<<目次へ 【決 議】自由法曹団


新ガイドライン関連法=戦争法の静岡県内における具体化の動きに抗議し、平和を求める静岡県民のたたかいを支援する決議

 一九九九年五月、周辺事態法をはじめとする新ガイドライン関連法=戦争法が成立し、戦争放棄・恒久平和の実現をめざす日本国憲法の大原則が根底から崩され、「戦争をしない国」から「戦争する国」に変貌させられようとしている。
 戦争法によって沖縄・名護への新鋭機配備のための基地新設をはじめ、日本の米軍・自衛隊基地はいっそう「有事」に直結したものとなり、米軍の軍事行動のために地方自治体や民間の動員まで要求するものになっている。
 そうしたなかで、本集会が開催されている静岡県でも、戦争法の具体化の動きが進行している。浜松では、すでに一昨年一月、イラクに出撃する米空母艦載機が「緊急」を口実に航空自衛隊浜松基地に緊急着陸し、給油を受けて飛び立っている。そして、今年四月から浜松基地に配備された「空飛ぶ司令塔」と呼ばれるAWACSが、「周辺事態」に即応して日米共同作戦の要としての役割を担わされることは明らかである。
 また、富士山の麓にひろがる広大な東富士演習場では、沖縄米海兵隊の実弾砲撃演習が繰り返されている。昨年六月に行われた実弾砲撃演習では、沖縄からの米海兵隊員の移動に羽田空港が初めて使用され、一五五ミリりゅう弾砲などの武器弾薬の輸送には民間船、民間車両が使用されるなど、「演習」とはいえ、まさに「周辺事態」における国民の協力体制が先取り的に発動されている。演習そのものも、「沖縄と同質同量の演習」という当初の約束は反古にされ、夜間演習や長距離射程の演習、沖縄とは気候条件の異なる積雪下の演習、自衛隊との同時進行の演習が行われ、さらに最近、米海兵隊が、東富士演習場でもNBC(核・生物・化学)兵器対応訓練を「通常訓練」として実施していることも明らかになった。
 他方国会でも、「有事」には核兵器が持ち込まれる日米「核密約」なる秘密の協定の存在が暴露された。被爆国日本を核基地化するという点からも、国民を四○年にわたってだましていたという民主主義の問題、アメリカの言いなりという主権放棄とでもいうべき問題としてもとしても絶対許すことはできない。
 その他静岡県内では、九八年一一月、静岡県唯一の貿易港である清水港に米駆逐艦「カッシング」が初めて入港、同一二月には、沼津・今沢海岸に海上自衛隊のヘリ空母といわれる輸送艦「おおすみ」に積載した積載した強襲揚陸艇「エルキャック」が、防災訓練を口実に上陸演習を行うなど、戦争法の先取りともいうべき異常な事態が進行している。
 しかし、こうした新ガイドライン=戦争法の具体化と発動準備に対して、全国各地の基地周辺住民をはじめ、「有事」動員を強制される地方自治体や運輸・通信・医療などの各分野で、戦争法に反対する国民の共同が大きく広がっている。静岡県下でも、東富士演習場を囲む自治体や地権者団体が、米軍基地全面返還の時期の設定や米政府との返還交渉の経過の公表を迫るまで運動を前進させている。また浜松基地でも、「AWACSも空中給油機もいらない」「音楽の都浜松に爆音は似合わない」の声をあげ、多くの市民団体・平和団体による共闘がねばり強くすすめられている。
 私たち自由法曹団は、平和を願うこの静岡県民のたたかいを支援するとともに、日本国憲法の定める平和と民主主義の理想の実現するために全力をあげて奮闘することをここに決意する。
 右決議する。

二○○○年五月二二日
自由法曹団二○○○年研究討論集会