<<目次へ 【決 議】自由法曹団


労働者派遣法改悪案に反対する決議

  1. 本年一〇月六日、政府は中央職業安定審議会(中職審)の答申を受けて「労働者派遣法の一部を改正する法律案」(派遣法案)を国会に提出した。
     今回の派遣法案は、港湾、建設、警備そして当面の間の製造業を除くすべての業務を派遣労働の対象として自由化しようとするもので、ここでは労働者保護のための直接雇用の基本原則は全面的に覆えされている。これは派遣労働そのものの性格を根本的に転換し、新しい制度を創設しようとするものである。そもそも一九八六年の労働者派遣法は専門的な知識、技術、経験を要する専門職業務に、雇用と使用を分離する派遣を認めたが、これはあくまでも直接雇用の基本原則の特例としてであった。この原則を根本から覆すネガティブリスト化は容認できない。また法案は、当初はネガティブリストとして港湾、建設、警備の三業務に限られていたところ、強い反対のなかで製造業務が加えられたが、附則でしかも「当分の間」に限定されている。いずれは製造業務も自由化しようという法形式である。派遣労働が専門的知識、技術、経験を要する業務に制限されている今日でさえ恒常的長期派遣が一般的となり、さらに違法派遣による常用労働の派遣労働への置き換えが拡がっている。こうした事態のなかでネガティブリスト・原則自由化が認められるなら、常用労働に代替する低賃金・無権利の派遣労働が、人件費削減のため際限なく拡がることになる。正規常用雇用から無権利な不安定雇用に労働者を追いやり、人間らしい労働と生活を奪うこうした法改悪は到底容認できない。

  2. 今回の法案で拡大される新たな派遣は、派遣期間が一年に限定されているということが最大の特徴とされている。しかし、いくら派遣期間を一年に限り更新を認めないものとしても、業務の性質が臨時的・一時的なものであることが要件とされていないため、恒常的な業務であっても、実際には「事業所」や「業務」を形式的に変更してしまえば何度でも事実上の繰り返しが可能であり、期間制限を簡単に免れうる。また、派遣期間終了に当たり派遣労働者が派遣先に同一の業務に従事することを希望した場合の派遣先の雇用継続の努力義務を定めるだけでは、実際には一年に限定されることなく、日常的・恒常的な長期派遣に道を開くおそれが大きい。今日すでに派遣を許されない業務について違法派遣が広範に広がっており、労働行政もこの実態を規制できないでいることを踏まえると、明確で一義的な禁止条項と共に、これに違反する場合に労働契約関係を創設するなど厳しく責任を課する条項なしには一年の限定を実際に守らせることはできない。
     また、政府は今回の派遣法案がILO一八一号条約「民間職業紹介所条約」の趣旨にそうものと主張している。しかし同条約では派遣労働者のプライバシー保護、平等待遇、社会保険適用の促進、中途解除に対する法規制の強化など派遣労働者保護の徹底を求めているが、これにそう実効ある権利保障の規定も欠いている。

  3. かってない深刻な不況のもと、失業率が統計をとり始めてから最大の記録を更新し続けている。この不況を克服するためには、なにをおいても、雇用を拡げ労働者の賃金を上げ、消費を拡大することが求められている。こうしたなかで、派遣労働の対象業務を原則自由化し、すべての業務について常用労働を低賃金の派遣労働に置き換えることは、失業率をいっそう高め、労働者の収入を大幅に切り下げ、そのことによって、消費をますます縮小して不況を極限まで深刻なものにすることになる。ひたすら目先の人件費削減のみを追い、あとは野となれ山となれという、こうした愚かな目論みを許してはならない。
     私たち自由法曹団は、先の国会で可決された労働基準法の全面改悪による裁量労働制、変形労働制などの職場への導入を許さず、労働者の権利を擁護する活動に取り組むと共に、派遣法改悪を絶対に許さない立場で全力を尽くすことをここに決議する。

一九九八年一〇月二六日
自由法曹団一九九八年長野総会