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米軍用地特別措置法「改正」に反対する意見書

一九九七年三月一八日
自 由 法 曹 団

第一 はじめに

 沖縄の米軍楚辺通信所では、一部用地が昨年三月末で使用期限が切れ、地主 に返還しなければならないにもかかわらず居座り、一年にもわたって不法占拠が 続いている。そして、本年五月一四日には、沖縄米軍の一二施設、約三〇〇〇人 の地主の所有地が期限切れを迎える。
 ところが、政府は、米軍用地特別措置法を「改正」して、使用期限が切れた 後も、土地を地主に返還せずに、強制使用を継続しようとしている。すなわち、 法に「土地の使用期限が切れても、収用委員会が審理中の土地については、裁決 が出るまで使用継続することができる」という条文をもうけることによって、不 法占拠を「回避」しようというのである。 これは、戦後五〇余年にわたって、 多大な犠牲を受け続けてきた沖縄県民の米軍基地の縮小・撤去を求める切実な声 を踏みにじるものである。しかも、この「改正」法案は、憲法の平和原則、財産 権や適正手続きの保障もないがしろにするなど、重大な問題を含むものである。
 ところが、政府は、本年四月はじめにも法案を国会に提出して実質的な審理 もせずに成立させ、四月二四日ころに予定されている橋本首相の訪米際の手みや げにしようと伝えられている。
 私たち自由法曹団は、設立以来七五年にわたって、平和と人権を守るために 一貫して活動してきた弁護士の団体である。本意見書は、法律家の観点から、予 想されている米軍用地特別措置法の「改正」法案の問題点を国民に広く明らかに した。この「改正」法案の国会提出及び成立を許さない広範な国民の世論形成の 一助となれば幸いである。

第二 繰り返される無法な土地強奪

一 米軍による土地強奪と「公用地法」 沖縄における広大な米軍基地は、第 二次世界大戦の沖縄戦直後に行われた何ら法的根拠もない接収に始まる。ハーグ 陸戦法規に違反して、何らの補償もないまま米軍の軍事力によって接収されたの である。さらに、米軍は、「銃剣とブルドーザー」によって家屋・耕作地をおし つぶし、土地を強奪して基地を拡張していった。
 日本への復帰直前、一九七一年一二月九日に結成された反戦地主会(「権利 と財産を守る軍用地主会」)には、三千人近い軍用地主が結集し、契約拒否の態 度を明らかにしていた。これに対して、国は、同年一二月三〇日、土地所有者の 意思に反しても、復帰後五年間は、米軍用地として強制使用を続けることのでき る「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律」(公用地法)を成立させ、 翌七二年五月一五日の復帰と同時にこれを施行した。これは、米軍による無法な 土地強奪を一方的に容認するものでもあった。
 賃貸借契約を拒否した多数の反戦地主に危機感を抱いた日本政府は、この公 用地法の五年以内に契約締結を完了しようとして、あらゆる手段を使って反戦地 主の切り崩しを行った。
二 地籍明確化法と空白の四日間 一九七七年五月一四日の公用地法の期限切 れを前にして、契約を拒否する反戦地主が多数残っていた。そこで政府は、強制 使用を継続するため、「沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の土 地の位置境界の明確化等に関する特別措置法」(地籍明確化法)の立法化を企て た。同法案の立法趣旨は、沖縄戦で公簿公図が消滅し、地形が一変して土地の位 置境界が不明確な地域、それを解決するためと説明されたが、附則には公用地法 を五年間延長することが盛り込まれていた。同法案の成立は、期限切れに間に合 わず、法的根拠のない「空白の四日間」が生ずることとなった。一九七七年五月 一八日に同法案は成立したが、この法律も、政府が自ら定めた五年の暫定期間を 姑息な手段で延長したものであった。これは政府自らが定めたルールでは不法占 拠状態が不可避となった段階において、米軍用地の使用のために、そのルール自 体を勝手に変えてしまうというものであった。政府自身による法治国家の否定宣 言であった。
三 死文化していた米軍用地特別措置法の復活と「改正」案 地籍明確化法で 延長した五年以内に反戦地主を切り崩すことはできないと判断した政府は、一九 八〇年、米軍用地特別措置法を適用して強制使用する手続きに踏み切った。そし て、沖縄県収用委員会は八二年、強制使用の裁決をした。
 一九五二年に施行された同法は、一九六一年の相模原住宅地区(神奈川県) に発動されて以来発動されたことはなく、すでに死文化していた。この法律を二 〇年後の沖縄でこれを「復活」させたのは、政府自身が強制使用を続けざるを得 なかったものである。
 そして、本年五月一四日の使用期限切れを前にした米軍用地特別措置法「改 正」の策動は、次に述べるように、沖縄の土地強奪の歴史における政府自身によ る三度目の法治国家の否定宣言である。

第三 法治主義の否定宣言

一 米軍用地特別措置法では、契約を拒否している地主の所有地を米軍用地に 供するためには、概ね次のような手続きを必要としている。@ 米軍用地に提供 するために「適正かつ合理的」であるときは、内閣総理大臣が使用認定を行う。 A 土地・物件調書を作成し、地主(地方自治体の長、あるいは職務執行命令訴 訟を経て内閣総理大臣が代行)が立会・署名を行う。B 起業者である国(防衛 施設庁)が、収用委員会に対して、土地物件調書を添えて使用裁決を申請する。 C 地方自治体が公告・縦覧を行う(あるいは、職務執行命令訴訟を経て内閣総 理大臣が代行)。D 収用委員会が公開審理を経たのち、裁決を行う。
 このような手続きを経て、収用委員会が使用裁決して、はじめて強制使用で きる。 現在、米軍用地の強制使用をめぐって沖縄県収用委員会の公開審理が開 始されている。本年二月二一日開かれた第一回の公開審理の冒頭、収用委員会は 、「独立した準司法的行政委員会として、公正・中立な立場で、実質審理を行い ます」と表明した。このように実質審理が尽くされるならば、これらの土地の使 用期限が切れ、大量の不法占拠状態が生ずることは必至である。
 この公開審理は、第一回で国の裁決申請理由の説明と地主側の審理について の意見表明がおこなわれ、また三月一二日の第二回では、国の行った申請理由の 説明に対して求釈明が行われた。今後、各施設についての審理が予定されている 。
 この様に、現行の米軍用地特別措置法・土地収用法に従って、手続は何の混 乱もなく進められているのである。
二 米軍用地特別措置法「改正」案は、「土地の使用期限が切れても、収用委 員会が審理中の土地については、裁決が出るまで使用継続することができる」と いう条文をもうけるというのである。これは、収用委員会の裁決抜きで、その使 用権原を国が取得してしまうものであり、一片の条文をもうけるだけで、現在進 められている土地収用手続を根底から否定するものである。
 しかし、これほど恥知らずな立法はない。
 国が「改正」しようとしている「米軍用地特別措置法」及び「土地収用法」 は、国自らが定めた法律である。 米軍用地特別措置法それ自体が憲法に反する 法律であることは後に述べるとおりであるが、ひとまずその違憲性は置くとして 、米軍基地用地確保のために、米軍用地特別措置法という法律によって国自らが 制定しルール化したのである。
 ところが、自らの定めたルールによっては、土地の合法的な確保が難しくな る見通しとなった途端、ルール自体を変更してしまおうというのが今回の「改正 」案である。法治国家のもとでは、国が自ら率先してルールを守り、土地を返還 するべきであるにもかかわらず、これと全く逆に、自らルールを無視することを 前提に、そのルール無視をゴリ押ししてしまおうというのである。
 土地を直ちに返還したくなければ、国には、緊急使用の申立によって、六ヶ 月の使用継続を可能とする道も残されている。ところが、国は、その手続きすら とらずに、いきなり「改正」案を国会に提出するという理不尽な態度をとってい る。
 楚辺通信所(象のオリ)の一部用地の期限が切れ、収用委員会が緊急使用の 申請を許可しなかったにもかかわらず、国は土地を地主に返還せず、すでに一年 近くも不法に占拠し続けている。しかも、右不法占拠が「必ずしも違法とはいえ ない」などと強弁し何ら反省の態度すらみせようとしていない。
 この楚辺通信所に対するルール無視の国の態度と今回の法「改正」の意図を あわせ考えてみるならば、今後も国がルール(法)を守る意思のないことは明ら かである。結局、今回の「改正」の策動は、米軍のために何が何でも土地を確保 することが大前提となっており、そのためには、手段を選ばないことを表明する ものに他ならない。
 このような国の姿勢は、恥知らずの無法者以外の何物でもない。
三 いやしくも「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関」(憲法四一 条)である国会が行う立法に際しては、その地位と役割にふさわしい目的があっ てしかるべきである。そして、その立法目的を正当化する立法事実がなければな らない。ところが、今回の「改正」目的は、「このままでは不法占拠状態が生じ る」というものである。
 少なくとも昨年の「特別立法」に関する議論では、外交と軍事については、 国の機関においてよりよく判断しうる事項だとの理由が主張されていた(それ自 体は地方自治と適法手続きを無視する内容であった)。 ところが、今回の「改 正」は、国会が行うに相応しい一片の正当化根拠すら主張されていない。「不法 占拠」といわれることを何が何でも回避するためだけの立法であり、一時的な間 に合わせの姑息な立法と言わざるを得ない。
四 以上述べたように、国が裁決申請だけすれば、使用期限が切れても、使用 権原が与えられ、強制使用を継続して地主の権利を剥奪してしまう今回の「改正 」は、法治主義の否定であって、行政ファッショに他ならない。

第四 収用委員会の意義と役割を没却する「改正」案

一 戦前の旧土地収用法では、収用機関は内務大臣の監督下にあり、国の支 配下にあった。国民の財産権と適正手続きを保障し、地方自治を尊重する日本国 憲法のもとでは、収用委員会は、都道府県知事の所轄下に設置され、かつ「収用 委員会は、独立してその職権を行う」(土地収用法五一条)ものとされている。
 米軍用地特別措置法にもとづく土地の強制使用手続きにおいても、収用委員 会は、独立の機関として、公正、中立、かつ慎重な審理を経て、裁決がなされる べきことは言うを待たない。
 収用委員会では、裁決申請が米軍用地特別措置法及び土地収用法の規定に違 反する場合等には、申請却下の裁決をしなければならない(米軍用地特別措置法 一四条、土地収用法四七条)。そして、使用認定を適法に行うための要件である 「必要」性及び「適正かつ合理的」の要件を充足していないならば、却下裁決が なされなければならないのである。
 却下の裁決がなされない場合に、初めて強制使用の裁決をすることになるが 、その場合でも、収用委員会は、地主に対する損失補償の他、使用する土地の区 域、使用方法及び期間などについて充分な審理を行わなければならない(土地収 用法四八条)。
 ここで重要なことは、収用委員会の使用裁決がなされなければ、国に使用権 原が与えられないということである。 現行法上の唯一の例外は、収用委員会が 「緊急使用」(米軍用地特別措置法一四条、土地収用法一二三条)を許可した場 合である。これは、特別の緊急性がある場合に一定の要件の下で六か月間に限っ て米軍用地の使用を認めるものである。この六ヶ月の期間を更新することはでき ず、期間経過後は、土地を直ちに返還しなければならない。
二 「改正」案は、すでに述べたように、収用委員会の審理・判断を経ずに、 国に使用権原を認めるものである。その意味で、使用権原を認めるかどうかの判 断をすべて独占していた収用委員会の権限を奪うことになる。
 「改正」案によれば、使用期限が切れても、使用を継続できるのであるから 、収用委員会の緊急使用の許可は全く不要となる。
 のみならず、期限までに収用委員会が裁決するかどうかにかかわらず、強制 使用を継続できることになるのであるから、収用委員会の審理が軽視され、形骸 化される。去る三月一二日に開かれた収用委員会の第二回公開審理期日では、国 は、自らの裁決申請理由に対する質問についてすらまともに答えず、地主側の追 及に対して頑に釈明拒否を貫いている。「改正」案が成立した場合には、収用委 員会で問題点を具体的に解明しようとする実質審理に協力しない態度をいっそう 強める危険がある。 これは、強制使用のための慎重な手続きをさだめ、そのた めの審理権限を収用委員会に委ねた土地収用法の趣旨を形骸化することになる。 のみならず、都道府県ごとに独立の収用委員会を設置した地方自治の本旨(憲法 九二条)をもないがしろにするものに他ならない。

第五 憲法の権利保障を無視する「改正」案

一 憲法第二九条の財産権保障に違反する 憲法第二九条一項は「財産権は、 これを侵してはならない」と財産権の不可侵を定めている。使用期限が切れたら 、土地をただちに所有者に返還するのは法治国家として当然のことである。「土 地の使用期限が切れても、返還しなくてもよい」との今回の「改正」案は、憲法 二九条一項の財産権の保障を乱暴に踏みにじる憲法違反の改悪である。
 土地の強制使用は、正当な補償の下、公共のために用いられる場合(憲法二 九条三項)に限り、例外的に認められる。この憲法の規定をうけて、土地収用法 が制定されている。ここから、強制使用のためには、収用委員会の使用裁決が必 要とされているのである。収用委員会の使用裁決がなくても、使用期限後の強制 使用を認めるという今回の「改正」案は、「公共のために」という要件を満たし ているか、「正当な補償」が支払われるかなど、まったく検証されない。「改正 」案は、この点でも、憲法の財産権保障をふみにじるものである。
二 憲法第三一条の適正手続保障に違反する 憲法第三一条は、「何人も、法 律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の 刑罰を科せられない」と刑事手続における適正手続の保障を定めているが、行政 手続においても当然に適正手続が保障されるべきとされている。この場合、法律 で定められさえすれば、どんな内容の手続でもよいというわけではない。それは 、国民が人権を侵害される危険性をくいとめるのに役立つ公正な手続、すなわ、 生命、自由、権利等を侵害される国民の防御権、権利主張の機会が十分に保障さ れた手続でなければならない。
 このような権利は、本件のような土地の強制使用に関しては、国からも県か らも独立の第三者機関である収用委員会が、公正・中立な立場で審理・裁決手続 きを行うことを通じて保障されることとなる。
 ところが、「改正」案は、期限後の強制使用の継続について、収用委員会に おいて土地所有者が権利主張する機会を奪うとともに、収用委員会の審理・裁決 手続きを受ける権利をも奪うものである。これが憲法第三一条の適正手続保障に 違反することは明白である。
 さらに、一定の手続き・ルールに沿って進められる強制使用は、その手続き やルールそのものも、その運用も、適正であり、公正なものでなければならない 。
 ところが、「改正」案は、収用委員会の公開審理がすでに開始されている今 回の強制使用手続きに適用するというのである。すなわち、使用期限経過後には 、土地を所有者に返還しなければならないというルールを審理手続き中に突如と して変更し、国のために使用期限を延長するものである。これは、きわめてアン フェア・不公正なものである。それは、いわば、土俵を割って負けそうになった 国が、自ら提案してルールを変更させ、その背後の土俵を限りなく広げて負けな いようにしてもらう類の改悪案である。このように不公正な「改正」案は、憲法 第三一条の適正手続保障に違反する。
三 無視され続けられる県民の意思(憲法九五条違反) すでに明らかにした ように、戦後の沖縄の歴史は、米軍と日本政府による無法な米軍基地押しつけの 歴史でもあった。
 しかも、公用地法など沖縄のみに適用される法律に際して、沖縄県民は、そ の意思を反映される機会を全く奪われ続けてきた。
 憲法九五条は、「一の地方公共団体のみに適用される特別法は」「その地方 公共団体の住民の投票においてその過半数を得なければ、国会は、これを制定す ることができない」と定めている。沖縄では、この憲法で保障された手続きもと られずに、米軍基地のために土地取り上げが継続されてきたのである。
 今回の「改正」案も、沖縄だけに適用されることは明らかである。したがっ て、その成立のためには、国会の議決だけでなく、沖縄県民の住民投票が実施さ れなければならない。にもかかわらず、政府は、これを実施しようとする姿勢す ら示していない。憲法九五条違反は明らかである。
 昨年九月、沖縄県民は、住民投票において、基地の整理縮小を求める圧倒的 多数の声をすでに表明している。今回の「改正」案は、これ以上、基地の重圧に は耐えられないとし、基地の縮小撤去を求める沖縄県民の声を否定するものに他 ならない。

第六 憲法の平和原則との矛盾

一 二重三重の憲法違反 戦争を放棄し、軍隊の不保持を明記し、平和的生存 権を明らかにした日本国憲法のもとで、一九五一年、土地収用法が改正され、軍 事や国防のために、国民の土地を取り上げることが否定された。
 これに対して、安保条約のもとで、米軍のためにだけ、例外的に、国民の土 地を強制的に取り上げたり、強制使用をすることを認めたのが、米軍用地特別措 置法である。軍事のため国民の権利剥奪を認めるこの法律そのものが、憲法の平 和原則と相容れないものなのである。
 しかも、この法律は、土地収用法に定める事業認定をする際の公聴会の制度を廃止するなど、土地収用法に比してその手続きを著しく簡略化している。強制 使用、収用される土地所有者等の権利保護に欠け、財産権や適正手続きについて の憲法上の保障にも違反する疑いが強い法律である。
 ところが、今回の「改正」案は、さらに、米軍基地のためにだけ特別に例外 をつくり、期限後の強制使用を容認しようというのである。米軍や軍事優先の米 軍用地特別措置法という例外をさらに拡大するものであり、あわせて憲法違反を いっそう拡大するものとなる。とうてい憲法上容認できるものではない。
 なぜ、これほどまでに米軍のために国民の権利を犠牲にする法律を優先させ るのであろうか。これは、沖縄の問題というだけではない、国民自らの問題が問 われているのである。
二 平和の原点=沖縄のこころに逆行 一昨年来の沖縄の米軍基地撤去へ向け ての運動の始まりは、弱者である少女の安全をまもれない軍隊が、なぜ日本や世 界の安全をまもれるのかという女性たちの声であった。日本国憲法が定める平和 的生存権とは、人間としての生存を維持し、自由と幸福を求めて平穏な生活を営 むことを、戦争や戦争準備行為(戦争訓練や基地の存在)によって阻害されない 権利である。
 過去の侵略戦争への反省と、原爆を初めとする甚大な戦争被害のもとで生ま れた日本国憲法は、来る五月三日、施行五〇周年を迎える。一切の武力を放棄し 、世界の諸国民との信頼醸成と協力によって安全を保障しようとした日本国憲法 は、二一世紀の安全保障のあり方を示している。
 かつて「軍隊のない島」琉球は、平和外交と貿易で経済的・文化的に大きく 発展した。「琉球処分」による沖縄県設置に先立つ一八七五年、明治政府が琉球 王府に軍隊の常駐を指示したのに対し、琉球王府は「南海の一小孤島にすぎない 琉球にいくら軍備を増強しても敵国に対処することはできず」、「むしろ礼儀正 しく友好的に燐国の人々とつき合うことによって、国を平和に維持することが賢 明である」と主張したが、明治政府は派兵を強行し、沖縄の基地化の端緒となっ た(職務執行命令訴訟における大田知事の最高裁における意見陳述)。そして沖 縄戦は、軍隊との同居が住民にとっていかに危険であるかという教訓を残した。
 「命こそ宝」、「他人に痛めつけられても眠ることはできるが、他人を痛め つけては眠ることはできない」という沖縄の古くからの言い伝えは、日本国憲法 九条の思想と共通である。
 沖縄は、琉球王国の時代からアジアの重要な貿易拠点として、豊富な国際交 流の歴史をもち、アジアに開かれた日本の窓である。アジアを結ぶ平和の交流の 拠点である。
 日米安保体制を絶対化し、米軍用地への提供を拒否する反戦地主の権利を踏 みにじって、何が何でも強制使用を継続し、基地の固定化・強化をはかろうとす る今回の「改正」案は、沖縄のこころ、そして憲法の平和の原点と全く相容れな いものである。

第七 国民は「改正」案を許さない

 米軍用地特別措置法の「改正」を進めようという政府の態度には、沖縄県民 そして多くの国民の米軍基地の縮小・撤去の要求を無視し、二一世紀に向けて、 基地の固定化・強化を図ろうとする意図が露骨に示されている。現に、政府は、 沖縄県収用委員会の第一回公開審理において、「駐留軍の駐留は今後相当長期に わたると考えられ、その活動の基盤である施設及び区域も、今後相当長期間にわ たり使用されると考えられますので、その安定的使用をはかる必要があります。 」と公言している(那覇防衛施設局の使用裁決申請理由)。昨年一二月に発表さ れた沖縄問題に関する特別行動委員会(SACO)の最終報告も、結局は、基地 の県内移設や県道一〇四号線越えの実弾砲撃演習の本土移転などにより、米軍基 地の再編強化を図ろうとするものに他ならない。さらに、一年以上も隠され続け 、ようやく、本年二月に発覚した一五〇〇発を越える劣化ウラン弾の発射・貯蔵 問題に端的に示されているように、県民の生活や環境を無視した米軍の無法ぶり は何ら変わっていない。このような米軍に追随する日本政府の姿勢に何ら反省も みられない。
 今回の米軍用地特別措置法の「改正」問題は、このような米軍基地の固定化 ・強化を許すかどうか、憲法の平和の原点を擁護するのかどうかが、まさに問わ れているのである。