<<目次へ 【決 議】自由法曹団


弁護士資格要件の緩和に反対する決議


 政府は、特例によって弁護士資格を与える職業範囲を拡大することを中心とする弁護士法改正案を、今国会に提出しようとしている。この改正案は、司法試験に合格し5年以上国会議員の職にあった者、特任検事を5年以上経験した者、企業法務担当者、公務員等で司法試験に合格し7年以上法律関係事務に従事しその後所定の研修を終了した者に対して、司法修習を免除して弁護士資格を付与するというものである。
 しかし、このような弁護士資格要件の緩和は、現在進められている司法改革の理念に反するものであり、自由法曹団は弁護士資格要件の緩和には強く反対するものである。  

 政府が進めている司法改革では、高度の専門知識だけでなく幅広い教養と十分な職業倫理を身につけた法曹が、法の支配の理念を享有しながら今まで以上に厚く社会に存在することが期待されている。そのために、法科大学院を中核とした新しい法曹養成制度で、法学教育と実務修習を有機的に連携させたプロセス重視の教育を行い、高い資質と能力を持つ法曹を大幅に増員していくことが目指されている。そして法曹資格を得るためには、法科大学院卒業後司法試験に合格し、さらに一定期間の司法修習が必要とされているのである。このような方向での法曹養成制度の改革が行われている今、弁護士資格要件を緩和し、正式な法曹養成過程を経ていない特任検事らに弁護士資格取得への近道特権を与えるのは、公平・公正・透明性を主調とする司法改革の理念に明確に反する。

 特に特任検事は副検事を3年以上経験したもので、検察官特別考試令に定める考試に合格した者(検察庁法18条3項)とされ、司法試験合格の要件すら満たしていない。しかも実務的には民事事件の経験はなく、刑事事件でも訴追側の立場しか経験しておらず、被疑者被告人の立場に立って最善を尽くす弁護人の立場は経験がないのであり、このような特任検事を5年経験しただけで弁護士資格が付与されることは許されるべきではない。もともと特任検事は検察官不足を補い、検察事務官の意欲向上のために制度化されたと言われており、新しい法曹養成制度のもとでは廃止されてしかるべき内部資格である。
 また国会議員について言えば、司法試験には合格しているものの、実務修習を経験しているものではない。議員活動が立法作用に関するものであったとしても、それは刑事も民事も依頼者の利益のために最善を尽くすという弁護士活動とはほど遠いものであり、司法修習の代替には到底なり得ない。むしろ政治資金規正法などで厳しく管理される資金について、弁護士費用として受領できる口実を与えることになりかねない。お手盛りである。
 また企業法務担当者や、公務員も司法試験に合格しているとはいえ、司法修習を受けているものではなく、いかに法律事務を担当していたとはいえ、その範囲は自ずと限定されているのであり、刑事・民事を含めた実務的訓練である司法修習の代替にはなりえない。
 以上の理由から、自由法曹団は、今回の弁護士資格要件の緩和には全面的に反対するものである。

2003年2月15日
自由法曹団常任幹事会