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川口 彩子 私が弁護団に入ったわけ
―「無謀訴訟」が「希望訴訟」に
小笠原 彩子 国民投票法―改憲手続法案の
「カラクリ」ブックレットを広めよう
郷田 真樹 薬害肝炎九州訴訟判決を受けて
私たち法曹にできること
吉原  稔 無駄な公共事業の「打出の小槌」
―「地方債」の発行差し止めの初判決
中野 和子 団女性部総会のご報告
平田 かおり 〇六年自由法曹団女性部総会に出席して
増田  尚 三井生命丸亀営業所長過労死裁判で和解成立
阪田 勝彦 九・一五 全国活動者会議の報告
山口 真 国民投票法案成立を絶対に阻止しよう!
―九・二六 全国活動者会議の報告
井上 洋子 大阪支部だより・・・大阪支部四〇周年行事で顕らかになったこと




私が弁護団に入ったわけ

―「無謀訴訟」が「希望訴訟」に

神奈川支部  川 口 彩 子

 私の父は現役の都立高校教員である。また母は二年半前に退職してしまったけれど、東京都の小学校教員であった。幼い頃から、教育現場は、私にとって日常の話だった。

 父からは、一〇・二三通達が出される何年か前から、卒業式に日の丸・君が代が入り込んできている話を聞いていた。式の中に君が代がむりやり入れられた、式次第にも書き込まなきゃいけなくなった、式次第には君が代じゃダメで国歌と書かなきゃダメだ、国歌斉唱と書かなきゃダメだ…。

 一方、週案の提出が義務付けられたり、主幹制が導入されるなど、教員に対する統制が強まっている話も聞いていた。学校が息苦しくなってきて、母は退職する数年前から、早く辞めたい、早く辞めたいと言うようになっていた。母が早く辞めたいと言い出したころ、私は、母が誇りをもって、生きがいとして続けてきた「教師」としての仕事なのだから、定年前に辞めるというのはなにか挫折のような気がして、「頑張って続けなよ」と励ましてきた。しかし、学校現場の話を聞くにつけ、学校から自由がなくなっていること、そして未来に希望が持てないことを、私自身も感じられるようになり、無理して続ける方がかわいそうに思えてきた。そしてついには「辞めてもいいよ」と言えるようになり、母も二〇〇三年度をもって退職することを決意した。

 そのような中の一〇・二三通達だった。通達が出された三日後、私は自由法曹団の全国総会の場で、一〇・二三通達の話を聞いた。処分を前提に起立斉唱を強制する内容に本当に驚いた。家に帰って父に「大変なんじゃないの?」と聞くと、父は「そうなんだよ。それでみんな、組合も、どうすんだどうすんだって大変なんだよ。」と言った。全国総会の場で、「サワフジ先生が無名抗告訴訟をやらないかと言っている」という話は小耳に挟んだのだが、当時は「サワフジ先生」と面識もなく、「無名抗告訴訟」という言葉も聞いたことがなかったし、本当に裁判になるのかも分からず、興味はあったけれど情報が入らなかった。

 二〇〇三年一二月になって、ようやく訴訟の話が聞こえてきて、同期の紹介で弁護団につながった。家に帰って「弁護団に入ろうと思うんだけど」というと、父は「もう原告になったよ」と言った。(それまで全然知らなかった。なんで話してくれなかったんだろう?)父に「娘が弁護団だとやりにくい?」と聞くと、「そんなことないよ」と言ってくれたので、弁護団に加わる決意をした。父の友人として、同僚として、都立高校の先生には小さいころからお世話になってきた。私にとってはみんな親のようなものだ。都立高校の話は私にとって他人事ではなかった。

◆学校現場の苦悩

 弁護団に加わった私の仕事は訴状の損害論、つまり原告が一〇・二三通達によっていかに苦しみ、悩んでいるかを書くことだった。「現場報告」には、生々しい苦悩が書かれていた。どの教員も、生徒との関係で悩んでいた。絶対的に誤っているこの強制に従うことは、これまで自分が生徒に語りかけてきたことと矛盾する行為である。これまでの教育信念、教育実践を曲げるということは、教員としての自分の人生を自ら辱めるものであるが、一〇・二三通達はそれを教員たちに強要するものだった。繰り返すと処分が重くなり、三回目か四回目には免職になるといわれていた。わずか二年で免職になってしまうという、処分の威力はすさまじかった。生徒との関係、家族との関係、自分の信念を曲げるのか、それとも教員であり続けることに意味があると考えるのか、こんなことがまかり通るなんて許されるのか。頭の中をあらゆる考えがぐるぐるとまわり、体調に変調をきたす教員がたくさんあらわれた。そのなかでも「踏み絵」を踏んでしまった教員は、その尊厳が傷つけられ、精神的被害は著しかった。一〇・二三通達は、教員の教育への情熱を奪うものだった。学校は無力感に覆われていた。

◆エスカレートする都教委の暴挙

 訴訟が始まってからも都教委の暴挙はとどまることがなかった。大量の懲戒処分が蛮行され、嘱託教員はたった一回、四〇秒間の不起立で、新学期の二日前に突然職を失った。板橋高校は、学校が公安警察にさらされた。生徒の不起立が多かった、生徒に「内心の自由の説明」をした、生徒会が「日の丸・君が代の討論会」を実施したとの理由で、学校に大量の都教委職員が調査に入り、事情聴取を受けさせられ、厳重注意等の「指導」がなされた。夏には「再発防止研修」が実施された。都議会では教育長が、反省の十分でない教員は研修終了とならないので生徒の前に立たせるわけにはいかないといった答弁をしていた。予想された出来事だったが、翌年以降も、過去に不起立をしたことがある者は嘱託に採用してもらえなかった。

 私たちは、大量処分に対しては東京都人事委員会で大規模に不服申立てを展開し、嘱託教員の解雇撤回裁判を起こし、再発防止研修に対しては執行停止を申し立て、嘱託が不採用になった教員も次々と提訴した。そして、それぞれの裁判で得られた成果を、各裁判で有機的に活用し、予防訴訟でも原告・証人として合計一二人の現職教員の訴えを裁判所に聞いてもらった。保護者も証言台に立った。現職教員である元校長が、都教委の「指導」の詳細を克明に語った。そして大田尭教授、堀尾輝久教授が、学校における自由の必要性を熱く訴えた。

◆そして判決…!

 それでも、ここまですごい判決は予想していなかった。裁判所が「起立しない自由」「ピアノ伴奏をしない自由」を憲法上の権利として認めてくれたのだ。裁判長の口から「いかなる処分もしてはならない」との言葉が出たときは、これまで苦悩して苦悩して苦悩して、影で涙を流してきた原告の先生方の顔が次々と浮かんできて、涙した。

 地裁判決は、まるで私たちの訴状のようで、当たり前のことをさらっと書いているのだけれども、それでも「憲法は、一三条等によって、原告らの思想と相反する世界観、主義、主張等を持つ者に対しても相互の理解を求めている」との表現に代表されるように、憲法の精神に忠実であり、教育基本法の趣旨を正しく理解して書かれたもので、大変評価できると考えている。

 「無謀訴訟」と呼ばれた予防訴訟が、私たちの「希望訴訟」になった。この判決が、全国に勇気と希望を与えたと確信している。そのことが、とても嬉しい。



国民投票法―改憲手続法案の

「カラクリ」ブックレットを広めよう

東京支部  小 笠 原 彩 子

 憲法が改悪されようとするならば、それについて黙ってはいられない。これは多くの団員の一致した認識だと思います。しかし、国民投票法案が国会に提出されたと聞いても、

 でも今は、自分の中心分野である○○がちょっと優先。

 でも今は、自分の○○事件がちょっと優先。

 でもちょっと、この法案はよく知らないし…手続法なんだから公正・中立な法案なんでしょ?

 等々、様々な事情の中で、"この法案はとりあえずパス"という心境ではないでしょうか。正直に言うならば、私自身も今春は教育基本法案が上程され、そのことで手一杯、頭も一杯。同時期に国会に係属していた国民投票法案が重要と言われていても、それについては、ちょっと、ちょっと……という状態でした。そんな私が、九月に開かれた団の教基法全国活動者会議の折に、団員には無料という好意で配られたこの本を、無料でもらったから……と移動の電車内で一読して、こんな危険な法案だったのかと、覚醒させられたのです。

 この「カラクリ」ブックレット(と私は称しているのですが)は、

 第一に、手軽な量の中に、わかりやすく法案の狙いが書かれていること。第二に、総論的説明部分とQ&Aが、きわめて有機的に関連して、ちまたに流布されている世俗的安心感を見事に打ち破る威力があること。第三に、国民投票法案について話して欲しいという依頼があっても、臆せず語れるという自信がつくこと。等々、是非是非一読をおすすめします。

 そこで次に少しだけ「カラクリ」ブックレットの中味を紹介します。(私の下手な紹介より、本を一読される方が早いと思いますが、取り敢えず……。)

 第一に、この法案が通った暁には、憲法改正案の発議のための確実な第一歩、足がかりが作られることになります。それは議席比構成による憲法審査会が設置され、しかも審議は国会の閉会中にも進行できるばかりでなく、両院の憲法審査会が合同審査会を開いて意見調整を行うこともできます。そして合同調査会で改憲原案をとりまとめ、両院の憲法調査会を経て、両院に改正原案として提出する、という道筋が作られてしまうからです。

 第二に、「議席比」を口実とする「差別」が貫徹されている法案です。例えば憲法「改正」案についての広報協議会の構成比や国民投票公報に掲載される憲法「改正」案の要旨や解説、賛否意見等の占有比は、すべて「議席比」です。また国費によるTV・ラジオ・新聞の無料宣伝スペースは、「議席比」を基本とした割合で政党に配分されます。つまり法定広報は押し並べて「改憲派」の宣伝の場と化し、少数派の意見を広める機会が乏しいことです。

 第三に、金の力による社会的格差はそのまま肯定されています。マスコミの有料広告・有料PRが全く自由なため、金のある政党・団体・個人は金の力で、マスコミを利用してその意見を広めることができる一方、金のない政党・団体・個人は、その意見をマスコミにのせることが、きわめて困難になる、という不平等な"競争"を強いられることになります。

 第四に、最低投票率も定めず、「有効投票率」の過半数で成立し、更に憲法「改正」の発議から投票までの期間が「六〇日以後一八〇日以内」という短期間に定められていること等、発議後は、一直線で憲法「改正」が成立するよう、ハードルが低く低く定められています。それに加えて、公務員・教育者に対する運動規制と処罰規定が用意されているのですから、憲法「改正」に、"いたれり、つくせり"の法案ということができます。

 このブックレットは、これらの危険な「カラクリ」について、一つずつわかりやすく説明しています。(独白…この表紙、なんか暗いな〜。もう少し何とかならなかったのかな〜。)

 秋の国会は教基法、テロ特措法、共謀罪・国民投票法のみならず、少年法、防衛庁の防衛省への昇格に関する法案等、様々な法案が係属し、本当に多忙かと思います。そこでおすすめします。

 国民投票法案については、この「カラクリ」ブックレットを!

 教基法については「教育基本法「改正」反対講師マニュアル」(団のホームページに掲載)を!(最後にやっぱりこれをPRさせて下さい。)

これがあれば、安心!安心!



薬害肝炎九州訴訟判決を受けて

私たち法曹にできること

福岡支部  郷 田 真 樹

一 薬害肝炎訴訟とは

 薬害肝炎訴訟とは、血液製剤(フィブリノゲン製剤・クリスマシン等)によって、C型肝炎に感染した被害者らが、国と製薬企業に対して、損害賠償を求めて提訴したものです。

 これら血液製剤は、効かない、つまりもはや「薬」とさえも言えな、ウイルスに汚染された薬であったにもかかわらず、杜撰な薬務行政によって承認・製造販売されました。フィブリノゲン製剤は主に出産時の母親に、クリスマシンは主に新生児に、それぞれ本来、喜ばしいはずであった出産の場面で投与されたのです。

二 全国で唯一の実名公表原告

 薬害肝炎訴訟は、平成一四年一〇月以降、全国五地方裁判所(東京、大阪、仙台、名古屋、福岡)で相次いで開始されました。しかし、肝炎に対する偏見・差別に対するおそれなどから、原告番号を用いての訴訟となりました。

 平成一五年四月の福岡地裁提訴時に、全国で初めて、原告1番山口美智子さんが、実名公表をされました。その後、福岡では原告らが励まし合い、全国最多の実名公表原告が現れました。

 しかし、現在でもなお、肝炎訴訟の原告らの多くは、匿名で争わねばならない状況です。そのこと自体が、肝炎感染の被害の深刻さに他なりません。

三 変わっていく原告達・広がり続けている支援の輪

 提訴後、書面による主張立証に一年、専門家証人立証に一年、原告本人ら尋問に一年と時間がすぎていきました。その間に、実名公表原告が少しずつ増え、匿名原告達も被害を語りはじめ、全国の学生ら・肝炎患者の方達・医療関係者らをはじめとした支援の輪が広がりをみせるようになりました。

 そして、当初、自らの苦しみを語っていた原告らが次第に、これは自分たちだけの訴訟ではないこと、三五〇万人のウイルス性肝炎患者みんなが生きやすい社会を作ることが目的であることを語るようになりました。そして、病気の体をおして、学生・市民らの小さな集まりからはじまり、厚生労働省・国会議員会館・マスコミ各社に至るまで、あらゆるところをまわり、ビラをまき、数々の訴えをするようになりました。そんな彼らの熱意におされるように、全員救済、早期解決を訴える、マスコミ報道も増えました。

四 B型肝炎訴訟最高裁判決

 平成一八年六月一六日、最高裁判所は、集団予防接種により、同じくウイルス性肝炎であるB型肝炎に感染させられた被害者らが提訴した訴訟について、昭和二六年以降、国に法的責任があることを認めました。なお、この最高裁判決はC型肝炎も含むウイルス性肝炎対策について、国はその危険性を予見することができたとしています。

五 C型肝炎訴訟大阪判決・政党PT立上げ

 平成一八年六月二一日、C型肝炎訴訟大阪判決が出されました。全国で初めて、「医薬品の安全性を確保するという立場からは、ほど遠い、お粗末な面が認められ、その意識の欠如ぶりは非難されるべきである」等と国の責任を断罪する画期的な判決でした。

 大阪判決を受けて、各政党において、肝炎問題に対するプロジェクトチームが立ち上げられ、肝炎対策に対する検討もはじめられました。

六 判決前日一〇〇〇人集会・福岡判決

 他方で、大阪判決は、一定時期(企業は昭和六〇年、国は昭和六二年)以降のフィブリノゲン製剤投与に限って国の責任を認めた、後に課題を残すものでもありました。しかし原告らは、大阪判決によってバラバラにされはしませんでした。勝った原告が負けた原告のために泣き、負けた原告は全体として判決から勝ち取れたことに目をむけ、その団結は、より強まっていきました。

 平成一八年八月二九日、福岡市内では、判決前日一〇〇〇人集会が開かれました。この日、これまで、顔はおろか声を聞かれることにさえ怯えていた匿名原告らも、ステージに立ち、秘めてきた思いや、明日への希望を語りました。多くの市民が、原告らと心を一つにし、泣き、明日の勝訴を信じました。

 平成一八年八月三〇日、福岡判決が言い渡されました。大阪判決よりもさらに進んで、昭和五三年を基準に国の責任を認めた、画期的なものでした(具体的には直近の原告が存する五五年)。大阪で敗訴した原告らの一部にも、福岡であれば勝てる光がさしたのです。しかし、福岡判決は、基準時以前の被告国の責任や、クリスマシンに関する責任については認めない、やはり課題を残すものでした。

 なお、クリスマシンは、薬害HIV禍をもたらした薬でもあります。原告らは、出生日に、この薬によって肝炎に感染し、健康な体を知らず、死の恐怖を感じながら生きてきました。まだ二〇歳前半の若い彼らは、勇気をもって裁判に臨み、国も企業も悪くはないと宣言をされました。彼らの心を思うと、これを言葉にすることができません。私たちは、これからの裁判を通して、彼らに、社会は、彼らに対して負うべき責任を負い、暖かく彼らを迎え入れることのできる、彼らが歩いて行きやすい場所であることを伝えたいと心から思います。

七 司法解決の必要性

 C型肝炎ウイルスは、症状もないままに長く潜伏し、気がついた時には、肝硬変・肝臓癌へと進行をしていく、進行性・不可逆性・重特性を持つ疾患です。そのため、肝炎感染に気づかないままに病気を進行させてしまう人が数多くいます。また感染に気が付いても、経済的理由や周囲の無理解・偏見などによって治療を受けられない人も多数います。

 このようなウイルス性肝炎に関する問題を放置し続けることは、患者個人に回復不可能な損害を与えるばかりではなく、将来の国の医療を圧迫することも明らかです。私たちは、国には、早期に、広く肝炎検査を実施すると同時に、肝炎患者らが治療を受け、安心して生活できる体制を整える義務があると考えます。

 しかし厚生労働省は、自らの責任のがれに汲々とし、大臣は原告らとの面談さえ拒否し続け、官僚らの意見にのみ基づいて大阪・福岡と控訴を続けています。このように思考も機能も停止したかのような国が、自らの力で肝炎問題に立ち向かい、これを解決することは不可能とも思えます。

 このような事態について、平成一八年九月一七日に開かれた薬害肝炎九州訴訟(第二陣)期日において、弁護団からは以下のような意見陳述を行いました。

 「立法と行政の長きに亘る機能不全の結果、その解決が司法にゆだねられるといういわば特異な事態が生じ続けてもいます。それは、水俣病であり、じん肺であり、予防接種肝炎であり、原爆症であり、ハンセン病であり、薬害HIV であり、枚挙に暇がありません。」

 「現代の司法は現代の課題を解決できるものでなければなりません。」「新しい社会的問題について、その個別救済にとどまらず全体の解決システムの提示など紛争解決に向けた舵取りをし、あるいは、立法や行政に明確な決断を促し、また、これを強いる必要があります。」

 「私たちは、縮こまった司法、小部屋に引き篭もった司法であってはなりません。何としても現代司法の果たすべき役割を全うしなければなりません。立法も行政も解決できない困難な問題。だからこそ、いかに困難であっても現実に即応した法解釈を工夫し、実効的に適用して、私たちの司法こそが解決の筋道を示さなければなりません。それが今を生きる私たち法曹の義務でもあります。」

 私は、あらためて法曹の役割について考えさせられる思いです。

 私が今ここに書けることは、たとえすぐに答えは見つからなくても、この三年間に感じたことを反芻しつつ、この問題に取り組んで行きたいということです。たとえ法曹一人一人の力が小さくても、社会の人達と手をとりあった時、それが大きな力となり、より生きやすい社会につながっていくことを、原告・支援をはじめとする多くの方達から、学ばせていただいた気がします。これからも、変わりゆく原告・支援者の人達と一緒に、自分も歩みを続けて行けたらと思っています。

 もしもどこかで薬害肝炎を見かけられたら、御支援のほどを、どうぞよろしく御願い申し上げます。



無駄な公共事業の「打出の小槌」

―「地方債」の発行差し止めの初判決

滋賀支部  吉 原   稔

 大津地裁は、九月二五日、栗東市が、新幹線栗東新駅の建設工事の仮線工事のために支出する四八億円の財源にするための地方債の借入れを禁止する判決をした。これは、地方財政法五条違反として、地方債の発行を禁止した初判例である。

 栗東新駅は、請願駅として自治体が工事費、駅建設工事で二五〇億円を支出する無駄な公共事業の典型である。

 地方債は借金であるが、その借金による公共事業の建設費は地方交付税の基準財政需要額に算入され、その分、地方交付税が国から増額して支払われるから、この地方交付税措置があるから、「地方債は、政府が借金の尻拭いをしてくれる、返さなくてよい借金だ」と、私が県議時代に県は耳にたこができるほど説明をした。そのために、「地方債」と「地方交付税措置」は、無駄な公共事業の「打出の小槌」であったのである。その結果、地方債残高は、二八〇兆円にもなった。今回の「三位一体の改革」で地方交付税が減額され、地方分権一括法で、起債の許可が国から県に代わったが、無駄な公共事業の「打出の小槌」としての性格は変わっていない。むしろ、起債の自由化で強化されたといえよう。

 この判決によって、栗東市は、工事費の財源のほとんどを起債をしようとしていたので、財源ができないため、工事中止は確実である。この判決は、無駄な公共事業に、「財源」の面から引導を渡し、「兵糧」を絶った初判例である。

 この事件は、

 栗東市が、新幹線新駅建設のための起債(四三億四九〇〇万円)をすることを議決し、県もこれを許可した。

 新駅の駅舎工事は二四〇億円、そのうち一〇一億三九〇〇万円は「仮線工事」である(この部分は盛り土方式で、時速二七〇kmで運行したままで工事をするので一九五〇Mの二本の仮線《バイパス》がいる。これは、工事が終われば撤去される)。

 仮線工事費は二分の一を県、二分の一を栗東市が負担する。

 地方債を発行してその財源に充てることのできる公共事業を「適債事業」という。地方財政法五条は、

(1) 資本的役割を果たす

(2) 後年度の住民の負担の均衡

の点から五つの事業に限定した。

 新幹線新駅はJR東海が建設主体でJR東海の財産になるものである。同法五条五項は、「公共施設の建設事業費は、公共的団体、国・地方公共団体が出資している法人で、政令で定めるものが設置する公共施設の建設事業に係る負担又は助成に要する経費を含む。」としているが、施行令一条は、「国又は地方公共団体が資本金、基本金、その他これらに準ずるものの二分の一以上を出資している法人」としている。

 JR東海は完全民営会社(国の資本金はない)で、施行令一条に該当せず、その建設費の負担又は助成のための経費は適債事業ではない。仮線はJR東海の建設事業で工事が終われば撤去され、栗東市の財産(公共施設)にならない。栗東市は、道路建設のための仮線工事だから適債事業だというのは、地方財政法五条の法意を潜脱する脱法行為である。

 栗東市は、起債は地方財政法五条五項の公共施設のための起債であるが、その公共施設は、駅の建設工事ではなく、幅員八Mの都市計画街路市道栗東駅前線を三〇Mに拡幅する必要があり、現在ある新幹線の下の第三蜂屋Cトンネル(長さは底で四・五M、天井で八M)の八M部分以外は盛り土なので、盛り土を掘削するのに仮線がいる。仮線は新駅建設にも、道路建設にも必要だから適債事業であると主張した。

 争点は、

 道路建設と仮線工事の一体性、不可分性、同時施行の必要性があるか。

 道路建設のためには駅舎建設のための仮線工事とは別に仮線工事が必要不可欠か。

 仮に道路のために仮線が必要としても、六億円の工事のために五〇億円を使うのはベストチョイスの原則(最小費用最大効果の原則)に反しないか。

 道路建設のために仮線工事以外の他の方法で出来ないか。道路拡幅に仮線以外の代替工法、安価な方法を検討したか。

 判決は、

 道路拡幅のための仮線工事は、全国で例がない。

 道路拡幅と仮線工事を同時期一体的につくらなければならない必要性はない。

 代替工法を検討していない。

 六億円でできる工事を五〇億円もかけることは、不合理、不経済であり、道路のための仮線という説明は無理がある。

 として、「脱法行為」とは言わなかったが、地方財政法五条に違反するとした。

 この事件は、「もったいない」をスローガンに、新駅中止、ダム見直しを公約して、七月に当選した嘉田由紀子知事の公約実現の援護射撃の第二弾である。

 第一弾は、自由法曹団支部が提出した、最高裁判例を引用した、「前県政の約束には法的に拘束されない」、「工事を中止しても、JRへの損害賠償義務はない」との意見書は、知事を勇気付けた。第二弾がこの判決である。この判決は、マスコミに大きく取り上げられて、反響が寄せられた。「聖域」であった地方債に司法がメスを入れた、無駄な公共事業をやめさせる法的手段として役立つ判決と評価されている。

 この訴訟は、本年一月に提起した。知事選挙前に間に合わせたいと、四回の弁論で終結し、提訴から九ヶ月で判決が出た。知事選挙には間に合わなかったが、栗東市長選挙には間に合った。

 栗東市は控訴を決めた。

一〇 これからは、間髪をいれずに、栗東市はすでに五二六〇万円を起債してJR東海に支払っているので、それをJR東海から取り戻す訴訟を考えている。その理由は、寄付行為が地方自治法二三二条の三の支出負担行為が違法、無効だから、返還せよというものである。



団女性部総会のご報告

東京支部  中 野 和 子

 九月一五日と一六日の二日間、明治五年まで女人禁制がしかれていた高野山・西門院にて、各地から一七名が参加し、女性部の総会を行いました。

 高野山は、和歌山県にあり、「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産となっております。

 一五日は、教育現場の教育基本法改悪の先取りの実態をお聞きするために、養護学校教師をされていた大教組の渡部先生にわざわざお越しいただきました。今回の教育基本法「改正」は、教育内容の支配介入に根拠を与えるものであり、教育内容および学校のあり方を財界と国家が統制することを目的としたものだと指摘されました。先取りという点では、現在の学習指導要領の「道徳」と教育基本法「改正」案の第二条の「徳目」がぴったり一致している。教育は、子どもの人格を形成するために行うものであり、商品の生産とは異なり、効率を追求したのでは目的を達することはできない。今の財界・政府は、早くから子どもを選別し、効率のよい答えを出す人間を優遇し、効率の悪い子どもを排除することを考えている。いわゆる「義務教育の構造改革」(中教審答申)である。しかし、人格の形成は、単に効率よく答えを出す子どもが早く成し遂げるものではなく、知識を学びながら様々な他者との交流の中で時間をかけて完成していくものである。「習熟度別学級」を強制するような効率を追求して子どもを選別する行為は教育とは無縁である。ところが、財界・政府は、教育の目的以外に教育の目標を設定した。目標を設定するということは、必ず目標を達成したかの評価を伴うことになる。教員も管理される。既に、指導要録という生徒の「戸籍簿」に「意欲・関心・態度」を評価する欄が一番上に設けられ評価しなければならない。また、本来ならば父母・国民が参加して「つくる」学校であるべきなのに、単に「選択する」だけにした学校選択制を導入した。その一方で、必要な教育諸条件の整備は置き去りにしており、貧困による格差は一層拡大している。授業に必要な教材を買えない子が多くなり、授業が進められない実態がある。貧困のため家庭で子どもが放置され、学校では選別により格差をつけられた子どもが、問題行動を起こした場合には、「ゼロトレランス」として出席停止ができるようにして学校からも排除することができるようにする。子どもを排除するなど、学校が教育の場でなくなってしまう。今回の教育基本法「改正」は、これらの学校の実態を放置しさらに悪化させるというものでした。

 一六日は、ジェンダーという言葉を団支部でも学習する機会を設けること、九条の会でも国民投票法案をわかりやすく説明すること、教育基本法改悪について関守麻紀子部員が奮闘して作成した横浜弁護士会のパンフレットが好評であることなど、今後の活動について話し合い総会を終えました。



〇六年自由法曹団女性部総会に出席して

広島支部  平 田 か お り

 去る九月一五日・一六日に高野山において団女性部総会が開催されました。

 総会の詳しい内容は総会資料等を見て頂ければわかると思いますので、ここでは女性部総会に参加して感じた率直な感想を述べたいと思います。

 女性部総会は当然ながら出席者が女性が圧倒的多数(今回は女性のみでした)です。今年は北は北海道、南は九州まで、実に個性豊かな女性団員二〇人弱が勢揃いしました。

 さて、女性ばかりが集うとどうなるか・・・。そうです、話の盛り上がり方が断然違ってくるのです。

 今回は大阪教組の渡辺有子さんに来て頂き学校現場の話を交えた講演をして頂きましたが、講演後も渡辺さんを交えて子ども・学校にまつわる話に花が咲きました。「周りのお父さんお母さん達にどう教育基本法・憲法「改正」について問題意識を持ってもらえばいいのかな」等悩みや体験談などが自然と噴出してきました。

 二次会でも「我が家の性教育」「海外の離婚事情」「ある夫婦の離婚」「DV夫とどう対峙するか」等々女性団員ならではの話題で大いに盛り上がりました。

 当然、ジェンダーの問題についても議論しました。特に今回は、いわゆる「ジェンダーフリー」に対する攻撃の深刻な状況について報告がされました。教育基本法や憲法「改正」問題と同じように、ジェンダーフリーにまつわる問題もそれと同じ方向に進んでいることに気付くことができました。

 正直なところ、私は「弁護士」という資格をもっているせいか、はたまた周りに恵まれたせいか、自分自身が「女性だから」ということで不当に扱われた記憶がありません(いや単に鈍感なだけ、もしくは忘れているだけかもしれませんが)。そのせいか、女性であり、しかも自由法曹団員であるにもかかわらず、ジェンダー問題については基本的なことさえよくわかっていませんでした。もちろん、事件を通じて女性の社会的地位の低さに疑問を感じることは大いにありましたが、忙しさにかまけ、ジェンダー問題について世の中がどのような動きをしているのか等考察する機会を自ら逸してきました(お恥ずかしい限りです)。しかし総会はなごやかで質問しやすい雰囲気だったため、分からない部分を易しく教えて頂けました。そのため大変有意義な時間を持てました。こういった雰囲気も女性部ならではと思います。

 ただひとつ残念だったのは、こんなに楽しい総会であったにもかかわらず参加者が少なかったことです。女性団員が増えているであろうにも関わらず、出席したのは一〇期代四人、二〇期代三人、三〇期代二人、四〇期代三人、五〇期代三人。一〇期代の先生方の参加人数が最多とは!。こんな楽しい会議に参加しないのはもったいないです。次回はもっとたくさんの女性団員で集いたいと思います。

 最後に、高野山という素晴らしい場所で、有意義な女性部総会を企画して頂いた事務局の方々に感謝いたします。

 南無大師遍照金剛。



三井生命丸亀営業所長過労死裁判で和解成立

大阪支部  増 田   尚

 三井生命丸亀営業所で営業所長を務めていた渡邉一洋さん(享年三二)が二〇〇〇年八月二七日に亡くなったのは過重労働によるものであるとして会社の責任を追及した訴訟で、八月二二日、大阪地裁(大島眞一裁判長)にて和解が成立した。

 渡邉さんは、営業所長として、一九九七年一〇月から丸亀営業所の運営に当たっていた。二〇〇〇年七月はいわゆる保険月で、通常よりも重い目標が課せられており、そこに向けて営業職員が全力を集中して契約を獲得したため、翌八月は、お盆休みなどの条件も重なり、締切日(二五日であるが、翌営業日の午前一〇時までに入力すれば八月の契約として取り扱うこととしていた。)が近いにもかかわらず、営業職員一六名のうち八名が契約を獲得していないなど、営業所長としての指導が問われる状況にあった。渡邉さんは、二六日の土曜日に営業職員への同行などを済ませて帰宅した後、二七日未明に虚血性心疾患で死亡し、月曜日になっても出社しないことを不審に思った営業職員により、二八日に発見された。

 遺族は、本件提訴に先立つ二〇〇二年五月に高松労働基準監督署長に労災申請を行い、二〇〇三年一二月に業務上災害との認定がなされた。この認定を受けて、遺族は、三井生命に対し、業務上災害見舞金規程に基づく見舞金等の支給を求めたが、三井生命は、業務上認定に疑義があるとしてこれを拒否した。そのため、遺族は、やむを得ず、見舞金等の支払を求める訴訟も提起した(本件訴訟に併合)。

 遺族側は、裁判で、渡邉さんの営業所長としての過重な労働実態を主張し、高血圧症などの健康上の問題があるのに、漫然と営業所長としての業務に従事させたとして、会社の責任を追及した。

 渡邉さんは、総合職から職種転換して営業所の幹部としての業務に従事することとなり、丸亀営業所で初めての所長を経験した。営業所長として、営業所に課せられた毎月の契約目標達成に向けて、営業職員の成績を管理し、営業職員の同行訪問や、新人の育成指導などに追われてきた。ノルマが厳しく営業職員の入れ替わりが激しいため採用や面接などの対応も営業所長としてこなし、営業職員の士気を維持しつつ、営業所を運営することに相当の苦労があった。

 こうした営業所長としての質的・量的な過重性によって、渡邉さんの健康状態は、自然的経過を超えて著しく増悪していき、さらには締切間際の無理がたたって、死亡するに至ったものである。

 三井生命は、当時、営業所長の労働時間を管理しておらず、労働時間については、毎日の営業所長のルーチンワークに加え、携帯電話の発信履歴やメールの内容などから推測して立証し、直近一カ月の時間外労働時間は所定外一九三時間・法外一七八時間に及んでいると主張した。また、遺族は、亡くなった月である八月の締切日直前における丸亀営業所の消灯時刻をビデオで撮影するなどして、営業所での時間外労働が常態化していることも浮き彫りにした。

 こうした遺族側の主張・立証に対し、三井生命は、営業所長の職務は補佐職である営業職員に代替可能であり、営業所長は自己の裁量でこうした業務を分担することができ、現実に渡邉さんもそのように対応していたとして、業務の質的過重性を否定するとともに、営業職員の時間外労働も多くなく、営業職員の帰所を待たずに渡邉さんが帰宅することもあり、直近一カ月の時間外労働時間も所定外四四時間・法外二八時間にすぎないとして、量的過重性も否定した。また、直近の健康診断の結果は就労を制限しなければならないほど悪くなかったとする一方、死亡の原因は降圧剤の服薬不良と不摂生などによるものとして、業務との因果関係と使用者としての責任をともに否定した。

 裁判では、これらの争点について主張のやりとりがあった後、遺族側が妻と営業職員一名、三井生命側が営業職員二名と他の営業所長一名について、それぞれ尋問を行った。証拠調べの終結後、裁判所より和解の打診があり、協議を進めた結果、次のとおりの内容で和解が成立した。

(1) 和解金四二九〇万円の支払義務

(2) 業務上災害見舞金規程に基づき見舞金等として金三二一〇万円の支払義務

(3) 三井生命が労災認定されたことを重く受け止め、渡邉さんに対する労務管理が不十分であったことにつき遺憾の意を表す

(4) 三井生命は、本件を教訓として、労基法、労安法等の関係法令・通達を遵守するとともに、労働時間の適正な把握、健康診断受診への配慮等、従業員の労働時間管理・健康管理体制の充実に必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努める

 遺族側は、三井生命が本件和解に応じたことを受けて、「この事件の教訓を生かし、金融、保険業界の従業員の方々の労働時間管理、健康管理、心の問題、従業員間でもお互いに助け合う思いやり、また一人に仕事が集中しない職場を目指して真剣に取り組んでいただきたい」とのコメントを発表した。

 本件訴訟に対しては、金融機関に勤める労働者や過労死遺族を中心とした支援組織が結成され、立証の点や、運動を通じて三井生命側に解決を促すなど、法廷内外にわたって様々な支援をいただいた。改めて、多くの人々に支えられながら和解による解決を迎えたことに感謝を申し上げたい。



九・一五 全国活動者会議の報告

教基法改悪阻止対策本部担当次長  阪 田 勝 彦

 二〇〇六年九月一五日、教育基本法改悪阻止対策本部の全国活動者会議が開かれました。参加された団員は、北は北海道から南は沖縄まで合計三八名で、教育基本法の改悪を阻止するために「何を訴え、どのように行動するか」を熱く討議しました。

 冒頭、対策本部が通常国会で行ってきた特別委員会審議録の検討結果を分析した結果を発表しました。また、教育基本法全国ネットワークの山田功氏に運動の状況について報告いただき、民主党案の分析も行いました。中でも山田氏の報告にあった、東京大学が行った全国の小学校校長へのアンケートの結果、約六六%の小学校校長が教育基本法「改正」に慎重な意見だったというのは、余り知られていない事実です。

 また、国立二小・戒告処分取消事件、日の丸君が代をめぐる一連の事件、板橋高校事件の報告もあり、国会の動向から中央の運動の状況、そして訴訟まで全てが短時間で把握できる報告になったかと思います。

 討議は、各地からの運動報告という従来のスタイルから、「朝まで生テレビ」(この番組が良いかどうかはともかく)スタイルへ変え、対策本部からの問題提起を受けての討論形式というスタイルをとりました。

 討議は、大阪支部の、格差問題に重点を置いた補充意見にはじまり、弁護士会、九条の会、憲法改悪反対運動との連携の方法や、学習会での工夫(教職員とのコラボレーション)、広く教育基本法「改正」問題にまだ無関心でいる層へ、いかに訴えかけるか(格差問題の強調、科学的意見の採用や保護者とのコラボレーションなどなど)実に密度の濃い議論が交わされ、司会をしていた私もとても参考になりました。討議の中でも、関連する報告として既に学校ランキングが始まっている足立区の例なども現実に作成されているランキング表なども配布され驚きを隠せませんでした。

 また、当日は、対策本部有志で作成した教育基本法「改正」反対講師マニュアルも配布しました。全ての人が教育基本法を語れるようにとの想いから作成したものです。改憲関係での講師ならできるんだけどなと言う人に是非ご活用いただきたいです(既に団のホームページにアップしてあります。)。

 会議後の締めくくりは、秋の闘いを前に、イタリアン料理店でワインに舌鼓を打ちながら教育談義に華を咲かせました(大分の楠本先生二次会まで付き合っていただいてありがとうございました)。

 このように非常に盛りだくさんの全国活動者会議を経て、秋の臨時国会、各種教育基本法改悪に反対する団体、学会、国会議員だけでなく、改憲阻止の団体や九条の会などとも共同し、いかに闘うかの具体的イメージが見えてきました。

 この活動者会議で見えたイメージを是非全国各地で実現し、秋の臨時国会必ず勝利しましょう。



国民投票法案成立を絶対に阻止しよう!

―九・二六 全国活動者会議の報告

改憲阻止対策本部担当次長  山 口 真 美

一 法案成立阻止に向けて活動者会議を開催

 折しも安倍晋三新内閣発足の日となった九月二六日、改憲阻止全国活動者会議が行われました。参加者の総数は約四五名でした。

二 法案成立阻止に向けた行動提起

 全国活動者会議では、熱心な討論の結果、次のような行動提起がなされました。

1 この間に蓄積した改憲反対の運動をいっそう強め、地域や職場の九条の会のさらなる拡大、平和勢力のさらなる結集、団結に特段の力を注ぐこと。

2 改憲手続法の「カラクリ」の悪辣さを急速に広め、法案を阻止する運動を強めること。

 具体的には署名活動のとりくみを強めること、一〇月の団総会までにリーフレット二〇万部、ブックレット一万部の配布を目指すこと。

3 一〇月一九日三時から団として国会要請を行うこと。

 国民投票法案の不公正な内容も徐々に国民に知れ渡るようになってきています。しかし、法案の成立を阻止するためには、さらに国民投票法案の不公正な内容と危険なねらいを多くの人に伝え、広げていかなくてはなりません。この数か月間に、憲法、ひいて私たち国民一人一人の未来が問われるといっても過言ではありません。

 リーフレットは好評で現在約一一万部、ブックレットは出版社から市場に出ている部数が一〇月四日現在四六二九部(初刷五〇〇〇部)、うち団関係事務所と団員個人の買取り部数は約二三二九部です。団員、各事務所、各支部の三分の一から二分の一が動き出してくれての成果です。学習会に活用した団員からは「役に立つ」「喜ばれる」という話が次々に寄せられています。是非、運動の大事な鍵として普及に取り組んで下さい。

 改めて、国民投票法案成立阻止のたたかいに団員が全力を尽くすこととともに、一〇月の団総会までにリーフレット二〇万部、ブックレット一万部の配布を目指すことを呼びかけます。

三 法案成立阻止に向けて熱心な討論がなされました

1 国民投票法案の成立を阻止する運動をいかに広げるかについて充実した討議がなされましたので、その模様をご報告します。

2 開会の挨拶

 最初に坂本修団長から開会の挨拶がありました。挨拶の要旨は次のとおりです。

 第一に、教育基本法「改正」、自衛隊法「改正」、そして、集団的自衛権の「解釈変更」など、明文改憲に先行する改憲の実態があり、大変な局面を向かえているが、反面、各課題の共通性がはっきりし、憲法改悪反対での共同の裾野が多重的に広がっているとの指摘がありました。

 第二に、重要な課題として目の前に来ているのが国民投票案阻止の運動であること、法案の正体が十分に知られていない状況で、自由法曹団として法案の問題点を掘り起こし、広げていくことが求められていること、この間の活動でようやく火がつき始めて急速に広がっていることの指摘がありました。

 そして、歴史の中で自由法曹団が何をしたかが問われる、そういう時期に来ているとの実感をもってたたかいを広げるための討議していただきたいとの発言がなされました。

3 情勢に関する問題提起

 吉田健一幹事長から情勢に関する問題提起がありました。

 まず、発足した安倍政権について、安倍総理が五年以内に改憲すると公言して選ばれた総理であり、突出して改憲を進める立場にあること、世論調査で国民が求めるものが財政再建・社会保障制度改革・景気対策などであり、安倍総理は、国民の求めるものと違った方向に大きく舵を取ろうとしていること、この国民との矛盾をよく見る必要があることが報告されました。

 次に、討論の視点としては、(1)教育基本法「改正」などの改憲先取りの動きを許さない取り組みと一緒にどのようにとり組んでいくことができるか、そして、(2)改憲を許さない声と国民投票案阻止の取り組みを結びつけていく課題にどう取り組むか、(3)いまだ国民に十分に知られていない国民投票法の危険性をどう捉え、どう訴え、どう広げるかなどが挙げられました。

4 情勢をめぐる討論

 問題提起を受けて情勢をめぐる討論がなされました。

 改憲阻止のとりくみとの関係で国際情勢をどう見るかについて議論がなされました。これまでの改憲の理由付けは、国際貢献論だったが、イラクの状況を見ると、大量破壊兵器は見つからず、アルカイダとフセイン政権に関係がなかったことも明らかとなり、かえってテロが活発化しているとの報告までなされており、国際貢献という論理は成り立たなくなっている。今、よりどころにしているのは北朝鮮問題ぐらいだが、実際には戦争はあり得ない。こういった国際情勢の推移は私たちに有利に動いている。そこを捉えて国民に説明していくことが必要であるとの指摘がなされました。

 また、全体の情勢の中で平和の問題をどう捉えていくかが重要であり、中国問題も深める必要があるとの指摘もありました。

 国際平和協力法についても言及され、同法案が簡単に出兵でき、軍隊並みの活動ができるという危険な内容を持つこと、防衛庁の「省」昇格法・自衛隊法改正が通れば次に来る法案であり、重大な局面を向かえつつあることが指摘されました。

 国会情勢について、教育基本法・共謀罪などについて足並みをそろえていこうという野党4党合意ができているが、政党はいろいろな問題でかわるので予断は許さないと言う報告もなされました。

5 国民投票法案成立阻止に向けたとりくみについての問題提起

 国民投票案の成立阻止に向けたとりくみについて、阪田勝彦次長から次の五点について問題提起がなされました。

 第一に、通常国会における団本部の阻止運動の姿勢として、法案のねらいが改憲にあることを指摘するとともに、手続法案として内容も不公正であることを指摘する必要があること

 第二に、不公正な内容として、広告の独占、憲法審査会の設置、一括投票の危険、運動制限と罰則などを強調すべきであること

 第三に、イタリアで国民投票があり、新自由主義に基づく改憲案が否決されたことが報告され、その反対運動が参考になること

6 国民投票法の成立阻止に向けたとりくみについての討論

 次に、国民投票の成立阻止に向けたとりくみについて活発な討論がなされましたので、主な点についてご報告します。

(1) ブックレット「国民投票法=改憲手続法案の『カラクリ』」の発行に関連して、知らせるにはまず知ることが大事であるという指摘がなされ、国民投票法案の不公正なカラクリを具体的な事実をもって国民に訴えるならば、必ず国民の共感を呼ぶという点が強調されました。

 国民投票法案の危険性を国民に知らせていく宣伝と学習のツールとしてブックレットとリーフレットの活用が有益であること、団員もブックレットを読んでほしいことが指摘されました。

 また、さまざまな意見を持つより多くの国民ににも運動を広げていく上で、日弁連の意見書を活用していくことの重要性も指摘されました。

(2) 法案の問題点についても活発な議論がなされました。

 第一に、国民主権の原理から法案の問題点を検討する視点の重要性についてです。国会議席比での宣伝枠の格差など、主権者国民が決めるという直接民主制の原理に立脚する国民投票の制度に選挙という間接民主制の理論をもってくることの誤りが指摘されました。選挙法の規制は取っ払って、直接民主制の原点に立つべきであるという点が強調されました。

 次に、内容として最も議論になったのがマスコミの問題です。マスコミ規制がなくなったことを評価する意見もあったが、実際には、マスコミを利用して改憲派に有利な国民投票を展開しようとしている点で以前よりも重大な問題を有していることが確認されました。

(3) 他方で、内容面の指摘にかたよると、いい法案ならば成立を認めるのかという議論になるという問題点が指摘がなされました。これに対しては、国民は、そもそも国民投票がないことさえ知らない状況にあり、ふつうの人は、法案がないからつくると言われるとつくった方がいいと思ってしまう状況にあることが紹介され、法案の内容の不公正さを伝えることが国民の共感を呼ぶこと、だからこそ内容の不公正さを指摘していくことが法案反対の運動を広めるためには必要であるとの意見が出されました。危険なねらいと不公正な内容の指摘について複眼的にやっていくべきであることが確認されました。

四 法案成立阻止に向けて全力を尽くそう

 今回の全国活動者会議に参加し、各地で運動が広がりつつあること実感しました。この会議を国民投票法案の成立阻止の運動をより大きく広げる契機とし、さらに力を尽くしていこうと決意を新たにしました。



大阪支部だより・・・大阪支部四〇周年行事で顕らかになったこと

大阪支部  井 上 洋 子

 大阪支部は創立四〇周年を迎えました。二〇〇六年九月三〇日に支部総会とともに四〇周年記念行事を開催しました。来賓として、団本部からは坂本修団長に遠路はるばるおいでいただき、滋賀、奈良、兵庫県、京都の各支部からもご参列いただきました。そのときの各支部のスピーチなどを参考に、大阪支部の実相を全国の皆様にご紹介します。

 大阪支部は、約一八〇名の陣容で、団本部の幹事も三四名もの多勢を推薦しています。顔の大きい支部です。しかし、支部の懐と体は・・・以下のようになります。

 京都支部は、大阪支部の三分の一程度の人数ですが、その経済規模は大阪支部の四倍を誇ります。京都支部の幹事会には毎回二〇名程度が参集されるそうです。集約力と経済力において、大阪支部は京都支部の足下にも及びません。

 奈良支部は、弁護士会員の二割を団員が占め、未だにこの二割のラインを切ったことはないそうです。弁護士会への影響力において、大阪支部は奈良支部の足下にも及びません。

 滋賀支部は、ほとんどの団員が修習生の指導担当をされているそうです。大阪は一、二年前まで片手くらい、今年ようやく一六名程度になりました。後継者養成への取り組みにおいて、大阪支部は滋賀支部の足下にも及びません。

 兵庫県支部は、交通網が縦横に発達してこじんまりとした大阪府での活動とは違い、神戸から山を越えて日本海側までの広域をその活動エリアとしています。弁護士過疎地域への貢献において、大阪支部は兵庫県支部の足下にも及びません。

結局のところ、大阪支部が誇れるのは団員の数です。子宝ならぬ「団員宝」で、老いも若きも個性と能力の面々が個々の活動を通じて支部を支えてくれています。大阪支部は懐は寂しいながら、連帯の一助となるべく四一年目と数日を歩み始めました。今後ともよろしくお願いします。

 なお、団本部の和倉温泉総会では大阪支部四〇周年記念誌と議案書の二冊が全国の皆様の荷物を重くすることと思いますが、よろしくご一読いただき、お持ち帰り下さるようお願い申し上げます。