<<目次へ 【決 議】自由法曹団


労働法制全面改悪に反対する決議


 衆議院厚生労働委員会は、5月21日、民主、共産、自由、社民の4野党が一致して反対するなか、与党である自民、公明、保守の賛成で、労働者派遣法および職業安定法の改悪案を可決した。
 これらは、現在でさえ、不安定な身分と低賃金に悩まされている派遣労働者の実態を全く無視し、派遣労働を企業により使いやすくして常用代替を進めようとするものであり、また、失業者からも儲けを得ようとするあくなき利潤追求に奉仕するものである。いずれも、勤労権(憲法27条1項)を保障するために制度を整備すべき国の責務(同条2項)に逆行するものである。
 私たちは、実態のまともな検討をすることもなく、わずかな時間審議したのみでこれらの法案を採決した与党に対し、強く抗議する。
 派遣法・職安法をめぐる論戦は、参議院に舞台を移したが、私たちは引き続きこの両法案の廃案あるいは抜本的修正を求めるものである。
 5月23日から労基法改悪案の審議が始まったが、「労働力の弾力化」という財界の要求にこたえたこの法案は、(1)解雇を原則自由化し、(2)有期契約の上限期間を延ばして、常用から有期への大規模な置き換えを図ろうとするものである。しかも、(3)「労働者が主体的に働き方を選択できる」(政府の趣旨説明)などとして違法な不払残業を合法化する裁量労働制を拡大する内容まで盛り込んでいる。
 このような法案がそのまま通れば、日本の労働のあり方が常用雇用中心から不安定雇用中心に一変する。企業は、言いなりにならない労働者を解雇で排除し、企業で囲い込みたい人材は3年有期契約を何回も更新することにより長期間拘束し、それ以外の人材はより短期で労働条件も切り下げた内容で更新するか、雇い止めをすればよいということになる。まさに、労働者の「使い捨て」である。他方、「使い捨て」される労働者の側は、将来設計などままならず、未来に夢も希望も持てなくなってしまう。また、裁量労働制の拡大は、不払い分だけでも年間20兆円近くにも上ると言われる残業代の負担から企業を解放し、過労死に対する責任からさえも「自分の裁量だから」として解放することになりかねない。
 このような企業の法的および社会的責任を免罪するような法案を断じて許してはならない。
 我々は、労働者保護という労基法の目的と趣旨に沿った改正を行うこと、そのような改正ができないのであれば、今回の労基法改悪案は廃案にすることを求める。そのために、4野党が結束を固め、また、諸団体が協力・共同して労働法制全面改悪反対の大きな世論を巻き起こすことを呼びかける。
以上、決議する

2003年5月26日
自由法曹団2003年研究討論集会