<<目次へ 【決 議】自由法曹団


警備公安警察の違法な警察活動の実態解明を求める決議

 一九九六年(平成八年)三月七日、長野県警察本部警備一課係長(警部補)岩下健美を窃盗容疑で逮捕し、同日付けで懲戒免職したとの長野県警察本部の発表は、大きな社会的反響を呼び起こした。その後の警察の捜査によって、この元警部補の犯行は、一九九五年(平成七年)一〇月一四日から翌九六年二月二〇日までの間に、三八カ所の建造物・住居に侵入し(うち未遂一件)、八八一名の被害者から総額一〇〇〇万円を超える金品(物品の点数七、三九一)を窃取したものであることが明らかになった。
 長野地方検察庁は、このほとんど全てを起訴し、長野簡易裁判所は懲役二年の実刑判決を言い渡したが、この判決は、元警部補の供述を警察・検察庁が丸のみにした結果、個人的な利欲的動機に基づく単独犯として、いわば「普通の事件」として処理された疑問の残るものであった。
そ もそもこの犯行については、事件発覚の当初から、警備公安警察の情報収集活動との関連が問題とされてきた。また、盗品の多さやその大胆な犯行の手口から、被害者も実況見分にあたった捜査官も、複数の者による犯行ではないかとの判断を示していた。さらに犯人と遭遇したヤマニビル管理人は、共犯者らしき者を見かけたと証言していた。
 それにもかかわらず、刑事判決は、これらの疑問にはなんら答えなかった。
今回、被害者二七名が原告となって提起した国賠請求訴訟(長野地方裁判所平成九年(ワ)第一七〇号)は、これらの疑問を解明し、真相を究明するためのものである。
 真相を究明するための原告らの求釈明に対して、被告長野県と国は、刑事判決にしがみついて、真摯な態度を示していないが、被告岩下は、原告らの求釈明に対して次のような衝撃的な事実を明らかにした。

  1. ヤマニビルでの犯行(被害者は自治労連、学習協、農民連。他に新日本婦人の会長野県本部、長野県商工団体連合会が入居している。外出中の管理人家族が帰宅して、犯人に遭遇した)及び日本民主青年同盟長野県委員会事務所に対する犯行は、警備一課の他の警察官と二名で侵入、物色したものであること。
  2. 日本共産党地区委員会所在地の管轄署内に五名一班の専従体制の二係が設置され、日常的に共産党、民青の組織実態の解明、協力者獲得作業に取り組んでいること。
  3. 岩下は、在職中、警察大学校で、本庁公安一課・警備企画課主催の講習(共産党員、民青同盟員に対する獲得作業・運営、写真・尾行等の訓練などを内容とする)を三度(いずれも約一か月間)受けていること。
  4. 組織実態解明の成果によって、警備一課課長賞を数回受賞していること。

 今回被害を受けた政党、青年団体、労組、業者団体、研究所、合唱団、学習協会、保育所等の団体は、いずれも、日本国憲法のもとで適法に組織され合法的に活動しているものであって、警察の日常的な監視下におかれ、組織実態解明の対象にされるべきいわれは全くない。また、権力から自由で平穏な個人生活は、民主社会における基本的な価値である。今日、日本の警備警察が行っている情報収集活動、協力者獲得工作等は、日本国憲法のものとでの民主的社会の基礎を揺るがす組織的犯罪ともいうべきものである。被告岩下元警部補の犯行は、この組織的犯罪の一端が露見したものである。
 自由法曹団は、このような秘密警察の根絶のために闘う決意を表明するとともに、裁判所がこの国賠訴訟を通じて、違法な警備警察活動の実態および国と県の責任を解明するよう求めるものである。
右決議する。

一九九八年一〇月二六日
自由法曹団一九九八年長野総会