<<目次へ 【意見書】自由法曹団



滋賀県豊郷小学校問題における行政の

違法行為に抗議し、無駄な公共事業を許さない決議

 豊郷小学校は昭和12年(1937年)当時の豊郷村出身で、総合商社丸紅の礎を築いた古川鉄治郎氏の寄贈、アメリカ人建築家、W.M.ヴォーリズ氏の設計により建築された。当時日本一の小学校と謳われ、現在も日本の小学校建築を代表する建物である。しかし築60年を過ぎ、著しく老朽化しているという、全く事実に反する理由の下に豊郷町は改築計画を進めてきた。これに対し同校卒業生を中心に結成された住民団体、「豊郷小学校の歴史と未来を考える会」は、改築の根拠とされた耐震データに関する数々のウソや傲慢な行政と闘い、二度の仮処分決定により、講堂と現校舎の保存を勝ち取った。自由法曹団はこの運動を住民とともに闘った。この間、日本建築学会をはじめとする多くの建築家も、同校の文化財としての価値と歴史性、耐震性もある建物であることを認め、建築の専門家としての立場から保存の必要性を訴えた。しかし豊郷町は現校舎の東に必要のない「新校舎」を建設する計画を進め、工事を強行した。
 昨年12月22日の大津地裁判決により、新校舎建設の公金支出の差し止めを命令されたにも拘わらず、豊郷町は工事を強行し、様々な批判を無視し、遮二無二「新校舎」建設に突き進み、豊郷小学校の誇りとされた緑豊かな原風景は壊された。
 そして豊郷町は大津地裁の「新校舎の工事代金を支出してはならない」とする判決さえ破り、工事請負業者に公金を支出した。  
 このような状況の中で、豊郷町は保存を決定したにも拘らず、現校舎については放置したままで、修理にまったく手を入れようとしない。
 豊郷小学校は、申請すればすぐにも有形登録文化財に登録される歴史的建造物である。ところが豊郷町は有形登録文化財の適格要件を全て満たしているにも拘らず、その申請すらしようとしない。我々は、無駄な公共事業を、判決を無視して違法行為を強行した豊郷町長とそれを後押しした滋賀県、文部科学省に強く抗議し、無駄な公共事業を許さない住民の運動を支援することを決議する。

2004年5月24日
自由法曹団2004年研究討論集会