<<目次へ 【声 明】自由法曹団


定期借家法案の国会上程に反対する声明

 本日、自民党・社民党・さきがけ、それに自由党の議員立法で「借地借家法の一部を改正する法律案」(定期借家法案)が、国会に上程された。
 現行借家法は、明け渡しの際に「正当事由」を原則的に要求しているが、この法案はその「正当事由」を不要とし、期限の到来があれば確定的に賃貸借を終了させるという制度(定期借家制度)をあらたに導入しようとしている。
 定期借家法案が成立すれば、借主は無条件で明け渡すか、貸主の要求する家賃値上げなどの条件を無理に受け入れざるを得なくなり、多くの借家人の生活や営業が脅かされることは必定である。さらに定期借家法案は、定期借家契約にするためには「公正証書等書面によ」ることを求めているが、必ずしも公正証書だけに限定しているわけではなく、これでは何らの抑制的な役割を果たさない。また法案は既存の借家に適用せず新規契約を対象としているが、契約の更新の際の現実の力関係に照らせば、借主が更新時に「定期借家」に切り替えられる事態が広く見られるであろうことは容易に予測できるところである。
 そもそも定期借家法案については、一六〇〇万戸の借家人の生活や営業、ひいては地域経済あるいは国民生活に重大な影響を及ぼすものであるから、本来法制審議会において慎重に審議すべきものである。
 今回自民党・社民党・さきがけ、そして自由党の議員有志が、極めて不確実な、かつ近視眼的な経済効果を強調して議員立法という変則的な手法で、会期末近くに強引に上程したやり方は、国民の生活におおきな影響を与えずにおかない借家法の、社会的基本法としての根本的性格を乱暴に踏みにじるものである。
 今日わが国において、銀行が膨大な不良債権をかかえ、不動産業者などに再開発建築費などの融資を実行できない現状にある。その現状を「克服」して土地の流動化、金融化そして投機化をおしすすめていこうとするところに、今回の定期借家法案のかくされた狙いがある。定期借家法案が、家賃の改定特約につき減額請求規定の適用を排除することを許し、賃料を安定的に増額させていく余地を入れたことはその一例であろう。
 この定期借家法案には、このような不動産業界や建設業界、金融機関の意に添った不動産金融商品化を推進していこうとする意図が存在するものと見られ、このことは社会的弱者の犠牲のもとに、一部の資本家や起業家の投機的な利益をあおるものであって、到底承服し難いといわなければならない。
 われわれは、多くの国民とともに定期借家法案の廃案をめざして断固たたかうものである。

一九九八年六月五日
自 由 法 曹 団