<<目次へ 【決 議】自由法曹団


教育基本法改悪法案の国会提出に反対し、改悪を阻止する運動に全力を尽くす決議


  1.  本年9月22日に発足した小泉改造内閣には文部科学大臣に河村建夫氏が就任するなど教育基本法改悪にむけたかまえを本格化している。河村大臣は教育基本法改悪をめざす自民党特命委員会の事務局長や文部科学副大臣として改悪推進の中心を担ってきた人物であり、就任後には「次期国会に提出期待」「法律を作らなければ不作為になる」と明言している。また、自民党は衆議院選挙政策で、教育基本法改悪を政権公約として明言している。
     改悪推進勢力は地方議会、とりわけ県議会での改悪促進決議の動きを強めている。和歌山県議会では、9月29日に自民党・公明党の議員が本会議に「改正を求める意見書」を提案し、民主党も賛成して成立した。千葉県議会では、自民党提出の「教育基本法の早期改正を求める意見書」が10月15日に本会議で賛成多数で成立した。
     「健全なる国民精神の興隆」などを綱領に掲げる「日本会議」は「教育基本法の早期改正」をめざして、各地での講演会・集会・陳情・街頭での署名活動を展開しているが、ジェンダーフリー教育や男女共同参画問題への激しい攻撃と結びつけて教育基本法改悪の運動を展開している。こうした中で、鹿児島県議会は7月8日に「県内の幼稚園と小中高校でジェンダーフリー教育をしないよう求める」陳情を自民党などの賛成多数で採択する事態となっている。また、東京都立七生養護学校の性教育に対して「過激性教育」との攻撃が広がっているが、教育基本法改悪の動きと結び付けているのが特徴である。
     こうした動きは、国連子どもの権利委員会で、「高度に競争的な教育制度により子どもたちがストレスにさらされ、発達障害におちいっている」と指摘された日本の子どもたちのおかれた現状を改革しようとする志向は全くなく、逆にますます激化する競争関係に追い込むものであり、一人一人の子どもの権利という視点からも許されない。
  2.  他方で、教育基本法を守る運動はかつてない動きになっている。教育関連学会の共同シンポジウムなど研究者の活動、日本弁護士連合会など弁護士会の活動、教育基本法全国ネットワークなどの中央段階の組織の立上げと共同を広げる取組みが前進している。また、「教育基本法の理念を生かそう」との地方自治体の意見書の採択は218区市町村にのぼっている(10月14日現在)。各地で、教育基本法の理念を生かそうとの共同組織が作られ、父母・子ども・教職員・労働者・女性・研究者・宗教者・青年・弁護士などの共同した取組みや意見広告など多彩で創意ある活動が行われている。
  3.  教育基本法改悪に道理がないことは、改悪の答申を出した中央教育審議会に臨時委員として参加した教育行政学者の報告でも明らかになっている。それによれば中央教育審議会では「国家は教育にどこまで介入することが許されるか」などの根本問題についての審議は「なされなかった」だけでなく、1年4か月の審議の前半は「自由放談会に近いものであり」、後半は「事務局(文部科学省)が作成した中間報告案や答申案の修文に終始した」という(市川昭午『教育基本法を考える』(教育開発研究所))。
  4. 自由法曹団は、平和と民主主義、基本的人権を守り発展させる法律家の立場から、教育基本法改悪法案の国会提出に強く反対するとともに、教育基本法の改悪を阻止する運動に全力を尽くすものである。

2003年10月25日
自由法曹団2003年総会