<<目次へ 【決 議】自由法曹団


修正策動を許さず、盗聴法の廃案を求める決議

 自民・自由・公明の三党は、四月二八日、衆議院法務委員会において、「組織犯罪対策法案の参考人質疑日程を委員長に白紙委任する動議」を強行可決し、さらに五月一四日、同法務委員会は一八日から審議に入ることを強行可決した。三党は、いずれも理事会合意のないまま審議日程を強行したものであり、国の司法制度の根幹にかかわる事項等を審議する法務委員会において、このような議会制民主主義を尊重しない暴挙がなされたことに対し、強く抗議する。
 公明党は、昨年の通常国会とその後の臨時国会において、会期末の盗聴法案の取扱いについて、民主・共産・社民党とともに継続審議に反対し、廃案を求める態度をとってきた。にもかかわらず、四月二七日の新ガイドライン法案について自民党、自由党とともに衆議院本会議で採決を強行するや、翌二八日の衆議院法務委員会で審議強行の暴挙にでた。浜四津参議院議員は、市民集会で「盗聴法案は憲法違反の疑いがある」と述べたことがあるが、盗聴法はいかなる修正をほどこしても憲法の保障する「通信の秘密の保障」「プライバシーの権利」「令状主義の原則」を侵害する違憲立法であり、公明党の過去の言動からすれば、方針の転換は、まさに党利党略と非難されてもやむをえないものである。
 三党による修正案が国会に提出されようとしている。報道によれば、盗聴の対象犯罪を約一〇〇種類から半減するというものであり、盗聴法の本質的違憲性を払拭するものではない。法案は、「予備的盗聴」「事前盗聴」「別件盗聴」を認めるという無制限・広範な内容であり、国民のプライバシーの権利は重大な危機に立たされ、監視国家が出現することになる。
 この間、アメリカ自由人権協会副理事長のバリー・スタインハード氏が来日して講演したが、アメリカでは盗聴制度に今、国民による批判が高まってきており、「日本もアメリカの轍を踏まないように」との希望を述べた。日本の盗聴法案は、アメリカが三〇年かけて徐々に作ってきた盗聴法の法体系を一挙に超えるものであり、これからさらに開発の進む通信設備全ての盗聴が可能なものである。インターネットなどに対する盗聴手段、方法、令状による特定方法など、一切国民に知らされることなく法案の成立の策動が進められていることも、断じて許すわけにはいかない。
 四月二八日の法務委員会の参考人質疑では、盗聴法により行政警察と司法警察の概念が曖昧になり、強制力を持った行政警察活動を認めることになり、広範な人権侵害が発生する危険性も指摘された。
 警察は、日本共産党国際部長宅の電話盗聴事件について、「警察による組織的犯罪であった」との判決が確定したにもかかわらず、その事実を一切認めようとせず、「電話盗聴は過去も現在もしていない」との警察庁長官の国会答弁に終始している。このような警察に盗聴法を与えることは、国民が人権侵害の危険に一層さらされることになり、監視国家社会をつくり出すことになる。
 わたしたちは、盗聴法案はいかなる修正もその危険な中味を払拭するものではないことを重ねて強調し、公明党をも含め、盗聴法案を廃案とするため野党が共同して闘うことを求めるものである。
 右、決議する。

一九九九年五月二四日
自由法曹団一九九九年研究討論集会