<<目次へ 【決 議】自由法曹団


憲法の明文改悪を阻止するため奮闘する決議

 「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行う」ことを目的とした憲法調査会が衆参両議院に設置され次期通常国会から審議が始まろうとしている。この調査会は、議案提案権を持たず、調査期間は五年を目途とすることが申し合わせられている。
 憲法調査会の設置の意図が、「憲法改正」の発議権をもつ国会に憲法明文改悪の足場を築こうとするところにあり、同時に、明文改憲の焦点が憲法の平和的原則、特に第九条にあることはこの間の改憲推進勢力の動向から明らかである。そして、自由党・小沢一郎党首や民主党・鳩山由紀夫代表等が雑誌に改憲試論を公表したのをはじめ、テレビ・新聞などを巻き込んだ改憲への策動は世論の喚起を含め本格化しようとしている。 
 ところで、新ガイドライン及び「戦争法」は、アメリカの軍事覇権に対する支援と日本の独占大企業の海外権益を擁護する立場から、日本に対して何の武力攻撃もしていない外国に対する戦争に参加することを企てるもので、しかも憲法前文及び第九条を著しく侵害し、平和的に生きることを内外に宣言した日本国憲法の理念を正面から攻撃するものである。そして、政府は、実弾砲撃演習や日米共同演習及びこれらに伴う自治体・民間協力など「戦争法」を具体化しながら、日米共同作戦計画や相互援助計画の策定を急いでいる。さらに、日本有事に際して民間や自治体の施設・資産・労働力をも動員するための有事立法の制定や、PKO法の成立時に憲法に抵触する危険性を指摘されたPKF本体業務の参加凍結解除なども、自自公連立政権の政策合意として着々と準備され国会に提出されようとしている。 
 こうした「戦争をする国」へ向けた体制づくりは、平和主義・憲法九条のいっそうの骨抜きをめざすものであると同時に、それにとどまらず基本的人権・民主的統治機構・司法・地方自治全般に対するおびただしい攻撃を伴うものであり、国民の生活と権利は今後いっそう蹂躙される危険があると指摘せざるをえない。
日本国憲法の平和と民主主義の諸原則は、二つの世界大戦の教訓を踏まえた国連憲章など、二〇世紀に培ってきた世界平和と人権向上の努力を受け継いだものであって、その先駆性は明らかである。これを二一世紀に向けて継承・発展し、完全実施させることこそ、日本が果たすべき人類進歩へのかけがえのない貢献と言うべきである。したがって、明文改憲の策動を許さず、二一世紀に向けて平和憲法を世界に広げる突破口を開く必要があり、私たちはその先頭に立つ責務がある。
そのためには、憲法調査会の動きを監視・批判するとともに、「押しつけ憲法論」「環境権・プライバシー権のための改憲論」など洪水のように流される議論に対し、的確に批判・反論していくことが必要である。加えて、「戦争法」阻止などのたたかいの中で作り上げてきた広範な人々との共同を発展させ、憲法明文改悪を許さない国民の壮大な戦線を構築することが必要である。そのためにも、憲法の平和・民主・人権の諸原則の持つ現代的意義とその先駆性についての確信を多くの国民の間に広げるとともに、政治・経済・社会・職場などあらゆる分野で完全に実施させていく運動を格段に強めることが重要である。
 私たちは、この国の平和と民主主義を擁護・発展させるために、憲法の明文改悪を阻止すべく全力を挙げて奮闘することを決議する。

一九九九年一〇月二五日
自由法曹団一九九九年総会