<<目次へ 【声 明】自由法曹団


「裁判上の合意による敗訴者負担」を導入する「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」に反対する声明

 政府は、3月2日、「裁判上の合意による敗訴者負担」制度を導入する「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」を国会に提出した。

 経済界を中心とする一部の勢力は、国民の裁判所を通じた権利救済・実現の動きの抑制を図るため同制度の導入を行おうとしてきた。
 しかし、こうした動きに対して、国民的な規模で反対の声が上げられた。市民団体と日本弁護士連合会が集めた反対署名は110万筆を超え、昨年夏に司法制度改革推進本部が募集したパブリックコメントに寄せられた5000件超の意見の圧倒的多数は同制度に対する反対意見であった。
このような国民的反対の声を真摯に受け止めるならば、「敗訴者負担」の導入を取りやめることこそ本来取るべき道のはずである。

 にもかかわらず司法制度改革推進本部は、司法アクセス検討会の最終盤に「裁判上の合意による敗訴者負担」という国民を欺く制度を持ち出し、国民の意見を聞かないまま今回の法案をとりまとめ提出してきた。
 経済界を中心とする制度導入勢力は、今回の「裁判上の合意による敗訴者負担」制度の導入により「敗訴者負担」についての法制上の「お墨付き」を得て、労働契約・消費者契約・大企業と中小業者の契約に「敗訴者負担合意」を持ち込み、実質的な敗訴者負担制度の導入を図ろうとしているのである。
 就業規則等労働契約に「敗訴者負担合意」が持ち込まれると、労働者は解雇事件・賃金不払い事件・男女差別事件等自らの権利救済を裁判所に求めることが困難となる。労働者は労働契約に「敗訴者負担合意」があるからといってこれを拒否することは出来ない。生活の糧を得るために同条項を呑み込まざるを得ないのである。
 消費者契約に「敗訴者負担合意」が持ち込まれると、消費者は証券先物被害事件・製造物責任事件・消費者金融事件・欠陥住宅事件等の被害救済を裁判所に求めることが困難となる。
 フランチャイズ契約・商工ローン契約に「敗訴者負担合意」が持ち込まれると、現在においても極めて厳しい状況におかれているフランチャイズ被害者・商工ローン被害者は解決の道を奪われ、さらに困難な状況に放置されることになる。

 上記のような「裁判上の合意による敗訴者負担」の導入とこれを利用した「契約上の敗訴者負担合意」による実質的な敗訴者負担制度の導入を許すことは出来ない。自由法曹団は、「裁判上の合意による敗訴者負担」の導入を図る「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」に反対するとともに、あらゆる形での敗訴者負担制度導入に反対する取り組みを行っていくことを宣言する。

2004年3月13日
自由法曹団常任幹事会