<<目次へ 【声 明】自由法曹団


アメリカ等による報復戦争に抗議し、「テロ特別措置法」等の撤回を求める声明

一 根拠も道理もない報復戦争の即時停止を求める

 アメリカ・イギリスは10月8日未明、アフガニスタンに対する大規模な空爆を行い、報復戦争に突入した。両国は報復戦争の標的がテロリストであり、民間人ではない旨弁明するが、連日の空爆により病院や、地雷撤去作業を行うNGO等が攻撃され、既に罪なき犠牲者が新たに出ている。今後も報復の連鎖が繰り返され、多数の犠牲者が生まれることが予想される。
 もちろん、9月11日の同時多発テロは数千人の犠牲を出す残虐な無差別テロであり、絶対に許すことができない犯罪行為である。しかし、軍事報復はテロ根絶に役立たず、新たに多数の犠牲者を出すもので何ら正当化することはできない。
 21世紀、再び人類に多大な惨禍をもたらす報復戦争に、私たちは断固抗議する。
 同時に、この報復戦争は、国際法上何ら正当化されない違法行為である。国連憲章は、自衛の場合(憲章51条)及び国連安全保障理事会の決議により行われる国連の軍事的措置の場合(憲章42条)を除き、武力行使を禁止している(憲章2条4項)。
 本件に関し、国連の軍事措置が発動されていないことは明白である。またアフガニスタンはアメリカを一度たりとも武力攻撃しておらず、ビンラティン氏不引渡を理由としてアフガニスタンを攻撃することは憲章51条の自衛権行使に該当しないこと明らかである。アメリカ・イギリスの武力行使は国連憲章により許容されない違法行為である。
 私達はこのような根拠も道理もない報復戦争の即時停止を強く求める。
 また、国連は、武力行使を原則禁止した国連憲章を遵守しなければならない立場にあり、断じて報復戦争を容認してはならない。国連は自らに課された役割を発揮し、今こそ国際法違反の報復戦争の即時停戦を勧告し、テロ問題の平和的解決のためにイニシアティブを発揮すべきである。

二 憲法を蹂躙する日本政府の報復戦争参戦策動に反対する

 小泉内閣は、去る10月5日、アメリカの報復戦争に自衛隊が参戦することを目的とした、いわゆる「テロ対策特別措置法」案及び自衛隊法「改正」案を閣議決定し、国会に提出した。そして、報復戦争が始まるや「強く支持」することを表明し、報復戦争への早期参戦を実現するために、同法案をほとんど何の国会審議もせずに今月19日には成立させようと、策動を強めている。
 これは、日本国憲法9条を完全に蹂躙する暴挙であり、私たちは強く抗議し、白紙撤回を求める。
 日本は本来、国際紛争の解決手段として武力を用いないことを誓約した憲法9条及び前文の精神に立脚して、テロ問題の法的・平和的解決に尽力すべき立場にある。しかるに、平和的解決を真剣に追求することなく、報復戦争を全面的に支持し、これに参戦しようとするのである。このような報復戦争への参戦は、日本が国際法違反行為に明確に加担することを意味するとともに、武力の行使・武力の威嚇を禁止し、戦争を放棄した憲法に明確に違反するものである。
1 日本の参戦を正当化する根拠は一切存在しない
 「特別措置法」案は、国連安保理決議1267,1269,1333号各決議等が「国際的なテロリズムの行為を非難し、すべての加盟国に対しその防止等のために適切な措置を求めていることにかんがみ」、「我が国が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与する」ことを目的として掲げている。
 しかし、法案が指摘する一連の国連決議が加盟国に求める措置は非軍事的措置に限られ、軍事措置を加盟国に求めた決議は何ら存在しない。上記決議は日本の軍事的対応を何ら正当化するものではなく、日本の軍事的対応は国連憲章2条4項に明確に違反する。
 そもそも日本国憲法は、侵略戦争の反省のうえに、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久に放棄する。」とし、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。」と規定しており、報復戦争への日本の参戦はこの憲法の規定に明確に違反し、絶対に許されない。
 仮に、今回の報復戦争を自衛権行使であるとするアメリカの弁明を前提としても、日本国憲法9条は集団的自衛権行使を明確に禁止しているのであり、集団的自衛権行使によって日本の参戦行為を正当化することもできない。
 国際法上も憲法上も、日本の参戦を正当化することは到底許されないのである。
2 「特別措置法」案の重大な内容
1)「協力支援活動」「捜索救助活動」は明確な参戦行為
 「特別措置法」案は「協力支援活動」として外国の軍隊等に対する補給、輸送、修理・整備、医療、通信、空港・港湾、基地業務を行うとしている(3条・5条・別表第一)。
 また、戦闘参加者に対する「捜索・救助活動」を自ら行うと共に、他の軍隊の「捜索救助活動」への支援として補給、輸送、修理・整備、医療、通信、宿泊、消毒を行うとしている(3条・6条・別表第二)。「輸送」の対象には武器・弾薬も含まれており、航空機に対する給油・整備も「戦闘行動のために発進準備中の場合」以外は行いうることとなっている。これらは戦闘行為に不可欠な兵站行為であり、これら行為が武力行使と一体の活動に該当することは明白である。たとえば「海戦法規に関する宣言(ロンドン宣言)」(1909年)は、武器弾薬の輸送をする船舶が公海上で拿捕の対象となるとしており、武器弾薬の輸送が国際法上参戦行為とみなされることは国際的常識である。このように、特別措置法案の規定する「協力支援活動」「捜索救助活動」は明確な参戦行為である。
 これが参戦行為に該当しないとする政府の立場は、主権者国民を愚弄する詭弁そのものである。
2)地理的限定なき自衛隊派兵
 「特別措置法」案は、周辺事態法における「日本の領土・領域と日本周辺の公海とその上空」という自衛隊の海外派兵についての漠然たる制約すら取り払い、外国領域も含め地球上どこでも自衛隊が海外派兵することを認めている。これが個別的自衛権の名のもとに正当化しえないことは明白であり、「自衛権」の枠組みを公然と踏み超え、地球規模での歯止めなき日本の軍事行動・海外派兵に道を開くものである。法案は、現に戦闘行為が行われておらず、戦闘行為が行われることがないと認められる地域に「限定」するとしているが、戦闘地域と非戦闘地域を截然とわけることは不可能であるうえ、報復の連鎖が予想される今回の事態にあって法案の「限定」など意味をなさないことは明白である。
 アメリカは10月8日、国連安全保障理事国に対する書簡でアフガニスタン以外の国や組織にも軍事攻撃を加える可能性がある旨通告しており、アメリカが地球規模での戦争を引き起こすことが憂慮される。「特別措置法」案は、このようなアメリカの地球規模の報復戦争に対し、アメリカの求めるがまま、どこまでも参戦するという極めて危険な事態に道をひらくものにほかならない。このような海外派兵・参戦は憲法9条を完全に踏みにじるものであり、日本を完全に地球規模での「戦争をする国」に変質させるものといわざるを得ない。
3)武器使用の緩和
 「特別措置法」案は、自衛官の武器使用を「自己または自己と共に現場に所在する他の自衛隊員もしくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命または身体の防護のためにやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合」に認められるとし、PKO法・周辺事態法に比べても大幅な武器使用要件の緩和を規定している。また武器等を防護するための武器使用(自衛隊法95条)も排除していない。
 これは「自己保存のための必要な最小限度の「武器使用」は憲法9条1項で禁止された『武力行使』にあたらない」とする政府統一見解(1991年9月27日)すら明らかに逸脱するものである。法案の許容する武器使用はいかなる意味でも正当防衛を超えており、これが憲法9条が禁止する「武力による威嚇又は武力の行使」に該当することは明白である。
4)国会決議も不要とする参戦体制づくり
 「特別措置法」案に基づく日本の軍事行動は、基本計画の閣議承認と防衛庁長官の実施要項策定により直ちに実行でき、国会へは事後報告で足りるとされている。これは、アメリカの行ういかなる対象・いかなる地域・いかなる形態の戦争に対しても、国会の承認なくして内閣の独断で参戦を決定・実行しうるというものであり、主権者国民の民主的コントロールが及ばないまま、歯止めなき戦争に国民を巻き込むものである。これは、国権の最高機関である国会をないがしろにするものであり、民主主義の否定にほかならず、到底許されない。
3 自衛隊法改悪の問題点
 政府の提出しようとする自衛隊法「改正」案は、テロ対策を理由に自衛隊が自衛隊施設や米軍基地に関する情報収集・警護出動を行う道を開き、武器使用も認めるとしている。
 これは自衛隊の事実上の治安出動を現行自衛隊法上の緊急事態でない場合にまで拡大し、自衛隊が常時国内秩序に対し銃剣をもって監視と抑圧の体制を強めることであり、明らかに違憲である。また、「改正」案は、防衛機密漏洩に対する罰則強化を盛り込み、軍事機密を理由に国民の知る権利を抑圧することも盛り込んでいる。これは有事立法・国家機密法への道を開く危険性を持つものである。
4 このように、「特別措置法」案・自衛隊法「改正」案は、憲法9条を完全に蹂躙するものであって断じて容認できない。小泉内閣の上記法案の閣議決定・国会提出は、小泉首相ら閣僚が公然と国務大臣の憲法尊重擁護義務(憲法99条)を無視して行ったものであり、憲法98条に照らして到底許されない。自由法曹団は、閣議決定に強く抗議するとともに、撤回を強く求め、日本政府のいかなる参戦策動にも反対する。

三 戦争こそは、最も残虐な人権侵害である。20世紀に人類を襲った未曾有の戦争被害に対する深い反省から国連憲章と日本国憲法は生まれた。今ふたたび、世界と日本は戦争の惨禍に直面している。今こそ人類が英知と理性を発揮すべき時である。

 自由法曹団は根拠も道理もない報復戦争を直ちにやめさせ、憲法9条を蹂躙する日本の参戦を阻止するために、国内外の平和を希求する全ての人々と連帯して闘うものである。

2001年10月11日

自 由 法 曹 団
団 長  宇 賀 神    直