<<目次へ 【意見書】自由法曹団



「弁護士報酬の敗訴者負担」の

法律による導入・契約による導入を許さない決議

 「弁護士報酬の敗訴者負担」を「裁判上の合意による敗訴者負担」という形で導入しようとする法案が国会に提出されている。法案は、提訴後当事者双方の弁護士等の合意による共同申立が行われた際に敗訴者負担とすることを内容としている。
 「弁護士報酬の敗訴者負担」は、国民の提訴・応訴を抑制させる制度であり、この制度が導入されると、国民が裁判を通じて権利の実現・権利の救済を求めることに重大な障害となる。
 このような制度導入の動きに対しては国民の反対運動が大きく広がり、制度導入を図ろうとする一部財界等の勢力は、「敗訴者負担」の「法律」による「原則導入」を断念せざるを得なかった。しかし、なお「裁判上の合意による敗訴者負担」という形で法案が提出されている。この法律が成立すれば、将来「敗訴者負担」の本格的導入の重要な足がかりとなることは疑いない。
 同時に、一部財界などの推進派は、契約に「敗訴者負担合意」を盛り込むことによる敗訴者負担の実質的導入を企んでいる。就業規則、労働契約等に「敗訴者負担」を盛り込むことにより労働者が裁判により権利主張を行うことを抑制すること、消費者契約に「敗訴者負担」を盛り込むことにより消費者が裁判を通じて被害救済を求めることを抑制すること、ローン契約に「敗訴者負担」を盛り込むことにより債権回収圧力を強めるとともに借り主の権利主張を抑制すること、フランチャイズ契約等の中小企業契約に「敗訴者負担」を盛り込むことにより中小零細企業の権利救済の道を狭めること、等が企まれているのである。
 今回「裁判上の合意による敗訴者負担」法案が成立し、そのような形であれ敗訴者負担が法制上のお墨付きを与えられることになれば、これまでにもまして企業や業者側は契約内容に「敗訴者負担」を盛り込みやすくなり、またその契約条項に基づいた「敗訴者負担」の請求を行いやすくなる。
 司法アクセス検討会の議論でも指摘されたとおり、労働事件や消費者事件の分野に「敗訴者負担」が持ち込まれることは不当であり、中小零細企業の権利を抑制する形で中小企業の分野に「敗訴者負担」が持ち込まれることは問題がある。こうした格差のある当事者間においては、社会的経済的に弱い立場にある労働者・消費者・中小零細企業の権利を裁判を通じて実現・救済することが切実に求められている。裁判を通じた権利の実現・救済の道を狭める事態を招く立法は決して行われるべきでない。
 自由法曹団は、国民の裁判所を通じた権利の実現・救済を妨げる「弁護士報酬の敗訴者負担」の導入に反対する。同制度の法律による導入、さらには、契約による事実上の導入に反対する。

2004年5月24日
自由法曹団2004年研究討論集会