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半田 みどり 二・一四「非正規切りとたたかう」
―「なくそう!ワーキングプア 労働・生活相談マニュアル」出版記念―シンポジウム報告
大久保 賢一 日弁連シンポ「憲法からみた、生きることと働くこと」のご案内
坂本 雅弥 裁判員制度に立ち向かっていく決意
〜「二・六裁判員制度を考える集い」に参加して〜
三澤 麻衣子 『裁判員になるかもしれないあなたへ』
〜全労連・団・救援会三団体による市民向けリーフレット普及のお願い
望月 浩一郎 企業内スポーツ部監督解雇事件と日本スポーツ仲裁機構の調停手続
大量解雇阻止対策本部 三・一三「大量解雇阻止対策本部」
第一回全国会議開催のお知らせ



二・一四「非正規切りとたたかう」

 ―「なくそう!ワーキングプア 労働・生活相談

    マニュアル」出版記念―シンポジウム報告

事務局次長  半 田 み ど り


 二〇〇九年二月一四日、東京にて「二・一四シンポジウム『非正規切り』とたたかう」が自由法曹団と労働者教育協会の主催で開催されました。

 これは先日出版された自由法曹団編著のブックレット「なくそう!ワーキングプア 労働・生活相談マニュアル」の出版記念として開催されたもので、団・組合・各種団体から一一七名の参加がありました。

 来賓挨拶では、松井団長から「個別の権利の戦いと大きな政治の戦いを結びつけて戦っていこう」と挨拶され、これに呼応するように、個別の戦いや取組が紹介され、さらに運動を広げていくことを決意したシンポでした。

 パネリストの発言要旨をごく一部ですがご紹介します。

生熊JMIU副議長「派遣村での取組もあり、労働組合への加入者が増え、JMIUいすゞ支部も結成された。労働・生活相談での救援活動だけではなく、戦う労働者を作っていくことが大事」

新婦人笠井副会長より「女性・子どもの貧困は深刻。対話が重要。新婦人の中でも、派遣村に来た人は自己責任と言う声が出たが、企業のもうけのために派遣法が改悪されてきたことを話して理解を得た。」

日本共産党山下参議院議員「現行法で中途解約とも雇い止めとも戦えることを二月四日の志位委員長の論戦で認めさせた。三月末にも大量解雇がされようとしているが、生身の人間が切り捨てられることを同じ人間として許してはならない。抜本的な派遣法改正とともに、現行法で戦っていく必要がある」

自由法曹団鷲見幹事長「光陽シーリングテクノやいすゞの戦いに参加して、今まで知らなかった実態に次から次に出会った。ホンダでは一ヶ月の有期契約を一〇年続けた。短期有期労働をもっと規制すべき。非正規切りとの戦いは生活面・法的な面でも、迅速さを要求される戦い。経験のない若手でも、だからこそ大胆な戦いが出来る。大きく足を踏み出していこう」

 会場発言では、まず、いすゞを中途解雇されて、JMIUに加入し戦っている元派遣労働者の方から「自分の戦いは大変だが、他の人が同じような目に遭わないように、名前を出して堂々と戦っている」といった力強い発言がなされました。

 二月二一日の愛知常幹でも報告されましたが、JMIUでは組合員が増えているとのことです。

 一方で、埼玉労連からは、「埼玉県内で六〇〇〇人が切られたと言われているのにまだ三〇人しか相談に来ていない。前借りせざるを得ない給与体系や、労働者同士の会話を禁じる、団交をする派遣労働者を差別し、他の会社を紹介しないなど労働者を縛り付け団結を奪う仕組みがある」と報告されました。「若い派遣労働者が駅前に三〇人くらい集まって誰も何もしゃべらない」という光景が報告され、「戦う労働者を作っていく」ためには課題が多いことを知らされました。

 その他の会場発言としては、新婦人からは、マザーズハローワークの不備の指摘とハローワーク前宣伝行動で成果を得ていること、首都圏青年ユニオンからは団交での派遣会社のお粗末な対応を紹介し、企業の責任を追及していくべきこと、東京支部の今村団員からはブックレットの普及について、東京支部の上條団員からは偽装派遣との戦い、広島支部の木山潔団員からはシャープ福山工場の派遣切りに対する戦い、ほっとポットより生活保護の窓口での水際作戦をなくすべき取組の必要と、生活保護が利用できることを広報していく必要について、埼玉支部の伊須団員からは、生活保護の弁護士による申請同行の取組、SHOP99の「名ばかり管理職」清水氏の戦いを東京支部の三浦団員と清水氏本人から報告、公共一般からは公務職場の非正規労働・解雇雇い止めの実態、国公労連からは”低賃金で灯油も買えなかった”官製ワーキングプアの実態、京都支部の大河原団員からは京都支部作成のリーフレット「事実、それは違法です!」の紹介と活動報告、愛知支部の大坂団員からは外国人研修生の労働問題について報告がありました。

 学習提起を行った労働者教育協会の山田会長からは、この二〇年来の情勢を構造的に見て、貧困・社会保障の破壊と憲法九条改悪への動きが結びついていることから、貧困と憲法の総学習運動が提起されました。

 最後に、自由法曹団加藤事務局長より、「一番弱いところへの卑劣な攻撃を止められないでどうするか」といった檄が飛び、大きな拍手でもって閉会しました。

 全ての発言が大変有意義なものであり、これからの取組の指針となるものであったと思います。

 個人的には、依頼者との間で同じような話をしたことから、対話の中で「自己責任論」を克服していったという新婦人の方の話が強く印象に残っています。こういった対話一つも、「大きな政治の戦い」への一歩となるものだと感じています。



日弁連シンポ「憲法からみた、生きることと働くこと」のご案内

埼玉支部  大 久 保 賢 一

ダブル誠の話

 この一ヶ月間に、所沢で、湯浅誠さん(「派遣村」村長)の話と河添誠さん(首都圏青年ユニオン書記長)の話を聞く機会があった。 ダブル誠の話は、現代日本の実情の一端を紹介しながら、その背景にあるこの国の深い病根を指摘するものであった。野宿者や日雇い派遣労働者の生活と権利の確保のために最前線で戦っている人たちの話には、「基本的人権」とか「新自由主義」とかいう言葉がちりばめられることはないけれど、このままではいけない、何かしなければという気持ちにさせるものであった。

 それぞれの講演会には、主催者の予想を超えて多くの人が集まっていた。保育園の民営化問題と取り組む若い母親や民青同盟の活動家が、一生懸命質問している姿が印象的であった。

松井繁明団長の問題提起

 ところで、松井団長が「月刊憲法運動」二月号で、「派遣・期間工切りと憲法二七条」という論稿を寄せている。そのサブタイトルは「今日の経済危機と政府・大企業経営者の責任」である。

 その論旨を紹介しておく。この間の日本経済の成長には二つの歪みがあった。正規職員の非正規職員への置換えによる労働経費の抑制と外需拡大への依存である。この日本経済の脆弱性が「かつて経験したことのないような悲惨な状況」を生み出している。輸出が急減し内需拡大も見込めない日本経済の先行きは暗い。

 しかしながら、低賃金も不安定な身分もすべて「自己責任」と思わされてきた派遣労働者や期間工が、自分たちを「モノ扱い」してきた経営者や政治の仕組みが悪いのだと気づき始めた。社会的共感と連帯も生れている。

 この現実に対して憲法運動がどう対処すべきかが問われている。 これまでも、九条と二五条の統一や九条と二四条の結合がいわれてきた。

 けれども、二七条に言及する声は意外に少ないのではないか。「勤労の権利」とは何か、「法律の定め」とは何か、二五条との整合性はどうあるべきかを考えなければならない。

 二七条は、労働者の生活水準を確保することが社会の安定につながり、平和を守る条件として制定されたのである。二七条の意義を再確認し、これを活用して大企業の横暴に立ち向かうべきではないか、と結論している。

松井論稿に対する共感

 松井さんは、二五条(生存権)、二六条(教育権)、二七条(労働条件)、二八条(労働基本権)という一連の社会権規定をリードするのは二五条であるとしている。二五条にいう「最低限度の生活」というのは、衣食住にありつき、ただ呼吸をしているという生活ではない。健康を維持し、その社会の文化を享受する権利が保障されなければならない、というのである。そして、二七条二項にいう「法律」の基準は、二五条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」を確保するものでなければならない、と論を進めている。

 ぼくもこの論に賛成したいと思う。けれども、住むところを追い出され、「着たきり雀」のままに、食うために無銭飲食やコンビニでの万引きをしている被告人の弁護をしたり、貧困が故の自殺報道に接すると、「衣食住にありつき、ただ呼吸をしているだけ」という生活すら保障されていない人々もいるのだ、という実感も沸いてくるのである。

 フランス革命当時、「自然権とは、子どもを作り、衣服を着、食べ物を食べることである」との主張は、嘲笑を買い、人権宣言にも反映されなかったという。二二〇年前と同様の悲喜劇が、高度に発達した資本主義国、世界第二の経済大国といわれるこの国で展開されているのである。何とかしなければならないと思うのは、団員共通の想いであろう。

日弁連シンポの案内

 そこで本題に入ります。日弁連は、四月二一日(火)午後六時から、クレオで、「憲法からみた、生きることと働くこと」というテーマでシンポジュウムを企画しています。サブタイトルは、「生存権と労働権から考える日本の現状」です。基調講演は本田由紀東大大学院教育研究科教授、パネリストは本田さんと河添誠首都圏青年ユニオン書記長、尾藤廣喜弁護士、中野麻美弁護士、コーディネーターは永尾廣久弁護士です。社会保障の現状、労働の現場の事実を確認しながら、社会権の現代的な意義とその実現を求めるシンポにしたいと考えています。多くの団員の参加を期待しています。



裁判員制度に立ち向かっていく決意

 〜「二・六裁判員制度を考える集い」に参加して〜

東京支部  坂 本 雅 弥

 裁判員裁判の施行まであと僅か。今までそれなりに刑事弁護活動を行ってきたが、五月施行の裁判員制度に対しては不安はとても大きい。その不安は、実務的な不安、つまり弁護人として行うべき訴訟活動の方法についての不安もあるが、そもそも問題の多い裁判員制度の下で、弁護人として被告人の権利を守る弁護活動を行うことができるのかという不安が大きい。

 そのような不安を抱えながらどのように裁判員裁判に立ち向かっていくべきか。そう思っていたところ、本年二月六日に労働と平和会館(東京)において、団・全労連・日本国民救援会の主催の「二・六裁判員制度を考える集い」が開かれた。

 私は裁判員裁判に対しどのように立ち向かっていけばよいのか、そのヒントを求めようとこの集いに参加した。この集いの中で、坂本修団員の講演は裁判員制度の下でどのような活動を行うべきか、色々考える契機となった。

 修団員は、裁判員裁判の施行直前に迫る状況の中、「この制度をつぶせ」という視点ではなく、「裁判員制度のもつ危険については断固として闘い、より良い制度に変えていく。そのためにどう立ち向かうか」という視点から問題提起をした。

 まず、裁判員裁判制度に立ち向かうために、まずは弁護人は具体的事件の中で被告人を守るために必死になって闘うことを訴えた。例えば、事件の全容が見えない公判前整理手続の始めの段階で判決日を決められようとする場合、弁護人は断固として阻止すべきである等々。弁護人にとり一番大事なのは「不屈に闘う心」、修団員は強調する。

 また同時に、問題のある裁判員裁判制度を変える闘いを進めることが必要であると述べる。日弁連の言う「三年後の見直し」を待っていては遅い、法律を変える前に運用を改善していく立法改正要求等の運動が必要である、と。

 そして、修団員は、裁判員になった国民に対しては、「無罪推定」、「疑わしきは罰せず」の原則を守り、「六人の怒れる裁判員の一人」となってほしいという願いを述べた。

 問題点がある裁判員制度であっても、同制度の下で裁かれる被告人がいる以上、全力を尽くして弁護活動をしなければならないということは当然感じている。ただ、制度の問題の大きさが分かるほど、自分が弁護人としての活動することの不安は増す。自分には重大事件の刑事弁護ができるのだろうか、と。

 しかし、この集いで特別発言をした布川事件の桜井昌司さんの話を聞くと、裁判員制度をより良い制度に変えていくために立ち向かっていかなければならないと気持ちが引き締まった。桜井さんは、「私は国民の目が入る裁判員制度は良い制度だと思う。国民が裁判に関わることにより、今までのような不当な判決が下されることはないようにしてほしい」と強く訴えた。不当な捜査、裁判を経験してきた本人の力強い訴えであった。 

 私はこの集いに参加し、不安を抱えつつも、裁判員裁判に立ち向かっていこうと強く感じた。



『裁判員になるかもしれないあなたへ』

〜全労連・団・救援会三団体による市民向けリーフレット普及のお願い

事務局次長  三 澤 麻 衣 子

 「裁判員になるかもしれないあなたへ」との呼びかけの次に「私たちはヘンリー・フォンダを探しています」とのメッセージ。司法問題担当次長である神原団員のなんともチャレンジングなこの考案が、団執行部や司法問題委員会だけでなく、全労連と救援会からも反対されることなく、リーフレットの完成を迎えました。といっても、具体的な中身については、法律家の考えた肉厚の固苦しい文章を、全労連・救援会・製作会社の方々に、バサバサと切り落としてもらい、どんどん柔らかくしてもらいましたが。

おかげさまで、団が昨年秋に打ち出した「裁判員裁判の実施前に問題点の制度改正を要求しつつも、仮にそれが果たされなかったとしても、市民とともに冤罪・誤判防止のため実践を通じて運用改善、制度改善と求め続ける」との立場をわかりやすく市民に伝え得るリーフレットになったと思います。

 これまで裁判員裁判制度については、最高裁判所を中心として、CM、パンフレット、DVDなどによる大々的に宣伝活動がなされていますが、そこには、市民に対して「負担は軽いですよ」「三日で終わりますよ」「難しいことは裁判官に任せてくれれば安心です」と言って、気楽に出てきてほしいというような傾向がみられます。そして、刑事手続の流れを解説するパンフレットには無罪推定の原則は触れられていません。

 これでは裁判員は、刑事裁判の基本原則すら知らないまま、裁判官の言いなりになるだけで、市民の司法参加の意味がまったくありません。今回のリーフレットでは、裁判官の言いなりになるのではなく職業裁判官のゆがみを正すために市民の参加が必要であることを伝え、かつ、参加にあたっては無罪推定の原則を念頭に証拠を見るべきなど刑事裁判の基本原則を伝えて冤罪防止を呼びかけつつ、現行制度上の問題点についての改善の必要性も訴えるという、かなり欲張っていますが、本当に必要な内容を盛り込みました。

 こんな盛り沢山な内容でありながら、表紙はヘンリー・フォンダの似顔絵が中心という受け取りの良さが期待されるリーフレットです。是非とも学習会や該当宣伝等で、ご活用ください。

・リーフレット価格:一部一〇円、一〇〇部以上八円、一〇〇〇部

 以上五円

・法律家三団体リーフレットとセットなら一セット一五円



企業内スポーツ部監督解雇事件と

日本スポーツ仲裁機構の調停手続

東京支部  望 月 浩 一 郎

 西武のアイスホッケー部廃部(二〇〇八年一二月)、日産自動車の野球部・卓球部・陸上部の休部(二〇〇九年二月九日)など、経済状況の悪化の中で、企業スポーツは冬の時代を迎えている。

 企業スポーツを支えたアスリートや指導者たちは、廃部・休部となった場合に、契約社員として解雇、契約期間満了後の更新拒絶となる場合も少なくない。すでに、ラグビー元日本代表の選手は、ホンダ鈴鹿製作所の「ホンダヒート」からプロ契約を不当に破棄されたとして津地裁に提訴したと報じられている(二月一一日)。

 このような状況の中で、企業スポーツ関係者の労働関係をめぐる紛争は、今後増加すると予測される。解雇や契約期間満了をめぐる紛争については、一般的に、訴訟手続や労働審判が解決の場となるが、スポーツ関係者の場合には、これらに加えてJSAA(日本スポーツ仲裁機構)の調停が解決手段の一つとなる。JSAAにおける調停手続で解決した解雇事案を報告し、解決手段としてのJSAAの調停を紹介する。

 実業団陸上チームの監督の解雇事件について、毎日新聞は二〇〇八年九月六日次のとおり報道した。

 「ノーリツ女子陸上部(神戸市)の上野敬裕監督(三五)は五日、会社からの突然の解雇を不服として、日本スポーツ仲裁機構に調停の申立書を送付した。上野監督によると、申し立ては解雇の撤回と話し合いの場を設けることの二点。上野監督は昨年九月に女子三千メートル障害の辰巳悦加とともに和光アスリートクラブから移籍し、今年二月から本格的に指導を始めた。合宿から戻ってきた今月二日、会社側から解雇を通知された、と主張している。一方、ノーリツの広報担当者は「八月初めに契約解除の意向を伝え、円満解決に向けて話し合っているところ。二日にも話し合ったが、解雇通知はしていない。申し立ての内容を確認し、対応したい」と話している。」

 上野監督は、法律家に相談することなく、先輩にあたるスポーツ関係者から「JSAA(日本スポーツ仲裁機構)での解決がある」と助言され、一人で、JSAAへ調停を申し立てた。

 JSAAは、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(ADR法)認証第一号団体であり、ADRスポーツ関係事件を解決するために、「仲裁手続」と「調停(和解あっせん)手続」とを整備している。

 「仲裁手続」は、「スポーツ競技又はその運営に関して競技団体又はその機関が行った決定(競技中になされる審判の判定は除く。)について、競技者等が申立人として、競技団体を被申立人としてする仲裁申立て」であり、仲裁対象は限定されている。

 一方、「調停(和解あっせん)手続」は、「スポーツに関する紛争についての当事者間の話し合いの場に調停人が臨席し、公平な第三者として助言等を適宜することによって、当事者が円満な和解に迅速に至るようあっせんする手続」であり、「スポーツに関する紛争」であれば、その全てが調停の対象となる。

 上野監督は、自分自身でJSAAへ調停を申し立てたものの、実際に手続を進めはじめたところ自身での解決は困難と考えて、泉澤章弁護士(東京)と私に相談した。私たちは、事案の内容に照らして、JSAAにおける調停での解決に自信があったわけではなく、裁判手続による解決も視野に入れて受任した。JSAAでの調停手続は、熟練した調停人による助言、両当事者が早期円満解決を求めるために調停での解決を強く望んだことから第一回期日から約一か月半(三期日)で調停成立に至った。JSAAの調停成立二号事案である。

 毎日新聞は、二〇〇八年一二月一日、次のとおり報道した。「ノーリツ女子陸上部(兵庫)の上野敬裕監督(三五)が突然の解雇を不服として会社を相手取り、日本スポーツ仲裁機構に申し立てた調停は一日、上野監督が同日付で円満退部することで成立した。」

 JSAAの調停手続は、第一に、保全事件の審尋と同程度か、より集中的な期日指定がなされるため、短期間での解決が可能であること、第二に、調停人がスポーツに精通をしており、スポーツ界の慣行や実情を踏まえた解決が図れる点で他の手続にない特徴がある。

 上野監督は、現在は、一定の企業に依存しない「NPO法人(申請中)湘南トラッククラブ・インターナショナル(STCI)」を設立し、「五輪や世界陸上など世界の舞台で戦えるトップアスリートの育成」「スポーツ界において、深刻な課題となっている選手のセカンドキャリア支援」などに取り組んでいる。



三・一三「大量解雇阻止対策本部」

第一回全国会議開催のお知らせ

大量解雇阻止対策本部

 昨年末からの大企業を中心に大量解雇事件が続発していますが、三月末前後に、最大の大量解雇の波が押し寄せようとしています。厚生労働省の予想では一二万人超の非正規労働者が、民間の予想では四〇万人が解雇されるという、恐ろしい数字が報道されています。 また、解雇の波は非正規労働者だけでなく、正規社員にも及びつつあります。

 私たちは、この間、大量解雇を許さないために法的手段も含め様々な活動をしてきましたが、三月前後に強行される大量解雇に立ち向かうために、全団員をあげてさらに結束し、非正規労働者の解雇を阻止し、労働者の権利を守る運動を全国各地に広げてゆこうと考えています。

 具体的には、労働局に対する派遣労働者の直接雇用を求める申告活動、期間途中解雇・雇い止めに対する仮処分、本訴などの法的手続を中心においた活動を考えています。また、今後、無権利状態に抑え込まれた労働者が少しでも自信を取り戻し、労働者の権利を実現するために、ブックレットなどを利用した学習会活動も重要になります。さらには、大分キャノンの事例などをもとに、自治体からの補助金を返還させる訴訟が可能かどうかなど、大企業の不正をただす取り組みも考えられます。このような活動を全国各地で展開するためには、団内での議論だけでなく、労働組合や各種団体とも連携・共同し、迅速に対応できる体制づくりも必要です。

 大量解雇阻止対策本部では、三月一三日午後一時〜五時まで、団本部において第一回全国会議を開催します。全国各地での様々な取り組みなどの情報交換・意見交換を行い、大量解雇を阻止できる体制を一刻も早く作りたいと考えます。

 全国各地の団員のみなさまには多数ご参加頂きますようお願いします。

大企業の大量解雇阻止のための第一回全国会議

一 日 時 二〇〇九年三月一三日(金)午後一時〜五時

二 場 所 自由法曹団本部会議室

三 議 題

 1 全国各地の大量解雇の状況と労働者、労働組合のたたかい

 2 直接雇用の勧告を求める労働局への申告と労働局の対応

 3 労働契約期間中の解雇、雇止めに対する法的手段

 4 〇九年三月に向けた街頭等での相談・救援活動

 5 全国各地での運動の現状と今後の方向

 6 その他