<<目次へ 【決 議】自由法曹団


自衛隊のイラク派兵及び
米英のイラク占領への資金拠出に断固反対する決議


  1.  政府は、イラク派兵法(イラク特措法)に基づく自衛隊の派兵について、年内に陸上自衛隊の施設部隊と航空自衛隊の輸送部隊をイラク南部に派兵する具体的な計画づくりに着手した。年明け以降に予定している1000人規模の自衛隊本隊派兵に先立って、その先遣隊を前倒しでイラクに送ろうというのである。また、政府は、イラク復興支援のためと称して、米英軍の軍事占領のために総額5500億円の資金拠出を決定した。
  2.  イラク派兵法は、第156通常国会において、野党4党が法案に反対するとともに、法案の廃案を求める国民各層の運動が拡がり、しかも、国会の審議を通じて法案の欺瞞性・危険性がより一層明らかになったもとで採決が強行されたものである。
     政府は、自衛隊の活動範囲を「非戦闘地域」とし、こうした限定をかけることにより、自衛隊の活動が米英軍の武力行使と一体化するとの批判をかわそうとした。しかし、現にイラク全土で戦闘が繰り返されているもとで、「非戦闘地域」に自衛隊を派兵するというのは机上の空論であって、国民をあざむくものである。
     派兵法成立後、米英軍のイラク占領がさらに泥沼化し、治安の悪化や国連現地本部の爆破をはじめとする武力事件の頻発という事態を受けて、政府は、一旦は自衛隊派兵を年明けに先送りする方針を取った。このことは「非戦闘地域」への派兵という政府の論理が実際に破綻していることの証左である。
  3.  しかし、政府は、米国(アーミテージ国務副長官)から「逃げるな。お茶会ではない。」などと圧力をかけられると、直ちに自衛隊の「年内早期派兵」に方針を転換した。 
     米国のイラク侵攻が国連憲章違反の無法・非道な戦争であったことは、今日、国際社会の共通認識になりつつある。先の国連総会では、アナン国連事務総長が「過去58年間、世界の平和と安定が依拠してきた原則、国連憲章への根本的な挑戦」と米国の先制攻撃を批判し、加盟国からも批判の声が相次いだ。米英軍の軍事占領に対するイラク市民の反米感情は日増しに高まっている。世界各国がイラクの主権回復と国連を中心とした復旧・復興を求めるなかで、日本政府の米国への追随ぶりは異常というほかない。 
  4.  イラク復興支援のためとされる資金拠出も、自衛隊の派兵と同様、米国の強い要求にもとづくものであるが、米英軍の軍事占領が継続している以上、その資金拠出は軍事占領の長期化を援助するものでしかない。
  5.  第156通常国会では、イラク派兵法に先行して有事3法の成立が強行された。第157臨時国会では、テロ特措法の「改正」により、同法によってインド洋・アラビア海方面で作戦中の海上自衛隊の派兵期間が2年間延長された。イラク派兵法によるイラク国内への陸上自衛隊・航空自衛隊の派兵は、日本が平和憲法を無視し踏みにじって、米国の戦争に協力する海外派兵国家への道を突き進むことを意味する。
     自由法曹団は、自衛隊のイラク派兵及び米英のイラク占領への資金拠出に断固反対し、米英軍のイラクからの撤退と国連中心のイラク復興を求めて、平和を希求するすべての人々とともに闘うものである。

2003年10月25日
自由法曹団2003年総会