<<目次へ 【意見書】自由法曹団



「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」(「裁判上の合意による弁護士報酬の敗訴者負担」)についての意見

2004年3月24日

自  由  法  曹  団
団  長  坂  本  修

 政府は、2004年3月2日、「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」(「裁判上の合意による弁護士報酬の敗訴者負担」)を国会に提出した。
 自由法曹団は、昨年秋にこの「裁判上の合意による敗訴者負担」が急浮上して以降、同制度のもたらす害悪を指摘するとともにその導入へ向けた動きに反対してきた。この意見書では、「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」の内容に即して、「裁判上の合意による敗訴者負担」の問題点と弊害について意見を述べる。

第1 「裁判上の合意による敗訴者負担」導入までの動きとそのねらい

1 「敗訴者負担」は裁判をさせないための制度

 「敗訴者負担」は提訴抑制のための制度であり、その弊害は、以下のとおりである。
 (1)国民が権利侵害や紛争に巻き込まれても、「敗訴者負担制度」が導入されると敗訴の場合に相手方の弁護士費用を負担させられることを心配しなくてはならなくなり、裁判に訴えることを躊躇せざるを得ない。(提訴・応訴を抑制する。)
 (2)国や大企業等、社会的強者は負担の心配をする必要が少ないが、個人や中小零細業者等の社会的弱者は提訴抑制の効果をより大きく受けざるを得ない。(権利救済や紛争解決の場で社会的力の格差を拡大する。)
 (3)国や大企業相手の裁判を起こそうとする場合、証拠の偏在や社会的力の格差から市民の側が勝訴の見通しを立てることは容易ではないが、このような裁判がより抑制されることになる。(消費者事件・労働事件・行政事件等を提起することが困難となる。)
 このように「敗訴者負担」制度は、国民大多数の裁判を受ける権利を妨げるものであり、極めて有害な制度である。

2 「敗訴者負担」導入への動きとその破綻

 経済界を中心とする「敗訴者負担」導入を図ろうとする一部勢力は、国民の裁判を抑制するため、敗訴者負担制度の導入を企ててきた。
 しかし、こうした動きに対しては、国民的な反対の声が大きく広がった。日本弁護士連合会や市民団体が集めた反対署名は110万筆を超え、昨年夏に司法制度改革推進本部が募集したパブリック・コメントに寄せられた5000件を超える意見の圧倒的多数は反対意見であった。
 司法アクセス検討会の中でも、「敗訴者負担」制度が国民の裁判所へのアクセスを阻害する制度であることが、明らかとされてきた。制度導入を図ろうとする勢力は、「敗訴者負担」導入の必要性について最後まで合理的な説明を行うことは出来なかった。検討会の中では、具体的な訴訟類型ごとの検討が行われたが、そこでは「敗訴者負担」が国民の裁判を通じた権利救済・実現を妨げること、そのことがいかに不当なものであるかがかえって明らかとされ、「敗訴者負担」を導入すべきでない訴訟類型の範囲が拡大していった。
 こうして、制度導入を図ろうとする勢力が、当初設計していた「敗訴者負担制度を原則として導入する。例外的に導入しない範囲を設ける」との枠組みは維持することが出来なくなり、導入論者は、「原則導入」という方針を改めざるを得ない事態となった。

3 「裁判上の合意による敗訴者負担」の登場と国民不在のとりまとめ

 こうした事態の中で、導入論者が持ち出してきたのが、「裁判上の合意による敗訴者負担」である。
 この「裁判上の合意による敗訴者負担」は司法アクセス検討会の議論が最終盤となった昨年10月10日の司法アクセス検討会において突然持ち出されたものである。昨年夏に行われたパブリック・コメントの際には全く俎上にのぼっていなかった。司法アクセス検討会では、国民的議論が行われる間もないまま、この「裁判上の合意による敗訴者負担」によりとりまとめがおこなわれてしまった。
 この間の経過は極めて不透明であり、議論と手続きの透明性を看板に掲げた今時司法改革の趣旨に著しく反する。
 さらに、法案の作成に至る経過の中では、本年2月2日開催の司法制度改革推進本部顧問会議にて「裁判上の合意による敗訴者負担」について、労働訴訟及び消費者訴訟には敗訴者負担制度を導入しないで欲しいという意見が述べられた。
 にもかかわらず、司法制度改革推進本部は、「裁判上の合意による敗訴者負担」という枠組みで今回提出の法案のとりまとめを行ったのである。

4 「裁判上の合意による敗訴者負担」制度導入のねらい

 「裁判上の合意による敗訴者負担」は、弁護士報酬について原則としてこれまでの各自負担を維持することとし、訴え提起後に代理人が付いている当事者間に合意が成立し敗訴者負担の共同申立が行われた場合に、弁護士報酬の敗訴者負担を適用するものである。
 この制度は、これまで通りの各自負担を原則としている。「裁判上の合意による敗訴者負担」も現実の裁判の場面を考えてみれば、そのような合意が成立する場合はあまり考えられない。実際上は使われない制度であるとの指摘がすでに行われている。
 にもかかわらず、導入論者がこの制度の導入を図ろうとする意図は、「裁判上の合意による敗訴者負担」制度の導入により「敗訴者負担」についての法制上の「お墨付き」を得て、労働契約・消費者契約・大企業と中小業者の契約書に「敗訴者負担」を書き込み、実質的な敗訴者負担制度の原則導入を図ろうとしている点にある。
 すなわち、導入論者は敗訴者負担制度を正面からの導入に替えて、労働契約・消費者契約・大企業と中小業者の契約等の契約約款による敗訴者負担制度の導入を図ろうとしているのである。

5 法案のごまかし

(1)法案は国民を欺くものである
 法案は、弁護士報酬の各自負担を原則とし、提訴後に合意が成立した場合のみ敗訴者負担とするものであり、一見するとこれまでの敗訴者負担に対する批判に応えて限定的にしか敗訴者負担を導入していないかに見える。しかし、上記のとおり、他方で「契約上の敗訴者負担条項」による敗訴者負担制度の実質的導入が図られようとしているのである。法案のあり方は、こうした真のねらいを覆い隠すものであり、極めて欺瞞的というほかない。
 こうした真のねらいを法案の提案理由として記するわけにはいかない。本法案の提案理由は、次のように述べられている。
 「弁護士等の訴訟代理人の報酬に係る費用について、当事者の双方共同の申立てがある場合に、これを訴訟費用として敗訴者の負担とする制度を設ける必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」
 これは法案の内容を述べているだけであり、制度導入の理由はなんらのべられていない。司法制度改革推進本部は、法案の提案理由を合理的に説明できないのである。本法案の「提案理由」は、本制度導入が全く必要のないものであること、真の提案理由が公に出来ないものであることを端的に示している。

(2)法案の中にもごまかしがある
 上記のような欺瞞は、法案の条項の中にも表現されている。すなわち、法案は、第9項に次の規定を置いている。
「9 第一項の申立てをする旨又はしない旨の合意は、訴訟の係属後において訴訟代理人を選任している当事者の間でされたものを除き、無効とする。」
 これは、事前の敗訴者負担の共同申立合意を無効とするものである。合意の対象はあくまでも「裁判上の合意による敗訴者負担制度」を利用する旨の取り決めに関するものであり、(同制度を利用しない)一般的な敗訴者負担合意は含まない。
 従って、「契約上の敗訴者負担合意」は、あくまでも「野放し」なのである。第9項に関して、これにより「契約上の敗訴者負担合意」(一般的な条項)も無効になるとの誤解が存するように思われるが、第9項の内容は上記のとおりである。
 この点、司法制度改革推進本部は、あえて誤解を誘うような規定の仕方をしていると評するほかない。

第2 「裁判上の合意による敗訴者負担」制度の問題点

1 「契約上の敗訴者負担」による敗訴者負担制度の実質的導入

(1)「契約上の敗訴者負担」は野放しにされる
 上記のとおり、労働契約・消費者契約・業者間契約書において「敗訴者負担とする」という文言が入れられると、労働者・消費者・中小業者の裁判所の利用が著しく阻害されてしまう。この弊害については、司法アクセス検討会においても多くの委員が問題である旨の意見を述べていた。
 にもかかわらず、司法制度改革推進本部は、この弊害を全く顧みないまま今回の法案のとりまとめを行った。

(2)「契約上の敗訴者負担」の弊害は重大である
 労働契約の内容は原則として就業規則の定めるところによるものとされているもとでは、就業規則に弁護士報酬の敗訴者負担が規定された場合、労働者は、敗訴の場合には使用者側からその弁護士報酬の請求を受ける覚悟を迫られることにならざるを得ない。その結果、解雇・賃金切下げ・男女昇進差別等々の使用者による違法・不当な行為を労働者が裁判で争うことに足を踏み出せなくなる。
 また、消費者契約約款に「敗訴者負担」が書き込まれた場合には、消費者はこの約定による敗訴者負担を心配せざるを得ない。消費者が、悪徳詐欺商法、証券・先物取引被害、変額保険事件等の銀行被害、欠陥住宅被害等の被害を受けても、契約約款にこのような文言が入れられると提訴・応訴の重大な障害となり、被害の拡大と悪徳業者の財産隠しを許すことにつながる、提訴の萎縮・応訴の萎縮(泣き寝入りをせざるを得ない)、請求金額の抑制等を事実上強いられることになりかねない。
 さらに、商工ローン・フランチャイズ・下請契約等の契約書に、こうした「敗訴者負担文言」がいれられると、商工ローン業者が「支払わないと裁判になって、こちらの弁護士費用も払わなくてはならなくなるぞ」という威嚇に用いることになりかねない。また、それでなくても極めて厳しい状況におかれているフランチャイズの加盟店において本部に対して法的権利主張をいっていくことは極めて困難となることが予想される。下請契約においても、下請業者が権利救済を裁判所に求める道が狭められることになってしまう。このように、契約書に書き込まれる敗訴者負担は、それでなくても厳しい状況におかれている中小零細業者の権利救済に重大な障害となるものである。
 「裁判上の合意による敗訴者負担制度」は、「契約書による敗訴者負担」を普及させ、司法アクセスへの重大な障害物を作り出すものである。

2 損害賠償請求訴訟への悪影響

 現在損害賠償請求訴訟においては、弁護士費用が損害の一部として認定される。しかし、「合意による敗訴者負担」が導入されると、弁護士費用は「合意による敗訴者負担」に委ねられるべきとして、損害からはずされる、または現在認容額の1割程度認められている水準が切り下げられることにならないか危惧される。
 司法アクセス検討会では、訴訟法上の問題と実体法上の問題は別との意見も出されているが、損害賠償を請求された被告側が上記の主張を行うことは充分考えられるし、必ず訴訟法と実体法は別との形式論のみによって処理が行われるとの保証もない。
 司法アクセス検討会ではまた、「裁判上の敗訴者負担合意」が強制されるようなことがあってはならない、損害賠償請求訴訟において損害額から弁護士費用がはずされることになると、それは損害賠償請求訴訟において「裁判上の敗訴者負担合意」を強制されることになるから、そのような解釈は認められないという意見も述べられた。しかし、法案を見る限り、「裁判上の敗訴者負担合意」が強制されるようなことがあってはならないという条項は見あたらない。
 損害賠償請求訴訟において、被害者側の弁護士費用が損害賠償の一部として認められなくなるということは、被害者側の被害救済を切り下げることに他ならない。被害者救済の観点からも、かかる結果は極めて不当である。

第3 「契約上の敗訴者負担合意」は無効とすべきである

 第2の1で述べたとおり「契約上の敗訴者負担」の弊害は重大であり、こうした裁判外の合意は本来無効とされるべきである。
 上記の意見に対しては、今回の法案においてはそのような点についての対応は不可能である旨の説明が司法制度改革推進本部事務局から行われてきた。しかし、以下に述べるとおり、対応不可との説明は全く理由がない。

1 「現在も存する問題である」との意見について

 現在においても、契約書に敗訴者負担条項が盛り込まれた場合、問題となりうる。
 しかし、問題のあり方は、現在と「裁判上の合意による敗訴者負担」が導入された後では状況が異なってくる。現在は、「契約上の敗訴者負担」はほとんど用いられていない。しかし「裁判上の合意による敗訴者負担」が導入された後は、「契約上の敗訴者負担」が拡大し、このやり方により裁判所の利用を妨げられる労働者・消費者・中小業者が拡大していくおそれがある。
 このままでは「契約上の敗訴者負担」の拡大が社会的弊害をもたらす事態となる。現在はごく一部しか存在しない問題が社会の全体の契約に害悪をもたらすことになるのである。

2 「現行制度で対処できる」との意見について

 「契約上の敗訴者負担」の弊害への対処策として労働事件・消費者事件については、労働基準法16条ないし消費者契約法9条・10条にて対処しうるという意見が出されている。
 しかし、労働基準法16条ないし消費者契約法9条・10条によっては、「契約上の敗訴者負担条項」による「裁判所へのアクセス」の抑制を充分に防ぐことができない。このことは、司法アクセス検討会の議論でも確認されていることである。
 ア 労働基準法16条について
 第1に、そもそも労働基準法第16条は、「(賠償予定の禁止)」とのタイトルのもとに「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と定めているもので、「文言上」使用者との間の訴訟において敗訴した場合の使用者側の弁護士報酬が「労働契約の不履行についての違約金」または「損害賠償額の予定」に含まれない。
 第2に、解釈上も、労働基準法16条が禁止する違約金の定め又は賠償額の予定は、「労働契約の不履行」についての場合であって、これを不法行為の場合をも含むとする説があるものの、さらに広く訴訟費用の負担について定めることまでが禁止の対象とされるとの解釈をとることは、とりわけ同条違反が6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に当たる犯罪とされているところから(同法119条)、罪刑法定主義に照らしても困難であるとの見解もあり得る。
 第3に、裁判実務上、このような解釈が通用する現実的可能性があろうか。判例は、労働基準法16条に関しても、たとえば、退職後に同業他社に就職したときは退職金の半額を返還しなければならないとの定めを同条違反とはならないとし(名古屋高裁昭和51年9月14日判決)、あるいは、従業員が一定期間内に退職したときは企業派遣留学費用を返還しなければならない旨の定めも同条違反とならないとするなど(東京地裁平成9年5月26日判決)、限定的な立場を相次いで示しており、このような姿勢は狭きに失しているとの批判を招いているのが実情である。
 したがって、労働基準法16条により就業規則に「敗訴者負担条項」を設けることは規制されあるいはそのような条項は無効とされるなどという指摘は、現実的な「保証つき」のものではないのである。
 イ 消費者契約法第9条及び第10条について
  第1に、消費者契約法9条は、「消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効」との題名のもと、「消費者契約の解除に伴う損害賠償の額」(いわゆる「キャンセル料」等)(同条1号)及び「支払うべき金銭の一部を消費者が支払期日……までに支払わない場合における損害賠償の額」(いわゆる「遅延損害金」)(同条2号)について定めたものである。弁護士報酬の敗訴者負担が、文言上「損害賠償の額」の予定とは直ちにいえないこと、とりわけ「キャンセル料」や「遅延損害金」にあたるとすることは困難であろう。(なお、消費者契約法9条は、消費者側に「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」(同条1号)、「年14.6パーセント」(同条2号)までの負担を認めているものであり、契約条項の効力をすべて否定しているものではない。)
 第2に、消費者契約法第10条は、表題に示されているとおり「消費者の利益を一方的に害する条項」を問題としている規定である。消費者のみに敗訴者負担を負わせる片面的敗訴者負担条項であれば同条に違反するといえるであろうが、両面的敗訴者負担を定めた条項が「消費者の利益を一方的に害するもの」との一義的解釈となるかについて保証がない。また、同条は「民法第1条第2項に規定する基本原則に反」すること(信義誠実の原則違反)を要件としているが、裁判上の合意による敗訴者負担が導入された状況下において、敗訴者負担条項が信義誠実の原則違反との判断を得ることもまた容易でない。
 第3に、そもそも「契約上の敗訴者負担」は、事後的に無効と確認されればよいというものではない。「契約上の敗訴者負担」の一番の弊害は、契約書に敗訴者負担が書き込まれていること自体が「裁判所へのアクセス」の重要な阻害要因となるという点である。すなわち、労働者や消費者等にとっては、この文言が契約書上に存在し有効となる可能性があるというだけで、提訴にあたって敗訴した場合の相手方弁護士費用の負担を覚悟しなくてはならなくなる。この文言一つで「裁判所へのアクセス」への抑制「効果」が大なのである。

3 「手続法の中に実体法の規定をおくことはできない」との意見について

 自由法曹団は司法制度改革推進本部に対し、「裁判上の合意による敗訴者負担」の合意方法に様々な制約を課して「裁判上の合意」の適正を図ろうとする趣旨を貫徹し、「契約上の敗訴者負担」による潜脱を許さないという観点からは、「裁判上の合意による敗訴者負担」の条項と並べて「契約上の敗訴者負担」に関する規制法規をおくことが、法体系上の整合性があると主張した。これに対して、同本部事務局は、「裁判上の合意による敗訴者負担」は民事訴訟手続きに関する制度であるが、「契約上の敗訴者負担」の問題は私法上の契約関係に関する実体法上の問題であり、「契約上の敗訴者負担」を民事訴訟手続きに関する法律の中に設けることはできないと、難色を示した。
 しかし、手続法と実体法は、厳密に峻別出来るものでは必ずしもない。民事訴訟法の中にも契約に関する規定は存する(管轄合意に関する11条、訴訟費用の担保に関する76条・80条、控訴に関する281条等)。また、そもそも「敗訴者負担」制度に「合意」という考え方を持ち込むこと自体、既に手続法と実体法の峻別という枠組みからは外れているともいえる。
 弁護士報酬の負担に関する私的合意は、純粋な私的合意とは異なる、民事訴訟手続きに関連する合意である。このような観点から、弁護士報酬の負担に関する私的合意の効力規定を手続法の中においたとしても、何ら問題はない。
 もとより、手続法と実体法の峻別のために必要な立法措置がとれないというのは本末転倒である。手続法と実体法の交錯する場面が増大している今日の状況に鑑みれば、手続法と実体法の峻別という形式論により必要な立法措置を行わないという対応は立法者は決して取るべきではない。

4 「労働訴訟・消費者訴訟等の範囲を画することが困難である」との意見について

 「労働訴訟・消費者訴訟等の範囲の画することが困難である」との意見も出されている。
 しかし、検討会において範囲の確定が困難とされていたのは、全体の中で敗訴者負担を導入する範囲と導入しない範囲の切り分けが困難であるとの議論が行われていたものであり、個別の分野においての切り分けは可能である。
 労働訴訟・消費者訴訟については、既に仲裁法附則3条及び4条において特則が設けられており、同条において労働訴訟・消費者訴訟について範囲が画されている。こうした形で、労働訴訟・消費者訴訟の範囲を画することは十分に可能である。
 また、中小企業関連訴訟も、「敗訴者負担」の弊害の大きい分野であり、司法アクセス検討会の議論の中でも何らかの形でこの分野を画すべきとの意見が出されていた。中小企業関連訴訟についても、中小企業基本法に中小企業者の範囲を画する規定が設けられており、これら規定を参照しつつ範囲を画することは可能である。

むすび

 今回の法案(「裁判上の合意による敗訴者負担」)は上記のとおり重大な害悪をもつ制度であり、その弊害は特に労働事件・消費者事件等において深刻である。私たちは、このような「裁判所へのアクセス」の阻害という重大な弊害をもたらす本法案に反対し廃案を求める。

以 上

(連絡先)自由法曹団 東京都文京区小石川2-3-28DIKマンション201号
           TEL03-3814-3971/FAX03-3814-2623