<<目次へ 【決 議】自由法曹団


米国のイラク戦争を支持する日本政府を抗議し、原口幸市国連大使の国連演説の撤回を求める決議


3月12日のイラク問題に関する国連安全保障理事会「公開討論会」において,日本の原口幸市国連大使は,米・英・スペインが提出している修正決議案を日本政府として支持する演説を行った。大使は決議案を支持する理由として,イラクの国連査察に対する協力が「不十分」かつ「限定的」であるとしたうえで,「修正決議案は,国際協調を貫き,国際社会がイラクに対し一致して圧力をかけ,イラクが自ら武装解除するための真に最後の努力を行うものである」旨を述べた。

 しかしながら,修正決議案は大使の説明するような類のものではない。修正決議案は,国連査察を3月17日までに限定し,それまでにイラクが武装解除しない限り,イラクが「決議1441で与えられた最後の機会をとらえなかったと決定する」ものであり,これが事実上米国のイラク攻撃を容認するもので,戦争開始のための最後通告であることは自明の理である。大使の演説は全くの詭弁である。

 米国は,イラクの大量破壊兵器保有やテロ支援をイラク攻撃の口実としてきた。しかし,国連査察報告によれば,イラクが核開発計画を再開したという証拠はなく,化学・生物兵器等についても,イラクの「積極的」「自発的」協力により,「数ヶ月」で監視検証を終える道筋が示されている。イラクとテロ組織を結びつける証拠も存在しない。これまでの査察によっても「平和に対する脅威」が差し迫っているとは報告されておらず,また平和的手段でその脅威を除去することが可能である間は安保理といえども武力行使を容認することはできない(国連憲章第39条,第42条)。査察が不十分であれば査察を強化・継続することこそ安保理の役割である。結局のところ,米国のイラク攻撃を正当化する理由はどこにも見当たらないのであり,米国がイラク攻撃に踏み切ればそれは明白な国連憲章違反である。

 世界中の国々で,米国のイラク攻撃に反対する史上空前の規模の反戦運動が巻き起こっている。フランス,ロシア,中国,ドイツを中心に国連加盟国の圧倒的多数が国連査察の強化・継続による平和的解決を求め,戦争は最悪の選択であると主張している。日本においても,世論調査では約8割がアメリカのイラク攻撃に反対しており,各地で連日の反戦運動が繰り広げられている。

 詭弁を用いてまで米国の戦争を支持する日本政府の態度は明らかに異常であり,それはイラク問題の平和的解決を求める内外世論の奔流に逆行するものである。いま,日本政府に求められていることは,日本国憲法の平和主義の立場に立脚し,平和を求める諸国民と共同して,米国のイラク戦争をなんとしても阻止することである。
 自由法曹団は,米国のイラク戦争を支持する日本政府の態度を断固抗議し,原口国連大使の国連演説の撤回を求めるとともに,米国のイラク戦争を阻止するため,平和を求める全世界の人々と力を合わせて全力をあげてたたかう。
 上記決議する。

2003年3月15日
全国常任幹事会