<<目次へ 【声 明】自由法曹団


憲法9条を邪魔者扱いするアーミテージ発言に抗議する

 アーミテージ米国務副長官は、7月21日、自民党中川秀直国対委員長と会談し、「憲法9条は日米同盟関係の妨げのひとつになっているという認識はある」「国連安保理常任理事国は国際的利益のために軍事力を展開しなければならない。それができなければ日本の常任理事国入りは難しい」などと述べ、集団的自衛権の行使を禁じている憲法9条を見直すように促した(中川国対委員長の記者会見)。

 同副長官は、2000年10月、米国防大学国家戦略研究所特別報告「米国と日本、成熟したパートナーシップに向けての前進」(いわゆるアーミテージ報告)において「集団的自衛を日本が禁止していることは日米同盟の制約になっている」との報告を発表したのを皮切りに同趣旨の発言を繰り返すとともに、この間の自衛隊の海外派兵にあたっても、「ショウ・ザ・フラッグ」「ブーツ・オン・ザ・グランド」「逃げるな。お茶会ではない」など一連の発言によりアメリカの軍事行動に対して、自衛隊が出兵して、支援活動をすることを執拗に求めてきた。
 今回の発言は、先の参院選を通じて改憲を競い合う自民党や民主党が憲法「改正」を現実の政治日程にのせたことを受けて、国務省での会談という公式の場を通じて、日本の政権政党である自民党の国対委員長に対して直接に働きかけ、これまでよりさらに踏み込んで、日本における改憲への動きを加速させることを狙ったものである。

 しかしながら、こうした発言は、日本の憲法9条を改悪して、国連憲章違反の米国の軍事戦略に日本をより一層組み込もうとするものであって、とうてい容認できない。
 イラク戦争では、米国は、イラクが国連査察を無条件で受け容れ、査察による武装解除が現実に進んでいるもとで,それでもなおイラクが大量破壊兵器を保有し、フセイン政権にそれを破棄する意思がないと断定してイラク攻撃に踏み切った。そして、イラク国土から大量破壊兵器が発見されることもなく、イラクとテロ組織との結びつきも確認されないままイラクを占領し、いまだにイラク各地で戦闘行為を繰り広げている。米国が引き起こした侵略戦争が国連憲章違反であり、国連を愚弄して暴走する米国が国際平和の破壊者であることはいまや誰の目にも明らかである。
 今回のアーミテージ発言は、このような米国の危険な戦略に日本がより積極的に加担すること、そのために自衛隊の海外派兵に対する制約を取り払うことを求めたものに他ならない。

 日本国憲法は、日本の最高法規であり、戦争放棄及び戦力不保持を明記した憲法9条はそのもっとも本質的で中枢をなす条項である。憲法9条をどうするかを決めるのは主権者である日本国民なのであり、いかなる大国もこれに干渉することは許されない。
 自由法曹団は、自国の軍事戦略を強化するために憲法9条の改悪を要求するアーミテージ発言に強く抗議し、その撤回を求める。そして、この国のすべての政党、すべての国民が憲法9条についての様々な評価の違いがある人々もふくめて、米国の力に傲った不当な干渉行為を厳しく批判することを訴える。
 自由法曹団は、日本が米国の大義なき侵略戦争に加担するのではなく、憲法9条を擁護し、「平和の道」を選択すること求めて、平和を希求するすべての人々とともに闘うものである。

2004年7月30日
 自由法曹団団長  坂 本  修