<<目次へ 【決 議】自由法曹団


持株会社NTTの「違法・脱法」リストラに反対し企業の社会的責任を果たすことを求める決議

1 持株会社である日本電信電話株式会社(NTT)は、2001年4月、「事業構造を改革する」として3カ年計画を発表し、それに基づき、傘下のNTT東日本会社、同西日本会社において、現在、社員11万人を対象とする未曾有の大規模リストラが強行実施されている。

 強行実施されているリストラ・合理化の内容は、これまでNTT東・西会社が行っていた電話受付、保守・管理などの業務を県・地域別に新設する東・西会社100%出資の別会社に「外注化」し(いわゆるアウトソーシング)、50歳未満の社員は東・西会社から在籍出向させ、50歳以上の社員は、退職のうえこの別会社に再就職させるが、賃金は約3割引き下げるというものである。

 その際、東・西会社は、50歳以上の社員が退職に応じない場合には、異業種かつ広域配転を実施するものとして、退職の「同意」を強制した。そして、今年5月、実際に退職に応じなかった社員全員に対し、異職種(法人営業など)へ配転が命じられるとともに、勤務地についても、すでに一部の者に広域配転が発令されている。

2 このようなNTTリストラは、実質50歳定年制の導入であり、純粋持株会社制度と分社化を利用した労働条件の大幅切り下げに他ならない。その手法が、これまで労働ルールとされてきた年齢のみを理由とする差別的取扱いの禁止、労働条件の不利益変更禁止、会社分割にともなう労働契約の承継、退職強要の禁止、不当配転の禁止、家族的責任に関するILO条約156号などの労働者保護法理を多重的に破壊する違法・脱法行為であることは明らかである。

3 この間の国会質問のなかでも、繰り返しNTTリストラの違法性について指摘がなされている。通信産業労働組合は(約1300名)、一貫してリストラ計画の白紙撤回を求めて闘い、同組合員の50歳以上の対象者691名のうち、約7割にあたる458名が退職・再雇用を拒否し、これまで通り同じ条件で同じ仕事をすることを要求して闘いを続けている。そして、全労連、各県労連をはじめ、全国各地でこのNTT労働者の闘いを支援する輪が広がりつつある。

 自由法曹団も、このNTTリストラを「声明」、「学者・弁護士アピール」などで厳しく批判し、今年1月には、団員を中心に対策弁護団を立ち上げるとともに、大阪での地方労働委員会に対する不当労働行為救済申立て、大分及び愛媛での配転禁止仮処分申立てなどの裁判闘争にとりくんでいる。

4 持株会社を頂点とするNTTグループは、グループ全体で資本金9397億円、総資産21兆円、内部留保8兆8800億円の超優良、巨大企業である。2002年3月期の連結最終損益では赤字というが、経常利益は6650億円の黒字を予想し、赤字の原因は海外投資の失敗やリストラ費用によるものである。NTTリストラのねらいは、そのつけを労働者の犠牲に転嫁し、持株会社が最大利益を追求する体制をつくることにあり、こうした持株会社の身勝手極まるリストラ・合理化に道理はない。

 同時に、NTTは、情報通信の公共性を維持し、ユニバーサルサービスの提供を法律上の責務とする企業である(NTT法3条)。従って、NTTが本件のような利潤至上主義に立ったリストラ・合理化を強行することは、NTT法3条の趣旨からも許されない。利潤至上主義は結果として公共的責務の放棄をもたらす社会的に許されない非行である。

5 また、政府株46%という半国営の巨大企業であるNTTにおいて、こうした「違法・脱法」のリストラ・合理化が推進されることは、他の企業が同様のやり口でリストラ・合理化を拡大強行することを助長する。NTTリストラは、大企業による苛酷なリストラが横行している今日の情勢下において、ひとりNTT労働者だけの問題ではなく、我が国の働く者5300万人すべてに向けられた攻撃である。

 自由法曹団は、NTTグループに対し、企業の社会的責任として、利潤至上主義にもとづくリストラ・合理化の即時中止、並びにNTT労働者の雇用及び労働条件の維持・回復を求めるとともに、すべての企業・職場での労働ルールの確立のために、NTT労働者の闘いを総力を挙げて支援する。

上記 決議する。

2002年5月27日
自由法曹団2002年研究討論集会