことは、国務大臣としての憲法擁護義務を履行したものとして賞賛に値するのではないだろうか。 二〇一九年三月六日記

 

「治安維持法拘禁精神病」― 伊藤千代子の生涯  東京支部 後 藤 富 士 子

1 「こころざしつつたふれし少女」
 伊藤千代子(一九〇五~二九)は、二歳で母と死別し、翌年には実父が離縁になり、養祖母に育てられたが、一四年(小学三年生)に亡母の実家へ引き取られた。諏訪高女へ入学した一八年、アララギ歌人土屋文明が着任し、高四のときには土屋文明の自宅でテル子夫人から英語の補習を受け、二二年、生徒総代で卒業証書授与された。尋常高等小学校代用教員を経て、二四年五月、仙台・尚絅女学校高等科英文予科入学、翌二五年、東京女子大英語専攻部二年に編入学した。この年(大正一四年)は、治安維持法公布、男子普通選挙法公布、日本労働組合評議会結成、『女工哀史』出版という情勢で、千代子は東京女子大学内の社会科学研究会結成に参加している。翌二六年、学外のマルクス主義学習会に参加し、浅野晃と出会い、二七年には女子学連結成に参画し、九月に浅野晃と結婚した。二八年二月下旬に共産党に入党(中央事務局所属)したが、三・一五弾圧で検挙され、特高の拷問を受け、起訴、市ケ谷刑務所に勾留された。二九年、千代子に直接指示を出していた事務局長水野成夫や夫が獄中で転向するも、千代子は頑強に闘い、八月一日、拘禁精神病を発症し、同月一七日、松澤病院へ収容され、九月二四日、急性肺炎により二四歳で死亡。
 この前後の情勢として、二二年に日本共産党創立、二六年労農党結成、二七年金融恐慌、山東出兵、二八年赤旗(せっき)創刊、治安維持法死刑改悪、三・一五弾圧(小林多喜二『一九二八年三月一五日』)、二九年山本宣治刺殺、四・一六弾圧、三三年多喜二築地署で虐殺、三四年野呂栄太郎品川署の拷問で病状悪化絶命。そして、三五年、土屋文明が東京女子大で「伊藤千代子がこと」を講演。六首詠われたうちの三首は、
  まをとめのただ素直にて行きにしを
         囚へられ獄に死にき五年がほどに
  こころざしつつたふれし少女よ
         新しき光の中におきておもはむ
  髙き世をただめざす少女らここに見れば
         伊藤千代子がことぞかなしき
2 「治安維持法拘禁精神病」の発見
 三五年に松澤病院に勤務した秋元波留夫医師は、拘禁精神病という診断で入院している、治安維持法で投獄された人たちがいるのに驚愕した、という。それらの患者の病状は、激しい興奮や幻覚妄想で、分裂病(統合失調症)の急性期と殆ど区別できないものであった。これは単なる拘禁が原因ではなく、苛酷な取調べと、良心の囚人としての精神的葛藤でおこる心因反応である。その発症のメカニズムは、第一に、治安維持法によって逮捕勾留された人が拘禁中に精神障害におちいるのは、特高警察の残酷な取調べ(拷問、転向の強要など)による身体的、精神的苦痛に加えて、自分の信念と肉親の情愛との葛藤、将来の不安、その他、様々な解決困難、精神的苦悩が限界を越えること。第二に、治安維持法による拘禁精神病が一般の受刑者のそれと異なり病像が重く、多項で、分裂病に酷似するのは、原因となった精神的苦悩、精神的外傷が強烈であり、分裂病症状が強烈な精神的外傷に対する生体反応であること。この意味で、治安維持法による拘禁精神病は「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)というべきものである、という(『実践精神医学講義』第三二講「治安維持法と拘禁精神病」二〇〇二年刊)。
 なお、千代子の直接の死因である急性肺炎は、当時、硫黄の湯が気分の鎮静に効果があるとして取り入れられていたことによる。千代子が収容されていた狂躁患者病棟では、日中、食事の時間を除く大部分を硫黄の湯に入れられ、夕食がすむと、湯の中から追い上げられ、裸のままで看護婦の持ち出した布団を病室に敷いて、その中にもぐりこむのである。千代子は、裸のまま監禁され、ついに肺炎を起こして死んでしまった(中本たか子『わが生は苦悩に灼かれて』一九七三年刊)。
3 「国家賠償要求」―「哲学の貧困」
 暴虐を極めた治安維持法に関して、現在も運動している「治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟」という組織がある。しかし、この「同盟」の目的・目標は、誰が考えても実現不可能である。それは、治安維持法の真の「犠牲」を克服するための要求ではなく、安直に既存の法律枠に流し込むことによって、市民的・政治的自由の確固たる実現を圧殺するからである。
 治安維持法が断罪され、その犠牲者の名誉回復がされなければ、歴史的に清算できない。それをなしうるのは、韓国の「過去事整理法」のような法律を成立させる政権である。ちなみに、文在寅大統領は、三・一独立運動一〇〇年の記念式典における演説で、「親日(日本の朝鮮半島統治に積極的に協力した人)は反省すべきで、独立運動は礼遇されなければならないという、最も単純な価値を定めることだ」「親日残滓の清算は、あまりに長く先送りされた宿題だ」と述べている(三月一日朝日夕刊)。
 翻って、日本では、人間を破壊する治安維持法が歴史的に清算されただろうか?治安維持法など法律は「支配の道具」であったが、日本国憲法の下で、それは変わったのだろうか?
 驚くべきことに、三月二日未明の衆院本会議において、日本維新の会の足立康史議員が共産党と立憲民主党など野党の共闘を批判する文脈の中で「破防法(破壊活動防止法)の監視対象と連携する政党がまっとうな政党を標榜するのはおかしいと考えているし、そう思う国民は少なくない」と発言した。ちなみに、二〇一六年三月二二日、国会議員の質問主意書に対し、共産党を「現在においても、破防法に基づく調査対象団体である」と指摘する答弁書を閣議決定している(三月三日朝日日刊)。共産党は政党交付金を受領拒否しているが、同法では正当な受領資格を認められているにもかかわらず、破防法調査対象団体とはどういうことか。憲法が保障する政治結社の自由は侵害され、法律の解釈適用者の責任も曖昧である。「破防法に基づく調査対象団体である」としている責任(誰なのか)の究明と足立議員に謝罪させることができないのでは、現在が治安維持法と地続きにあるというほかない。
※本文は、藤田廣登『時代の証言者 伊藤千代子』(二〇一七年改訂新版)を引用しています。
 (二〇一九・三・五)

 

映画「時の行路―翼もがれても」製作上映へのご協力のお願い  東京支部 尾 林 芳 匡

 いま全労働者の四割近くが非正規雇用労働者となり、不安定雇用と低賃金労働がまん延し、多くの労働者がきびしい生活を余儀なくされ、日本社会の大問題となっています。
 二〇〇八年、「リーマンショック」を口実にした非正規雇用労働者の大量解雇のなかで「年越し派遣村」がとりくまれ、多くの国民に日本社会の貧困、日本の労働者の劣悪な雇用と働き方が「可視化」され、政権交代にもつながりました。しかし、劣悪な非正規雇用労働者の現実は変わっていません。
 この映画は、その中でたたかわれた「いすゞ自動車争議」をモデルとして、作家・田島一さんの小説「時の行路」を映画化しようとするものです。
 映画では、突然の雇い止め、そのなかから人間の尊厳をまもるために立ち上がる苦悩、そして次々に襲いかかる困難や家族の不幸、もがきながらも敢然と困難に立ち向かう労働者と家族の姿を感動的に描こうとしています。労働者・労働組合のたたかいを正面から描く映画は、必ずしも多くはありません。五〇年前の「ドレイ工場」以来と言えるかもしれません。すべての労働者が人間としての誇りと希望が持てる働き方ができる社会をつくる上で、映画「時の行路―翼もがれても」の製作上映には、大きな意義があると思います。
 映画の製作普及には相当な費用がかります。長い準備期間をかけて本格的に製作にとりかかれるところまできており、監督は、巨匠・神山征二郎氏に引き受けていただき、五月にはクランクインの予定です。ついては、全国の自由法曹団員のみなさまに、次のご協力をお願いする次第です。
(1)製作協力券(普及は四月まで、一枚一〇〇〇円)、五月からは製作賛同金(一枚一二〇〇円)のご購入をお願いします。一口一〇枚(四月まで一万円、五月からは一万二〇〇〇円)ですが、一〇口以上(四月中なら一〇万円)のご協力には、名前を映画のエンドロールに掲載してくださるとのことです。
(2)問い合わせ・申込先 「時の行路」映画製作・上映推進会議
 blog eiga-haken.blog.com
 TEL〇三―五四六六―二三一一  
 FAX〇三―五四六六―二三一二
 Mail info@kyodo-eiga.co.jp
(個人または団体の名、担当者名、連絡先、映画エンドロール表記の希望の有無、金額を明示してお申込み下さい。)
(3)製作者・賛同人などは次の通りです。
ゼネラルプロデューサー  中西 繁(画家)
賛同呼びかけ人 石川文洋(報道カメラマン)、宇都宮健児(弁護士)、小田川義和(全労連議長)、窪島誠一郎(無言館館主)、田島一(作家)、仲築間卓蔵(ジャーナリスト)、日色ともゑ(女優)、藤野戸護(共同映画社長)、牧野富夫(労働総研顧問、日大名誉教授)

 

 

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