<<目次へ 【決 議】自由法曹団


教育基本法改悪法案の国会提出に反対する決議


 中央教育審議会は、イラク戦争が開始された2003年3月20日に総会を開き、「新しい時代にふさわし教育基本法と教育振興計画の在り方について」の答申を発表した。政府は、通常国会後半には法案を提出すると明言している。また、与党は、5月12日に協議機関を設置した。
 中央教育審議会答申は、「日本人としての自覚」「郷土や国を愛する心」「新しい『公共』」を強調し、教育目標としての「たくましい日本人の育成」をかかげる。そこには、学ぶ主体としての子どもの「個人の尊重」と人権からみる目線はなく、外から求める国家主義と能力主義が貫かれている。
  その上、男女共学規定の削除を明記したこと、国・地方公共団体の責務に関して教育基本法第10条の「『必要な諸条件の整備』には教育内容等も含まれることについては、既に判例により確定している」とした点では「中間報告」よりも一層憲法に違反する内容になっている。まだ男女共学でない学校が存在しており、決して「性別による制度的な教育機会の差異」はなくなっていない現状の中で男女共学規定を削ることは憲法の男女平等原則に反する。
 答申は教育基本法を貫く「個人の尊厳」「人格の完成」「平和的な国家及び社会の形成者」などの理念は今後も大切にしていくと述べているが、このことと「愛国心」「新しい『公共』」の強調・強制は大きな矛盾をはらんでいる。すなわち、今日のような国際的な戦争の危機を迎えている時代にアメリカ追随の外交と有事法制の制定など「戦争する国づくり」が政府により進められている中で「愛国心」「新しい『公共』」の強調・強制は子どもたちに「戦争協力」を強いることであり、戦争に反対する個人の思想・良心の自由を侵害し、憲法第19条に違反する。
 答申については、日本弁護士連合会、教育関連学会会長有志、広範な市民団体などが批判的な見解を発表している。自由法曹団は、平和と民主主義、基本的人権を守り発展させる法律家の立場から、教育基本法改悪法案の国会提出に強く反対するものである。
 上記決議する。

2003年5月26日
自由法曹団2003年研究討論集会