<<目次へ 【声 明】自由法曹団


劉連仁事件の控訴断念を求める声明

 本年7月12日、東京地方裁判所民事第14部(西岡清一郎裁判長)は、原告劉連仁氏が、国を被告として損害賠償を請求した訴訟において、劉氏(氏は昨年9月に亡くなり、遺族が訴訟を承継)の請求を全額認める画期的な判決を言い渡した。
 劉氏は1944年9月日本軍の指揮によって中国大陸で強制連行された後、北海道の炭坑において強制労働に従事させられ、敗戦直前に生死を賭けて炭坑から逃走した後も日本の敗戦を知らず、1958年2月に至るまで、北海道の原野を逃走しながら、かろうじて生き延びた。
 判決は、第二次世界大戦において日本政府が行った中国人に対する強制連行・強制労働の実態を、国策として強制的に行われたものであると明確に断じた。
 そして、劉氏についても、自らの意思に反して一方的かつ強制的に連行され強制的に炭坑で労働に従事させられたこと、劣悪な労働条件下における過酷な労働で逃走を余儀なくされたこと、13年間の長期にわたる逃亡生活で筆舌を尽くしがたい過酷な体験を強いられたことなどを、いずれも事実として認定した。
 そのうえで、国は、劉氏を強制連行し、強制労働に服せしめたという先行行為を行いながら、敗戦後も13年にわたって逃走することを余儀なくされた劉連仁氏に対して救済義務を怠ってきたとして、国家賠償法に基づく損害賠償請求権を認めた。国側の主張する除斥期間の適用については、本件について除斥期間を適用することは著しく正義、公平の理念に反し、その適用を制限することが条理にもかなうとして、国側の主張を排斥している。
 この判決は、第二次世界大戦における日本政府の戦争責任を事実として正面から認めたという点において画期的な判決であり、さらに戦後救済義務を尽くさなかったことについて法的責任も認めたもので、裁判所が日本国憲法上求められている人権救済機関たる役割を真に果たし得たという点でも、画期的なものである。
 現在、わが国は、「新しい歴史教科書をつくる会」による歴史教科書問題や、小泉首相の靖国参拝問題などで、日本の侵略政策によって犠牲となった中国や韓国との関係が、急激に悪化している状況にある。このような状況において国が控訴をすることは、中国や韓国だけではなく、アジア各国、そして世界中に対して、第二次世界大戦における自国の戦争責任を否定する態度となることを、深く自覚すべきである。
 われわれは、国が日本の戦争責任を正面から認め、この判決を厳しく受け止めて控訴を断念することを要求する。
 あわせて日本の侵略による戦争被害者すべてに対し真摯な謝罪・賠償をするべきである。

2001年7月17日
自由法曹団 団長 宇賀神   直