<<目次へ 【声 明】自由法曹団


「憲法改正国民投票法案」等の国会提出に断固反対する

 自民党は、憲法改悪の具体的な手続を定める「憲法改正国民投票法案」及び国会法改正案を今国会に提出する方針であり、公明党もその提出を容認している。提出される法案は、2001年11月に憲法調査推進議員連盟(中山太郎会長)が発表した法案がベースになるという。

 これら手続法案の提出が、憲法改悪に向けられていることは明らかである。
  政府・与党は、この間、アフガン戦争に際して海上自衛隊をインド洋へ派兵するとともに、イラク戦争では航空自衛隊・陸上自衛隊・海上自衛隊の海外派兵を強行し、この国を米国の侵略戦争に支援・協力する戦争国家へ変容させてきた。今国会では、米国の海外での戦争に自衛隊が武力行使をもって参戦し、国民を総動員する有事法制を完成させようとしている。敵対国家に対しては先制攻撃もためらわない米国の要求に応え、日米同盟の名のもとに米国に追随しようというのである。すでに集団的自衛権の行使を禁ずる憲法9条との矛盾は極限に達している。
 政府・与党は、その矛盾を取り払い集団的自衛権を自由に行使するため、さらには独自の海外派兵に道を開くため、憲法9条の明文改憲を目論んでいる。国会に設置された憲法調査会は、2005年1月には改憲の方向を打ち出す最終報告を発表するという。自民党は、先の総選挙で「憲法改正」を政権公約として掲げ、小泉首相は、2005年秋には党としての改憲案をまとめるように指示している。今回の「憲法改正国民投票法案」等は、こうした憲法改悪の手続を準備するものにほかならない。それは、これまで政府・与党が進めてきた憲法9条の蹂躙のうえに、9条自体を改悪する道筋をつくろうとするものである。

 準備されている手続法案は、こうした憲法改悪を目的としたものであり、そのために国民の意思を反映させない重大な欠陥を含むものである。
 その最たるものは、憲法の改正点が複数にわたった場合に、各項目ごとに改正案を提案するのではなく、全体を不可分のものとして改正案を発議し、いわばワンパケージで、国民投票に委ねるおそれのあることである。そのため、例えば、環境権の明文化と憲法9条の改悪をセットにして国民にその是非を問うことも可能となり、その場合には、「環境権の明文化には賛成だが、憲法9条の改悪には反対だ。」という国民は、その意思を正確に反映することができなくなる。
 その他にも、国会の「改正案」の発議から国民投票までの期間が短すぎ(60日以上90日以下)、「改正案」についての国民的議論の期間が保障されていないこと、「改正案」の承認に必要な国民の「過半数の賛成」の要件について、白票等の無効票を除いた有効投票数の過半数とされており、「改正案」の承認にとって最も緩やかな基準を採用していること、国民投票運動に関し、公務員、公団職員、教育者、外国人などの投票運動を禁じていること、新聞雑誌や放送事業者の報道の自由に不当な制約を加えていることなど、準備されている法案には様々な問題点を指摘できる。
 憲法改正手続は国民主権の具体化であり、主権(憲法制定権力)をもつ国民の意思が十分に反映されるものでなければならないのであって、このような手続法案は、憲法の国民主権の要請をないがしろにするものと言わざるを得ない。

 自由法曹団は、憲法改悪を目的とする「憲法改正国民投票法案」等の国会提出に断固反対するものである。

2004年3月13日

自由法曹団常任幹事会