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松井 繁明 解雇撤回闘争にトドメを刺す労基法の改悪を阻止しよう
平井 哲史 「解雇自由化」のしくみを暴くリーフの活用を
中野 直樹 「自由法曹団物語 世紀をこえて」を団の発展に結びつけて
吉原  稔 豊郷小学校解体禁止の仮処分で文化財保存に前進
松浦 信平 再審査請求で逆転過労死認定―菊地過労死事件勝利報告―
島田  広 アメリカ・ロースクール視察報告
井上 洋子 アメリカロースクール調査の感想
鈴木  剛 「司法改革」地域での取り組み〜東京都町田市より
齊藤 園生 刑事手続きについての法務省の本音
坂 勇一郎 二・六 団市民問題委員会で、下請けの請負代金確保について考えませんか
小池 振一郎 日韓法律家交流会at広島のご案内



解雇撤回闘争にトドメを刺す
労基法の改悪を阻止しよう


労働問題委員会委員長  松 井 繁 明

一 なにが起きているのか
 戦後、我が国の労働者・労働組合が築き上げてきた解雇撤回闘争が、崩壊の危機に直面している。労働基準法の改悪によって、たたかいの基盤がつきくずされ、まさにトドメを刺されようとしているからである。
 昨年一二月二六日、労働政策審議会(会長・西川俊作)が坂口厚生労働大臣にたいし、(1)「今後の労働条件に係る制度の在り方について」および(2)「職業紹介事業制度・労働者派遣事業制度の改正について」の、二つの建議をおこなった。この二つの建議はいずれも、リストラ合理化をいっそう促進させようとする資本に迎合し、労働者の権利を多面的に剥奪するものであって、幾多の問題点をはらんでいる。
 しかし、とりわけ(1)のなかで、解雇無効の判決があったばあいでも、一定の要件のもとで、使用者が厚労大臣の定める金銭の支払いを申立てれば「当該労働契約を終了させ」ることができる、としているのは、きわめて重大である。これによって使用者は、まず解雇の有効を主張して争い、それに負けても、金銭の提供によってもう一度解雇(労働契約の終了)ができることになるのである。
 この建議をうけた厚労省は、この通常国会に労基法改悪案を提出する見通しである。もしこれを阻止できなければ、わが国の労働運動は「歴史的敗北」を喫することになるであろう。

二 建議の内容
 現時点では、建議の内容が全団員に伝わっていないと思われるので、すこし長くなるが当該部分をそのまま引用する。
 「解雇の効力が裁判で争われた場合において、裁判所が当該解雇を無効として、解雇された労働者の労働契約上の地位を確認した場合であっても、実際には原職復帰が円滑におこなわれないケースも多いことにかんがみ、裁判所が当該解雇は無効であると判断したときには、労使当事者の申立に基づき、使用者からの申立ての場合にあっては当該解雇が公序良俗に反して行われたものでないことや雇用関係を継続し難い事由があること等の一定の要件の下で、当該労働契約を終了させ、使用者に対し、労働者に一定の金銭の支払いを命ずることができることとすることが必要である。
  この場合に、当該一定の金銭の額については、労働者の勤続年数その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める額とする(以下略)」
 これを整理するとー(1)解雇無効の判決があっても原職復帰が円滑に行われないこと、が立法事実である。(2)解雇無効の判決があったばあいの金銭解決の申立は、労使双方が(単独で)申立てることができる。(3)労働者の申立は無条件で認められる。(4)使用者の申立は、公序良俗に反しないこと、雇用関係を継続し難い事由などの一定の要件のもとで認められる。(5)この要件をクリアすれば、厚労大臣の定める金額の支払と引換えに当該労働契約は終了する、ということになる。

三 解雇撤回闘争の現状と金銭解決の強制
 戦後五〇年余にわたって日本の労働者(労働組合)は、不当な解雇を裁判で争い、解雇無効(労働契約関係存在確認)の判決をかちとってきた。それでも資本は容易に原職復帰を認めない例が多かった。しかしこれは、法律や判決を平然とふみにじる資本の無法に起因するのであって、労働者の責任ではまったくない。また、このような資本の無法を許す原因のひとつに、日本の裁判所が原則として労働者の就労請求権を認めてこなかったことの影響も大きい。
 それにもかかわらず労働者(労働組合)が、かちとった解雇無効判決を旗印に、資本の不正義を糾弾し、多くの支援者を結集して、たたかいの力によって原職復帰を実現した例は数多い。
 ところが、建議にもとづく立法が実現すれば、使用者側の申立によって金銭解決を強制され、当該労働契約が「終了」してしまう。たたかいの力によって原職復帰をかちとる途は完全に封鎖されてしまうのである。それでも原職復帰をもとめる労働者のたたかいが、違法と評価される危険もありうる。
 「一定の要件」など、ほとんど歯止めにならない。雇用を継続し難い事由など、資本はいくらでもつくりだせる(原職の廃止など)。裁判所が認める公序良俗違反は、セクハラ、人種・部落差別など、きわめて限定されたものになるであろう。
 これによって、リストラ解雇は大いに促進される。整理解雇四要件に反する解雇を乱発し、負けても金銭解決ですむからである。
 不当労働行為や思想差別にもとづく解雇のばあい、当該労働者の金銭的不利益もさることながら、労働者の最大の要求は原職に復帰して、職場の労働者のなかで水を得た魚のように活動すること、である。その途がわずかな金銭と引換えに閉ざされてしまう。こんなことを許してよいのだろうか。
 ―現状では、多くの労働者がマスコミの影響もあり、事実に反して、解雇規制が一歩前進したと受けとめている。一刻もはやく恐るべき現実を労働者に知らせ、たたかいに立ち上がらせなければならない。団員の重大な責務がここにある。





「解雇自由化」のしくみを暴くリーフの活用を


担当事務局次長  平 井 哲 史

 「首切り新兵器」となる労働基準法「改正」法案は、法案要綱が労働政策審議会労働条件分科会・同職業安定分科会に提示された上で、二月初旬にも法案化がもくろまれています。厚生労働省・労働政策審議会に対する働きかけは益々重要ですので、厚生労働省宛にも解雇を自由化し、リストラを促進するような労働基準法・労働者派遣法の改悪はするなという抗議・要請を続けましょう。
 今の「解雇自由化」法案については、まだまだ労働者・労働組合に知られていません。早急に知らせることが重要です。当面の宣伝物として、リーフの版下を同封します(HPにもアップ予定)ので、各支部・事務所で印刷をして、旗開き・権利討論集会などで、是非、労働法制の改悪について訴え、学習会の開催なども働きかけて下さい。
 また、一月二三日(木)午後六時半から総評会館において日本労働弁護団主催で「『解雇緩和法案』に反対する緊急集会」がありますので、首都圏の労働組合などには参加を呼びかけていただけるようお願いいたします。





「自由法曹団物語 世紀をこえて」を
団の発展に結びつけて


事務局長  中 野 直 樹

 「『チームワークと個性』の人間集団」(緒方靖夫参議院議員・しんぶん赤旗)、「苦闘と感動の幾年月」(庭山英雄弁護士・法と民主主義)と書評が出始めている。この正月休みを活用して読まれた方は、ぜひ短文でもけっこうですので、感想をお寄せください。まだ読まれていない方は、庭山弁護士が次のように書いておられる。「全部で九〇〇頁に近い大冊であるので、私のような暇人は別として、一度に読み通すことは無理であろうが、ぜひ書架にそなえて必要に応じて参照していただきたい。非常にわかり易い文章で書かれているので、どこから読み始めても、おそらく途中で止めることはできなくなるであろう。」
 編集にたずさわった一員としてこの「非常にわかり易い文章で書かれている」との一言にはほっとさせられた。もうひとつの目標である「物語」風味にうまくいっているかどうか。別の言葉でいえば、読者が、登場する当事者や団員に感情移入できるように人間臭さや息づかいがにじみ出ているかどうか。ここが成功していると読み次がれる良書の域にはいっていくのだが。
 改めて本書を読んで、人権闘争にしても、環境・悪法反対闘争にしても、これまでの取組みの蓄積の継承をしっかりしたうえで、今日の課題に対する挑戦と工夫をしていくことの大切さ、そしてその実践をしてきているのが自由法曹団員であるとつくづく感じた。そしてこの本は、終章「新たな峰をめざして」のそのまた最後を「世代の交替と団」で結んでいる。法律家の立場から二一世紀の「歴史の本流」を加速させる?民衆の弁護士?の層を格段に厚くする。この事業に取り組むことを決意している。
 私は事務局長になってからこの一年「これからの自由法曹団を考える」と題して、後継者問題を全団的な討議課題とすることを提起してきた。自由法曹団員の弁護士活動や生き様の輝いているところを一人でも多くの学生合格者・修習生に知ってもらい、たたかいを継承する主体として参画してきてほしいと心から願う。全国の団員が、九八年に刊行した「憲法判例をつくる」とともに、「団物語」をその有効な媒体として役立ててほしい、と強く思う。
 昨年一二月末までに、団内で一三六五部の普及となっている。お一人で二〇〜四〇部も「割当」というご負担もかけている団員も含めての到達であるが、たいした健闘であろう。ただ、注文元リストをみていると、あの支部、この事務所、かの団員の名がないところがまだまだある。その点は依然寂しい気持ちである。
 この間個別のお願いもしておりますが、改めてご購入のお願いをいたします。 





豊郷小学校解体禁止の仮処分で
文化財保存に前進


滋賀支部  吉 原   稔

 昨年と今年の年初、豊郷小学校の保存改修か、解体新築かをめぐる運動に明け暮れた。
 豊郷小学校は、郷土出身の「丸紅」重役・古川鉄治郎氏が昭和一二年に寄付した建物で、四三万円をかけ、当時再建された大阪城天守閣の建造費四七万円に匹敵する事業だった。近江八幡に在住した米人宣教師で建築家メレル・ヴォーリズが設計し、竹中工務店が施工した、「東洋一の小学校」であり、登録有形文化財の価値がある。私もヴォーリズの設計した神戸女学院等を見学したり、建築家や学者にお会いして勉強したりと、この事件に打ち込んだ。
 昨年一月二四日には、大津地裁で講堂の解体禁止の仮処分決定(住民訴訟〔解体差止請求〕を本訴とする仮処分、被保全権利違法性は地方財政法8条違反〔財産管理者、町長の財産管理における善管注意義務違反)が出され、六月一四日にはそれに対する異議決定で住民側の仮処分が認可され、それに対する町長の保全抗告、本訴の提起、八月には第二次仮処分(校舎解体禁止)と裁判が係属し、一二月一九日には本校舎の解体差止の仮処分決定がでた。ところが、その翌日の二〇日に町長が校舎の解体に着手したため、大問題となり、直ちに保全執行としての間接強制を申立て、建造物損壊罪で町長を告訴した(解体禁止の仮処分決定は、刑法二六二条の「差押」にあたり、自己のものであっても「他人性」がある)。そして、二四日にはついに町長は校舎の保存を決定し、運動は一応勝利した。しかし、町長は現校舎を解体しないが、立腐らせ、その隣に新校舎をつくるとしており、これからは無駄な公共事業を理由に、公費支出差止の訴訟を提起する予定である。再度の解体禁止の仮処分決定は、貴重な文化財を破壊から守り、「スクラップアンドビルド」の風潮に歯止めをかけたものとして評価される。
 さらにこの裁判は「地方政治のあり方」「行政財産の管理のあり方」「費用対効果の評価の仕方」「文化財保存のあり方」「文化財保存義務」「これからの教育のあり方」等が問われる興味ある事例であり、マスコミでも「保存・解体反対」の立場で熱心に報道された。
 又、住民運動も、集会、デモ、シンポジウム、解体工事阻止の座り込み、ついには町長リコール署名・住民投票へと発展し、小学校を守るたたかいから、地方の利権に絡んだボス政治を革新する闘いへと発展している。
 私も弁護士冥利につきる闘いをすることができた。しかし、昨年の地方自治法改悪によって、住民訴訟を本案とする仮処分が禁止され、昨年九月一日以降は、このような裁判ができなくなった。このような改悪が国会で審議がろくされないままに成立した。労働問題だけでなく、住民の私法上の権利を守る行政訴訟の面での改悪についても、団がいち早く察知して意見を言い、運動を進める必要を痛感している。





再審査請求で逆転過労死認定
―菊地過労死事件勝利報告―


東京支部  松 浦 信 平

 地方公務員災害補償基金東京都支部、同審査会がともに「公務外」としてきた菊地過労死事件(被災者・八王子市立打越中学校教諭菊地将則さん)について、地公災基金審査会は、昨年一二月九日付で、原処分を取り消し被災者の死亡を公務上災害と認める裁決を下した。
 菊地教諭が入浴中に急性心筋梗塞で亡くなったのは、一九九六年九月二八日。悲しみの底から母親が全国過労死弁護団の「過労死一一〇番」に電話して弁護団(川人博、尾林芳匡、斉藤園生、それに私)が結成されたのが同年一〇月。実に六年にわたる苦闘の末に勝ち取った過労死認定であった。
 本件は、長期に渡る蓄積疲労型過労死の典型的な事案といえた。被災者は、いわゆる「荒れた中学」の三年生学年主任だけでなく進路指導主任を兼務し、四つの部活顧問も務めていた。年度はじめからゴールデンウィークまで三五日間、その後お盆まで九五日間、その後被災当日まで四一日間と、信じられない連続勤務を続けていた。その反面、被災者を中心とした教師たちの地道な努力で、亡くなる直前期の学校運営は比較的安定し、深夜早朝にわたる労働や「異常な出来事」を特定しにくい難しさがあった。
 二〇〇〇年二月、地公災基金東京都支部は、被災者の死因は心疾患ではなく溺死であるとして公務起因性を否定した。死亡直後に被災者を診た救急救命医、死体検案医の死因判断(急性心筋梗塞)を無視した驚くべき認定だった。審査請求で弁護団は、浴室での入浴実験、救急救命記録等の分析、医学意見の補強等に注力した。その結果、支部審査会裁決(二〇〇一年一〇月)は、「溺死」認定を覆したものの、「貧血等の基礎的病態が自然的経過で増悪して心疾患を発症」したものとして、公務起因性を再度否定した。
 地方公務員災害補償基金の過労死認定は、民間、国家公務員と比較してその消極性が際立つと言われる。私は菊地過労死事件を通し、基金支部、支部審査会の事実認定の杜撰さに、非常な驚きを覚えた。救命医、検案医の認定に反して「溺死」とする以上、浴室で倒れて発見された際の状況をつぶさに調べるのは当然であろう。しかし基金支部は、「浴槽内で倒れた」とする母親の陳述を強引に「浴槽に浮かんだ」とすり替え、浴槽の構造、被災者の体格等に全く言及せずに溺死を認定した。支部審査会は、前述の通り死因を「基礎的病態の自然的増悪」としたが、これに先立つ支部の裁決では被災者には心疾患発症の危険因子(「基礎的病態」を含む)が存在しないことが溺死の根拠として強調されていた。支部の認定と支部審査会の認定は、相互に明確に矛盾していた。なりふり構わず過労死を否定しようとする姿勢がありありと伺えた。
 再審査請求での逆転過労死認定は、支部、支部審査会裁決の論理破綻が明らかだったことに加え、二〇〇一年一一月の過労死認定基準の緩和が大きな追い風となった。
 「これであの子もやっとゆっくり休める」。NHKのインタビューに母親はそう答えた。過労死を確信する両親の六年のたたかいは、まさに鬼気迫るものがあった。それに支援者(菊地過労死事件では、都教組八王子支部、八王子教職員組合がともに支援に取り組んだ。また、元同僚、教え子も、署名活動、ニュース発行、意見陳述等に労を惜しまず、実にすばらしい運動を展開した)、弁護団が突き動かされた。
 受任当時弁護士登録二年目だった私は、菊地過労死事件から、実にいろいろなことを学ばせていただいた。過労死事件における初動調査の重要性(力点の置き方、調査事項の優先順位のつけ方)が身にしみた。当たり前のことを認めさせるのに、実に六年の歳月を要した。歴史を切り開くのは、気が遠くなるほど地道で粘り強い一人一人の努力の積み重ねでしかないことを実感した「菊地過労死事件」であった。とりわけ、弁護団事務局長として多くの負担を担った斉藤園生先輩に、「本当にご苦労様でした」と言いたい。





アメリカ・ロースクール視察報告


北陸支部  島 田  広

1 視察の日程
 私たち(菅野昭夫国際問題委員会責任者他団員六名)は、二〇〇二年一〇月一三日から一〇月二〇日にかけて、サンフランシスコ及びロサンゼルスを訪れ、このうちサンフランシスコにおいては一〇月一四日及び一五日の両日にわたり、ゴールデン・ゲート大学ロースクール、カリフォルニア州立大学バークレー校ロースクール、ニューカレッジ・ロースクールの三校のロースクールを訪問し、またロサンゼルス郊外のパサデナで開かれたNLG総会においては、NLG学生幹部と会見を行いました。
 今回のロースクール視察は、昨年のアリゾナでのロースクール視察に続くものであり、昨年同様ロースクールのカリキュラムやクリニックの現状を調査することを一つの目的とするものですが、同時に、今回は、ロースクールにおいて学生が何をきっかけにして公益的活動に関心を持つようになるのか、公益的活動に興味を持つ学生をNLGに組織していくに際しどのような方法がとられているのか、現場の学生に意見を聞くことも含めより具体的に明らかにすることを主要な目的にしていました。

2 視察の具体的内容
(1)一〇月一四日午前一〇時 ゴールデン・ゲート大学ロースクール視察
 このロースクールは、環境法プログラムと呼ばれる、環境法、環境政策、環境調査、廃棄物処理法、水質、大気など分野ごとの環境保全法といった様々な環境関連の法律および政策問題を学ばせるコースを有しており、そのコースの責任者であるラモ教授から説明を受けました。
 教授は、このロースクールにおいては単に法律を事実に当てはめることのみ教えるのではなく、実際に社会に生じている環境問題をどうすれば解決することができるのか、政治的な行動も含めて総合的に学生に考えさせる教育を重視している、と強調しておられました。
(2)正午 NLGサンフランシスコ地区組織責任者との会食
 サンフランシスコにおけるNLGの組織責任者であるエンティーンさんと会食し、どのように学生を公益的活動とNLGに組織するのか、について伺いました。
 オルタナティブ・ロー・デイという新入生歓迎行事がNLGによって行われており、そこには多数のNLG教官も参加して新入生にNLGの歴史と活動を語る取り組みを行っていることが紹介されました。二〇〇一年の九・一一事件以降、NLGの存在意義が鮮明になったことで、組織的には前進していることも紹介されました。
(3)午後二時三〇分 カリフォルニア州立大学バークレー校ロースクール視察
 このロースクールには、死刑問題、報道と人権、国際人権の三つのクリニックと、「社会的正義」プログラムと呼ばれる様々な差別問題を取り上げるプログラムがあり、死刑問題クリニック教官のウェイセルバーグ教授と、社会的正義プログラムの責任者フラムトンさんから話を聞くことができました。
 死刑問題クリニックについては、実際の死刑事件控訴審において、学生たちが調査活動や法律的争点の検討を行っている実情を紹介されました。社会的正義プログラムについては、最近、第二次世界大戦における日系アメリカ人の強制収容に対する補償の経験に学びながら、過去の奴隷制度に対する補償に取り組もうとする運動があり、多くのロースクール学生もこれに参加していることが紹介されました。
(4)午後六時 ニューカレッジ・ロースクール視察
 このロースクールは、他のロースクールに比べ二分の一程度の低い学費で運営されており、働きながら通う学生が多く、また教官及び学生の中でのNLG会員の比率が高いことを特色としており、サンフランシスコでは最もプログレッシブなロースクールとして知られています。
 当日は、陪審員選定手続の模擬裁判の授業が行われており、教室にいた一六人の学生すべてが原告側弁護士と被告側弁護士に分かれて実際に陪審員候補者役の人に対して質問を行う様子を見学することができました。
(5)一〇月一五日午前一〇時 ゴールデン・ゲート大学ロースクール授業見学
 ゴールデン・ゲート大学ロースクール「環境法と正義」クリニックの指導者カン弁護士の水質保全法に関する講義を聴講しました。
(6)午後7時 ニューカレッジ・ロースクール学生と会見
 ニューカレッジ・ロースクールの学生で、サンフランシスコにおけるNLG学生組織の責任者でもあるアリスさんからお話しをうかがいました。
 NLGが学生を組織していく方法としては、(1)各ロースクールのキーパーソンとなる活動的な学生を見つけコンタクトをとってNLGに組織すること、(2)オルタナティブ・ロー・デイなどの新入生歓迎行事での働きかけ、(3)学生の興味関心に応じた個別課題の取り組みの中で学生とNLGとの結び付きを強める活動、などがあるとのことでした。
(7)一〇月一八日午後五時 NLG学生幹部と会見
 NLGはロースクールの学生から二人の副議長を選出しており、そのお二人(ホッシさんとシェーナさん)と会見することができました。
 NLGの学生支部の活動が、NLG会員の教官の手厚い援助によって可能となっていること、NLG会員が各ロースクールにおいて積極的にクリニックに取り組み、クリニックのないロースクールでは、ストリート・ローと呼ばれる地域の法律相談・弁護士紹介活動を行っていることなどが紹介されました。

3 視察から学ぶべきこと(私見)
(1)多数のNLG会員がロースクール教官となっており、多くのNLG会員教官が積極的に学生の活動に援助を与え、学生を組織していること

 NLGは教官については全米で一〇〇のロースクールに組織を持っていますが、学生についてはロースクールごとの組織は二五といわれています。NLGの教官は支部のないロースクールではサークル紹介の机に自らが座るなどして学生に直接語りかけ、NLGの姿を伝え、学生を組織しています。
 日本においても多くの団員がロースクールの教官となり、学生に働きかけることが極めて重要な意味を持つことは間違いありません。
(2)学生たちが、ロースクール入学前のカレッジ段階、あるいはそれ以前の経験から公益的活動に関心を持ってロースクールに入学していること
 アメリカのロースクールでは、入学時には約半分の学生が公益的活動に関心を持つが、卒業時にはその割合は一割程度になる、と言われているように、実はロースクールへ入学以前の経験が学生たちの公益的活動への関心を生じさせていることが多いのです。NLG副議長のシェーナさんも、ロースクール入学前に公民権活動に関する学生サークルに所属していました。
 日本においてロースクールが設立された段階でも、大学における人権ゼミなどの活動の重要性はいささかも薄れるものではないと考えられます。
(3)ロースクールの学生を公益的活動に結び付ける取り組みの重要性
 ロースクールのカリキュラムをこなすこと自体が学生にとって大きな負担であること、学生がロースクール卒業までに多額の借金を背負わざるを得ないこと、などの事情から、多くの学生がロースクール在学中に公益的活動への関心を失い、また在学中は公益的活動に取り組んでいた学生でも卒業してからは借金の返済に追われて公益的活動から遠のいてしまう人が相当数います。
 学生に働きかけて実際に公益的活動に従事させるクリニックやNLGの学生支部の活動は、公益的活動に関心をもつ学生たちにその志を維持させる上では決定的な重要性を持っています。
(4)学費問題並びにロースクールやクリニックの財政的基盤の確立は深刻な問題となっていること
 ロースクールの高い学費は、低所得者層やマイノリティーのロースクール進学を明らかに妨げています。カリフォルニア州立大学バークレー校のウェイセルバーグ教授は、授業料が高い私立のロースクールよりも授業料の低い公立のロースクールの方が公益的活動に関心を持つ学生の比率が高いと述べ、その原因のひとつが学費の高さの差にあると指摘しました。また同ロースクールのフラムトンさんは、マイノリティーを優先的に入学させるアファーマティブ・アクションが廃止された途端に、同ロースクールでさえ一旦はマイノリティーの入学者が全くいない状態になったことを紹介してくれました。一方で、他のロースクールの約半分という安い学費を設定し、働きながらロースクールに通う機会を学生たちに保障してきたニューカレッジ・ロースクールは、一度は財政破たんをきたして不動産を手放さざるを得ない状態にまで追い込まれた、という深刻な事実もあります。
 このことは、大規模な公的助成と民間の基金の組織がない限り、ロースクールは低所得者層やマイノリティーにその扉を閉ざしてしまう危険性があることを示しています。
(5)ロースクールにおける学問の自由の問題にも注意を払う必要があること
 ロースクールの教育が、学生に社会的な矛盾を認識させるものであればあるほど、ロースクールの教育内容に対する外部からの政治的な攻撃は強まります。カリフォルニア州ではありませんが他の州では特に環境問題のクリニックなどが政治家や州知事から攻撃を受けた実例があるようです。
 ロースクールにおいて学問の自由が守られなければ、われわれのロースクールにおける活動にも重大な制約が加えられる恐れがあります。





アメリカロースクール調査の感想


大阪支部  井 上 洋 子(イギリス留学中)

1 はじめに
 昨年一〇月、団の訪米調査に参加し、サンフランシスコで三つのロースクールを訪問した。私の受けた印象を、大きく二つの類型にわけてご紹介する。

2 公益活動を担う弁護士の養成をめざす私塾的ロースクール
 訪問した中で、一番印象深いのがニューカレッジロースクールだった。志ある人の私塾的ロースクールだからである。しかし、実態は志ほどバラ色ではなく、多くの困難を抱えている点でとても興味深く、かつ、参考になった。
 ニューカレッジロースクールは、サンフランシスコ市内にある。ある進歩的な裁判官によって設立され夜間も授業を行っているのが特徴である。学生数は約一〇〇名で、ほとんどが働きながら勉強している。卒業生の多くは公益活動をする弁護士になっている。教員は専従四名(すべてNLGメンバー)とパートタイマーの実務家弁護士六名である。しかし教員数や図書館など一定の規模を満たしていないためABA(全米法律家協会)の公認を得ておらず、その結果、卒業生は、カリフォルニア州以外で弁護士活動をすることはできない。カリキュラムは他校と同じだが、公益的視点に立って教えることが多いとのことであった。
 学費は年間一万ドル(約一二〇万円)で、これは他の私立のロースクールのほぼ半額にあたる。授業料は半額だが、学内には授業料免除制度をもっていない。従って、授業料は高いが学内に授業料免除制度を持っている他の私立学校に行き、自分の努力で授業料全額免除の恩典を獲得して無料で勉強するという道に賭けるか、その恩典を獲得できないときを考えて、当初から授業料半額のこちらで勉強するか、という難しい選択を入学に当たり迫られる(もちろん学外の奨学金制度はあるが、それはそれで獲得条件は厳しい)。
 学内にロークリニック(教員の指導の元に、学生が依頼者の相談だけでなく事件処理、訴訟遂行など現実の事件を最後まで取り扱う。依頼者にとっては一般弁護士に依頼するより費用が低廉ですむメリットがある。いわば実技科目であり学生が法廷活動をするための法律の裏付けがある)は三つあり、居住問題、刑事弁護、少額訴訟を取り扱っている。
 学校のあるビルは、陸軍病院であったものをカーター政権時に公益団体に払い下げされたため当初は学校の持ちビルであった。しかし、学校が財政破綻をきたし、別の所有者の手に渡り、今はその所有者から半分を学校が借り、残り半分を法律扶助協会(リーガルエイド)が借りるに至るという、困難な歴史を持っている。
 このニューカレッジロースクールの実態から、(1)働きながら法律家への道を拓いている点で有意義な役割を担っていること、(2)公益的弁護士を作ろうという教育的視点があり一定数の弁護士を輩出していること、(3)授業料を半額に抑えており一定のメリットが学生にあること、(4)しかし、授業料免除制度を整備したり、持ちビルを維持するだけの経済的基盤まではなく、脆弱で困難を抱えていること、がわかる。いいところまでやっているがお金があればもっといいのに、という状態である。

3 学生にとって現実社会への扉となるロークリニック
 ロークリニック(前述)では現実の事件を教員と学生が取り扱う。大学のロークリニックに事件を持ち込むのは低所得者層が多い。学生にとって、ロークリニックでの体験は、自分とは違う世界に触れ(米国でも日本同様学生は家庭と学校以外の社会との接触は少ない)、事件処理をする責任と緊張を感じ、実際の事件処理を学べるなどさまざまな感銘力を持っている。
 そこで、公益的活動をする弁護士を養成したい側にとってはクリニックの科目と運営はとても大切である。一方で大学当局には経済的思惑(学生の人気、寄付者の人気)、司法試験合格率、政治的思惑などいろいろな視点がある。クリニックを成功させるにはこのバランスをうまく保たねばならない。
 カリフォルニア大学バークレイ校(公立)のロースクールの死刑問題クリニックでは、主として州の地裁で死刑判決を受けた被告人の州高裁への上訴事件を取り扱っている。設立は四年前であるが、設立にあたっては学部長の理解があったため、死刑問題クリニックを開くことに学外から反対の圧力がかかっても負けないで頑張ろうという連帯のもと、死刑に反対する実業家の大口の寄付を得て、開始することができたそうである。
 また、ゴールデンゲイト大学(私立)のロースクールの環境問題クリニックも訪問した。環境問題という性格上、クリニックの訴訟の相手方は大企業になる。そのため、一部政治家はこんなロークリニックをつぶしてしまえという意見をもっているようである。このクリニックの運営の資金は、大学からの経常資金と卒業生の寄付以外に、クリニックで取り扱って勝訴した事件で相手方から支払われた金が大きなウエイトを占めている。
 この二つのクリニックのいずれにしても、外圧に耐えながら、篤志家や勝訴資金など一定の自己独立資金をもって、クリニックの理想を実現しようとしている。前述のニューカレッジロースクールと同様、志の実現には資金の裏付けが必要であることをつくづくと感じた。そして、米国には多くの篤志家、寄付者のいることに、米国の多面性とダイナミズムを感じた。

 私は、日本でロースクールが実施されたら、団に入ろうという弁護士は増えるのか、弁護士人口全体が増えるなかで構成率を維持できるのか、団はロースクールの学生にどう対処していけるのか、といった問題意識をもって、ロースクールを持つ米国の実態を聞きに行った。これらの直接の回答にはならないものの、アメリカにおいても公益活動を担う弁護士を養成しようという努力が行われ一定の成功を収めていることに励まされた。また、現在アメリカが抱えている困難は、明日は日本にやってくるものとして、覚悟してあらかじめの対応をしなければならないと感じさせられた。
 なお、私はここで公益活動という言葉を、経済的弱者、政治的少数者、十分な情報や方法を与えられていない者やごく一般の家庭人の立場に立ってその人権の擁護を実現し、浜の真砂のように尽きることのない社会問題を少しづつでも解決してよりよい民主主義を実現しようという法律家としての活動を念頭に置いて使っている。





「司法改革」地域での取り組み
〜東京都町田市より


東京支部  鈴 木  剛

 私の事務所は、東京の片田舎である町田市にある。
 事務所では、従来より町田市並びに隣町である神奈川県相模原市等の民主商工会、土建組合の支部等の法律相談を担当するなどし、友好的な関係を築いている。若干以前のことになるが、昨年一一月一一日、これら地域団体に敗訴者負担制度に関する反対署名を呼びかけ、多くの協力が得られた。
 それ以前にも、街頭でビラまきを行ったことはあったが、以降一年ほど目立った活動は行っていなかった。昨今敗訴者負担制度の審議も進んだため、早急な呼びかけが必要であるとのことで、若手である私が署名呼びかけを行うことになった。
 要請活動は事務所に新人が入所したため、挨拶回りも兼ねて行ったが、彼は入所一ヶ月目にもかかわらず、「自由法曹団物語」の販売という重責を担わされ、めざましい成果をおさめた。
 最初に訪れたのは、町田市の民主商工会であった。早速ビラを渡し説明をはじめたが、当初はうまく趣旨が伝わらないようであった。
 不況のなか、民商は多重債務・ローン問題に取り組んでいるので、銀行やローン会社から支払請求を受けた場合、会社側の弁護士報酬も負担することになる等の話をすると、関心がうまれたようだった。
 その後、土建組合を訪れ、呼びかけを行った。
 工事契約に関する証拠が乏しい場合、裁判を起こしにくくなること、元請業者に対して泣き寝入りを余儀なくされる業者が出てくるおそれがあることなどを説明した。
 担当の方は、「私もしょっちゅう訴訟はやっているから。」と言って快く署名を引き受けていただいた。
 二〇〇二年末時点で、団体署名が一〇筆、個人署名が二七二〇筆が集まっている。この活動を通じて、これら団体・組合が、日頃から訴訟をはじめとする法律問題に密接に関わっており、関心も高いことが改めて分かった。司法制度が改悪された場合、被害を受けるのはユーザーである市民のみなさんであり、これらの人々に司法改革の現状を訴え、声を上げてもらうことは大切なことだと感じた。
 最後に、私のようにベッドタウンを本拠としている者のためにも、自由法曹団は一般市民の法律問題について司法制度改革がどのような影響を与えるかについてより多くの情報を与えてほしいと思う。





刑事手続きについての法務省の本音


担当事務局次長  齊 藤 園 生

 ちょっと時期はさかのぼるが司法制度改革推進本部裁判員・刑事検討会では、昨年九月二四日第七回検討会で、関係団体(連合、犯罪被害者の会、警察庁、日弁連、法務省、最高裁など)からのヒアリングを行った。法務省は「裁判員制度・刑事検討会における当面の論点に関する意見」という文書を資料(「資料二〇」とされるもの)として提出し、裁判員制度・刑事手続きについて基本的考えを明らかにしている。インターネットでだれでも取り出せるので、是非一度現物を直に読んでいただきたい。私は、法務省はこんなことを考えているのか、と正直いって驚きました。あまり騒がれていないようだが、以下大まかな問題点のみ指摘する。
 第一に、準備手続と争点明示義務を創設するという点。法務省は「裁判員制度のもとではわかりやすく、可能な限り審理時間を短くして裁判員の負担を軽減する必要があるから、徹底した争点整理が不可欠である。そのためには被告人に争点明示義務を課し、準備手続で主張しなかった争点や証拠取り調べを、原則公判段階では扱わない」ようにすべきだという。まるで事実立証についても被告人側に「無実」の立証責任があるようなもので、挙証責任は検察官が負う挙証責任の大原則を無視している。しかも予断排除の原則に反し、準備手続は「受訴裁判所」が行うというのである。
 第二に、証拠開示を狭めている点。法務省は「証拠全面開示や探索目的開示は認められない」とした上で、「連日開廷を可能にするためには、証拠開示の時期や範囲は争点整理と関連づけたものとすべきで、証拠開示と争点整理の実効化のための措置(被告人側に認否や争点明示等を義務付ける)を導入すべき」としている。検察官手持ち証拠の全貌が分からない内に、どうやって争点を明示できるのであろうか。ほとんど被告人側には争う余地がなくなってしまう。
 第三に、強力な訴訟指揮権の導入と審理の促進の点。裁判所の指揮に当事者が従わなかったときのペナルティーを課すこと、とりわけ「弁護人が指揮に従わないで退廷、欠席したときにも審理がきる制度導入を検討すべき」とし、弁護人抜き審理を可能にしようとしている。そして「連日開廷を原則」とし、「二年以内に第一審の判決をするようつとめるものとする」との規定の盛り込みも計画している。これでは到底十分な弁護活動などできない。
 第四に、裁判員制度の効果は最小限に止めている点。さらに法務省は「法的解釈や訴訟手続については職業裁判官専権とすべき」とし、「大人数だと時間がかかり、濃度の濃い議論にならない一方、少人数だと十分なコミュニケーションを取りながら相互の信頼のもとで議論できるし、連日開廷が可能だ」との理由で、裁判員は少数にすることを提案している。国民参加の下での刑事裁判の適正化の効果を最小限に止めようとするものである。
 以上、ここまで見てきても法務省の本音は、現状の調書裁判・検察官の証拠独占の弊害には「問題はない」と言いきり、国民参加の裁判員制度の効果は最小限に止める一方、裁判員制度導入と審理促進をドッキングさせ、審理促進のため被告人側に新たな義務を負わせ、最も重要な被告人の権利保護と真実発見はないがしろにする、ということのようである。裁判員制度導入に当たっての法務省の本音が、こんなにもあからさまに現れた文書も他に無いのではないか。今後検討会で法務省側からの圧力が強まることも考えられ、十分注意が必要だと考えられる。





二・六 団市民問題委員会で、
下請けの請負代金確保について考えませんか


担当事務局次長  坂  勇 一 郎

 この間、団の市民問題委員会では「不公正な取引の是正」を取り上げることとしており、前回の委員会(一一月二七日)では、「建設業界における不公正な取引」の問題について検討を行った。
 この日の委員会ではまず、建設政策研究所専務理事辻村定次氏より、「建設業界における不公正な取引の実態」と題する報告を受けた。報告の中では、経済状況の悪化と競争の激化のもとで、建設業界の重層的な下請け構造が一層深化してきており、こうした中で下請け業者に様々な形でのしわ寄せが行われていることが明らかにされた。
 次に、全建総連埼玉土建海野和夫氏から、下請けの請負代金の確保について報告が行われた。一次下請けが破綻したときに、いかにして元請けに直接二次下請けに対する支払いを行わせるかが、重要な課題となる。海野氏からはこの問題について、(1)法律上の根拠としては建設業法四一条が重要な根拠であること、(2)国土交通省メンバーの共同執筆による「建設業法解説」(建設業法研究会編著・大成出版社)やこの間の国会質問における行政側の答弁(二〇〇二年七月二三日参議院国土交通委員会)が武器となりうること、(3)昨年、元請けが二次下請けに対する立替え払いを行った場合一次下請けに対する求償債権と一次下請けへの請負代金債務を相殺することが認められる旨の東京高裁判決が出されたこと(東京高判平成一三年七月一八日)、等極めて実践的な報告が行われた。
 現下の厳しい経済状況の中で、請負代金不払いの相談が増加している。下請けの代金確保のための法的手段を確認するとともに実践に学び、代金確保の手段の拡充を図っていくことは重要な課題となってきている。
 次回の市民問題委員会では、下請代金確保の問題について、具体的事例の報告も受けつつさらに実践的な検討を行う予定である(前回の委員会にご出席頂いた団体の方々にも引き続きご参加頂く予定)。是非ご参加下さい。





日韓法律家交流会at広島のご案内


東京支部  小 池 振 一 郎

 日韓法律家交流協会と広島交流会現地実行委員会共催で、以下の通り、日韓法律家交流会が開かれますので、ご案内致します。
【日程】二〇〇三年三月二八日(金)・二九日(土)
【場所】三井ガーデンホテル広島=広島市中区中町九―一二
    TEL 082-240-1119 FAX 082-240-1118)
【スケジュール】
一日目(二八日)
(1) 午前八時〜 バスツアー(自由参加)
【行程】広島原爆資料館→宮島他観光地見学
(2) 午後六時〜 懇親パーティー(三井ガーデンホテル広島 会議場)
二日目(二九日)
午前九時〜午後四時三〇分 交流集会
【テーマ1】難民問題(韓国側…脱北者の実態、難民認定審査会手続の変革他
           日本側…難民認定申請却下審査手続、日系人の地位他
      報告者 渡邉彰悟弁護士(一弁)、下中奈美弁護士(広島)、山口元一弁護士(二弁)
【テーマ2】刑事手続(韓国)…起訴前保釈、拘束適否審、取調への弁護人立会の実現による拘束被疑者割合の低下等について。
      これらの改革はいかなる条件によって可能になったのか。
【テーマ3】朝鮮半島の状況と有事法制、法律家の役割…韓国側から見た東アジアの状況や日本の動向。日本の有事法制反対運動と弁護士会の状況等について。
      報告者 内田雅敏弁護士(東弁)、井上正信弁護士(広島)
申込は、桑原育朗弁護士(東弁)(TEL〇三・五三六八・六〇八一)へ