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坂本  修 平和と希望への道を拓く年に
内藤  功 自衛隊は占領軍の一部―特措法・基本計画・実施要項の文言を読みなおす
土橋  実 議会の否決した費途へ予算の流用は違法!
―前市長に対し損害賠償金の支払を命ずる判決―
船尾  徹 「構造改革」とたたかう労働裁判2
(日本航空 長時間乗務手当不利益変更裁判から)
澤藤統一郎 東京「日の丸・君が代訴訟」弁護団へのご参加を
杉井 静子 教育基本法改悪阻止第三回全国活動者会議のお知らせ

あけまして おめでとうございます



平和と希望への道を拓く年に

団長  坂 本  修

 すべての団員、そして事務局労働者のみなさん、あけましておめでとうございます。
 緊迫した諸課題に取り組み、大変だった昨年のお疲れはとれましたか。新春はゆっくりおやすみになれたでしょうか。今年もみなさんと御家族がお元気でご活動されることを心から願っています。
 昨年は三月二〇日のアメリカ・ブッシュ政権によるイラクへの大儀なき武力侵略が強行され、小泉内閣は、これに、積極的に同調し加担しました。
 小泉内閣は、「対米公約」に従って、自衛隊派兵を、憲法はもとより、イラク特措法にさえ反して「戦闘地域派兵」を強行しようとしています。このあいさつを執筆している最中に、二人の日本人外交官が殺害されたという報道がとびこんできました。その一人、井ノ上正盛三等書記官は、イラク戦争開始直前に「人間の盾」になろうとした人々に、「この戦争はおかしい。私も若かったら『人間の盾』になっていたかもしれない」と語っていたと報じられています(『東京新聞』〇三年一二月一日)。小泉内閣の戦争加担政策の心の痛む犠牲者だとつよく思います。なんとしても自衛隊の派兵を阻止するための行動をといういっそうの思いに駆られます。
 昨年の総選挙の重大な結果を利して、小泉首相は、〇五年に自民党改憲案を発表することを公言し、国民投票法をあわよくば通常国会に提出しようとしています。改憲阻止は、切迫した最重要の課題です。いままでの発想や仕組みをこえて、多様な運動をつくっていかなければならないことは明らかです。
 改憲策動と連同し、しばしばそれの先取り、あるいは先陣として、教育基本法改悪、国民保護法制制定などの策動が進められています。こうした流れの中で、国民のための司法改革か、それとも、政府・財界の路線により奉仕する司法改革かをめぐっての複雑な“せめぎあい”は具体的な立法過程に入ります。団は、基本を堅持し、ねばりづよく共同を拡げて、適切に対応しなければなりません。
 情勢はたしかに重大です。しかし、史上最高の参加であった昨年の団総会の討議が示しているように、憲法改悪に反対し、平和と民主主義を守り、人間らしく生きたいという要求は、確実に広がり、つよまっています。こうした要求を実現するための運動が、また、“点々たる光”ではありますが、つながってきています。そして、自由法曹団と団員らは、まぎれもなく、こうした“光”の一つになっているのです。
 私たちの志すところは、広範な国民のそれと共通であり、アジア人民をはじめとし、一日で一〇〇〇万のデモに結集した世界の人々の思いと共通です。歴史の主な方向は、そこにあることをお互いの確信として、団本部はみなさんとともに、力を尽くします。
 荷を分かちあって、歴史の岐路に立つこの年を、平和と希望への道を大きく拓く年に、必ずやしようではありませんか。



自衛隊は占領軍の一部

―特措法・基本計画・実施要項の文言を読みなおす

東京支部  内 藤  功

 イラク特別措置法(〇三年八月一日公布施行)、基本計画(〇三年一二月九日閣議決定)、実施要項(〇三年一二月一八日長官決定・総理承認)を読んでみますと、ことがらの核心は、自衛隊が、米主導の連合軍司令部およびその影響下にある施政当局(CPA)との密接な連絡協議のうえで行動する関係にあること、換言すると、自衛隊は米占領軍の一部となることがみえてきます。この観点を基本に、派兵問題を観察することが大事だと思いました。

 イラク特別措置法四条4項には「対応措置(筆者註・・人道復興支援活動と安全確保支援活動)を外国の領土で実施する場合には、当該外国(イラクにあっては・・(略)・・国連総会または安保理事会の決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関を含む)・・(略)・・その他の関係機関と協議して、実施する区域の範囲を定めるものとする」とあります。
 ここにいう「イラクにおいて施政を行う機関」とはCPA(占領軍暫定当局)のことです。実にサラリと書いてあります。区域ひとつ決めるにも、日本政府だけではきめられない、かならず、占領当局(じつは米軍司令部)と協議しなければきめられない、ということです。

 基本計画の「2(6)その他人道復興支援活動の実施に関する重要事項」、「3(2)その他安全確保支援活動に関する重要事項」には「(当該)活動を実施する区域の指定を含め、当該活動を的確に行うことができるよう、我が国は、・・(略)・・イラクにおいて施政を行う機関等と十分に協議し、密接に連絡をとるものとする」とあります。法律よりもひろがってきました。「区域」だけではなく、活動を的確に行うためのすべてのことを協議しろというのです。しかも、とおりいっぺんの協議ではなく、「十分に協議」せよ、「密接に連絡」せよ、ということです。

 基本計画の2(3)ア(ア)、3(1)イには「防衛庁長官は、自衛隊の部隊等が(当該)活動を実施する区域を・・(略)・・指定するに当たっては、実施する活動の内容、安全確保面を含む諸外国及び関係機関の活動の全般的状況、現地の治安状況等を十分に考慮するものとする。その際、治安の推移を特に注意深く見極めた上で実施するものとする」とあります。
 小泉総理、福田官房長官、石破防衛庁長官ら「戦争屋三人組」の国会答弁や発言では、区域指定に当たって「治安状況をよく見極めて」という箇所だけをことさら強調しています。しかし、基本計画のこの部分で最も重みをもつのは「諸外国の活動の全般的状況の十分な考慮」つまり、占領軍の圧倒的な基幹、一三万の米軍の作戦活動の全般的状況を十分に考慮して区域をきめよ、ということです。国会答弁のように「自衛隊員の安全第一で決める」というようにはなっていないのです。

 基本計画の2(3)ア(イ)「なお書き」には「なお、これに加え、派遣される自衛隊の部隊等の隊員のうち当該部隊の業務に附帯する業務として部隊の活動の安全かつ適切な実施に必要な情報の収集と連絡調整を行う者は、バクダッドの連合軍司令部施設並びにイラクと国境を接する国及びペルシャ湾の沿岸国並びにこれらの場所又は地域相互間及びこれらの場所又は地域と次にかかげる場所又は地域との間で行われる移動と連絡に際して通過する場所又は地域において、当該業務を実施することができることとする」とあります。実施要項(一二・一八)にも「バグダッド連合軍施設など」と記載してあります。
 米軍との連絡調整、情報交換等のため自衛隊の「派遣幹部」連絡将校をバクダッドの連合軍司令部、その他近接諸国にある米軍等の諸機関施設に派遣(駐在)して、作戦の共同、一体化を具体的に担保しようというのです。「連絡将校」は事実上、日夜、米軍の「ご意向」を承り、これを自衛隊の指揮官に伝達する役割をつとめることになるでしょう。欧州の軍隊のように、国益を堂々と主張して譲らなければ立派ですが、残念ながら、できないと思います。

 実施要項(一二・一八)は、全文を公開しません。新聞発表されたものから推察すると、安全確保支援活動(掃討作戦、武器弾薬輸送等)について隠そうとしているようです。憲法解釈逸脱の内容があるためでしょう。国民に秘匿する態度は許せません。

 小泉総理と日本政府のいう「日米同盟」とは、このような、アメリカの戦争に日本青年の身命を献げることが本質です。日本国会や自衛隊員には、「安全に配慮する。戦闘はさせない。近傍で戦闘が起きたら活動を中断し回避する。戦争に行くんじゃないんだ」といって欺きながら、実は、米軍と密接に連絡共同し、かれらの一部となり、イラクのひとびとに銃口を向けることも辞さない派兵です。多くの人々はこれを見抜きはじめています。有事三法成立、イラク特別措置法成立と一見順風満帆にみえた、戦争路線の最大の弱点が露呈しはじめました。この好機を逸してはなりません。

 団の平和・有事法メーリングリストでの井上正信(広島支部)さんの「基本計画によれば、携行武器には限定がないのではないか」とのご指摘は、そのとおりだと思います。そして「限界がない」のは「携行武器」だけではなく、自衛隊の行動地域の範囲、部隊の指揮運用、武器使用・武力行使等の基準、米軍・他国軍との協同・連携等についても同様の結果となるでしょう。
 この点、本年六〜七月の通常国会イラク特別措置法案審議の際に、野党議員が危惧し追及したような様相になる危険がみられます。
軍隊の行動に関わる法令の固有の特徴ですが、国会で通した「イラク特別措置法」よりも、内閣の「基本計画」で更にひろげ、防衛庁長官の「実施要項」で更にひろげ、更に訓令(部隊運用基準・交戦規定。ROE。現地部隊指揮官の武力行使基準)でひろげ、更に現場の実際の場面ではさらにひろげるというのが「法則」です。
 かくて、国会答弁では、憲法の範囲内だなどと言っていたのが、イラクの「戦地」に行けば、憲法とは似ても似つかぬ「国際紛争解決の武力行使」に変身するという結果になりましょう。
武装勢力の襲撃を受け、死傷者が出れば、国家的弔慰、栄誉の付与、兵力増派、武器追加増強のための「実施要項」「基本計画」の改定となるでしょう。防衛庁内部の規定や制度やシステムにはなんらの歯止めもありません。
 以上の動きをくいとめるものは、米軍の占領を押さえこむ世界的規模の運動と、わが国のイラク派兵阻止の世論と運動の発展如何にかかっています。その反映として、部隊内部に「犬死」せず自己の生命を守るためには「捕虜」も「脱走」も辞せずという「臆病風」が発生するかどうかにもかかっていると思います。信太正道さんがよく言われる「臆病者と言われる勇気をもて!」ということです。



議会の否決した費途へ予算の流用は違法!

―前市長に対し損害賠償金の支払を命ずる判決―

東京支部  土 橋   実

 市議会議員(日本共産党、新政会、公明党、みどりの会)一四人が原告となり、前市長に対し武蔵村山市に損害賠償を支払うよう請求した住民訴訟の判決が、昨年一二月一〇日、東京高等裁判所で言い渡されました。裁判所は、議会が否決した費途へ予算を流用し執行するのは地方自治法の趣旨に反し違法とし、前市長に一三四四万円の損害賠償を命じた一審判決を全面的に支持し、前市長側の控訴を棄却しました。この裁判は、議会の議決権・予算修正権と首長の予算執行権の関係が真正面から問われた事件で、高裁レベルではじめての判断です。この判決により、議会と行政の責任分担が明確になり、各地方公共団体に与える影響も大きいと思います。さらに、議会の権限を無視した前市長の独断は許せないとの点で一致し、保守・革新を問わず多数の議員が原告となった点でも意義のある事件です。以下、事件の概要と判決の内容をご紹介します。

1.事案の概要

 武蔵村山市は、旧第五小学校の校舎跡地に市民総合センターを建築し、グランドと体育館は市民の開放施設として利用することを決めていました。ところが、前市長志々田浩太郎氏は、突然、議会に諮ることもなく旧第五小学校のグランドに徳洲会病院を誘致することを決定しました。医師会や地元住民の多くが反対し市民の合意が形成されていないのに、前市長は病院誘致を強引に押し進めようとしました。そのため、議会は、平成一三年度の病院誘致関連予算案を否決しましたが、前市長は予算を目節間で流用して費用を捻出し、強引に体育館の解体と道路取り付け工事を行ないました。前市長が議会の議決を無視して予算を執行したため、市議会議員一四名が原告となり、前市長を被告として、違法に支出した公金一三四四万円を市に賠償するよう住民訴訟を提起しました。

2.控訴審の争点

 前市長は、本件予算の流用は議会が否決した費途に対する予算の流用ではなく、体育館の解体は老朽化と防犯上の観点から、道路取付工事は隣地住民からの要望に基づき工事を行ったので、予算の流用は適法であると主張しました。
 控訴審の争点は、(1)予算の流用により行われた体育館の解体及び取り付け道路工事は病院誘致のためかそれ以外の目的か、(2)病院誘致のためであるとすると予算の流用は違法か適法か、(3)市に損害は発生するかの三点です。とくに、地方自治法二一六条は予算の目節間の流用は認めていますが、一方で議会は予算について議決権を有し(九六条)、市長は予算を調製し、議会の議決を経なければならず(二一一条)、市長は議会の議決に基づいて予算を誠実に管理し執行する義務があります(一三八条の二)。したがって、議会が否決した費途に予算を流用して執行することは許されるかが争点となりました。

3.裁判所の判断

 東京高等裁判所は、争点(1)については病院誘致の目的で予算を流用したものであることを認定しました。争点(2)の議会が否決した費途への予算流用・執行することができるかについては、「議会が否決した費途に充てることを目的とする予算の流用は、議会の予算修正権を有名無実化し、議会による予算統制を定める地方自治法の趣旨を実質的に没却し、濫用するものにほかならず、違法であると解するのが相当である」と判断しました。また、争点(3)についても、市に違法な支出金相当の損害が発生していることを明快に認定しました。

4.判決の意義について

 武蔵村山市の事例は、病院誘致を巡り多数の住民が反対している中で、強引に誘致を進める市長に対し、議会が議決権を通じて事業の執行にストップをかけました。その後の市長選で、前市長は住民の支持を得られず落選しています。その結果、徳洲会病院は武蔵村山市への進出を断念し撤退することになりました。
 地方公共団体では議会がオール与党化しているところが多く、行政に対するチェック機能が十分働かず、ともすると議会は行政の行う施策の追認機関の役割しか果たしていないところが多数あります。こうした中で、本件事案は、議会と行政の権限を明確にさせただけでなく、住民自治の観点から議会はどうあるべきかも示すものとして大きな意義があると思います。
 なお、弁護団は私のほかに、小林克信団員と長尾宜行団員です。



「構造改革」とたたかう労働裁判 2

(日本航空 長時間乗務手当不利益変更裁判から)

東京支部  船 尾  徹

3「構造改革」と裁判官の意識

 日本航空と外国他社との間の「国際競争力」比較は、為替相場の変動による影響や外国企業の資料入手の制約からして、なかなか困難な作業となった。
 さいわい東京大学醍醐聡教授の多大な協力・援助と機長組合の調査によって、九一年〜九八年の期間における、日本航空と欧米主要航空会社(アメリカン、ユナイテッド、ノースウエスト、英国航空、ルフトハンザ等)の営業費用構成と営業費用中の人件費の構成比、ATK当たり人件費(許容搭載重量一トンを一キロメートル輸送した場合にかかる人件費であり、人件費の生産性を示す指標)、労働生産性、損益分岐重要利用率、航空機投資回転率、減価償却費、座席利用率、販売関連費用等々の視点からみた国際比較とその推移を系統的に分析することができた。それらの国際比較によれば、日本航空における営業費用構成のなかでの人件費の占める割合は九〇年代に激減し続け、欧米主要航空会社他社と比較して人件費コスト面では抜群の競争力を有するまでになっており、労働生産性はきわめて高いものとなっていること、九一年度から九八年度にかけて日本航空の営業損益レベルでの業績回復に寄与したのは、もっぱら相次ぐ人件費の大幅な削減にあったことを明らかにしていった。
 もともとコスト構造の検討にあたっては、収益性との因果関係、収益性の改善効果、そして対象となるコスト削減策の妥当性等が検討されるべきなのである。
 こうした事実を踏まえて、日本航空における「国際競争力」強化のための改革のターゲットは、むしろ人件費コスト削減にはなく、収支構造上の問題点としては、収入面における改善、収入を得るのに必要な販売関連費用等の改善等の改革が求められていることを明らかにした。
 一〇月二九日東京地裁民事一九部(山口コート)は、長時間乗務手当の不利益変更の効力を全面的に否定する判決をだした。
 判決は、長時間乗務手当の削減の必要性について、「我が国航空企業は、低コスト体質への転換及び収益力の強化を図ることが必要であり、低コスト体質への転換を図るに際しては、固定費を中心にコストの削減を進めるべきこととしている」、「このように、航空業界においては、規制緩和の進行にともない競争が激化していくなど環境が急激に変化しつつあり、航空企業が競争力を向上させるために低コストを図ることは、いわば共通認識ともいえた」として、「規制緩和」の進行との競争の激化のもとでの「競争力向上」のための「コスト削減」が必要との前提認識に立って、「九一年度から九三年度まで三期連続の経常損失、営業損失を契機として、九二年度以降とってきた構造改革施策は、人件費削減のみに固執したものとはいえず、被告がコスト競争力強化を図るために、必要かつ急務なものであった」として、人件費コスト面での「国際競争力」強化の必要性を肯定した。
 また、本件変更時点九七〜九八年時点には、日本航空の業績は回復基調に入り、営業利益、経常利益いづれも黒字計上するところなっていたが、判決は、「被告の経常収支は未だ営業収支で金融収支をまかなうに至っておらず、被告の経営体質は、景気の動向等想定を超える事態に十分対応できるかどうかの観点からは、十分に強化されたとはいえない状況にあったもので、被告の経営体質をより強化するという観点からは、被告は九八年度に人件費効率向上施策を実施する必要はあったということができる」として、「経営体質」強化のための「人件費効率向上」施策実施の一環として、変更の必要性を肯定した。
 この国の裁判官の意識は、「規制緩和」のもとでの「競争力強化」のための「構造改革」、とりわけ人件費コスト削減の「構造改革」が必要であるとするイデオロギーにどっぷり浸かり、いつでも、いかなる条件のもとでも、アプリオリに肯定する至上命題ともなっている思いがする。
 しかし、そのような裁判官であっても、変更の必要性の程度について、判決は、「ATK当たりの人件費はかなり改善されてきている」「九八年は、九一年対比、九五年対比で、欧米他社ではいずれも一を超えているのに、一を切っており、営業費用中の人件費構成も欧米主要航空会社と比較して低い状態が続いていることからすれば、その必要性はこれまでと比べれば、必ずしも高いものとはいえない」とした。
 九〇年代に入ってから、相次ぐ人件費削減をしたきた日本航空のATK当たりの人件費コストは、欧米主要航空会社と比較して、きわめて低位に位置し、抜群の「国際競争力」を有するまでになっている事実を、裁判官も無視できず、「高いものとはいえない」と消極的表現ながらも、その変更の必要性を過度にふりまわすことに対して、みずから釘をささざるを得なかった。「国際競争力」の厳密な比較分析のために精力的な論証活動をしたことが、裁判官をこの地点に踏みとどめさせたことは間違いない。 

4 判決の結論

 こうして判決は、「本件変更時、被告において本件変更する必要性はあったものの、その程度は必ずしも高いものとはいえない」、「本件変更により原告らが被る不利益は、原告等の年収が高額とはいえ、多い者で年間二〇〇万円ないし三〇〇万円の収入減となり(原告等の一人平均年減額は一三七万円強)、少なくない額である」、「本件変更に伴う代償措置がとられたとはいえない」、「本件変更当時、被告と外国他社との人件費コストにも大きな差があるとはいえない」などの事情を、「総合勘案すると、本件変更に合理性があったとすることはできない」とした。
 かくて裁判官の意識に深く浸透している「国際競争力」強化の一般的必要性をもってしても、九〇年代を通じて相次ぐ人件費削減を強いられてきた日本航空の労働者・乗員の抜群の「国際競争力」の現実を否定することはできなかった。長時間・過密労動のもとで高い労働生産性をあげ、欧米先進諸国の労働者と比較して、その人件費コストがきわめて低くなっている現実のもとで、日夜、働いているこの国の労働者にとって、「国際競争力」強化を理由とする人件費コスト削減のための「構造改革」に基づく就業規則変更の合理性を否定した判決の意義は大きい。
 なお、機長は年収三〇〇〇万円を得ているので、長時間乗務手当の削減はたいした不利益でない、受忍されるべきだとの会社の主張に対して、機長側は、長時間乗務手当は過酷な長時間乗務の対価であって、長時間乗務そのものの過酷性を改善・緩和せずに、その対価関係を変更しなければならない必要性・合理性が問われているのであって、機長が得ている総体としての賃金の多寡が問われているのではないことを提起してきた。
 判決は、「長時間乗務には、相応の負担が伴う」ものであるとして、長時間乗務手当を「長時間乗務による負担を緩和するための対価措置」であるとした。長時間乗務についての判決のこの判断部分は、判決全体の判断内容からみると、きわめてわずかなコメントしかなかったが、実は判決の帰趨を決するほどの重要なポイントのひとつでもあった。「山口コート」においては、乗員による勤務基準不利益変更裁判(第二陣訴訟)における分厚い立証活動によって、勤務基準が切り下げられたもとでの長時間乗務の過酷性を焦点にして精力的に明らかにしてきた。その立証活動の成果を、この訴訟においても提出してきた。それが裁判官へのボディ・ブローとなって、「相応の負担が伴う」と言わざるを得なかったのだと思う。こうして「年収三〇〇〇万円」論を排斥し、「原告等の年収が高額とはいえ」、長時間乗務手当は「長時間乗務による負担を緩和するために対価措置」「長時間乗務手当は長時間乗務に対する対価であり、他の手当とは性質を異にする」としたのである。
 この訴訟の基本的土俵・論点に、長時間乗務の過酷な実態をすえたことが、「年収三〇〇〇万円」論に与しやすい裁判官の意識を、「高額とはいえ」といった程度にとどめさせたのだと思う。
 機長組合に結集した管理職としての機長たちの運動は、この勝利判決を手にして、乗員の勤務基準不利益変更裁判をも含めての全面解決にむけて、大きくその歩を進めていくことになるだろう。



東京「日の丸・君が代訴訟」弁護団へのご参加を

東京支部  澤 藤 統 一 郎

 あなたは君が代を歌えますか。日の丸に敬礼できますか。
 軍国主義と排外主義のシンボルとして、天皇制国家とあまりにも深く結びついた歌と旗。その旗を掲げ、起立してその歌を唱えと命じられたら、従えますか。その強制が処分を伴うものであったら、いかがですか。
 「逝いて還らぬ教え子よ/私の手は血まみれだ!/君をくびったその綱の/端を私はもっていた/しかも人の子の師の名において」
 この詩に感動して平和教育・民主教育を志した教員が、今、自分の信念を貫くことで職を掛けざるを得ない立場に追い込まれています。そして、法律家の援助を求めています。この運動にふさわしい大弁護団が必要です。教育現場での「日の丸・君が代」の強制を許さない法廷闘争に、是非ともご参加をお願いいたします。 
 石原反動都政暴走の一端が、来春の公立校卒業式にあらわれます。都教委は、都立高校・養護学校を中心に、義務制の小中校にまで、卒業式・入学式における「日の丸・君が代」の強制に狂奔しています。東京の状況は、たちまち全国に広まることになるでしょう。
 一〇月二三日の「産経」朝刊一面トップは、「国旗掲揚・国歌斉唱の適切実施 違反教職員は懲戒処分 都教委きょう都立校に通達」という、おどろおどろしい見出し。そのリークのとおり、当日午後の臨時校長会で、都教委から都立校の各校長宛に、「入学式、卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」と、「実施指針」(別紙)が示されました。
 微に入り細を穿って、国旗の掲揚・国歌の斉唱・会場設営にこだわっています。まさしく、「生徒中心の教育か、国家中心の教育か」が問われる構図でとなっています。
 とりわけ国歌斉唱時の不起立は、都議や都職員の監視で現認させ、処分を明言しています。教師を志した原点において承服しがたいという良心的な教員が苦境に立たされています。
 教組が、闘ってくれることが望ましいのですが、今のところその期待はできそうもありません。
 一二月六日に、この策動に提訴をもって敢然と闘おうという現場の声が、「予防訴訟を進める会」の結成集会となりました。原告団募集が既に始まっており、提訴者は、二〇〇人規模となりそうです。
 これを支えてきた弁護士グループでは、「無名抗告訴訟としての、起立・斉唱義務不存在確認の予防訴訟」と、「起立・斉唱を強制する通達を発した教育委員会の行為を不法行為とする国賠訴訟」を併せて提起しようと議論しています。
 国賠に関しては発想を転換します。処分があって初めて精神的損害が生ずるのではない。憲法と教育基本法を蹂躙する通達による、「自己の思想信条を守りたい。しかしそのことを貫けば処分が不可避である」という、良心的教員の苦境自体が損害と考えます。
 この訴訟形態のメリットは、処分覚悟で不起立を貫く人も、心ならずも起立する人も、分断されることなく一緒に訴訟を続けていけることです。これなら、入り口論争だけでなく、内容の議論ができる。憲法と教育基本法を武器に堂々と闘うことができそうです。
 腕を拱いて「処分が出たら闘おう」「処分が出るまでまとう」では大きな運動になりません。処分を出さないために、大きな力を結集しようという申し合わせです。
 現場で、闘う集団ができて、法律家の助力をまっています。早急に弁護団を結成し、提訴準備をしなくてはなりません。課題のスケールにふさわしい、大弁護団を結成しようではありませんか。
 是非、弁護団へのご参加、ご支援をお願いいたします。
 一月中旬の第一陣提訴を念頭に、今後の弁護団会議のスケジュールを以下のとおり設定しました。
(省略)
 訴訟の骨格を構成し、訴状の執筆パートを多くの方に分担していただきたいと思っています。
 是非とも、一二月二六日の渋谷勤労福祉会館(公園通り・パルコIIの向かい)の集会にご参加ください。そして、暮れと正月の休みに訴状執筆の分担をお願いします。
 今、そこに迫っている民主主義と平和の危機を乗り越えるために。



教育基本法改悪阻止第三回全国活動者会議のお知らせ

教育基本法改悪阻止対策本部
本部長  杉 井 静 子

 みなさん、今年もよろしくお願いいたします。
 さて、教育基本法改悪阻止対策本部では、本年の通常国会で教育基本法「改正」法案が提出必至であること、ここにきて各地の地方議会で改正促進の請願が採択されていること等の情勢を踏まえ、下記のとおり、第三回全国活動者会議を開きます。
 前回の全国活動者会議では、複数の参加者から、「改正に反対する側に、分かりやすいキャッチフレーズが必要なのではないか」という意見が出ました。「キャッチフレーズをつくる」ことは、いってみれば「運動をどうやって広げるか」の鍵を探ることでもありますが、対策本部では、率直に意見を交換しながら、運動を広げていきたいと考えております。
 前回は、主催者側で準備した報告などが盛りだくさんで、十分な討議の時間が取れませんでした。出席者の方々には不完全燃焼の感があったかと思います。今度は、十分な各地の報告及び運動の討議の時間を確保します。
 各地報告といっても、「こういう集会をやった」ということだけでなく、「こういう呼びかけがよかった」とか「これについてはなかなか聴く人に伝わらない」とか、そういうご意見を出していただけるようにしたいと思います。
 実りのある討議をするために、各地で行われている学習会などについて、昨年末に全国の支部・県宛にアンケートをFAXしております。ご協力ください。

 日時 二月一〇日(火)午後一時〜五時