<<目次へ 【意見書】自由法曹団



戦争法制(有事7法案・条約3案件)の

参議院での廃案を求める

 5月20日、衆議院は、戦争法制(有事7法案・条約3案件)の「修正」可決を強行した。「修正」可決への道を開いたのは、昨年6月の有事3法案(武力攻撃事態法案、自衛隊法「改正」案、安全保障会議設置法「改正」案)の採択と同じく、与党と民主党の密室での「修正合意」であった。戦争と平和にかかわる重大な問題について、またしても「密室談合」によって採決強行に及んだ自民・民主・公明3党に、自由法曹団は満腔の憤りをもって抗議する。
 自民・民主・公明3党が行った「共同修正」とは、一般質疑が終了した国民動員法制(国民保護法案)の「修正」によって、武力攻撃事態法に「緊急対処事態」を挿入する「改正」を行い、有事法を「軍事」と「治安」にまたがる法制に改変しようとするものである。国会議員にすらほとんど認識されておらず、まして国民にはまったく知られていない構造的「改正」を「密室談合」のうちに行うなどは、議会制民主主義・法治主義を踏みにじった「立法クーデター」と評するしかない。
 有事法制とは、アメリカの戦争に加担して兵站基地となるとともに、自らも参戦していく侵攻戦争のための法制であり、戦争法制は有事3法を具体化して「いつでも戦争に出て行ける国」を生み出すためのものである。その有事法制の本質と危険性は、わずかな衆議院の審議でもすでに明らかになっている。「不審者が武器を運んでいる船舶も停戦検査の対象。抵抗すれば発砲も」「自衛隊や米軍が優先されれば民間航空機は飛べなくなる」「作戦や兵器の報道は敵を利するだけ。自粛の依頼は十分あり得る」などの軍事優先の答弁が繰り返され、「幹部自衛官を派遣して自治体の『計画』をつくる」「自発的にできてくる自警団は支援していく」など、国民動員法制が地域・住民を根こそぎ「後方社会」に組み込んでいくこともあけすけに答弁された。
 全土が戦場となったイラクで繰り返されている虐殺と拷問は、ブッシュ・ドクトリンがもたらす世界がどのようなものであるかを白日のもとに明らかにした。「報復戦争ヒステリー」のなかで浮上した有事法制が進む道は、日米軍事同盟に固執してあくまでブッシュ政権に追随する戦争の道であり、アジアの民衆の殺戮への加担の道である。
 有事法制が登場して2年余、世界の趨勢は平和の道にあり、ブッシュ政権の単独行動主義と「有志連合」は世界の孤児になろうとしている。このいま、平和憲法を持つこの国が歩むべきは、平和と共生の世界を築き上げるための平和の道であって、断じて戦争の道ではない。
 世界の大道に立ち戻って平和の道を往くために、自由法曹団2004年研究討論集会の名をもって、戦争法制の参議院での廃案と有事3法の廃止を強く要求するとともに、平和の道の実現のために全力でたたかう決意を表明する。

2004年 5月24日
自由法曹団2004年研究討論集会