<<目次へ 【決 議】自由法曹団


本格化する改憲・有事法制の策動を許さず、憲法を守り活す国民的運動を強めよう

 2000年1月から衆参両院の審議が開始された「憲法調査会」は、憲法制定の経過、「21世紀のあるべき日本の姿」等の「総論」を終え、重要項目の議論(いわゆる「各論」)に移りつつある。
 調査会では、国会内外の改憲勢力が憲法9条を始めとする憲法改悪の主張を公然と展開しており、調査会を足がかりにした改憲策動はさらに強まりつつある。
 今年4月に就任した小泉首相は、自民党総裁選を通じて明文改憲・集団的自衛権行使を公然と主張し、首相就任会見においても集団的自衛権の行使を実現するための9条改憲への意欲を示した。同時に小泉首相は首相就任会見において、「首相公選制だけの改憲ならば国民から理解されやすい」として首相公選制に限定した憲法「改正」を当面の政治課題に掲げる姿勢を鮮明にし、所信表明演説においても「首相公選制について早急に懇談会を立ち上げ国民に具体案を提示する」と公言した。首相公選制を改憲の突破口とする狙いは明らかであり、首相自身が改憲発言の先頭にたつことは極めて重大である。
 他方で「9条改悪が最優先課題である」と主張する全面的改憲論者の山崎拓氏が自民党幹事長に就任し、就任後も「集団的自衛権行使のために9条を改憲すべき」との発言を繰り返している。
 また、小泉首相は中谷元氏を防衛庁長官に任命し、有事法制の検討を指示した。同長官はこれを受けて、有事法制の検討を進める方針を明らかにした。中谷元氏は9条改憲を主張する改憲論者であり、同時に防衛大学校出身の自衛官OBである。このような人物を国務大臣とすることは「国務大臣は文民でなければならない」とする憲法66条2項に抵触する重大な疑義があり、文民統制崩壊への道を開くものである。
 このように小泉内閣は、従来にも増して改憲策動を本格化させ、有事法制化の検討を急ピッチで進め、集団的自衛権行使や自衛隊の海外での武力行使を公然と認めようとしている。
 こうした動きは、昨年の「アーミテージ報告」に見られるような、より強力な軍事的協力を求めるアメリカの戦略をそのまま受け入れたものである。このような危険な改憲策動・有事法制化を許して、日本を再び戦争をする国に逆戻りさせることがあってはならない。
 21世紀に入り、戦争を放棄した憲法9条の価値・先駆性は、ますます輝きを増している。朝鮮の南北首脳会談にみられるように、話し合いによる紛争の平和的解決を実現しようとする大きな流れが国際社会に生まれている。改憲を進めようとする策動は、この国際的な平和の流れに逆行するものにほかならない。今こそ9条の理念を高く掲げ、世界の進むべき進路として広げていく必要がある。
 改憲勢力の「改憲論」がマスコミ等を通じて洪水のように流される中にあっても、朝日新聞の世論調査に見られるように多数の国民は憲法9条の改悪に反対の立場を堅持している。今年4月の憲法調査会仙台公聴会においても10人の陳述者のうち6人が憲法9条を評価し護憲を訴えており、憲法9条を支持する国民世論の根強さを証明した。
 今年5月3日、憲法施行後初めて、憲法改悪に反対する6団体が共同の集会を開催し、約5000人の参加で大きく成功した。改憲策動の進む一方、憲法改悪に反対する運動も従来の枠を越えて広がり、共同が進んでいる。
 こうした共同をさらに広げ、憲法改悪・有事法制化を許さず、憲法を積極的に活かす全国民的な運動を構築することが今こそ求められている。
 我々自由法曹団は、憲法の平和的・民主的条項を支持する国民世論に依拠し、広く国民各層と結びつき憲法改悪・有事法制化に反対する全国民的運動をつくりあげ、改憲策動に対し断固として闘い抜く決意である。

上記 決議する。

2001年5月21日
自由法曹団2001年研究討論集会