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大山 勇一 9条世界会議「国際法律家パネル」分科会へのご招待
〜世界の法律家は日本の憲法9条をどう生かすか
(How lawyers around the world can make use of Article 9.)
林 治 九条世界会議自主企画「環境から見た基地問題」
今村 幸次郎 NTTリストラ裁判・東京高裁判決について
−企業再編大リストラのスキームを積極的に擁護する不当判決
並木 陽介 4・5JR新宿駅西口「宣伝・相談・アンケート活動」
大山 勇一 働くルールを守って、ワーキングプアをなくそう!
〜新宿駅頭「宣伝・相談・アンケート」活動の報告〜
井上 正信 民主党「アフガニスタン復興支援特措法案」の重大な危険性
原野 早知子 大阪法律事務所の憲法ミュージカル応援活動
坂本 修 「対象者は私だった」
−後期高齢者医療制度に思う
吉原 稔 ぼけ防止のためにした物忘れ老人のための消費者代表
本人訴訟が本人の「ぼけ」を立証することになった話
土井 香苗 オリンピック 日本は中国における
人権保護を働きかけるべき(2)
中国の人権と北京オリンピック〜今年一月八日付福田首相宛書簡
及び三月一三日の同書簡公開についてのプレスリリース



9条世界会議「国際法律家パネル」分科会へのご招待

〜世界の法律家は日本の憲法9条をどう生かすか
(How lawyers around the world can make use of Article 9.)

東京支部  大 山 勇 一

●世界の法律家から見た9条とは?

 「国際法律家パネル」分科会では、世界各地で平和のために闘っている各国の法律家が、世界史上初めて「9条」をメインテーマにすえて討論を行います。各大陸を代表する法律家たちが、各地での平和のための闘いの現状と課題を紹介し、その中で9条の理念がどのような普遍性をもっているか、また9条をどのように生かしていくかについて意見交換します。あわせて、日本において9条が果たしてきた役割と現在の憲法改定の動きについても共通認識としていきます。

●各大陸からの報告が盛りだくさん

 この企画には、世界各地から四〇名を超える法律家が参加します。

冒頭で、鈴木麻子団員(神奈川支部)から9条をめぐる現在の状況について報告を受けたあと、以下のとおり、各大陸の法律家からパネル報告があります。

マージョリー・コーン氏(アメリカ、ナショナルロイヤーズギルド会長)

イ・ジョンヒ氏(韓国、民弁・前女性委員会議長)

イブラヒム・エサムラリ氏(中東、国際民主法律家協会)

カルロス・バルガス氏(コスタリカ、国際反核法律家協会副会長)

ローラン・ヴェイユ氏(フランス、国際法律家協会副会長)

オーグスティン・ケマジョウ氏(カメルーン、国際法律家協会)

 最後に、愛敬浩二・名古屋大学教授にまとめをしてもらいます。

 その後、会場発言となります。インド・スイス・ベトナム・シリア・ハイチ・イタリアなどの地域から参加した法律家からの発言が予定されています。

 なお、討議の進行役として、菅野昭夫団員(国際問題委員会)や植野妙実子・中央大学大学院教授、ピーター・アーリンダー氏(米国・弁護士)らを中心にコーディネーター団が構成されます。

●ぜひご参加を!

 法律家パネルの日程などは以下のとおりです。会場には二〇〇名が入れます。ぜひみなさまご参加いただき、活発な討議にご参加ください(当日は英語については同時通訳、それ以外は逐次通訳となります)。

 日 時  5月5日午後4時から午後6時30分まで
 場 所  幕張メッセ国際会議場303号室

 なお、会議終了後に、世界のパネリストらを囲んでの懇親会を予定しております。ぜひこちらのほうにもご参加ください。

 お問い合わせは、「9条世界会議を成功させる法律家の会」

電話03-3225-1020、FAX03-3225-1025まで。



九条世界会議自主企画「環境から見た基地問題」

東京支部  林   治

五月五日(月)午後一時〜三時半 一〇一号会議室

 戦争は、最大の環境破壊のひとつです。その戦争の準備である、原子力空母の母港化や海を埋め立てての基地建設も深刻な環境破壊をもたらします。このような環境破壊を、市民と法律家が力を合わせてくいとめることも、九条を活かす道といえます。

 本企画では、横須賀および沖縄の問題でたたかっている市民と法律家をパネリストに迎えて、被害の実情、これまでのたたかい、これからの展望などについて、映像なども交えて縦横無尽に語っていただきます。

 環境から考える憲法九条。ご期待ください!

☆法律家も是非ご参加を☆

 当日は世界会議に参加している各国の法律家のみなさんも参加いただく予定です。平和をまもる法律家の国際交流を実現すべく、日本の法律家のみなさんも是非ご参加ください。

原子力空母の横須賀母港化を考える

 原子力空母は、原発同様の危険性を有しながらも軍事機密を理由にまったく安全対策が採られておらず、環境汚染などが心配されていますが、横須賀港への米原子力空母配備が今年八月に予定され、すでにしゅんせつ工事が開始されています。これに対して、空母配備を問う住民投票要求や母港化しゅんせつ差止訴訟などのたたかいが行われています。

沖縄ジュゴンをまもる

 現在普天間基地を移設するとの名目で、沖縄辺野古の海を埋め立てて新基地をつくる計画が進行しています。もし新基地が完成するとそこに住む天然記念物であるジュゴンや珊瑚が絶滅するおそれがあります。これに対して海上行動など粘り強い反対運動が続いています。さらに米国地裁では国防省に対するジュゴン訴訟で勝訴するなど、今後の行方が注目されています。

〜パネリストの紹介〜

■原子力空母の横須賀母港化を考える

加藤泉さん

(「ストップ原子力空母母港裁判」をすすめる会事務局長、

神奈川平和運動センター事務局長)

呉東正彦弁護士

(横須賀市民法律事務所、原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会共同代表)

■沖縄ジュゴンをまもる

東恩納琢磨さん

(じゅごんの里代表、ジュゴン保護基金委員会、ジュゴン訴訟原告)

籠橋隆明弁護士(ビデオ出演)

(名古屋E&J法律事務所、環境法律家連盟事務局長、ジュゴン訴訟弁護団)

 主 催 九条を活かす法律家有志の会
 連絡先 代々木総合法律事務所
     (TEL03-3379-5211/FAX03-3379-2840担当:弁護士 林治)

 9条世界会議チケットの普及と賛同金のご協力を!

  ○9条世界会議のチケットは、一日目、二日目が別になっており、それぞれ前売一〇〇〇円(当日一五〇〇円)です。

  できるだけ二日間の前売セット二〇〇〇円での普及をお願いします。

  ○賛同金の協力を

  「9条世界会議」では、幕張メッセの会場費、海外からのゲストの招請費用、宣伝費など多額の費用がかかります。法律家関連の企画の費用も必要です。

   これらの費用の多くは、会議に賛同する個人・団体からの賛同金でまかなわれることになっています。

   弁護士には、一口一万円以上(できれば2口以上)の賛同金のご協力をお願いします。

 《賛同金振込先(郵便振替)》

   口座番号 00160-7-706975
   加入者氏名 9条世界会議・法律家の会



NTTリストラ裁判・東京高裁判決について

−企業再編大リストラのスキームを積極的に擁護する不当判決

東京支部  今 村 幸 次 郎

1 全面的な不当判決

 二〇〇八年三月二六日、東京高裁第二〇民事部(裁判長宮崎公男・裁判官山本博・同今泉秀和)は、NTT一一万人リストラを強行するために行われた異職種・広域配転の効力を争っていた9名の労働者の控訴をすべて棄却するという不当な判決を言い渡した。

 NTT東西会社は、二〇〇二年に各県域に一〇〇%子会社(OS会社)を新設し、固定電話に関する業務を全面的にアウトソーシングした。会社は五〇歳以上の社員に対し、賃金が3割下がるOS会社への転籍を強要した。これに応じなければ「高スキルで成果業績主義が徹底される」異職種広域配転を一方的に命じるというスキームで、この大がかりな企業再編リストラを強行したのである。

 NTT東西会社は、このやり方で、二〇〇二年だけでも約6万人の五〇歳以上社員をOS会社に追いやった。このリストラは現在でも続けられており、五〇歳以上のほとんどがOS会社への転籍を余儀なくされた。その一方で、NTTグループは毎年巨額の利益を上げ、NTT東日本は、〇三年以降、単体でも一〇〇〇億円近い経常利益を上げ続けている。

2 控訴人らに対する報復的不利益「配転」

 控訴人らは、OS会社への転籍を拒否したために、二〇〇二年に、北海道、宮城、山形、新潟、群馬などから首都圏のIT関連職場に単身赴任または遠隔地配転を命じられた。それぞれ三〇年以上にわたって、地元で固定電話の保守や営業の仕事を行い、豊かな経験を蓄積しつつ高い業績を上げていた労働者たちだった。今回の配転では、彼らの健康、家族事情、スキルや経験はすべて無視された。転籍拒否者に対して不利益を加えるための異常な配転であった。しかも、こうした状態は6年にわたって続けられている。

3 本件の争点

 本件の争点は、(1)NTT東日本にこれほどの大リストラを行う経営上の必要性があったのか、(2)賃金コスト大幅削減のための転籍に応じなかったが故の違法な年齢差別の不利益措置ではなかったのか、(3)控訴人らに対する配転に業務上の必要性があるといえるか、(4)控訴人らが受けた不利益が通常甘受すべきものといえるか、等の点であった。二〇〇七年三月二九日の東京地裁判決は、これらの争点について原告側の主張をすべて退け、原告全員を敗訴させた。

控訴人らは、控訴審段階で、(1)NTTおよびNTT東日本は引き続き巨額な利益を手中にしており、本件のような過酷なリストラを行う必要性はなかったこと、(2)職制により「転籍に応じなければ遠距離配転にする、新しい仕事は高いスキルが必要でお前にはできない、NTTには自殺者が多いのを知っているか」などという転籍強要が行われていたこと(録音テープあり)、(3)配転に業務上の必要性はなく、退職再雇用者やこれから選択する他の社員に対する「見せしめ」が目的だったこと、(4)6年にもわたってこの配転が続けられ、この間、控訴人らの家族から5名の死者が生じ、2人の五〇代の女性社員が往復4時間の通勤をずっと強いられていること、などについて新たな証拠を提出しつつ、主張を補充し、本件配転が転籍拒否を理由とする不利益処遇(それが許されないことは確立された判例法理)であることをより鮮明に論証した。

4 高裁判決の特徴−リストラスキームを積極的に擁護

 東京高裁は、わずか4回の審理をもって、この裁判を結審した。第2回期日では、控訴人側の人証申請をすべて却下したため、控訴人らは忌避申立に及んだ。忌避それ自体は却下されたが、再開後の第3回期日で裁判所は、証拠却下決定を自ら取り消し、改めて2名の証人を採用するという異例の事態となった(あまりにも不公正な訴訟指揮であったことを認めざるを得なかったのであろう)。

こうした経過の後、〇八年三月二六日、東京高裁は、上記の各争点について控訴人側の主張をすべて排斥し、控訴を全面的に棄却した。

 高裁判決は、単に、「本件各配転が転籍拒否を理由に不利益を加える違法配転であった」という主張に対して一言も答えることなく殊更に判断を回避しただけでなく、こうした大がかりな企業再編リストラのスキームそれ自体を手放しに擁護する判断を随所に含んでいた。その姿勢は地裁判決よりもさらに踏み込んだものだった。

 高裁判決は、五〇歳までは転籍でなく賃金ダウンのない在籍出向とした年齢差別について、もし控訴人らのような転籍拒否者を新会社に在籍出向させると、「新会社に賃金三〇%ダウンで再雇用された社員間の不公平感をあおり、その勤務意欲を削ぐ結果となることからみても、控訴人らを配転する必要性は高かった」と問題をすり替え、殊更に、配転の業務上の必要性を強調した。

 また、高裁判決は、雇用形態選択制度の合理性や各配転の業務上の必要性を肯定する根拠として、多数派労組であるNTT労組の合意を「錦の御旗」にした。それは、企業の論理に同調する「多数派」を最優先して、個々の労働者(特に、リストラに反対の意見をもつ少数派)の現実に被る重大な不利益・人権侵害の内実に立ち入る審理を殊更に回避する論法であって、断じて許せない。

5 今後に向けて

 こうした判断は、これまでの判例法理(移籍拒否を理由とする不利益措置を禁じた千代田化工建設事件判決、配転の業務上の必要性を業務能率の推進・労働者の能力開発・勤務意欲の向上等の観点から検討するとした東亜ペイント事件判決など)にも背反する。

 高裁判決は「働くルールの再構築」や「仕事と生活の調和」に目を向けはじめた国民世論に完全に背を向けるものである。闘いの舞台は最高裁に移された。法廷の内外において、この不当判決が社会に通用しないことをはっきりさせていきたい。



4・5JR新宿駅西口「宣伝・相談・アンケート活動」

東京支部  並 木 陽 介

 今年4月5日、春というにはいささか暑い土曜日、新宿駅西口にて、労働法制委員会の呼びかけで、午後1時から3時まで宣伝・相談・アンケート活動を行いました。

 ことの始まりは、この日の2か月以上前、「これでいいのか?派遣法−なくそう!ワーキングプア」パンフレット(皆さん是非ご活用下さい)の発行を踏まえたシンポジウムに向けての議論の中でした。

 ワーキングプアの問題はもっと宣伝活動などで外に出て訴えかけないといけないのではないか、という鷲見団員の発言に呼応して、同じ代々木法律事務所六〇期の林団員が「いいですね!ぜひやりましょう!」と、出来レースのようなやり取りから動き出したのです。

 とりあえず日取りを設定し、何をどのようにやるかはその後で決める、というように、鷲見団員の勢いと気迫で突き進んでいきました。

 もちろん、私自身、ワーキングプアの問題はマスコミをにぎわし、社会の関心も高い問題で、より一層この状況を世間に訴えかける必要性を感じていましたし、外でのPR活動は割と好きだということもあって、大いに賛成し、議論に参加していました。もっとも、休日で新宿に遊びに来ているにもかかわらず、どれくらいの人がアンケートに答え、相談しようと思ってくれるのか、大きな不安はありました。しかも、私たち六〇期にアンケートの作成をゆだねられ、議論した結果できたものは質問事項が一六項目にもわたるものになってしまい、これで本当に答えてもらえるのだろうとか、という心配も・・・。

 当日は、弁護士や組合の方、その他総勢三一名の参加があり、鷲見団員のマイクパフォーマンスを皮切りに、大々的に宣伝・アンケート活動を開始しました。

 最初は、どうやっていいものかわからず、ただおろおろするばかりでしたが、宣伝カーからのマイクパフォーマンスに背中を押されて声を出していくうちに、少しずつチラシを受け取ってもらえるようになりました。

 ふと周りを見ると、関心ありげに通り過ぎていく人、積極的にチラシをもらいに来る人、アンケートに答えに来てくれる人などもありました。相談用に用意した机を見ると、何組かがアンケートに答えたり、相談したりもしており、行列ができるほどでした。終わってみると、わずか2時間余りでアンケートの回答三五通、相談者8名、チラシ配布枚数約一〇〇〇枚と、思いのほか盛況で、世間の関心の高さを感じられる結果となりました。

 初めてビラを配るという新人弁護士や参加者もいましたが、宣伝後の感想交流会では、問題点をちゃんと話せば理解してもらえる、思いのほか反応があってよかった、非正規で働いている友達からこういった宣伝行動は絶対に必要と言われたなどの声も聞かれ、参加した側もやる気になった行動になりました。

 アンケートからは、給料が少ないという不満がいずれの雇用形態の方からも聞かれ、正社員であれば「残業代が支払われていない」、非正規であれば「社会保険に加入させてもらえない」、「将来が不安」という声が特徴的でした。また、三〇代女性の派遣社員で、労働時間が長くパワハラ・いじめがあるという不満を抱えながらも、「契約更新してもらいたい」という悲痛な叫びとも言えるアンケートもありました。

 今の社会では、こういう声は決して少なくありません。こういう状況を改善していくために、もちろん個々の事件を粘り強く解決していくということも大事ですが、抜本的に改善していくためにはやはり世間に訴え、世論をもっともっと盛り上げていく必要があると思います。

 こういう活動を通じて、少しでも住みよい社会になれば、と思いながら、私も初めて宣伝カーの上からマイクで訴えかけを行いました。



働くルールを守って、ワーキングプアをなくそう!

〜新宿駅頭「宣伝・相談・アンケート」活動の報告〜

労働問題委員会 担当次長 大 山 勇 一

 今年4月5日、JR新宿駅西口にて、自由法曹団主催の労働問題街頭アピールを行い、大成功に終わったのでその報告をいたします。

 昨年の団総会以来、労働問題委員会では、ワーキングプアや労働者派遣法など非正規雇用問題に力を入れ、パネルディスカッションを催し、またパンフレットや意見書作りなどに力を注いできました。

 団員の現状認識が深まり、「今の状況は許せん」という機運が盛り上がってきた中で、「団が主催者となって、街頭に打って出よう!」ということになり、このたびの活動が企画されました。

 当日は快晴の空の下、団員弁護士16名、事務局2名、その他6名、全労連・東京地評7名の総勢31名が集まり、午後1時から3時まで、「労働者派遣法を抜本改正し、働く人の雇用と権利を守ろう」というチラシを一〇〇〇枚配布しました。今回の目玉は、路上相談とアンケート調査でした。

 最初のうちは、「本当に相談者なんて現われるのかしら?」と懐疑的なムードでしたが、30分くらいすると、相談者やアンケートに答える方々が増えてきました。最終的には相談者8名、アンケート回答者35名ということで満足のいく結果でした。一時は相談者が立って並ぶ(まさに「行列のできる法律相談所」状態!)事態まで発生し、対応する弁護士もてんやわんやでした。参加者の観察によると、最初のうちは、私たちの前を行きつ戻りつして様子を眺めている人がまばらにいて、そのうち何人かが意を決して相談に訪れていたとのこと。総括会議では、「ブース形式ではないのでかえって気軽に立ち寄れるのかも」「新宿のような人の流れが多いところだからこそかえって人ごみの中に相談者が隠れていい」という意見も出ました。

 アンケートや相談内容では、派遣労働の苛酷な実態が現われているものや職を失うことを危惧するものが多く、また派遣業務を限定して欲しい、不安定な登録型派遣制度を廃止して欲しいといった声が多く寄せられました。相談については、一つ一つが重い内容で、20分、30分で話が終わらず、これこれの条文を使ってすぐに解決、といったアドバイスができる中身でもなく、相談を担当してみて、あらためて「派遣法の抜本改正こそ必要」という確信が深まったのではないでしょうか。詳細な分析については、5月集会などでご報告させていただきます。

 今回の企画は、しんぶん赤旗によると「団結成以来初めて」ということになっています。確かに、本部主催で、街頭宣伝と相談とアンケートをワンセットで行ったのは、今回が初めてなのでしょう。おかげさまで一面に取り上げてもらえました。

 参加者の年齢層が若かったのも嬉しいことの1つでした。60期の新人弁護士が数多く参加し、全労連カーの上での「弁士」も体験してもらいました。広がる貧困と格差について具体的に訴えると、道行く人が振り返り足を止め、聞き入ってくれます。それだけ身近な問題となっているのですね。訴えをしながら、道行く人と怒りを共有できたのではないでしょうか。

 最後になりましたが、当日参加されたみなさん(特に組合の方、事務局の方)にお礼を述べたいと思います。また、きれいで春めいたチラシを作っていただいた代々木総合法律事務所の事務局のみなさまにもお礼を申し上げます。

 今後も、団本部は、街頭に打って出ることでしょう。次回は秋ころ、東京ではない場所で、と勝手に考えています。



民主党「アフガニスタン復興支援特措法案」の重大な危険性

広島支部 井 上 正 信

1、民主党は二〇〇七年一二月二一日「アフガニスタン復興支援特措法案」(以下法案)を参議院へ提出した。二〇〇八年一月一一日参議院本会議で可決され、衆議院へ付託、その後継続審議中である。

 法案は全文が新聞などで紹介されておらず、その危険性につきほとんど議論されていない。しかしながら以下に述べるように、法案はこれまでの自衛隊海外派遣法制と比べても、9条立法改憲に一歩踏み出したといえる危険な内容である。

2、法案が自衛隊に行わせようとしているのは、アフガニスタン本土での人道復興支援活動である。アフガニスタン本土で人道復興支援活動を行っている主体は、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)、ISAF(国際治安支援軍)の管轄下にあるPRT(地方復興チーム)、日本の外務省などが行っているODR、NGOによる活動などである。

 UNAMAはアフガニスタン政府へのアドバイスや、人道復興支援活動の調整くらいの活動であり、主役となってはいない。軍隊が行っている人道復興支援活動はPRTであり、法案はこの活動の支援を計画していると思われる。

3、しかしながら、PRTはいわば軍隊による駐留地周辺への宣撫活動のようなものであり、その構成はどの国のPRTもほとんど(9割程度)までが軍人である。しかもISAFは、米軍と一体となった軍事作戦を遂行しており、PRTもその活動の一部となっていると言われている。イラクのサマーワへ派遣された陸自の活動は、PRTの一種と位置づけられる。アフガニスタンでは反政府武装勢力が盛り返して、ISAFや米軍と激しい戦闘を行い、市民が巻き込まれて犠牲となり、ISAF兵士にも犠牲者が増大している。大変危険な活動となっているし、これらの活動への支援は戦闘に巻き込まれ武力行使に至るおそれが高い。

4、法案がこれまでの自衛隊海外派遣法制を更に改憲の方向へ一歩進めているのは、任務遂行のための武器使用を容認している点である。第二〇条は、「アフガニスタン復興支援活動の実施に対する抵抗を抑止するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合」、武器使用ができるとしている(第1項)。これまでの海外派遣法制で、任務遂行のための武器使用(いわゆるBタイプ)ができなかったのは、武力行使になるおそれがあるからであり、まさに9条の制約であった。二〇〇二年一二月国際平和協力懇談会(福田懇談会)がBタイプの武器使用を解禁する提言を行ったことがある。この提言は、恒久法とセットになっている。自民党防衛政策検討小委員会がまとめた国際平和協力法案(恒久法案)は、やはりBタイプの武器使用を容認している。法案はこれらのものと底通している。

 法案は、武器使用の際には部隊長の命令で行うとしている(第二〇条第3項)。Bタイプの武器使用を部隊長命令の下で行うのであれば、これは武器使用とはいえない。武力行使そのものである。9条違反は明白であろう。

 第二〇条4項では、対人殺傷には刑法第三六条、三七条(正当防衛、緊急避難)の要件をかぶせている。この点で未だ9条の規範力を残している。Bタイプの武器使用を認めながら、対人殺傷についてこの制約を課することは、現場の自衛隊員を危険にさらすことになる。武装勢力と思われるものが任務を妨げると考えれば、威嚇射撃することができるが(Bタイプ)、当然相手は自衛隊員を殺害しようと反撃するであろう。そうなって初めて自衛隊員は相手に危害射撃できる。つまり、自衛隊員はまず先に自らの生命を曝し、しかる後反撃できるというのであるから、これは危険である。通常の軍隊なら、任務遂行のため相手に対して先に危害射撃するであろう。9条の制約を中途半端に解禁しながら、他方で残すことが、派遣された現場の自衛官にとっていかに危険なことか、民主党は考えたことがあるのか、実に腹立たしい。9条の制約を受ける自衛隊は派遣してはならないのである。

5、法案は、派遣地域として「抗争停止合意が成立している地域であってそこで実施される活動の期間を通じて当該抗争停止合意が維持されると認められる地域又は当該人道復興支援活動に対する妨害その他の行為により、住民の生命もしくは身体に被害が生じることがないと認められる地域」と規定する。通常の「停戦合意」ではなく「抗争停止合意」とした真意は私には不明である。そのことはさておき、自衛隊の部隊が任務遂行のために武器を使用したなら、たちまち武装勢力との戦闘になりかねず、活動地域のこの要件は失われるであろう。任務遂行のためが逆に活動を中断させる原因になるという矛盾をはらんだ法案である。

6、法案のもう一つの危険性は、第二五条である。「基本的な法制の整備」と称して、「国の安全保障の原則に関する基本的な法制の整備がすみやかに行われるものとし、当該法制の整備において、日本国憲法の下での自衛権の発動に関する原則及び国際連合憲章第7章の集団安全保障措置等にかかる我が国の対応措置に関する基本原則(括弧内省略)が定められるものとする」。

 第二七条では、「テロ対策海上阻止活動(括弧内省略)が国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に基づき国際連合加盟国により行われることになったときは、国際的なテロリズムの防止及び根絶に寄与するため、これに参加する必要な法制の整備について、その要否を含めて検討する」と規定する。

 第二七条は、新テロ特措法に対する対案として、海上阻止活動を行うための法整備を規定する。

 第二五条は、一般には海外派遣恒久法の整備を定めたものとされている。しかし、法文を読めばそれだけではないことはすぐに理解できるはずである。恒久法だけではなく、集団的自衛権行使の憲法解釈を立法により乗り越えようとするものであり、国連安保理決議により自衛隊を武力行使目的で派遣する法整備も進めるというものである。これは自民党の恒久法よりも遙かに9条破壊を押し進めるものとなっている。法案は、1年の時限立法であるから(附則第2条)、施行後1年間にこの様な法整備を行うことを義務づけるものと理解される。

7、衆議院で与党が法案を丸飲みすることはないとは思うが、与党と民主党との裏取引の火種にはなる。ひょっとすると大連立構想が再燃するかもしれない。自民党の恒久法案と駆け引き材料となり、一気に政局が憲法9条改憲に向けて進展することも考えなければならないだろう。

 私たちの陣営では、もっとこの法案の危険性を知らせて、恒久法制定反対と共にこの法案を廃案に追い込む運動を展開しなければならない。



大阪法律事務所の憲法ミュージカル応援活動

大阪支部  原 野 早 知 子

憲法ミュージカル「ロラ・マシン物語」

 4月下旬から5月上旬にかけて、東京・山梨・大阪の三カ所で、市民が出演する憲法ミュージカル「ロラ・マシン物語」が上演される。若手の弁護士が呼びかけ人となって実行委員会方式で進められている。

 大阪法律事務所の奥村昌裕弁護士が呼びかけ人に加わったことで、若者に向けて呼びかける企画として事務所もできるだけ協力することになった。事務局の増井さん・柿内さんが出演者・スタッフに加わり、事務局の前田さんの娘さんも出演することになった。

 大阪では五回もステージがあり、五月三日の公演が行われる柏原リビエールホールは大阪法律事務所とつながりが深い地域にある。カンパして後は自分が観に行くだけというのでも足りないだろう。そこで、事務所の各種運動を担う「人権と民主主義のための委員会」(人民委員会)が実働を担って、憲法ミュージカル応援のため、事務所とつながりの深い地域に向けた活動を行うことになった。

「従軍慰安婦」問題の学習会

 「ロラ・マシン物語」は、日本軍の従軍慰安婦にされたフィリピン女性トマサ・サリノグさんの生涯を描いた物語である。そこで、まず、「従軍慰安婦」について学習をしようということになった。大阪で、中国人の従軍慰安婦の日本政府に対する訴訟に取り組んだ寺沢勝子弁護士(大阪法律事務所の寺沢達夫弁護士の妻)に講師を依頼し、従軍慰安婦問題と訴訟について講演していただいた。

 「従軍慰安婦」は国家(旧日本軍)が直接、間接に関与して作った軍隊用の性的奴隷制度である。しかし、日本政府はこれまで、証拠を隠滅し、軍の強制を否定し、国家としての責任を取ろうとしなかった。「女性のためのアジア平和国民基金」が設立され、フィリピン・韓国・台湾の申請者に一人あたり二〇〇万円を支払ったが、「基金」はあくまで民間のものである。

 寺沢弁護士が担当した訴訟で原告となった女性たちは、「慰安婦」にされたとき、満年齢で一五歳に満たなかったが、村に駐屯した日本軍の「慰安所」に連れて行かれた。一人の女性は日本兵から銃底で左肩を殴られ、首に縄をかけられ、後ろ手に縛られた。そのため、右手と左手の長さが違ってしまった。性行為を嫌がると、日本兵から殴られたり蹴られたり、ナイフで脅されたりした。身体が弱って歩けなくなり、父親が「治ったら連れて行く」と言って、やっと「慰安所」から家に帰ることを許された。もう一人の女性は、「慰安婦」になって一〇日で歩けなくなったが、それでも全部で五〇日間強姦されつづけた。この女性は、戦後数十年経っても、突然、叫んだり、自分の子どもに鉄の棒で殴りかかったりするなど、深刻なPTSDの症状があったという。軍による「強制」の存在は明らかなものだと思った。

 寺沢弁護士たちは、裁判の過程で「加害者側」元日本兵で、証人となる人を探した。その作業は困難を極めた。というのは、原告の女性たちの住んでいた村に駐屯していた部隊は、その後中国から沖縄へ移動し、沖縄戦で大部分が死亡し、生き残ったのは二〇〇名の中隊のうち一一名のみだったからである。その中の三名が戦争体験の語り部になっており、裁判で、中国大陸での加害行為ー八路軍の容疑をかけられた中国人への刺殺訓練、行軍中の略奪・暴行・強姦、病人がいる家に火をかける等ーを証言したという。

 国連では、日本軍の「従軍慰安婦」を「軍事的性的奴隷」と定義し、各委員会が日本政府に対し、事実を認め真相を究明すること、被害者に謝罪し補償することを求めている。近時、アメリカ・オランダ・カナダ・EUの各議会においても、日本政府の被害者への謝罪等の必要性を指摘する決議がなされている。 被害者の女性たちは既に高齢だが、日本政府は国際社会が勧告している抜本的な解決をせず、放置したままである。(「ロラ・マシン物語」の主人公であるトマサ・サリノグさんは、「基金」が出来たことを聞いた途端に「私は受け取らない」と断言したという。)

 このような勉強会をして、「従軍慰安婦」の問題に理解を深めた上で、事務所の運動に取り組むことになった。

事務所で手分けして地域への宣伝活動

 私たちは、ミュージカルの宣伝をするにあたって、五〇カ所(団体)に、ポスターを貼ってもらい、チラシを置いてもらうという目標を立てた。そして、ポスターとチラシ、実行委員会と事務所からの支援依頼文を入れたセットを作り、手分けして地域の各団体に持って行って、ポスターを貼ってもらい、チラシを置いてもらうよう頼んだ。

 民主商工会や生活と健康を守る会など、定期的に法律相談を実施している団体には、相談担当の弁護士が、相談時にポスター・チラシを持って行った。そのほか、地域回りをする日を設定して、弁護士と事務局がペアを組んで、東大阪市・八尾市・大阪市天王寺区・大阪市生野区の団体、労働組合、診療所などを回った。既に、他のルートから宣伝が行っている団体もあったが、労働組合で初めて話を聞くというところもあった。

 東大阪市を回った奥村弁護士(呼びかけ人)・増井さん(出演者)コンビは、市職労と地域労組から「組合員にチラシを送付する」と言っていただき、さらに追加で数百枚のチラシを届けることになった。八尾市を回った長野弁護士・泊さんコンビは、途中で、柏原九条の会の会員で、憲法ミュージカルに熱心に取り組んでいる中村さん(やはり地域回り中)と出会い、エールを交換した。

 こうして、五〇カ所近い団体に声かけをし、現在は公演まで一ヶ月を切り、チケット販売促進中である。事務所とつながりが深い地域といっても、普段は法律相談に行くだけで終わっていることが多い。地域の各団体を回って訴える活動を通じて、地域と事務所とのつながりを実感することができ、若手の事務局にとっても、いい経験になった。ミュージカルの練習は、本番に向けて佳境に入っていると聞く。ぜひ大勢の人に観てもらい、戦争を、憲法を考える一つのきっかけにしてほしいと思う。



「対象者は私だった」

−後期高齢者医療制度に思う

東京支部  坂  本    修

 四月八日、私は自由法曹団女性部主催の学習会「後期高齢者医療制度及び医療改革と私たちのくらし」に参加した。三月半ば、「後期高齢者保険証」を送りつけられてきた私は、その正体を学びたかったのである。講師は相野谷安孝氏(中央社保協事務局次長)。詳細な資料とレジュメで約一時間半、草の根の現場の実践に裏付けられた、分かりやすく、しかも心に染みてくる話だった。このような学習会を機を失せずに企画し、成功させた女性部団員のみなさんに感謝し、敬意を表する。

 保険証を甲一号証、今、治療を受けている東京都老人医療センター発行の二万六〇〇〇円と明記された請求書(二ヶ月分)を甲二号証として持参し、被差別者本人としての思いを語った。学習会終了後、女性団員の方々から今日話したことを、「本人の思い」として団通信に書いた方がいいと言われて、筆をとっている。

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 制度の内容を詳しく書く字数はないし、そもそも私にはまだ充分な知識はない。しかし、なぜ、なんに怒っているかは簡単に述べたい。人間らしく生きたい。尊厳をもって人生を全うしたいとは誰もが思う。私もそうである。だが、この制度は、この願いを踏みにじる。(1)七五才でいままでの健康保険から追い出す、(2)年金から保険料を天引きされる、(3)払えなければ保険証を取り上げられる、(4)診療報酬も全く別枠で、結局は差別医療にする、(5)糖尿病や高血圧症で受診している者の健康診断は義務制から努力制(やらなくてもいい、やらない方がいい)にする、(6)一人六〇〇〇円の切り捨て治療制度を選択導入する、(7)あげくの果てに終末期医療制度で、終末期治療について患者らを指導し、方針をきめたり、退院させて自宅療養にさせたら指導料が出るという。ざっとあげても“七つの大罪”をもりこんだ切り捨て差別医療制度であることは明白である。

 入団して約半世紀、多くの差別事件を弁護してきた。けっして他人事としてたたかってきたわけではない。しかし、今度は対象者は自分なのだ。現時点での私の経済状態と病状でいえば、私はまだ「恵まれた患者」ではある。それでも、人間の尊厳に反する差別、非人間的な苛政の対象者となったことの怒りは心の底からのものがある。誤解をおそれずに言えば、この思いは私にとって「新鮮」である。

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 甲一号証の保険証を学習会の席上でみんなに見てもらった。異口同音に「お粗末なものですね」という声が上がった。実は自宅に送られてきたときに、私は危なく捨ててしまうところであった。今までの保険証のようなカードでもないし、独自の一通の保険証でさえない。ぺらぺらの制度説明書の片隅に印刷され、ミシン目もなく自分で切り取るようになっている。どうせ弁解だらけのPR文書だと思って私は捨てようとしていた。坂本福子に注意されなければ、間違いなくそうしていただろう。昨夜(四月一〇日)のテレビでは、気づかずに捨ててしまった人が何万人もいるようだという。もちろん、保険証がちゃんとカードになっていれば、それでいいというのではない。しかし、保険証なるもののこの「お粗末さ」は、私たち七五歳以上の人々の生命と健康がどんなに「軽いもの」として処理されようとしているかを証明しているように思われてならないのである。

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 酷い(むごい)制度の対象者になったが、あきらめはしない。各地で燎原の火のように、そして世代をこえて広がっている抗議を見て、私は、この制度を廃止することは必ずできると思うからである。

 憲法をめぐる“せめぎ合い”は、九条を第一義的な課題とするが、生存権、労働権をはじめとし、その全体に及ぶ。労働のルールをめぐる“せめぎ合い”には、いま“潮目”の変化が起きている。同じようにーいやおそらくそれ以上のスピードと規模でー医療制度の改悪、とりわけ後期高齢者医療制度の暴挙は、憲法闘争を発展させる新たな力を生みだすに違いないと私は確信している。

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 日本にたどり着いた最後の病院船で帰国した次兄の死を看取って、憲法九条を知った。敗戦後間もなくの餓えるほどの食糧危機のなかで結核を再発させた三兄を、金がないこともあって退院させ、在宅死させてしまったときの父母の苦しみを見て、やや遠回りはしたが、憲法二五条の実現を自分の要求とした。二人兄の死、そして、看病で生命を使い果たした母の死は、私が自由法曹団に入団するようになった“志”の原点である。

 憲法をめぐる“せめぎ合い”の渦中に立って、あらためて原点を思う。改憲勢力に対して「後期高齢者といって侮るではない」と言いたい。世代をこえて広がる、憲法を守り、生かすたたかいに参加し、ささやかであれ、さらに活動をしたいとつよく思う。



ぼけ防止のためにした物忘れ老人のための消費者代表

本人訴訟が本人の「ぼけ」を立証することになった話

滋賀支部  吉 原  稔

1、私は、一昨年夏に車で北アルプスに行った帰りに、パーキングエリアで定期券、免許証の入った「パス」を紛失した。

 早速京阪電鉄に失効手続をとって通勤定期券の再発行を求めたところ、再発行できないという。

 当時JRのイコカカード以外、全国のどの私鉄も磁気定期券の再発行をしないことを知って驚いた。

 そこで、ぼけ防止のために「物忘れ老人のための消費者代表本人訴訟」と銘打って、訴額二万一五〇〇円の定期券再発行請求訴訟を提起したが、京阪電鉄は紛失した定期券は失効していないから再発行できないと抗弁した。

2、ところが、1ヵ月後になって、車の中からパスが出てきた。その日が有効期限の最終日なので、失効しているかを確認するため使用したところ、スーッと通った。つまり、失効していなかったのである。

3、そこで、「紛失しても再発行しない」ということを告知していなかったことを理由に、急遽、消費者契約法4条2項の「不利益事実の不告知」による取消に切り替えた。

 争点は、「重要事項の利益となる旨の告知(利益の告知)」と「不利益が存在しないと誤認をすること」との間に直接の因果関係が必要かである。

4、一、二審は「直接の因果関係が必要」として請求を棄却したので、上告し、上告理由書と補充書を提出した。「消費者契約法に規定のない消費者に不利な要件を付け加えるべきでない」との論旨である。勝った場合、日弁連の消費者保護委員会に送るニュースの原稿まで書いて待っていた。

 いつまでたっても弁論を通知してこない。第2補充書を書こうと記録を広げたら、なんと4ヶ月前にきた「上告不受理」の決定書が置いてあるではないか。上告受理申立をして4ヵ月後の決定である。

 裁判所は、これは本人のぼけ防止の道楽でやっている訴訟で、深刻な消費者被害の救済の事件ではないと見抜いたらしい。あまりに早いし、一枚の紙きれなので、上告記録到達通知書と間違えて記録にはさんだものらしい。

 この結果、紛失した定期券が車の中から見つかったことと上告不受理決定通知を見落としたことの2回ではからずも私の「ぼけ」が立証された。それにしても、これが原告が私本人であったので、4ヶ月前の却下決定を依頼者にどう通知するか悩まなくて済んだことがせめてもの慰みである。

 皆さんもくれぐれも気をつけてください。



オリンピック 日本は中国における

人権保護を働きかけるべき(2)

中国の人権と北京オリンピック〜今年一月八日付福田首相宛書簡
及び三月一三日の同書簡公開についてのプレスリリース

東京支部  土 井 香 苗
(国際NGO ヒューマン・ライツ・ウォッチ(*)日本駐在員)

*ヒューマン・ライツ・ウォッチは、世界八〇カ国の人権状況を常時モニターする世界最大級の国際人権団体。本部ニューヨーク。

●第二回

 今年8月8日に北京オリンピックが開幕します。そのちょうど1年前である、昨年8月7日、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、中国での報道の自由の侵害についての報告書「嫌がらせと逮捕にさらされるジャーナリストたち」(You Will Be Harrassed and Detained)を発表しました。そのプレスリリースをご紹介します。

中国:メディアへの攻撃はオリンピック開催の公約違反

国際オリンピック委員会は、中国政府に、報道の自由についての新規則を守るよう働きかけるべき

 (ニューヨーク 二〇〇七年8月7日) ---二〇〇八年開催の北京オリンピックを一年後に控えながら、中国政府は、外国人ジャーナリスト及び中国人の現地スタッフに対し、嫌がらせ、脅迫、拘禁などを続けており、国際オリンピック委員会に対して自らが約束した報道の自由についての公約に違反している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書(http://hrw.org/reports/2007/china0807/)で述べた。

 「嫌がらせと逮捕にさらされるジャーナリストたち」と題するこの四〇頁のレポートは、中国政府が、ジャーナリストの自由を保障するとの国際オリンピック委員会に対する公約を遵守するため、1月1日、暫定規則を採択したにもかかわらず、中国政府当局が、今年に入ってからも、外国人ジャーナリストの取材活動を繰り返し妨害してきた現状を伝えている。 この報告書は、二〇〇七年6月、三六人の外国人ジャーナリスト及び中国人ジャーナリストから寄せられたインタビュー及び情報に基づいて作成されている。

 「外国人ジャーナリストが、単に自分の仕事をしただけあるにも拘わらず、中国政府が、それを理由に、外国人ジャーナリストを脅迫し身柄拘束しようとしているのは、オリンピックのフェアプレー精神に対する冒涜だ。」「ジャーナリストへの嫌がらせや拘禁が続いているのを見ると、メディアの自由を保障するとの北京オリンピックの公約が、誠実な政治イニシアチブというよりも、PRのための策略に過ぎなかったように思えてくる。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。

 二〇〇八年開催オリンピックの北京への招致の一環として、北京でオリンピックが開催されている間、海外及び国内のジャーナリストに対してこれまで続けてきた抑圧政策を緩和すると、中国政府は、二〇〇一年、国際オリンピック委員会に約束した。このメディアの自由を拡大するという公約は、オリンピック憲章五一条で規定されているオリンピックの主催国の義務に沿うものである。この五一条における義務は、国際オリンピック委員会に「様々なメディアによる最大限の報道及び世界中の可能な限り広範囲なオリンピック競技の視聴者を確保するため、必要な処置をと」るよう求めるものである。

 オリンピック期間中のメディアの自由に関する政府公約を繰り返してきた政府官僚の一人は、温家宝首相だ。中国の新華通信社によると、4月、温首相は、「外国人ジャーナリストの報道の自由は、ニュース報道についても、確実に保障される。」と述べた。

 中国政府の国際オリンピック委員会への公約の一端として、中国政府は二〇〇七年5月、オリンピック北京組織委員会のウェブサイトで公表した「海外メディアへのサービスガイド」において、中国での、認可外国人ジャーナリストへの新しい自由を発表した。このガイドラインは、「外国人ジャーナリストの報道活動のルールは、中国の法律及び規制に沿って、外国人ジャーナリストが中国の政治及び経済、社会、文化に関する報道を行う場合並びに北京オリンピック及びその準備期間の報道にも適用される」としている。暫定規則は、二〇〇七年1月1日から二〇〇八年一〇月一七日までの間有効であるが、外国人ジャーナリストに対し、同意をえれば、すべての中国の組織団体や市民に、自由にインタビューを行うことを認めている。この規則は、こうした自由を、中国人ジャーナリストには認めていない。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチがインタビューした外国人ジャーナリストの中には、この新しい規則の結果、1月1日以降、反政府活動家や、普段はメディア嫌いの政府役人へのアクセスが実際に拡大したと語る者もあった。しかし、新しい規制など知らないと主張したり、意図的に新規則に従わない政府の役人、警察、私服の暴漢などが、自分たちの報道活動を日常的に妨害していると述べる外国人ジャーナリストもいた。

政府の外国人ジャーナリストに対する妨害

 外国人ジャーナリストがもっとも頻繁に攻撃され、拘禁され、脅迫されてきたのは、中国政府が敏感事項とみなすこと、例えば―――反政府活動家、チベット、国内でのHIVエイズの流行や、暴動、デモ及びその後の余波などの「社会の安定性」―――に関する報道をしようとする場合だ。

 しかし、中国政府当局が、外国人ジャーナリストの合法的な取材活動を妨害するのは、中国政府が「敏感」とする問題に関する場合に限られない。あるケースでは、外国人ジャーナリストが、すでに取材の了解が取れていたビジネス関連の報道のために、国営工場を訪れたところ、ある中国共産党の役員が、工場の存在それ自体が「国家機密」であると主張し、そのジャーナリストの滞在の間ずっと嫌がらせを続けた。他の例においては、外国人写真家とその同僚が、有罪判決を受け処刑された連続殺人犯人の話を追っていた際、丸一日、私服の暴漢の一団に尾行され嫌がらせを受けた。

 今年初めに起きたある2つの事件では、2人のジャーナリストたちが、それぞれ別々の場所で、私服を着た人物たち(当該ジャーナリストたちは私服警官であろうと推測している)に、北京の中心部で、押す、突き飛すという暴行を受け、逮捕されそうになった。これらの事件は、制服を着た国家公安警察たちの目前で起きたが、公安警察たちは、事件に全く反応しなかった。この攻撃は、2人のジャーナリストが、不法な土地収用と役人の汚職などの問題を解決してほしいと地方からやってきた政府への陳情者たちの状況を取材しようとしたときに起きた。

 残念なことに、何人かの記者は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、中国の外務省自体が、望ましくない報道をやめさせるための嫌がらせに関与している、と述べた。あるケースでは、外務省は、在北京のある海外の報道機関に対し、海外のある中国政府機関を通じ、「敏感」な問題に対する報道を止めるようにと積極的に圧力をかけたが、その報道機関が圧力に屈しなかったため、就労ビザを拒否するという報復にでた。

 これらの事件や、他にも現に進行中の暫定規則違反事件は、オリンピックを取材するために中国を訪れる数千人ものジャーナリストの自由と安全について、深刻な問題を提起していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

 「中国政府には、この状況を改善するのに1年間の猶予が与えられている。しかし、そうした猶予が与えられるのも、政府官僚たちが、空虚な言葉を並べるのではなく、意味のある行動をとる場合だけだ。」「中国政府が国際オリンピック委員会への公約を果たすかどうか、世界が監視している。」とアダムズ局長は述べた。

中国人ジャーナリストに対する差別

 また、この報告書は、二〇〇八年開催の北京オリンピックの準備期間に、外国人ジャーナリストの助手、調査員、通訳、情報源などとして働いている中国人たちが直面する厳しい監視と圧力についても、報告している。この報告書は、中国政府が、新しい暫定規則から意図的に除外された国内ジャーナリストたちの活動を監視・管理し続け、かつ、国内報道が政府のプロパガンダの目的に沿うかどうか厳しく管理し続ける現状と手法についても検証している。

 「外国人ジャーナリストが享受する制限された自由さえも、中国人ジャーナリストに対しては認めないのは、中国政府の態度が偽善でしかないことを示している。」「中国人ジャーナリストに対して、平等な自由を認めない中国政府の行為は、表現の自由の侵害に該当するだけでなく、特に中国自身の憲法が報道の自由を保障している場面における、自国民に対する不公正な差別に該当する。」とアダムズ局長は述べた。(完)

同プレスリリースの英語オリジナル:

http://hrw.org/english/docs/2007/08/07/china16552.htm