<<目次へ 【決 議】自由法曹団


警察の抜本的改革をもとめる決議

 警察庁は警察刷新会議の緊急提言(以下「刷新会議提言」という)をうけて、「警察改革要綱」を発表し、九月二九日、政府は警察法改正案を閣議決定し、国会に提出した。この法案の内容は「刷新会議提言」の内容よりも大幅に後退し、極めて不充分ものであり、警察改革の名に値するものではない。自由法曹団は改めて警察の抜本的改革をもとめるものである。

一 神奈川県警、新潟県警等の犯罪・腐敗行為により、国民の批判を受けて設置された警察刷新会議は、警察改革について前述のように「刷新会議提言」を発表したが警察の問題点として、閉鎖性があること、国民の批判を受け入れにくい体質があることなどを指摘した。しかしながら警備公安警察の偏重をはじめ、警察の根本的問題を解明しきれず、かつ、外部からの監察についても否定的な見解にとどまるなど、抜本的改革の方向を示すことが出来なかった。
 ところが、今回の「警察改革要綱」は「刷新会議提言」よりもさらに後退した内容になり、情報公開については次のようなものにとどまっている。

  1. 公開の範囲は施策を示す訓令、通達などとなる。
  2. 懲戒事案の発表基準の明確化。
  3. 都道府県警察の情報公開に関する指導を行う。

 これでは、国民に開かれた警察にするためにははなはだ不充分で、さらなる警察情報の公開の徹底が必要である。そのためには少なくとも次のような点を改革に含める必要がある。

  1. 情報公開の対象を広げること。除外規定は、刑事訴訟法上の司法警察として遂行される具体的・個別的な犯罪捜査に限定されるべきである。
  2. 情報の保管の場所については、都道府県警や警察庁にとどまらず、個々の警察署も含むものとすべきである。
  3. 不服申立て審査手続きは第三者機関による審査とすべきである。

二 公安委員会改革について、「刷新会議提言」は監察点検機能の強化として、具体的・個別的指示権を付与し、公安委員のうち一名を監察管理委員に指名し、具体的・個別的な指示に関する監察の遂行状況を点検できるとした。管理能力の強化のために、警察庁と警察本部内に公安委員会事務担当課を設け補佐体制を確立するとしている。
 しかしながら、公安委員会が機能しない原因は、その人選と運営が警察の意向に添ったものとなっていること、また、独自の事務局を持たないことにある。警察内部に担当事務局を設けることでは公安委員会の機能強化は期待できない。公安委員会を民主的に改革し、機能を強化するためには、公安委員の選任の方法を改めること、警察から独立した事務局体制を確立することが必要である。

三 監察に関して、「刷新会議提言」は、「監察、公安委員会及び苦情処理のあり方」を提示した。「警察職員不祥事に関し厳正に処分を行い、不適切な業務運営を是正するためには、警察内部の自浄作用を高めることである」として、監察担当官増強、体制の強化を提言している。一方で第三者機関による外部監察については必要ないとした。
 しかし、今回の一連の警察の犯罪・腐敗行為で明らかになったことは警察内部の自浄作用にはもはや期待が出来ないということであって、この点を回避した改革はその実効性がないものといわざるを得ない。第三者機関による外部監察が必要であり、自由法曹団としては引き続きこの実現を要求する。

四 警察の問題の根本には警備公安警察の偏重優先の体制がある。また、警察官に対する教育を改め、人権教育を柱に据えること、また、警察官に対する団結権をはじめとする労働基本権を認めることも重要課題である。これらについても、その重要性を改めて指摘するものである。 右、決議する。

二〇〇〇年一〇月二三日
自由法曹団二〇〇〇年富山総会