<<目次へ 【決 議】自由法曹団


新ガイドラインに反対し有事立法制定作業の中止を求める決議

 日米両政府は、昨年九月二三日、新たな「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」を発表した。この新ガイドラインは、「ウォーマニュアル(戦争の手引き)」といわれるように、日本に武力攻撃がなくとも、「周辺事態」という名目でアメリカが行う戦争に日本が自動的に参戦し、海外、特にアジアにおいて、アメリカと共同して軍事活動を展開するということを内容とする。これは、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」て定めた日本国憲法の平和原則に明確に反する。
 ところが、日米両政府は、日本有事と周辺有事のための具体的な「共同作戦計画」と「相互協力計画」を策定し、日本国内の関連法(有事立法)整備などの実行組織となる「包括メカニズム・調整機構」の発足を、本年一月二〇日に正式決定し、新ガイドラインを具体化する作業を着々と進めている。
 そして、橋本首相は、「今国会に提出できるようにということを申し上げられる程度まで進んできたので、その(今国会提出)方向で努力したい。」(本年三月二三日参院予算委員会)と述べ、今国会に有事立法を提出する意欲を示している。
 すでに、本年二月六日、政府は、防衛庁設置法及び自衛隊法「改正」案を国会に提出した。新ガイドラインに対応して、統合幕僚会議が周辺事態において、防衛庁長官を補佐できる内容をここにおりこんだ。また、三月一三日には、「国際連合平和維持活動等に関する法律(PKO法)の一部を改正する法律案」を国会に提出した。この法案は、PKO活動に部隊として参加した自衛官及び海上保安官が武器を使用するのは原則として上官の命令によらなければならないとし、自衛隊による組織的な武器の使用、すなわち海外での武力行使を認めようというものである。これは、新ガイドラインのもとで展開される自衛隊の海外での活動に武力行使を認める突破口となる。  現に、有事立法の一環として、自衛隊が海外で米軍人の救難、非戦闘員の救出、船舶の臨検を行える自衛隊法「改正」案を国会に提出し、現在軍事演習に関する協力関係が合意されているACSA(物品役務相互提供協定)の適用を戦時にも拡大しよとする動きが伝えられている。
 また、新ガイドラインでは、日本は「中央政府及び地方公共団体が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用する」として、アメリカの軍事行動に対して、民間港湾・空港、医療機関の使用をはじめ、自治体や国民を総動員することを宣言している。現在準備されている有事立法は、国会の承認でなく内閣で周辺事態の認定を行い、補給・輸送、医療活動など米軍に対する様々な後方支援活動、そのために国民・自治体の動員を求めることを含む内容となるといわれている。
 このように実際に戦争できる体制をつくるために、国民に犠牲を強いる有事立法を制定する作業が進められているのである。これは戦争を放棄し、武力の行使及び武力による威嚇をいずれも禁止し、全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有することを宣言した日本国憲法に明白に違反する。
 私たち自由法曹団は、このような新ガイドライン及び有事立法を断じて容認することはできない。有事立法の制定作業を直ちに中止するよう政府に求めるとともに、新ガイドラインと有事立法制定に反対して、平和を愛する国民と広く連帯して全力を挙げてたたかうことを決意する。

一九九八年三月二八日
自由法曹団常任幹事会