<<目次へ 【意見書】自由法曹団


司法制度改革推進本部 御中
「被疑者・被告人の公的弁護制度
の整備」に関する意見書


2003年3月18日
自由法曹団
団長 宇賀神 直

1 被疑者に対する公的弁護制度の対象事件

 身柄拘束を受けたすべての被疑者とする。
 罪名による差別をすべきではない。事件は流動的なものであり、捜査の推移に伴って罪名が変わることが少なくなく、当初から別件逮捕・勾留という捜査方針がとられることもある。
 ただし、一回の接見で法的なアドバイスをすることで足りることも少なくないだろう。提供する弁護活動の内容には差異がもうけられてもよい。

2 選任の時期

 当面勾留請求時
この場合でも相当な事件数になり、弁護人の適正配置等の体制ができるまでの経過措置が必要である。
 公判手続きの場合は、弁護人が選任されない限り手続き開始しないという区切りをつけることができるが、捜査の場合は実際に弁護人が選任されることを待たないで捜査活動が進行する。選任されると同時に弁護人が活動開始し、起訴・不起訴処分まで、必要な弁護活動に従事できる当番弁護士体制をつくることができるかどうかがポイントとなる。

3 選任要件

 「貧困その他の事由により自ら弁護人を選任できない場合」刑訴36条と同じ被疑者の申告による運用とし、一定の資力以上の被疑者については私選弁護とする。

4 公的弁護制度下での弁護活動の在り方について

 国家権力の刑罰権行使に対抗して、被疑者・被告人の人権を守る弁護人は、その自主性・独立性が何よりも確保されなければならない。
 弁護活動の質の向上については、弁護士会の研修と自己研鑽そして弁護士倫理により対処すべきである。
 国家機関が個々の弁護活動について「不適正弁護」を理由に制裁等をとることは絶対に許されない。

5 担い手の確保の方策

(1) 弁護士会の支援する公設事務所・刑事専門弁護士事務所の全国への設置、弁護士過疎地域については単位弁護士会相互の協力関係で対応する。
(2) 公的弁護制度の運営主体については、弁護士会と弁護士の独立性・自主性が確保できる公平・中立のものを設計しなければならない。この保障なくして、弁護人は国家権力と対峙して、適正手続きのもとで被疑者・被告人の権利を擁護する使命を果たすことはできないのである。
 なるほど、国家予算を支出することから、憲法89条の求める「公の支配」の要件を満たす必要があり、国の全く関与しない運営主体をつくることはできない。しかし、その運営主体の組織については、理事会などの開かれた民主的な意思決定機関を中核とするものでなければならない。その上で、弁護士の個々の弁護活動の内容をコントロールしたり、干渉することのないことを保障するシステムを構築しなければならない。
(3) 法務省から出された独立行政法人「リーガルサービスセンター」構想については重大な疑義がある。
 第1 もともと「リーガルサービスセンター」構想と公的弁護の運営主体をどうつくるかは別の問題であること。
 第2 独立行政法人であれば独立行政法人通則法の原則的な適用を受け、法人の長は法務大臣が指名・任命し、この法人の長が職員を採用する人事組織となる。
 そこには開かれた民主的な意思決定機関が予定されていない。これでは人事を通して国の統制が強く及ぶ組織となってしまう。
 第3 独立行政法人では、法務大臣が中期目標を定め、これを法人に指示し、法人はこの指示に沿った中期計画を作成して法務大臣の認可を受けなければならない。法務大臣はこの中期計画の変更命令権を有する。これは業務内容を統制するシステムであり、このままでは個々の弁護士の活動の自主性・独立性が保障されない。

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