<<目次へ 【決 議】自由法曹団


有事法制関連三法案の廃案を求める
――― 往くべきは平和の道


 第155臨時国会が開会された10月18日、小泉純一郎首相は「有事法制など継続審査になっている法案に優先的に取り組む」との所信表明演説を行った。国民的な批判・反対の前に第154通常国会で成立を阻止された有事法制関連三法案(武力攻撃事態法案、自衛隊法「改正」案、安全保障会議設置法「改正」案)を、臨時国会で成立させるとの宣言である。

 自由法曹団が繰り返し指摘したとおり、三法案はわが国がアメリカの侵攻戦争のために国民を動員して兵站基地となるとともに、自らも参戦していくための法案であり、その制定・発動はこの国が再びアジアの民衆に銃を向けることを意味するものであった。「周辺事態はすべて武力攻撃事態」「ミサイルへの注油があったら基地攻撃も自衛権の行使」「海外の艦船への攻撃もわが国への武力攻撃」などの政府の答弁は、政府自らが海外侵攻型有事法制の本質と危険性を「自白」したものと言うほかはない。

 有事法制の本質が明らかになるにつれ、各分野、階層、地域から批判・反対の声が巻き起こった。労働者が、宗教者が、女性が、青年がそれぞれの立場から平和のための行動を展開し、地方自治体・地方議会からも反対・消極の意見表明が相次いだ。1万9千名の弁護士が全員加入する日本弁護士連合会は組織をあげて反対運動を展開し、民間放送連盟の反対意見表明をはじめマスコミ界からの批判も相次いだ。有事法制に反対する国民的なたたかいは、国民の願いが日本国憲法の掲げる平和の道にあることを鮮明に示したものであった。

 この国が有事法制をめぐって揺れたこの1年は、世界が戦争の道か平和の道かをめぐって揺れ動いた1年でもあった。アフガン報復戦争は「テロの根絶」を果たせなかったばかりか、世界各地に「暴力の連鎖」を撒き散らし、アフガン民衆が空爆によって蒙った深刻な被害はようやく世界の関心と批判を集めつつある。「反テロ戦争」の拡大を叫んでイラク攻撃への準備を進めるブッシュ政権は、この9月、「国家安全保障戦略」を発表して先制攻撃と単独行動を公然と宣言した。その同じ9月に取り交わされた日朝平壌宣言は、拉致問題などの課題をかかえつつも、長きにわたった国交途絶の克服と北東アジアの平和への一歩を記した。平和的解決こそが世界が進むべき道であり、イラク攻撃への国際的な批判や平壌宣言への高い評価は、世界の声もまた平和の道にあることを示している。

 臨時国会にあたって、政府・与党は「修正」や「国民保護法制」をほのめかすことによって、国民に拒否された三法案の再生をはかろうとしている。三法案は米軍追随の戦争動員法の体系なのであって、「予測事態」と「武力攻撃事態」を切り分けてみたところで、本質は全く変わるものではない。10月8日に発表された「国民保護法制(素案)」とは、地方自治体・地域・住民に臨戦態勢を準備させるとともに、社会経済の統制システムを構築しようというもので、国民すべてを米軍追随の侵攻戦争に組み込もうとするものにほかならない。

 このような有事法制を強行することは、ブッシュ政権の戦争戦略への全面的な追随・支持を意味するばかりか、自らが一歩を記した北東アジアの平和への道を水泡に帰させることにしかならない。

 平和憲法を持つこの国に求められているのは、平和的努力の積み重ねによってアジアと世界の平和に寄与することであって、断じてアメリカに追随して戦争の道を進むことではない。

 自由法曹団と1600名の団員弁護士は、アジアと世界の平和をかけて、有事法制三法案の廃案を要求するとともに、三法案廃案と平和の道の実現のために、全力で奮闘する決意を表明する。

2002年10月28日
自由法曹団2002年総会