<<目次へ 【声 明】自由法曹団


声明(インド洋への「イージス艦」派遣および米国のイラク攻撃を支援する一切の措置に反対する声明)

1 「テロ対策特別措置法」の基本計画にもとづいて、昨年11月以降、インド洋に日本の自衛艦が派遣され、「アメリカ・イギリスの艦船の護衛、燃料の補給等」の任務にあたっているが、本年11月19日、政府はさらに、基本計画の6ヶ月間再延長を閣議決定した。そして、12月4日、これまで派遣していた護衛艦に代えて、今月中旬にも、海上自衛隊の最新鋭イージス艦「きりしま」をインド洋に派遣しようとしている。
 しかし、イージス艦は、高いレーダー探知能力と強力な防空システムをもつ自衛隊最大の護衛艦である。ミサイル、航空機等の飛翔目標を300キロ以上の範囲で最大約200個までキャッチするレーダーと、12個以上の目標に対応できる迎撃用ミサイルを搭載している。このようなイージス艦がアフガニスタンの「テロ対策」にとって無用であることは言うまでもない。

2 また、イージス艦は、本来、米海軍の空母を相手国のミサイルや航空機の空中よりの攻撃から護衛するために開発、建造された艦艇である。護衛隊群の旗艦として海上戦闘における本格的な指揮管制能力をもつ。イージス艦がインド洋に派遣されることになれば、米国の要求はエスカレートし、派遣されたイージス艦は米空母や米艦隊の護衛の任務につくことを免れないであろう。
 海上自衛隊と米海軍との間には情報を共有するデータリンクのシステムがあり、イージス艦の取得した情報は瞬時に米艦艇に送信される。米艦艇がイラクへの全面的な空爆を開始した場合には、日本のイージス艦は米国の戦争体制に組み込まれ、まさに米軍の武力行使と一体化した作戦行動に参加することになるのである。それは米国のイラク攻撃に対する「間接支援」ではなく「直接支援」である。
 こうした米艦艇に対する自衛隊の支援は集団的自衛権の行使そのものであり、これを許せば国際紛争を解決するための戦争を放棄した憲法第9条及び前文の精神は完全に蹂躙され、日本は本格的に「戦争をする国」の第一歩を踏み出すことになる。

3 同時に、政府は、米国のイラク攻撃の容認を前提にして、イラクの「復興支援」に日本が関与する新法の制定や、イラクがペルシャ湾に機雷を敷設することを想定した掃海艇派遣の可能性を検討しているという。しかし、イラク問題については、国連決議1441が採択され、平和的解決に向けた道筋が開かれようとしている。この間の政府の対応は、平和を求める世界の世論に真っ向から反するものである。

4 私たち自由法曹団は、イージス艦の派遣はもとより、日本政府が行う米国のイラク攻撃を支援するあらゆる措置に断固反対し、日本政府に対して、インド洋に派遣している自衛艦を直ちに引き揚げるとともに、憲法の平和主義に基づく平和外交を推進し、平和を求める諸国民と共同して米国の戦争拡大を阻止することを求めるものである。

2002年12月12日

自 由 法 曹 団

団 長 宇 賀 神   直