団通信984号(5月11日)

五月一七日の司法総行動を成功させよう

東京支部  小 部 正 治

 いま、司法改革審議会の急速な審議が進み秋に中間答申が予定されているなかで、多くの国民の切実な要求と厳しい批判を審議会をはじめとする各機関に突きつけ、同時に現行法のもとでも直ちに是正できる要求の実現を求めていくことがますます重要となっています。そして、昨年に引き続き第二回司法総行動が五月一七日に後記の内容で実施されます。今年は四月二八日現在五九団体が参加賛同し、昨年の二〇〇人を超え三〇〇人の参加をめざして取り組んでいます。また、各団体からの要求を整理し取りまとめた「共同要請書」も完成し入稿した段階です。
 いま、司法改革に関しては必要な取り組みを具体化し、現実に行動することが求められています。多くの労働者、金融被害者、中小業者、公害被害者、過労死遺族関係者など多くの団体が参加する司法総行動に東京はもちろん全国各地から多くの団員が参加することを心から期待しています。朝から夕方までの行動ですので時間が可能な範囲でも結構ですから、一緒に参加いただき司法総行動を成功させたいと思います。

司法制度改革審議会をどう見るか

ー四月常幹の感想と今後の運動の方向について
和歌山支部  小 野 原 聡 史

 四月常幹での司法改革に対する議論では、司法制度改革審議会の論点整理について、これを危険視する意見が出されましたが、これについて感じたことを論じてみたいと思います。
 常幹での議論は、まさにこれまで裁判所を含めた権力に真っ向から立ち向かい、松川事件の勝利など国民、労働者の権利擁護に大きな役割を果たしてきた団ならではの議論だと感心しました。
 なるほど、日弁連の議論では、少なくとも私が知る限りでは、司法制度改革審議会の危険性について論じる意見は執行部批判意見として出される以外にはあまりないように思われます。
 しかしながら、たしかに、司法制度改革審議会は、財界の規制緩和論の影響を受けて政府が従来の手法で設置したものですので、ここにまかせておけば、いい制度を作ってくれるなどという考えは本質的に誤っていると思います。
 しかし、逆に、政府財界の作ったものだからつぶすべきというのも一面的だと思います。
 審議会の本質的性格がそうであるとはいっても、それだけではなく、国民の間に渦巻く裁判所不信、権利救済の要求、それに基づいた団や日弁連の要求を反映したという面も否定できないからです。
 中坊さんが委員になったという事実もこの反映であり、その点では評価すべきと考えますが、そうはいっても審議会全体の過大視は禁物です。
 この意味では、私たちが日常的に活動あるいは業務の場としている裁判所などの国家機関の二面性と同じと思います。
 私たちは、本質的に支配機関である裁判所を使って労働者や国民の権利擁護をはかるのと同じように、司法制度改革審議会を財界などの思うように使わせるのでなく、国民の要求実現のために活用するという視点で考えるべきです。
 それが簡単でないことは、労働裁判、刑事弾圧事件、公害裁判などと同じですが、しかし、困難だという理由で労働裁判や刑事弾圧事件の弁護や公害裁判の闘いを放棄すべきでないのと同じように、司法制度改革審議会を我々の要求実現に活用することを放棄すべきではありません。
 日弁連や中坊委員については、私たちと共通する部分が大きいという意味で共同の闘いをすべきですし、さらに日弁連について言えば団員もその構成員であり、司法改革実現本部などで団員が大きな役割を担っていることを考えれば、団は日弁連が国民の要求に応える方向で運動を進めるように尽力すべきです。
 しかし、弁護士はその性格上は体制維持という側面ももっていること、日弁連には経営側弁護士や行政の顧問弁護士など本質的に体制擁護の傾向を持つ弁護士の勢力も存在することを考えると、日弁連は法務省などとの取引で問題を解決しようとする危険な側面を持っていることを直視すべきです。
 刑事弁護ガイドライン問題に見られるように、政府から金を引き出すために安易な妥協をはかろうとする傾向については徹底的に批判すべきです。
 私たちは、妥協によってではなく、あくまで国民の権利擁護という視点に立った正論と、国民世論、運動の力によって要求実現をはかるべきではないでしょうか。
 そのためにも、団内で司法改革についての大いなる議論を行い、これを単位会での議論などを通じて日弁連の議論をより国民の権利擁護という視点に立ったものとすると共に、大衆的裁判闘争など国民的な運動の経験の豊富な団こそが、司法改革に向けた国民運動の先頭に立つべきだと思います。
 五月集会では司法改革についても大いに議論しましょう。

「リストラ」をめぐる情勢と大阪での取り組み

大阪支部  長 岡 麻 寿 恵

1、今年三月の完全失業率は四・九二%と過去最悪を記録した。同月の毎月勤労統計では、労働者の現金給与額は一年前より減少している。リストラの嵐が吹き荒れ、労働者の雇用と生活を脅かしている。
 ところで、最近のリストラは、整理解雇、希望退職、賃金等労働条件切り下げなど、従来型のものだけではなく、子会社・関連会社の設立、営業譲渡等の「企業再編」を契機に転籍出向、退職勧奨、配転・出向、賃金切り下げ、解雇などを巧妙に組み合わせるものが多い。これまで報道されてきたNCRや日本IBMのように、分社化・子会社化に伴い労働者に転籍を強要し、賃金を切り下げ、転籍に応じない労働者にはさまざまないやがらせを行うケースがそれである。例えば、西神テトラパックでは、十分な利益を上げているにもかかわらず「経営の効率化」を名目に工場部門を閉鎖し、新会社を御殿場に設立する方針を打ち出したため、労働者は「転籍・単身赴任か退職か」の選択を迫られようとしている。また、昨年一一月のNTT西日本の「経営改善計画」によれば、六万八千人の労働者のうち一万一千人を向こう三年間で削減し、更に二〇〇〇人の社員を地方から京阪神などの都市部へ移動させ、二七〇〇人を首都圏を含むグループ会社に転籍させるという。
 更に、大阪では、昨年来「金融再編スキーム」の名の下で、信用組合や信用金庫の再編が進められ、営業譲渡に伴って労働者は引き継がれずに解雇されるという事案が次々と起こってきた。とりわけ、不動信用金庫では、昨年四月に債務超過を理由に府下一〇の信用金庫に営業を分割譲渡する計画が発表され、その一方で労働者は全員解雇された。「全信労を脱退しなければ合併してもらえない」「労働組合の存在は不良債権以上に避けたい」等の経営者の発言が相次ぎ、国鉄の分割・民営化の時と同様に、「全員解雇」が組合つぶしの不当労働行為として用いられたのである。

2、このようなリストラに抗するたたかいの一方で、産業再生法、民事再生法などのいわば「リストラ促進法」が次々と制定されていった。
 大阪では、民主法律協会が中心となって、昨年一一月にリストラ法制についての学習会を行った。この取り組みの中で、労働組合に判りやすいパンフレットが必要だという声も上がり、当日の講演をまとめた「リストラ法制といかにたたかうか」というパンフレットを本年二月に発行・普及している。
 労働の現場でどのようなリストラが進められているか、交流と分析を行おうと、労働組合を対象に交流会も行ってきた。本年三月二一日には、一〇〇名あまりの参加を得て、リストラの現状とこれを支えようとする法制度の動き、EUでの解雇規制法のあり方などをテーマとしたシンポジウムも行った。

3、本年二月半以降、会社分割とそれに伴う労働者の地位の承継についての法案について、要綱が発表され、会社分割に際して分割される業務を主たる業務とする労働者については同意なくして転籍される、との法案の概要が明らかになった。
 このような法律が制定されてしまえば、現在転籍強要に対し「労働者の同意が必要」とのただ一点で踏みとどまり、反撃を試みている現場では大きな打撃を受けることになる。会社分割法(商法改正・労働契約承継法)案に反対し、併せて営業譲渡における労働者の地位の保護や解雇規制を求めようと、四月には久々に中之島公園で集会・デモ行進を取り組んだ。三月には民主法律協会で法律案に対する声明を発表、労働組合などもこの声明文をいわば団体署名として国会や政党に送付する取り組みを行った。
 更に、自由法曹団大阪支部、青法協大阪支部、大阪労働者弁護団、社会文化センター大阪支部、民法協の大阪法曹五団体で会社分割法案反対・解雇規制法制定の共同アピールにも取り組んだ。また、大阪労働者弁護団と共同で、個人要請ハガキを衆院法務委員会・同労働委員会宛に取り組み、メーデーで配布して、一日で一三〇〇枚以上を集めた。

4、残念ながら、財界の強い要求の下で、一旦は「たなざらし、廃案か」と思われた同法案は審議入りし、民主党の妥協によって成立しそうである。四月二八日に法務委員会で野党の質疑が行われた後、五月末日の解散に間に合わせるために連休明けの五月九日には強行採決か、という団本部のFAXを受け取った(現在五月二日)。しかし、これほど労働者の権利に影響を与え、さまざまな論議を呼ぶはずの法律が、まともな審議なしにこんな短期間で強行採決されるとは、あきれるばかりである。国会はその機能を全く果たしていない。
 ところで、団本部のこの法案についての取り組みはどうだっただろうか。四月二一日付で初めて対策ニュースが発行され、現在二号まで配布されている。国会の情勢は、地方の団員には入手しにくいので、このようなニュースの発行は必要不可欠である。しかし、もっと早い時期にニュースは必要ではなかったか。意見書の作成も、大部のものでなくて良いから簡単かつ要領よく問題点を指摘したものを、二月の要綱発表の時点で直ちに発表し、地方での取り組みを呼びかけていくことが求められていたのではないか。今後の検討を待ちたい。

「サミット初日に意見広告を」の運動にご協力をお願いいたします

東京支部  平 山 知 子

 七月二一日から二三日まで、沖縄サミットが開かれます。
 このサミット初日の七月二一日に、現地沖縄で「琉球新報」、「沖縄タイムス」両紙に、日本語と英語で意見広告を出そうという運動を進めています。
 日米両首脳は、この沖縄サミットを日米軍事同盟強化の場としてこれを内外に誇示し、米軍基地の一層の強化継続を図ろうとしています。こともあろうにサミット会場になる名護市に、一兆円にものぼる国民の税金をつぎ込んで最新鋭の新しい基地を作ろうとしているのです。沖縄県には、米軍専用施設の七五%が集中し、基地被害による人権侵害、生活権侵害、環境破壊などが現在もなお数限りなく発生しています。
 私も、一九九五年九月のあの少女の事件が起こったあと、同年一二月に、日弁連の第一次沖縄調査に今は亡き小林和恵団員と一緒に参加し、その被害の一端を体験しました。基地と金網越しで接している普天間第二小学校の運動場で、体育の授業を受けていた子ども達の頭上を発進していく米軍の輸送機やヘリコプターの姿がくっきりと目に焼き付き、その爆音が今も耳に残っています。印象的だったのは、そのような環境の中でも子ども達が、一生懸命に花を育て、ウサギを育て、生命を大切にしている姿でした。その対極にあるのが、米海兵隊です。文字通り人殺しの訓練を、日夜基地内で行って兵士達の人間らしさを日々奪っていくのです。海兵隊の司令官に会ったとき、彼は、日弁連の調査のために特別に作ったパンフレットの地図を示し、沖縄を太平洋のキーストーンと位置づけ、沖縄海兵隊が、アフリカ東海岸からハワイまでを作戦担当地域としていることを明言し、その訓練の場として沖縄が不可欠であることを強調していました。海外では海兵隊基地をおいているのは日本だけであることも認めていました。
 今回の名護市の基地建設計画も海兵隊基地です。しかも、一九九七年の市民投票によって、市民から明確に「ノー」と拒否されたものです。にもかかわらず政府は「経済振興」をちらつかせながらこの基地計画の押しつけを図ろうとしています。しかし、地元名護を初め沖縄県の人々は、日本で唯一地上戦に巻き込まれた悲惨な体験から、戦争につながる基地の建設を絶対に許さないというねばり強いたたかいを続けています。しかもこの建設予定海域は美しい海で貴重なサンゴの群があり、また絶滅危惧種で、国際保護動物にも指定されているジュゴンの生息も確認されているところです。もし基地が建設されれば、その自然と環境の破壊は、取り返しのつかないものとなります。そこで、自然と環境を守ろうという観点からも運動は広がっています。
 このような米軍基地による環境破壊、人権侵害、生活権侵害などは、沖縄県だけの問題ではなく、米軍用機低空飛行被害、騒音爆音被害、PCB汚染問題などは、日本全国での問題です。日本の歴史にとって、外国軍の基地が存在するというのは、全く異常な事態なのです。名護での新しい米軍基地の建設を許すかどうかということは、歴史上のこの異常な事態を二一世紀以降も続けさせるのかどうかが問われるのだと思います。
 その企図を許さないためにも、市民投票の結果を踏みにじって強行しようとしている新米軍基地建設の無謀さ、外国軍隊の長期駐留の異常さとその被害の甚大さを、国際社会、そして日本国民にアピールすることは大変重要なことです。
 サミットには、サミット国の首脳だけではなく、随行員、そして一〇〇〇人を越える内外のジャーナリストが参集すると言われています。
 そこでサミット初日に、沖縄に参集する内外のジャーナリストを通じて、全日本・全世界の人々に向けて米軍基地ノーのアピールを行うため、日本語と英語で、「琉球新報」「沖縄タイムス」両紙に意見広告を出す運動を進めているのです。
 沖縄県からは、普天間基地・那覇軍港の県内移設に反対する県民会議代表、名護市ヘリ基地反対協代表、社会大衆党、社民党、日本共産党の各政党代表、市民運動家、弁護士・学者文化人など幅広い方々が呼びかけ人となっており、他県からも、豊田誠団長を初めとする各地の団員の方々、土井たか子さん、田英夫さん、佐々木陸海さんらの政治家、渡辺治さん、石川真澄さん、星野安三郎さんらの学者、ジャーナリスト、文化人など百五十名を越える呼びかけ人が名を連ねています。(第一次集約分)
 私は、この運動の事務局の一人ですが、団にも申し入れを行い、四月一五日の常任幹事会でも、この意見広告運動の趣旨に全面的に賛同、協力し、団員個人が積極的に賛同参加するよう呼びかけていくことを承認していただきました。
 多くの団員のみなさんも、沖縄への想いはそれぞれ熱いものがあるのではないでしょうか。
 憲法を語り、平和を語り、民主主義を語り、民族主権を語り、人権を語り、環境問題を語るときに、沖縄と米軍基地問題は決して避けて通れない問題です。
 意見広告運動をどうしても成功させたいのです。それにはお金が必要です。団員のみなさんの沖縄への想いを、賛同金として振り込んで下さいますよう心から訴えます。一口一〇〇〇円ですが、なるべく数口、できれば一〇口、二〇口を宜しくお願いいたします。
 郵便振替は左記の通りです。
口座番号0100-8-158933
加入者名米軍基地をなくす意見広告運動
東京連絡先160-0004 新宿区四谷一ー二伊藤ビル二階
日本国際法律家協会気付 〇三ー三三五三ー五二二六
意見広告運動事務局

中国訪問団への参加を呼びかけます!

東京支部  泉 澤  章

 今秋、自由法曹団は中国の大地へと旅立ちます。
 中国の内政・外交に未曾有の大混乱を生んだ文化大革命以来、自由法曹団も含めた日本の民主諸団体が公式に中国を訪問する機会は近年までほとんどありませんでした。しかし、文革が中国国内で公式に誤りと認められ改革開放路線が定着してきてからは、日中両国人民の交流は公式・非公式を問わず、まさに拡大の一途をたどってきました。最近では中国当局も、かつて中断していた民主諸団体との交流を再開するため、活発な動きを見せています。
 各国人民との連帯と交流を重視する自由法曹団にとって、一三億の人口を有する隣国中国との交流拡大が重要であることは言うまでもありません。そこで今回、中国人民との交流拡大へ向けた第一歩として、自由法曹団で「中国訪問団」を結成し、訪中旅行をすることになりました。「中国訪問団」とは多少格式ばった名称ですが、要は、中国で中国の人の話を聞きたい、中国の人と話をしたいという人の集まりのことです。したがって、九月中〜下旬に日程が空いており、中国に行ってみたいと思っている団員の方なら、誰でも参加する権利があります(先着順ではありますが)。
 ところで、今回の訪中旅行には、二つの目玉があります。
 まず第一に、中国の律師(日本で言う弁護士)協会との交流が予定されていることです。近年の中国の変化は凄まじいものがありますが、その変化が情報として私たちに伝えられるのは、経済や政治の方面が圧倒的に多いように思えます。「法治国家を目指す」という最近の中国指導部の発言は、現実の社会にどう反映されているのか、中国の法律家はどのような理念を持って仕事に従事しているのか、そして自由法曹団と相通じる理念をもって活動している法律家はいるのか・・等々、聞きたいことはたくさんあると思います。二日目に予定されている中国律師との交流会では、率直な意見交換が期待できます。
 第二は、旧日本軍の侵略による戦跡や記念館を見学し、戦争犠牲者の生の声を聴く機会を設けたことです。日中間で平和条約が締結されてからすでに四半世紀が経ちます。しかし、石原都知事に代表されるように、この間日本の与党政治家や現役閣僚らは、何の謝罪も反省もなしに「あの戦争は侵略ではない」とか「南京虐殺はでたらめだ」などと発言しては、日中間の友好に暗い影を落としてきました。最近では自由主義史観派と称する歴史修正主義者たちが日中戦争を正当化し、教育界やマスコミで新たなナショナリズムをあおりながら闊歩しています。このような日本の現状を目の前に、「本当に日本人はあの戦争を反省して『平和憲法』を掲げたのか?」と問われると、すぐに返す言葉を見つけるのは困難です。旧日本軍による侵略の事実をきちんと認識し、どう精算すべきか真剣に討議し、実現すること。それは、「平和憲法」が本当に日本人に根付いているかどうか判断する試金石であると同時に、戦後平和運動で重要な役割を担ってきた自由法曹団に突きつけられている問題でもあります。今回の訪中旅行では、半世紀以上経ってなお生々しく残る侵略の爪痕を見学し、生存者の貴・uサ鼎幣攜世鯆阿・海箸砲茲辰董△泙困六笋燭措・箸寮鐐茲紡个垢詛Ъ韻鮨爾瓩詢垢砲覆襪隼廚い泙后・・w) 九月中旬と言えば、ハルピン、瀋陽では秋の気配が色濃くなってくる時期、南京、上海はまだまだ夏のいきおいが強い時期ですが、どちらも旅行には最適の季節です。ぜひ、多くの団員の方々に参加していただきたいと思います。
 同封の旅行の案内をご覧いただきお早めにお申し込みください。

取調べ修習の違法性について

宮城県支部  阿 部  潔

1 司法修習の中の検察修習における取調べ修習の違法性について述べる機会を頂いたので、拙い文章ではあるが書かせていただく。
2 私見によれば、違法である根拠は刑事訴訟法一九八条一項と憲法三一条に反することである。前者によれば、取調べの主体は「検察官、検察事務官、司法警察職員」と定められており司法修習生との文言はない。
 そして、憲法三一条には「法律の定める手続きによらなければ」とあるのだから、修習生による取調べについて法定されていない以上同条に反し違憲であることは明らかである。
3 私は以上のみで違法であることの根拠として十分と考えるものであるが、取調べが強制処分であることを重視すれば、強制処分法定主義を定める刑事訴訟法一九七条との関係でも違法となる。
4 以上の議論からすると刑訴法一九八条が改正されてしまえば取調べ修習は適法になることとなる。私はそのとおりだと思うが、これに対し、取調べ修習が被疑者を修習の道具として扱うもので、被疑者人格の尊厳を犯すものであるから憲法一三条に反し、条文の文言に関わらず許されないとする見解が存する。
 しかし、司法修習は多かれ少なかれ国家権力を背景に他人の人格を利用して行われるものであり、事実としての取調べとその他の修習との間に量的な差異はあれ質的な差異があるとまでは認めがたいと考える。
5 取調べ修習を合法としたい側からは、相島六原則を守ればよい等の実質合法論が主張されているが、そもそも厳格な手続適正が要求される刑事手続で形式的に違法となる以上、実質論を主張すること自体おかしい。これは本来、違法性論・形式論がクリアされてからなすべき方法の妥当性についての議論である。
 また、医師のインターン制と同様だとする議論もあるが、これは取調べの権力性を意図的に無視し、取調べを事実行為としての治療行為と同視するもので不当である(私見であるが、そもそもインターン制自体その適法性に疑問がある)。
6 なお、以上の議論と、取調べ修習を拒否するか否かとは無関係と考える。この点は割愛させていただく。

団員外からの投稿

今こそ司法審路線との対決を!

弁護士  高 山 俊 吉

 事態は誰の目にも明らかになってきた。中坊公平司法審委員は、弁護士人口の五〜六万人への大幅増員や、弁護士法一条に「公衆の利益の増進」に努力する義務を加える「改正」案などを提言(本年二月二二日司法審)、小渕(前)首相の要請を受けて内閣特別顧問に就任し(三月七日)、同じく警察刷新会議委員に就任した(三月九日)。一方、日弁連執行部は、中坊提言発表直後の二月二三日、「弁護士人口の五〜六万人への大量増員」案や弁護士法一条「改正」案は中坊氏の私案に過ぎないと釈明した。三月一四日の司法審は、中坊提言を踏まえて「『弁護士の在り方』に関し今後重点的に検討すべき論点」を全員一致で「確認・了承」した。中には、弁護士法一条「改正」をはじめとして弁護士(会)のあり方を変質させる「改革」案が目白押しに並ぶ。
 「弁護士数三〜四倍」を、本気で考えるならば、毎年の司法試験合格者を桁違いに増やすことが当然になる。かつて鈴木良男改革協委員(現「司法改革フォーラム」会長。旭リサーチセンター社長)が強調し、日弁連内では「放言」程度にみられていた主張をいま元日弁連会長が言い募る。司法研修所をなくし、旧帝大を中心とした特定大学付設ロースクール卒業生にのみ法曹の道を開く。有産階級が法曹を独占する。桁違い大量合格と法曹養成方法の抜本的な変更が、国策や経済への奉仕を弁護士の責務と考える「公益」弁護士や「自己規制」弁護士の輩出を目的とすることは言うまでもない。
 中坊氏はまた、弁護士法一条に「公衆の利益の増進」努力義務の追加を強調する。「基本的人権の擁護と社会正義の実現」の使命に欠けている「公衆の利益」の使命とは何か。追加内容に「公衆の安寧の増進」を提案するのは日弁連司法改革推進センター事務局長である。翼賛思想を象徴する「公共の安寧」が直ちに想起される。符節を合わせて日弁連司法改革実現本部事務局長が、「公益のために働くことを求められる職業だという意識を徹底させる必要」があるとして、弁護士法の「改正」を主張する。
 内閣特別顧問に就任した中坊氏は「首相の相談相手として市民の目線で申し上げる。」と言ったと報道され、「なぜだ」の声も出た。内閣に設置された司法審に招聘された中坊氏がその内閣の顧問に就任して何を驚くか。司法審の性格がより分かりやすくなっただけのことだ。裏切られたと思うのは、司法審に甘い幻想を抱き、中坊氏に幻惑されていた人たちだけである。
 そして警察刷新会議委員への就任である。国策のために弁護士を告発した氏の思想は明らかに官憲の思想である。だからこそ小渕首相は親しく氏を招聘したのだ。昨年一二月の司法審特別会費問題臨時総会では、「弁護士が弁護士を権力に売るもの」とまでこき下ろされた。刷新会議の議題には早くも「警察力の強化」が挙げられている。この人事は氏の本籍をまことによく示している。
 問題は、弁護士バッシングの先頭に立つ中坊氏と日弁連現執行部の「連携プレイ」である。執行部は、「中坊先生は日弁連を正式に代表するものではなく、審議委員としての個人的資格で私案を発表されたもの」で、「五〜六万人とされたのは…おそらく三〇年とか四〇年のスパンで構想されているもののようであります。」と表明した。かねて執行部は、日弁連と司法審の唯一のパイプ役である中坊氏とは、派遣事務局ともども終始密接に連絡をとっていると言っていた。弁護士増員数という重大なテーマに関してそもそも「日弁連の与かり知らない勝手な発言」などあり得るのか。
 執行部はまた、この釈明書面で、弁護士法一条の「改正」を言う中坊提言は、「弁護士はこれまで以上に公益的活動に参加し、公衆の利益の増進に努力すべきであることを強調したいということのようで」、「執行部としては、この点について何ら議論致しておりません。」とも釈明した。司法問題で執行部を支える中核機関の責任者が、すでに弁護士法の「改正」を明確に提言しているのである。執行部が本当に「何ら議論をしていない」とすればそれ自体重大な問題である。
 三月一四日の審議会は、弁護士法一条(弁護士の使命)の見直し、弁護士自治の在り方と弁護士会運営への第三者意見の反映、三〇条・七二条の見直しなど、弁護士と弁護士会の変質に直結する方針を、中坊委員を含む全員一致をもって「確認・了承」した。中坊提言を踏まえ、司法審は、弁護士大増員や弁護士法一条「改正」の方針などを確定しようとし、そして日弁連執行部は、その動きを横目で見ながら、反発するどころか極めて不透明な手法でこれを日弁連の方針にしようとしている。
 事務所法人化や広告規制撤廃による弁護士業務の商業化計画、刑事弁護ガイドラインと称する刑事弁護骨抜き計画、社会の現実に距離を置く特定階層による法曹独占計画、弁護士法七二条・三〇条「改正」による弁護士自治の崩壊計画等々…。弁護士法一条「改正」は、これらの無謀を極める弁護士(会)改造計画の集約点である。恐るべき事態がわれわれの眼前に立ち表れている。司法審路線は憲法と人権の擁護を使命と考える法律家の存在を根底から否定する歴史的な謀略である。この動向に抗して立ち上がらなければ、取り返しのつかない危険な結果がもたらされ、禍根を大きく将来に残す。自由法曹団の存在意義が今問われている。  (00・4・27記)

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