<<目次へ 【声 明】自由法曹団


「周辺事態法」案の国会提出に抗議する声明

 政府は、本日(四月二八日)、新ガイドラインを実施するための周辺事態法案(「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」案)及び自衛隊法「改正」案を閣議決定し、国会に提出した。また、周辺事態にACSA(「物品役務相互提供協定」)を適用できるよう「改定」することを決定した。
 周辺事態法案は、アジア太平洋地域でのアメリカの戦争に日本が参加するためのものであり、「周辺事態」の範囲も限定されていない。周辺事態の名のもとに、アメリカの侵略戦争や軍事介入にも参加する道を開くものである。
 周辺事態法案によれば、日本は、海外での戦闘米兵の捜索・救難や船舶の臨検、後方地域支援活動など米軍と一体となった軍事活動を行うことになる。そのために、ACSAを「改定」して自衛隊と米軍との共同の軍事活動を強化するだけでなく、周辺事態法案は自治体や民間の協力を義務づけている。戦争のために、労働者・国民が動員されることになる。例えば、日本が水や燃料を提供し、日本のトラックや船が弾薬を輸送し、その弾薬を装備した米軍の戦闘爆撃機が、日本の民間空港を飛び立って、アジア諸国民を殺戮する可能性すら生ずる。
 また、自衛隊法「改正」案により、武器を装備した自衛隊の艦船が、在外法人の救出のために、海外に派遣される。日本がこのような軍事活動を行うこと自体、諸外国に対して武力による威嚇となりうる。
 さらに、今回の各法案は、自衛隊が部隊として武器を使用すること、すなわち、海外での武力行使を公然と認めるものである。これまで政府自ら憲法の禁止する武力行使になると説明していたにもかかわらず、これを一八〇度転換するものに他ならない。のみならず、新ガイドラインを具体化するために、現行法のもとで、海外での機雷の掃海まで実施しようというのである。これも明白な武力行使である。
 今回の各法案は、憲法九条が禁止している武力の行使、武力による威嚇を公然と認めるものであり、憲法違反であることは誰の目にも明らかである。
 他方、周辺事態法案は、自衛隊が海外に派兵され、武力行使を行う場合ですら、国会の承認も要件とせず、基本計画について報告すれば足りるというのである。アメリカの判断を優先して、日本が自動的に参戦することにつながるものであり、何よりも、議会制民主主義をふみにじるものである。アメリカは、さきのイラク問題やキューバ問題でも明らかなように、その外交戦略は世界の支持を失いつつあり、日本政府の対米追随は余りにも異常である。
 憲法に明確に違反するこのような法案を、政府が国会に提出すること自体、許されるものではない。私たちは、本日の閣議決定に強く抗議するとともに、周辺事態法案、自衛隊法「改正」案、及び物品役務相互提供協定「改定」案に反対して、国民とともに全力をあげてたたかうことを決意する。

一九九八年四月二八日
自 由 法 曹 団