<<目次へ 【決 議】自由法曹団


憲法調査会を通じての改憲策動に反対する

 二〇〇〇年一月から衆・参両院で「憲法調査会」の審議が開始された。今回の憲法調査会は、当初の改憲推進勢力のもくろんだ「憲法調査常任委員会」にはならず、「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行う」というもので、議案提出権も持たないことが議院運営委員会の「申し合わせ」で確認されている。
 しかしながら、改憲勢力は憲法の平和的原則、特に憲法第九条の明文「改正」を意図し、「憲法調査会」を改憲世論の醸成、改憲推進派結集と意見調整など改憲に向けての足場として最大限に利用しようしている。たとえば、中曽根康弘委員が、「憲法調査会は発議権はないが、改正案はつくることができる。三年位で各党の改正案を出していく」などと述べているのをはじめ、テレビ、新聞などでの積極的発言を繰り返し、世論喚起に腐心しており、その中で、改憲推進派の思惑とスケジュールを公然と示している。
 「憲法調査会」の審議開始以降、憲法制定過程について「押しつけ憲法論」を巡って論戦が行われたが、参院調査会では、一九四六年当時GHQ 憲法草案起草に関係した総司令部民政局員リチャード・A・プール氏とベアテ・シロタ・ゴードン氏が参院憲法調査会での参考人として憲法が占領軍に押しつけられたとの見方をそろって否定したのであり、憲法制定過程を巡る論戦ではいわゆる「押しつけ」というだけでは改憲の論拠にはならないことが明らかになった。 しかし、改憲勢力の明文改憲の動きはとどまる気配もない。
 衆院憲法調査会の中山太郎会長は、衆院選後に調査会に一〇の分科会を設置し、「緊急事態」、「基本的人権」、「天皇制」、「司法」、「地方自治」など具体的テーマごとに調査を進めたいと述べ、参院憲法調査会では、自民党は、来年(二〇〇一年)七月の参議院議員選挙を目途に「中間報告」を国民向けに出そうとの意向である。
このような国会の憲法調査会の動きと連動して、昨年七月には、「新しい日本をつくる国民会議」(「二一世紀臨調」・会長亀井正夫氏)が発足して「国の統治システム、基本法制の一体的な見直し」や、「戦後憲法体制の包括的な検証」などをあげて改憲への動きを加速させようとしている。  他方で、新ガイドライン関連法の具体化や有事立法の動き、国旗国歌法、盗聴法、労働諸法制の改悪、地方分権一括法の制定など、憲法を踏みにじる策動が進められている。
 こうした動きは、憲法の平和原則、憲法九条を骨抜きにするとともに、基本的人権、民主的統治機構、司法、地方自治全般への激しい攻撃と一体のものであり、国民の生活と権利は激しく蹂躙される危険にさらされているものといわねばならない。
 日本国憲法の平和と民主主義、人権尊重の諸原則は二つの世界大戦の悲惨な教訓をふまえた国連人権宣言、国連憲章など、「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」(憲法第九七条)を受け継いだもので、世界に誇るべき輝かしい先駆性を有している。昨年五月のハーグ平和アピールで憲法九条が国際的な指針として確認されたように、今こそ、憲法の先駆性が発揮され世界に発信されなければならない。
 憲法調査会の危険な動きを監視・批判するとともに、改憲勢力がマスコミ等を動員して洪水のように展開する「改憲論」に対し、的確に批判、反論していくとともに広範な人々との共同を発展させ憲法の先駆性を広め、憲法明文改憲を許さない国民の広範な戦線を構築することが必要である。
 そのために自由法曹団は、広く国民とともにこのような改憲策動を許さず、断固としてたたかい抜く決意である。
 右決議する。

二〇〇〇年五月二二日
自由法曹団二〇〇〇年研究討論集会