<<目次へ 【声 明】自由法曹団


憲法調査委員会設置に反対する声明

 「憲法調査委員会設置推進議員連盟」は、一一月二七日に予定されている臨時国会の冒頭に、国会法の一部改正案など憲法調査委員会設置関連法案を提出することを決定した。
 これは、戦後はじめて、憲法改正の発議権をもつ国会の場で、公然と憲法改悪にむけての論議をおこなう常任委員会を設置しようとするもので、極めて重大な動きといわねばならない。
 昨年五月に発足した「議員連盟」は、その設立趣意書において「二十一世紀に向けたわが国のあり方を考え、新時代の憲法について議論を行う」とのべ、「国際関係の変化、地球環境の深刻化、価値観の多様化、地方分権と共生社会の必要性」が高まっていることを理由に、憲法についての「調査・検討」をおこなう必要があるなどとしている。
 しかし、国際平和への「貢献」や国民の生活と権利の保障は、何よりも日本国憲法の平和的・民主的原則を生かしてこそ実現できるものである。彼らがつとに強調する「憲法と現行法制との乖離現象」は、この国の国民犠牲の政治の横行にその原因があり、憲法の基本原則を全面的に実施していくことこそ求められていると言わなければならない。
 今日、憲法のじゅうりんはさまざまな分野で拡大されている。新ガイドライン関連法案にみられるこの国をアメリカの戦争に自動参戦させ、国民をもそれに動員しようとするこの間の一連の動きは憲法の平和原則との矛盾を極限にまで拡大するものである。また、労働者派遣法改悪案、定期借家法案、いわゆる「盗聴法案」そしてこの間の社会保障の改悪などは、国民の生活と権利を侵害し、憲法の保障する生存権や労働権を権利の名に値しないものに変質させるものである。
 このようなこの国の平和と安全、国民の生活と権利にかかわる重大な問題を、憲法の基本原則に即して十分に審議することなく強行することは到底許されない。ましてや、日本の軍事大国化や国民の生活と権利の破壊をさらに強めることになる公然たる憲法改悪の企ては、絶対に容認することができない。
 日本国憲法の平和的・民主的原則は「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」(日本国憲法前文)をとりいれたものであり、国際的にみてもそれは先駆的・先進的なものであり、この原則をこの国の政治・社会のすべての面に生かし、発展させなければならない。
 われわれは、創立以来七七年間にわたって一貫してこの国の平和と民主主義、自由と人権を守って国民とともにたたかってきた法律家団体として、憲法改悪にむけての本格的な橋頭堡をつくり、大々的なキャンペーンを目指す憲法調査委員会の設置に断固として反対するものである。そして、国民の皆さんと手を携え、憲法改悪を許さぬ壮大な国民運動をつくりあげ、二一世紀にむけて、憲法の平和・民主の諸原則が真に花開く日をめざして全力をあげて奮闘する決意をここに表明するものである。

一九九八年一一月二一日
自 由 法 曹 団