<<目次へ 【声 明】自由法曹団


盗聴法案の衆議院本会議での強行採決に断固抗議し廃案を求める

一 本日、衆議院本会議において、自民党、自由党、公明党の賛成により、盗聴法案を一部修正の上、これを含む組織的犯罪対策三法案を、強行採決し、参議院に送付した。
 しかも、自民党、自由党、公明党の三党は、野党三党の意見をまったく無視して、四月二八日の参考人質疑の日程・人選を委員長に一任するという暴挙に始まり、五月二七日、同二八日の衆議院法務委員会の開会を強行しただけでなく、野党三党との間の「今国会において委員一人四時間の質疑時間を確保する」との合意をも破るなど、民主的な委員会運営を乱暴に踏みにじって、法務委員会での採決を強行している。
 国民の人権に重大な影響を与える法案の審議及び採決が、民主主義を蹂躙する方法で強行されたことについて、私たちは断固抗議するものである。
特に、公明党はこれまで、盗聴法案について代表代行の浜四津敏子議員が「違憲の疑いが大変大きい」と述べ、前二回の国会では継続審議に反対して廃案を求めてきた。ところが、今国会では自自公路線への転換と同時に、従来の立場を投げ捨て盗聴法案の修正・強行採決を推進し、マスコミ・各界から党利党略と厳しく批判されるのは当然である。
二 盗聴法案は、基本的人権としての通信の秘密・プライバシー権に対する重大な侵害を伴い、いつ、だれが、どのような会話を交わすかを予め特定できない令状は事実上無制限の盗聴を警察に許してしまう結果となることなどから、違憲立法としていかなる修正を加えてもその危険性を払拭できないものである。  今回強行採決された修正案では、盗聴の対象犯罪を「薬物関連犯罪」、「集団密航関連犯罪」、「銃器関連犯罪」、「組織的な殺人」に限定し、令状請求権者・令状発付権者の限定、立会人の常時立会、違法盗聴の処罰規定の罰則を多少重くするなどの若干の修正を加えてはいる。
 しかし、盗聴の対象犯罪を限定しても、それらの予備行為が含まれる以上ほとんど意味をなさず無限定に等しい。
 また、これから行われる通信や会話を事前に特定することはまったく不可能であり、しかも電話からパソコン通信などありとあらゆる通信手段に対する盗聴を悉く容認するだけでなく、該当性判断のための盗聴、将来犯されるであろう事件の盗聴、別件盗聴も広範に認めるなど、各界から指摘されてきた法案の違憲性、重大な人権侵害を生む多くの問題は、修正案でもまったく改善されていない。
 さらに、修正案が立会人の常時立会を認めている点についても、立会人は会話等を聞くことができず、また、切断権もない以上、実効性はなく違法盗聴の歯止めにはなり得ないことが明らかである。
 従って、このような修正によっても、憲法に違反し、人権侵害の危険性がつよく、しかも警察の乱用を防止することができない以上、この修正案を容認することは許されない。
三 私たちは、昨年三月に組織的犯罪対策三法案が国会に提出されて以来、一切の修正を許さず、強く廃案を求めてきたものであり、今回の強行採決に断固抗議し、参議院において強く廃案を求めるものである。

一九九九年六月一日
自 由 法 曹 団
団 長  豊 田  誠