<<目次へ 【意見書】自由法曹団


要請書


一 第73回中央メーデー実行委員会は、その構成団体である全国労働組合総連

合(以下「全労連」という)の名で、2001年11月1日、第73回中央メーデーの会場として代々木公園の使用許可申請を東京都に行いました。そして、東京地方公務員関係労働組合連合会(以下「東京地公労」という)も、同日、東京地公労のメーデー会場として代々木公園の使用許可申請を東京都に行っています。

 2001年のメーデーについても、第72回中央メーデー実行委員会と東京地公労とが同日メーデー会場として代々木公園の使用許可申請を行いましたが、東京都は、「代々木公園は、東京都レベルの労働組合である東京地公労のメーデー会場として使用許可するのではなく、中央メーデー会場として中央メーデー実行委員会に使用許可するのが適切である。」と判断して、第72回中央メーデー実行委員会に使用を許可しました。

 ところが、東京都は、今年1月15日、突然、第73回中央メーデー実行委員会と東京地公労を呼び出し、「同日にメーデー会場として複数の代々木公園の使用許可申請があったので、使用者の決定方法を『抽せん』にあらため、1月24日に抽せんを行いたい。」と告げてきました。その後第73回中央メーデー実行委員会の抗議・要請により、東京都は、抽せんの日を2月19日、3月8日と延期していますが、あくまでも抽せんを強行しようとしています。

二 東京都は、1989年、「軍事費を削って、くらしと福祉・教育の充実を」

国民大運動実行委員会が中央メーデーの会場として先に代々木公園の使用許可申請をし、全日本民間労働組合連合会を中心とする第60回メーデー中央実行委員会が後れて代々木公園の使用許可申請をしたケースについて、東京都の裁量的判断で上記第60回メーデー中央実行委員会に使用を許可しました。

 1989年当時は、代々木公園等の使用許可基準等を定める「集会のための公園地の占用及び日比谷公園大音楽堂の使用に関する取扱について」(昭和51年4月24日51建公公第2号建設局長決定)に、「使用等ができる者(以下「使用者等」という。)の決定は原則として先着順とする。ただし、受付の初日において、申請が競合したときは、抽せんにより、使用者等を決定する。」と定めてありました。

 上記先着順優先の規定があるのにもかかわらず、東京都は、「『事務取扱要領』において、『原則として先着順』としているのは、日比谷大音楽堂のように本来目的に準じて集会の使用を認めている有料施設の使用や、通常の一般的な集会に対する許可に当たっての事務手順を示したものであって、5月1日における労働者の祭典として、国民的行事となっているメーデーのような特別な集会のための占用までを含む趣旨ではなく、ここに『原則として』の意味がある。」として、東京都の裁量的判断で後から申請した第60回メーデー中央実行委員会に代々木公園の使用を許可したのです。

 さらに、1989年には、東京都労働組合連合会(以下「都労連」という)もメーデー会場として代々木公園の使用許可申請をしていましたが、東京都は、「構成団体が、東京都を職域とする地方公共団体に属する限られた範囲の労働組合の集合体である。」等を理由として、都労連へ代々木公園の使用を許可しませんでした。

三 東京都は、1990年から2000年までの間、全労連を中心とする中央メ

ーデー実行委員会と全日本労働組合連合会(以下「連合」という)を中心とするメーデー中央実行委員会が代々木公園の使用許可申請をするもとで、東京都の裁量的判断で連合を中心とするメーデー中央実行委員会に代々木公園の使用を許可してきました。

 東京都は、東京都の裁量権限を明確にするため、平成6年4月1日に前記「集会のための公園地の占用及び日比谷公園大音楽堂の使用に関する取扱について」(昭和51年4月24日51建公公第2号建設局長決定)の定めを変更して、「集会・イベント等のための公園地の占用に関する取扱いについて」(平成6年4月1日5建公公第620号公園緑地部長決定)に、「(一)集会・イベント等の占用ができる者(以下「占用者」という。)の決定は、原則として先着順とする。ただし、受付の初日において、申請が競合したときは、抽せんにより占用者を決定する。(二)前項ただし書きにおいて、抽せんにより占用者を決定することが不適当であると認めるときは、それ以外の方法で占用者を決定することができる。」と、(二)の規定を新たに挿入しました。

 東京都は、1992年(平成6年)以来、上記(二)の規定に基づいて、200年までは連合を中心とするメーデー中央実行委員会に、2001年は全労連を中心とする中央メーデー実行委員会に代々木公園の使用を許可してきたのです。

 東京都は、2001年のメーデーについて、全労連を中心とする中央メーデー実行委員会に代々木公園の使用を許可し、東京地公労に明治公園の使用を許可しましたが、これが公正・公平な行政判断であったことは、今年1月15日の「2001年メーデーの参加者は、全労連を中心とした中央メーデー実行委員会は主催者発表で8万人、警視庁発表で2万5500人。東京地公労は主催者発表で2万人、警視庁発表で8300人。」との東京都の説明に照らしても極めて明白です。

四 代々木公園は、1967年10月に公園として開園されていますが、その前

身の代々木オリンピック選手村跡地の時代の1965年から今日にいたるまで、

その規模等からして一貫して中央メーデー会場として使用されてきました。

 中央メーデー実行委員会は、ナショナルセンターである全労連を中心に多数の労働組合・民主団体で構成され、180万人近い労働者を含む400万人を超える労働者・国民を結集し、1990年以来毎年10万人近い参加者を得て中央メーデーを行ってきています。中央メーデー実行委員会にふさわしいメー

デー会場は、代々木公園以外にはありません。

 東京地公労は、2001年の実績からしても、優に明治公園でメーデーを行うことができます。

 東京都の公の施設である代々木公園を使用することは、憲法第21条1項「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」及び地方自治法第244条2項「普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」で保障された労働者・国民の基本的人権です。

 そして、都市公園法第6条1項「都市公園に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設を設けて都市公園を占用しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない。」に基づいて定められた前記「集会・イベント等のための公園地の占用に関する取扱いについて」(平成6年4月1日5建公公第620号公園緑地部長決定)では、「(二)前項ただし書きにおいて、抽せんにより占用者を決定することが不適当であると認めるときは、それ以外の方法で占用者を決定することができる。」と定められており、東京都は、中央メーデー会場として使用されてきた代々木公園の沿革と規模に照らして、第73回中央メーデー実行委員会にただちに代々木公園の使用を許可すべきです。

 以上のとおりですので、東京都は、第73回中央メーデー実行委員会に結集する労働者・国民の「集会の自由」と「公の施設を利用する権利」を尊重し、抽せんによることなく、第73回中央メーデー実行委員会にただちに代々木公園の使用を許可されるよう強く要請します。


  2002年2月  日           

自由法曹団
    幹事長    篠原義仁

東京都知事   石原慎太郎殿