<<目次へ 【声 明】自由法曹団


教育基本法「改正」に対する中央教育審議会最終答申に反対する自由法曹団
団長声明

2003年3月20日
自由法曹団 団長
宇賀神 直

 中央教育審議会は本日総会を開き,「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興計画に在り方について」の「最終答申」を発表した。
 政府は,通常国会後半には法案を提出すると明言している。

 自由法曹団は,2002年11月14日の中央教育審議会「中間報告」に対して,意見書「『国家戦略としての教育改革』をめざす教育基本法「改正」に反対する」を中央教育審議会に提出し,「中間報告」は「国家戦略としての教育改革」をめざすものであり,愛国主義・国家主義と能力主義が貫かれていること等の批判をした。更に、広範な市民,教育関連学会,日本弁護士連合会なども「中間報告」に対して強い批判を行ってきた。

 「最終答申」は中間報告にあった「国家戦略としての教育改革」や「日本人としてのアイデンテイテイ」などの文言を使うことを巧みに避けている。しかしながら「最終答申」でも「日本人としての自覚」「郷土や国を愛する心」「新しい『公共』」が強調されているし,教育目標としての「たくましい日本人の育成」も変わっておらず国家主義と能力主義が貫かれていることは「中間報告」と何ら変わっていない。
 その上,「最終答申」は,男女共学規定の削除を明記したこと,国・地方公共団体の責務に関して,教育基本法第10条の「『必要な諸条件の整備』には教育内容等も含まれることについては,既に判例により確定している」とした点では「中間報告」よりも一層憲法に違反する内容になっている。まだ男女共学でない学校が存在しており,決して「性別による制度的な教育機会の差異」はなくなっていない現状の中で男女共学規定を削ることは憲法の男女平等原則に反する。また旭川学力テスト最高裁判決は教育内容及び方法に関する行政への介入は「必要かつ合理的と認められる」場合に限って是認しているのであって,教育内容も「諸条件の整備」に含まれるとして,教育行政が無制限に教育内容に介入・干渉することを許すものではないし,このことが判例上確定しているとは到底いえない。これは教育振興基本計画策定を教育基本法上位置づけ教育内容を統制することを正当化する理屈付けに外ならず,憲法第23条の侵害につながりかねない。

 「最終答申」は教育基本法に貫く「個人の尊厳」「人格の完成」「平和的な国家及び社会の形成者」などの理念は今後も大切にしていくと述べているが,このことと「愛国心」「新しい『公共』」の強調・強制は大きな矛盾をはらんでいる。即ち,今日のような国際的な戦争の危機を迎えている時にアメリカ追随の外交と有事法制の制定など「戦争する国づくり」が政府により進められている中で「愛国心」「新しい『公共』」の強調・強制は「戦争協力」を強いることであり,戦争に反対する個人の思想・良心の自由を侵害し,憲法第19条に違反することにもなる。

 「最終答申」は,今日の教育の危機的状況を指摘するが,これらが憲法や教育基本法をないがしろにしてきた政治や教育行政に原因があることに目をつぶり,逆に教育基本法の「改正」により解決できるかのように描いているが,本末転倒である。
 今こそ,教育基本法の理念や精神を十分に生かした教育即ち子どもの権利を基本にすえて,30人学級の実現,教育施設の充実,私学助成の拡充,奨学金制度の拡充,教職員の長時間労働解消などの労働条件の向上等の「諸条件の整備」こそが求められている。即ち教育基本法の「改正」ではなく教育基本法を教育に「生かす」ことこそが重要である。

 自由法曹団は,教育基本法「改正」に強く反対し,政府が法案を国会に提出することを断念することを求めるともに,教育基本法を「生かした」教育行政が行われることを求めるものである。

以上