<<目次へ 【声 明】自由法曹団


対米支援の基本計画決定に抗議し、自衛隊の海外派兵に反対する声明

 去る11月16日、「テロ対策特別措置法」の基本計画が閣議決定され、この20日にも、海上自衛隊の艦艇がインド洋方面に出航するという。
 基本計画によれば、自衛隊の活動内容は、補給艦2隻及び護衛艦3隻によりアフガニスタンでの戦闘行為のためアラビア海に展開する米軍空母艦隊への燃料等の補給・輸送が、また、航空機8機により日本(横田基地等)とグアム島・シンガポール、ディエゴ・ガルシア島間などの空輸がそれぞれ想定されている。さらには、修理・整備、医療、港湾業務と様々な支援活動やインド洋での米兵等の捜索救助活動が含まれている。自衛隊は、いずれも米軍等の戦闘作戦行動に組み込まれて活動することになるのであって、武力行使と一体の活動を展開することとなる。
 海外で実際に進められている戦争に参加するため、武装した自衛隊が海外派兵されるのは戦後初めてのことである。このような自衛隊の海外派兵は、国際紛争を解決するための戦争を放棄し、武力行使を禁止した憲法に明白に反する。
 今回決定された基本計画については、去る11月1日に日米安全保障高級事務レベル協議で外務・防衛関係者による調整委員会とワーキンググループが設置され、そこで策定作業が進められてきた。さらに、米軍と自衛隊が意見調整・情報交換し、実際の軍事活動につなげる仕組みとなっているという。基本計画の策定とその実施は、米軍及び自衛隊の主導によって決定されている。実際、この基本計画の具体的な実施内容は、防衛庁長官が作成する実施要項にゆだねられている。このように、国会が一切関与することなしに、基本計画が策定され、それが具体化されようとしているのであって、それ自体民主主義を危うくするものといわなければならない。
 そもそも、米軍等によりアフガニスタンで進められている戦争は、国際法で禁止されているテロに対する報復にほかならない。このため、何ら罪もない多数の市民が犠牲とされ続けている。そして、アフガニスタンでは、100万人にも及ぶ人々が飢餓状態におかれ、餓死の危険にさらされているという。いま必要なことは、アフガニスタンでの戦争を1日も早くやめさせ、食料や衣料、医療などの支援を緊急に行うことである。米軍等に対する軍事支援のために自衛隊を海外派兵することは、全くこれに逆行するものである。まさに百害あって一利なしである。なお、基本計画では、被災民救援のための生活関連物資の提供のために自衛隊の掃海母艦及び護衛艦各一隻をパキスタンやインド洋に派遣するというのであるが、武装した自衛隊の艦船が必要とされる理由は全くない。
 このような基本計画は、あえて自衛隊を海外派兵し、これを国際的に誇示しようとするものにほかならないのであって、平和憲法のもとで絶対に許されるものでない。しかも、政府は、PKO協力法を改悪し、有事立法を準備するなど、二重にも三重にも憲法を蹂躙しようとしている。
 私たち自由法曹団は、日本政府に対して、いまこそ憲法に基づく非軍事的活動を求めるともに、これに逆行する対米支援の基本計画閣議決定に強く抗議しその撤回を求め、自衛隊の海外派兵に断固反対するものである。

2001年11月17日
由法曹団常任幹事会