<<目次へ 【声 明】自由法曹団


新ガイドラインによる「戦争する国」をめざす策動に断固反対するアピール

  1. 周辺事態法をはじめとする新ガイドライン関連法案の採決が、本日にも参議院で強行されようとしている。
     国民大多数の反対、多くの自治体の懸念、アジア諸国の大きな憂慮を無視し、ひたすら暴走する政府与党の暴挙に対し断固抗議する。
  2. 日本国憲法は、九条において国権の発動たる戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使を行わないことを、また憲法前文ではすべての国民が平和のうちに生きる権利を有することを明記している。
     侵略戦争の反省のうえにたって、恒久平和の原則のもとに基本的人権を保障し、国民が主権者となり議会制民主主義や地方自治を実現して、政府や軍部や財界によって戦争の惨禍が引き起こされることのないようにしたものである。
     私たち平和を求める国民は、日本を「戦争しない国」とした平和憲法のもとで、諸国民と連帯しアジアの平和づくりに努力してきた。この誓いと実践は、人類史としても価値ある経験である。戦争を回避する不断の努力を通して、武力なき平和の実現を人類の課題として追求する道こそ、憲法の示す大道である。
  3. 新ガイドラインと周辺事態法等は、この不戦の誓いを捨て、日本がアジアの国と民衆に対し、再び加害者として戦争をする国の仕組みにつくりかえてしまおうとするものである。
     同法は、米軍の「後方地域支援」という用語を創作するが、その活動の多くが、軍事的常識からみても国際法からみても戦争行為の一部であり、憲法が禁じる武力の行使ないし武力による威嚇に該当する。
     同法は、地方自治体と国民を憲法違反の参戦体制に動員しようとする仕掛けをつくろうとしている。
     しかし、住民の安全と福祉を守る地方自治体の責務と戦争協力とは絶対に相いれない。生命・自由・幸福を追求する権利(憲法一三条)をもつ国民には戦争への協力を拒否する自由があり、それは奪うことができない。
     同法は憲法の定める平和そして国と人権保障のあり方に幾重にも反する。新ガイドライン関連法は憲法に反し絶対に許されない。このような法律は無効であることを宣言する。
  4. 政府与党の暴挙で可決されようとも、廃案を求める国民世論が益々大きなうねりをつくっている。
       「沈黙は共犯」を合言葉に全国から集う女性の行動、宗教者と陸・海・空・港湾労組が立場の違いを超えて廃案を求める共同行動をよびかけ、五月二一日には日本共産党と社会民主党の党首がそろって参加する「ストップ戦争法全国大集会」が大きく成功した。
     昨年夏、自由法曹団は全国三三〇八の地方自治体に要請する行動を提起した。このこともあって、今日まで二〇〇を超える地方議会にて、法案への危惧や反対の態度を表明する意見書があがっている。
     私たちは平和を愛する国民の世論に確信をもつ。
  5. いま、NATO軍によるユーゴスラビアへの無差別攻撃が多くの市民、子どもを犠牲にし、中国大使館爆撃という悲劇を引き起こしている。まさにヨーロッパ版「周辺事態」であり、軍事力の行使が戦禍のほかに何の解決ももたらしえないことが日々明らかになっている。
     アジアにおいても悲惨な戦争を繰り返してはならない。わが国は米軍の行う国際法無視の戦争に参戦してアジア諸国民に加害してはならない。新たな「戦前」への扉を絶対に開かせてはならない。
     新ガイドラインにより「戦争する国」をめざすあらゆる策動に、多くの平和を願う人たちと力を合わせて断固反対し阻止していくことをアピールする。

一九九九年五月二四日
自由法曹団一九九九年研究討論集会