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田所 良平 自動車教習所指導員の整理解雇事件
全面勝利の仮処分決定を経て全員原職復帰を実現
城塚 健之 労組法転覆をねらったクーデター
―ビクターサービスエンジニアリング事件
東京地裁平成二一年八月六日判決
萩尾 健太 「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書の危険な中身
中村 直美 日本母親大会「裁判員制度分科会」を終えて
神田  高 コラム“残波岬”
石川 元也 ドキュメンタリー映画
「弁護士 布施辰治」製作始まる
製作と上映にご協力を!
加藤 健次 松川事件発生六〇周年記念事業の成功のために団員の協力を!



自動車教習所指導員の整理解雇事件

全面勝利の仮処分決定を経て全員原職復帰を実現

東京支部  田 所 良 平

 飛鳥管理株式会社(以下、「本件会社」)が経営する「飛鳥ドライビングカレッジ八王子校」(以下、「飛鳥DC八王子校」)の教習指導員六名が整理解雇され、東京地裁立川支部に地位保全と賃金仮払いを求めた仮処分事件で、解雇を無効とし、六名全員に対して、一審判決言い渡しまで請求額ほぼ満額の賃金仮払いを会社に命じる全面勝利決定を得たのでここに報告する。

二 事案の概要

 本件会社は、首都圏に三つの教習所を経営する株式会社である。その代表取締役は、自身が米国留学で学んだM&Aを駆使して、会社の合併や解散を繰り返し事業を拡大してきた者であり、飛鳥DC八王子校も、平成一四年に他社から営業譲渡を受け取得した。他にタクシー会社など一七もの会社を経営している。飛鳥グループとしては、三〇〇億円超える売上げを実現し、五〇〇〇近い従業員をかかえ、教習車二一四台、タクシー一七五〇台、ハイヤー二三台を保有している。

 飛鳥DC八王子校では、所属の教習指導員を組織する労働組合があるが、〇八年夏のボーナス支給を拒否した会社との間で、利益を上げるための経営再建案に応じた。ところが、ボーナスは支給されず、再建案を逆手にとった賃金カットなどのリストラが進められることとなり、七名の従業員の削減も打ち出される事態となった。

 しかし、この段階で、組合は、全国金属情報機器労働組合(JMIU)に加入して反撃に転じ、交渉を通じて、リストラを凍結させる協定を勝ち取った。

 ところがJMIUを嫌悪した会社は、今度は経営不振を理由に一方的に協定を無視し、本年三月四日及び五日、三〇年以上勤務してきたベテラン教習指導員六名に対し解雇を言い渡したのであった。

三 決定の内容

 本件決定は、整理解雇についての四要件を検討し、(1)人員削減の必要性が高度なものと認められないこと、(2)解雇回避措置を講じていたとは認めがたいこと、(3)労使間のリストラ凍結協定に定める「相互理解の上で本件再建案を実施」したとは到底いえないものであること等を理由に、本件解雇を解雇権の濫用として無効と判断した。この判断の中で特に重要な点は、(1)及び(3)と思われるので、これらの点を中心に、以下本決定の要旨を述べる。

(1) 人員削減の必要性について

 本件会社の経営は順調で、十分すぎるほどの資産があった。しかも、会社は、昨年一一月に倒産した近隣の八王子自動車教習所を本件解雇直前に買収し、敷地等を購入していたものである。しかるに、教習生減少に伴う八王子校単体の「経営不振」を理由に本件解雇を強行した。

 ところが、会社は、当初、貸借対照表も損益計算書も提出せず、しかも、裁判所から促されてようやく提出した書類はほとんど黒塗りというものであった。しかし、審尋を通じて、最終的には全面的に数字を開示させ、それらに基づいて調査した結果明らかにされたのは、巨額の資金の存在と土地転がしにより得られていた莫大な利益であった。しかも、教習事業そのものは多額の利益を計上していたのである。

 裁判所の決定をして「財務状況の良好さが窺われる」と認定させることができた。

 その結果、人員削減の必要性については、八王子校の入所者減少から「八王子校に係る事業の人員削減を必要とする合理的事情がないとまでは認められない」ものの、「債務者の財務状態に特段問題があったとは認められず、人員削減の必要性の程度が高度なものであったとは認められない」と判断されたのである。

(2) 説明協議について

 前述のように組合が勝ち取ったリストラ凍結の協定では、「凍結された本件再建案を実施せざるを得ない状況になった場合には、誠意をもって団体交渉を開催し、その際、会社は組合に対し、経営状態を示す諸資料を示し、将来の経営見通し等を明らかにし、相互理解の上で本件再建案を実施する」旨が合意されていた。

 しかし、会社は、経営資料の開示を拒み続けた。提訴前の団体交渉で会社が開示した経営資料は、わずかに八王子校単体の損益計算書等であり、それも「一般管理費の計上ミスがあり、営業利益及び経常利益の各金額に重大な過誤があったもの」であった。しかも、これらを開示したのは、解雇の直前であり、開示した翌日には本件解雇を通告してきたのであった。

 このような会社の交渉態度は、本決定でも「本件協定の上記条項を遵守したものとは認め難い」と認定されたのであった。

(3) その他、解雇回避努力義務については、決定は、「解雇を回避するために行った転籍や希望退職の募集はいずれも不十分なものである上、債務者は債権者らの異動や出向について空な図示も十分な検討をしていたとは認められない」とし、「債務者が解雇回避措置を欠いたことがやむを得ないと認めることもできない」と判断した。

 ただし、選定の合理性については、教習生のアンケート、指名等が選定基準にされたが、これについては、「直ちに不合理であるとは認められない」と認定された。

 今回の全面勝利決定は、解雇された労働者らのがんばりと労働組合の活発な運動なくして語ることはできない。地域JMIUをあげての労働運動が展開された。裁判所への要請行動はもとより、会社本社への抗議行動、駅頭宣伝など大々的な運動が展開されるなかで勝ち取られた勝利である。

 決定後、会社は、過去分の賃金を支払い、そのうえで、六名の解雇を撤回し、解雇前の職種に戻すことを表明した。そして、現在は最終的な解決を目指した和解交渉がはじまっている。組合・弁護団としては、完全勝利を勝ち取るため、最後までたたかいぬく所存である。なお、弁護団は、吉田健一、尾林芳匡、山口真美、與那嶺慧理各団員と私である。



労組法転覆をねらったクーデター

―ビクターサービスエンジニアリング事件

東京地裁平成二一年八月六日判決

大阪支部  城 塚 健 之

 「業務委託」という名称の契約を結びながらも、実際には会社の指揮命令を受けて系列の家電製品の出張修理業務に従事してきた「代行店」という名の労働者の「労組法上の労働者性」が争点となっていたビクターサービスエンジニアリング事件について、東京地裁民事一九部(裁判長裁判官 青野洋士、裁判官 松本真、同 武智舞子)は、会社に団交を命じた中労委命令を取り消した(東京地判平成二一年八月六日。判決文入手方法は末尾に記載)。

 事案の概要は以下のとおりである。ビクターサービスエンジニアリング(千葉県浦安市)は、日本ビクター(横浜市)の子会社で、テレビ・ビデオ等の家電製品の出張修理を行っている会社である。そこには、出張修理業務の大半を担っている「代行店」と呼ばれる労働者がいる。「代行店」という名前だが、訪問先や訪問時刻は会社から指定され、工具も貸与され、部品も支給され、修理手順から接客マナーまで指示され、会社指定の制服と名札をつけていくのだから、どこから見ても会社から指揮命令を受けている労働者である。彼らは朝八時半頃から晩の八〜一〇時頃まで働いてきた。こんなに遅くなるのは夜間修理を終えてから会社に戻って報告業務をしなければならないからである。これだけ長時間働いて、ろくに休日もない生活を続けて、会社からもらう「報酬」は手取りで一五万円〜四〇数万円程度。同年代の正社員の三分の二程度である。ところが会社はコスト削減のために「代行店」の取り分をさらに減らした。しかも、当初は二年だけという約束だったのに、会社は約束を反古にして削減期間を延長したものだから、これでは家族を抱えて生活できないと、彼らはJMIU(全日本金属情報機器労働組合)に相談し、その指導の下に分会を結成して、地本とともに会社に団交を申し入れた。しかし、会社から、「すぐに帰らなければ警察を呼びます」などと言われて拒否されたので、二〇〇五(平成一七)年三月、大阪府労委に救済を申し立てた。

 これに対し、大阪府労委平成一八年一一月一七日付命令は、「代行店」は労組法上の労働者であると認めて会社に団交と謝罪文手交を命じ、中労委平成二〇年二月二〇日付命令(審査長は山川隆一慶大教授)も、詳細な事実認定のもとにこれを維持して、会社の再審査申し立てを棄却した。これらは、労組法上の労働者性に関する唯一の最高裁判決であるCBC管弦楽団労組事件・最判昭和五一年五月六日や、従前の労委・学説の述べる判断基準にもかなった正当な判断だった。

 ところが、標記の東京地裁判決は、中労委とほとんど変わらぬ認定事実のもとで、この中労委命令を取り消してしまったのである。

 東京地裁判決は、まず、労組法三条の労働者の判断基準について、「労務を提供する者が、労働契約上の被用者でなくても、労務提供を受ける者から、被用者と同視できる程度に、その労働条件等について現実的かつ具体的に支配、決定されている地位にあると認められ、かつ、当該労務提供の対価としての収入を得ていると認められる場合」にはこれに当たるとした。これは、派遣労働者に対する派遣先の労組法上の使用者性が問われた朝日放送事件・最判平成七年二月二八日を連想させられる言い回しであるが、労組法上の労働者性の判断基準としては、これまでの判例・学説が述べていなかったものであり、特異なものといえる。

 そして、具体的な判断要素については、ことさらに「業務委託契約」という契約形式を重視し、会社の企業組織への組み込みや使用従属を基礎づける事実をことごとく契約上の義務履行であるなどとし、これを超えた指揮監督はなかったとして、労組法上の労働者性を否定した。これでは「業務委託契約」という形式さえ整えてしまえば、労組法はたやすく排除できることになってしまう。

 なお、この判決には、事実の取捨選択についても、労働委員会が重視した原則的事実を軽視する反面、例外的事実をことさらに過大評価するなど、恣意的な部分も多々ある。

 「労働者」の概念は、労働法がどの範囲にまでその保護を及ぼすかという根幹に関わる概念である。そして、東京地裁判決は、労組法の保護範囲を大きく絞り込もうとしているのである。社会法の領域を最小限に押さえ込んで、契約自由・自己責任の世界を徹底しようとしているのである。そして、そのためにはCBC管弦楽団労組事件最判を葬り去ることも辞さないのである。これはもはやクーデターではないのか。お恥ずかしい話だが、弁護団は、よもや本件で労組法上の労働者性が否定されるとは考えていなかった。確かに、同じく労組法上の労働者性が争われた新国立劇場事件・東京地判平成二〇年七月三一日労判九六七号、同・東京高判平成二一年三月二五日労判九八一号はひどい判決だったが、それでも本件は当然勝つと思っていた。それで大きなショックを受けた。しかし、この判決は、使用者の「非労働者化」政策のもとで増えつつある同様の「偽装自営業者」ともいうべき多数の労働者の権利を損ねるとともに、これを組織化しようと奮闘している労働運動にとっても非常に大きな障害となる。この判決をこのまま放置するわけにはいかない。

 私たちは、何としても東京高裁で逆転勝利したいと考え、日本労働弁護団会長である宮里邦雄団員ほか何人かの先生方に弁護団加入をお願いした。

 それとともに、全国の多数の労働弁護士のお力を借りたいと考えている。弁護団にご参加いただける団員は、城塚(FAX 〇六―四三〇二―五一五九)までご連絡いただければ幸いである。

(原審弁護団 城塚健之、鎌田幸夫、篠原俊一、河村学各団員)

【東京地裁判決の入手方法】

 JMIUビクターサービス支部・分会のURLにアクセス。

    http://www.kawachi.zaq.ne.jp/jmiu-victor-sibu/

 左側の「分会News」をクリックして分会のページを開く。

 上から三番目の「〇九・〇八・〇六東京地裁判決文書」をクリックするとPDFファイルが開く。



「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書の危険な中身

東京支部  萩 尾 健 太

第一 「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書と懇談会の構成員

 二〇〇九年八月四日、麻生首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告書が提出された(以下「報告書」という)。懇談会の座長は、日本の核武装に直接の利権を持つ勝俣恒久東京電力会長であり、財界が深く関与していると言える。

 委員の半数が安倍内閣の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)のメンバーであり、その内容が承継されていることがこのことからも窺われる。

 専門委員は、前駐米大使、元防衛事務次官(元安保法制懇メンバー)、元防衛庁統合幕僚会議議長など、アメリカとのパイプを持つ者や自衛隊の元軍人が参加している。

 報告書の内容は、こうした財界の、現在の不況のもとで軍事を儲けの大市場にしようとする意向や、自衛隊の増大・強化の意向があけすけに当たられており、ある意味で分かりやすい。

第二 報告書の内容

一 構成と情勢認識

 報告書の構成は、以下のようになっている。

第一章 新しい日本の安全保障/第二章 日本の防衛力のあり方/第三章 安全保障に関する基本方針の見直し

 まさに、日本の防衛力と安全保障を抜本的に見直そうというものである。

 その前提となる、報告書の情勢認識は、米国の単極の時代のかげりにより、米国の世界への関与の減少のおそれがある、そのもとで、日本が国際安全保障でも、日本の防衛でも消極的に行動してきた時代は終わる。「平和を守るためには軍事力を用いなければならない場合もある」ことを確認し、「重要なのは、例え犠牲を強いてでも守るべき安全保障上の目標について国民の間で十分な議論と了解があること、そして、その目標達成のために軍事力が適切に使われる仕組みを平素から築いていくことである。」(序章)というものである。

 また、第一章において、朝鮮の核兵器・ミサイル能力の向上による脅威、中国の軍事力増強が強調されている。アルカイダなどの「国際テロ組織」の脅威も叫ばれ、アメリカの「反テロ戦争」に沿う内容となっており、日本がアメリカを支えて軍事力を展開する必要性が説かれている。

二 新たな防衛体制の構築

 報告は、そうした情勢認識を踏まえて、日本の安全保障政策を「存在による抑止」(静的抑止)だけでなく「運用による抑止」(動的)に発展させるとしている。

(1)敵基地攻撃能力の保有に関する検討

 たとえば、従来の専守防衛に真っ向から反する「敵基地攻撃能力など、ミサイル防衛システムを補完し、あるいは打撃力による抑止をさらに向上させるための機能について、本懇談会は、日本として適切な装備体系、運用方法、費用対効果を検討する必要があると考える。」(三一頁)として、具体的に検討する方向を打ち出している。また、

(2)資源の配分=軍事費増大の要求

 さらに、報告書は、以下のように三自衛隊の統合強化と軍事費増大を要求している。 

「かってのGNP比のように固定的な水準を前提に防衛予算を定めることはできない。防衛力がその役割を適切に果たすために必要な装備・人員を確保し、それを運用できるよう、政府全体の中で適切に資源を配分していくことが必要である。」(三六頁)

 そして、「宇宙空間の効率的・効果的利用」を説くほか、陸海空三自衛隊の統合運用の強化と更なる統合の拡大を打ち出している。「弾道ミサイル攻撃のように瞬時に状況が変化する事態には、三自衛隊のアセット(資源)を有機的に連携させることによって的確に対処することが求められる。その場合、統合幕僚監部や陸・海・空自衛隊の統合任務部隊司令部(メジャーコマンド)を中心とした統合運用によって作戦を遂行することが必須の条件である。統合幕僚監部が新設され、運用機能が一元化されて三年が経過するが、これまでに得られた教訓をも踏まえ、統合幕僚監部の機能強化に加え、メジャーコマンドレベルにおいても統合運用能力をいっそう高める必要がある。」これは、必然的に軍の発言力の強化をもたらす。

報告書は、「統合運用される自衛隊が効果的にその能力を発揮するためには、運用を担当する統合幕僚監部が作戦面からの優先順位を判断し、防衛力整備について意見具申する権限を持つことが必要である。」(三七頁)としている。

 そして、日米同盟の強化に資する防衛力整備を強調している。

(3)防衛力を支える基盤の拡大=軍事国家体制作り

 さらに、報告書は、防衛力を支える基盤の拡大について、以下のように述べている。

a 人的基盤(少子化への対応など)(三九頁)

 「(少子化の急激な進行により)従来の採用方針では、一定の質的水準を維持しつつ募集定員を満たすことができなくなるおそれがある。」とし、自衛隊の階級・年齢構成がいびつであり、自衛隊の精強性維持の観点からの問題を指摘している。

 そして、雇用の安定という若者への訴求力の向上が必要であるとし、女性自衛官の積極的な採用・登用をすすめるなど、アメリカのような「貧困による実質的徴兵制」を指向しているようである。

 他方、滞留制限=中高年自衛官の肩たたきを行うために、退職自衛官が不安を覚えないように社会の側で退職自衛官を受け入れる受け皿作りが必要不可欠、としており、退職自衛官が天下り等の特権を持って業界に君臨する軍事社会システムの構築を目指しているようである。

b 物的基盤(防衛生産・技術基盤)

 まず、防衛装備品は、一般競争入札に馴染まない性格であるとし、国内の防衛関連企業に対して、長期的な観点で投資、研究開発、人材育成を行うための予見可能性を与えるとして、軍需産業の軍事利権擁護の方向を露骨に打ち出し、武器輸出三原則の見直しを打ち出すなど、軍需産業の意向に沿ったものとなっている。

c 社会的基盤(国民の支持と地域との協力)

 報告書は、「有事の際には国民の負担や協力が必要な場面が想定されることをよく理解している国民は少ないのではないか。また、イラク復興支援の際の国内の議論で明らかになったように、日本が国際平和の実現により積極的に関与していくことについて、国民の間で多様な見解が存在する。」(四一頁)と憂いており、国民への広報に政府が一体となって努力すること、自衛隊による災害派遣・民生協力、自衛隊と地域社会との連携を打ち出し、地域ぐるみの戦争協力体制を推し進めようとしている。我々も、自衛隊の民生協力について、こうした狙いを持ったものとして見なければならない。

三 「防衛政策の見直し」の内容

 第三章の防衛政策の全面的見直しの内容とは、以下の通り、日本の軍事大国化に対する国政上の縛りをあらかた撤廃しようとするものである。

(1)国防の基本方針(一九五七年策定)の見直し

 従来の国防の基本方針(一九五七年策定)は、国防目的を直接・間接侵略の防止・排除)、国連の活動支持、民生の安定、愛国心の高揚、国力国情に応じた自衛のために必要な限度の防衛力の漸進的整備、侵略には、国連が阻止しうる機能を果たしうるまで米国との安保体制を基調として対処する、というものであった。

 報告書は、これを「日本の現実の安全保障政策を決定する上での十分具体的な指針となり得ていない」(四三頁)と批判している。

(2)「今後の防衛力整備について」(一九八七年閣議決定)の見直し

 軍事費GNP一%枠撤廃後の一九八七年の「今後の防衛力整備について」の閣議決定では、(1)専守防衛(一九七〇年佐藤内閣で提起)、(2)他国に脅威を与えるような軍事大国にならない、(3)文民統制を確保する、(4)非核三原則(一九八一年衆議院決議)といった、それぞれ異なる文脈の下に策定された方針事項を並べて日本の防衛力整備の新たな歯止めの基準とした。それ以来、これら四つは、防衛白書などでも防衛政策の基本を構成するものとしてきた。

 この点について、報告書は「日本の防衛政策の歯止めについては、本懇談会は、日本国民が自身の民主主義を信頼し、これを機能させることに優る歯止めは存在しないと考える。その意味で、文民統制は、今日でも日本の基本的防衛政策の一つとして重要であり、また、今後ともその価値は変わらないと考える。また、軍事大国にならないとの方針は日本の平和志向に根ざした国内外へのメッセージとして引き続き重要であり、これを維持することは、日本の防衛力整備の方向性に関する信頼性を高めるという意義がある。」(四四頁)とする。

 報告書は、まとめ部分でも明示していないが、維持するのは、文民統制と軍事大国にならないというメッセージのみであり、非核三原則も、今日の視点から検証すべきであるとする政策に含めていることは明らかである。

(3)専守防衛の再検討

 報告書は「専守防衛という言葉は、自衛隊の発足直後その合憲性が国会等にいてさかんに問われていた状況において、他国を侵略するのではなく専ら日本を守る、そのために必要最小限度の防衛力を整備していくという政府の立場を説明する際にしばしば用いられたもの」(四四頁)とし、「この言葉の持つ語感は、日本の防衛のためにどのような装備体系や部隊運用が必要かを具体的に議論するに当たり、率直かつ自由な思考・発想を止めてしまう要因となっている」と批判する。そして、「脅威がグローバル化・トランスナショナル化し、弾道ミサイルなどが拡散する世界は、従来、『専守防衛』で想定していたものではない。」「専守防衛など、日本の基本姿勢を表す概念についても、今日の視点から検証すべきであると考える」(以上、四四頁)として、専守防衛の再検討を打ち出している。

(4)文民統制原則の「強化」

 維持するとした文民統制についても、報告書は、「文民統制には二つの目的がある。一つは「国民の安全と世界の平和のために軍を使うこと」、もう一つは「軍が独走しないようにすること」である。日本においては、軍が独走することを防止するという側面が強調される傾向があるが、文民統制には、政治目標の実現を確実に担保するという、もう一つの重要な側面がある。」(二一頁)「防衛力をいかに制約するかという観点からだけではなく、いかに使うかという視点に立った国会による文民統制の強化につながる。国会が安全保障政策に関する実質的関与を深める過程では、機微にわたる情報を基にした議論が必要となることも予想される。こうした状況に備え、国会における秘密会のあり方や秘密保護のルール化についても検討されることが望ましい。」(五二頁)などとして、文民統制の前提である情報の受領を侵害する国家秘密法の制定を打ち出しているのである。

 それだけではない。報告書はさらに、いくつもの安全保障の原則の見直しを打ち出している。

(5)武器輸出三原則(一九六七年政府方針、一九七六年政府統一見解)の見直し

 報告書は、「二〇〇四年以降、弾道ミサイル防衛以外の米国との共同開発・生産案件、テロ・海賊対策等への支援に資する案件については」、「個別の案件ごとに検討の上、結論を得る」としてきたが、その後四年間で、テロ、海賊対策に資する輸出案件が一件あったのみで、「個別検討方式は、事実上、入り口段階での超えがたいハードルになって」いるとする。そして「このような課題に対応できなければ、最先端技術にアクセスできず、日米防衛協力の深化への足かせとなり得るなど、日本の防衛力低下につながっていく」、また、「国内防衛産業の健全な維持・発展を日本の安全保障にとっての基盤の一つと位置づける観点からも、武器輸出三原則等による国内防衛産業に対する過度の制約は適切ではない」とし、「本懇談会は、武器輸出を律するための新たな政策方針を定めることが適切であると考える」(五〇頁)とするなど、死の商人としての財界の本音を露骨に反映するものとなっている。

(6)PKO五原則(一九九二年PKO法)の再検討

 「自衛隊による文民や他国の要員の防護を含め、活動に必要な武器使用のあり方についても見直す必要がある。本懇談会は、これらの課題を解決し、日本のPKO参加拡大を図るため、参加五原則を見直し、これと表裏一体の関係にある現国際平和協力法を改正すべきであると考える」(四六頁)としている。その改正の方向としては、「民軍協力、ODAとの連携、外国部隊との協働などを想定して業務の範囲を拡大することや、武器使用の範囲の見直しについても検討すべきものと考える。」(四七頁)としているのである。

(7)恒久派兵法制定の提唱

 加えて、報告書は「その都度法律を作ることは、時間的な損失、政治状況による影響、派遣基準が不明確などの点で問題があり、また特別措置法では情勢変化に伴う修正や期限の延長などが必要な場合、改めて法的手続きが必要となる。こうした点を踏まえ、日本が国際平和協力により積極的に取り組むため、自衛隊が参加できる活動の範囲を拡大する観点から、活動を行う国際的枠組、参加する活動の範囲、武器使用基準、国会の関与のあり方などを規定した恒久法の早期制定が必要である。」(四七頁)としている。

(8)集団的自衛権についての憲法解釈(一九八一年の政府答弁)の見直し

 報告書は、安倍内閣当時の「安保法制懇談会では、『米国に向かうミサイルを迎撃すること』、『日米が共同で活動している際に米軍艦船に危険が及んだ場合にこれを防護すること』は、いずれも同盟国として果たすべき日本の任務であり、これらが常に可能となるよう、警察権や武器等防護の論理によらずに、集団的自衛権に関する従来の政府解釈を変更すべきである旨提言された。本懇談会は、この提言を強く支持」する(四八頁)としている。

第三 まとめ

 これは、まさに全面的な解釈・立法「改憲」を目指すものであり、日本の軍事社会・国家への改造計画であるといっても過言でもない。それが財界の利益・市場拡大を一つの狙いとしてなされている点は醜悪である。これは来年五月の改憲手続法本格発動=明文改憲と一体の動きである。他方で、今もアフガニスタンやイラクでは多くの民衆が米軍等の攻撃により殺戮されている。この現実を踏まえて、改憲と軍事国家化に反対していこう。

(なお、本稿は、中谷雄二団員の学習会レジュメを大いに参考にさせて頂いたものです。感謝申し上げます。)



日本母親大会「裁判員制度分科会」を終えて

京都支部  中 村 直 美

一 裁判員分科会始動

 二〇〇九年七月二六日、日本母親大会において、裁判員制度分科会を開催しました。母親大会が立命館大学衣笠校舎で開催されるとあって、立命館大学に移設・保存されている京都地裁陪審員法廷を使って、本年五月からスタートした裁判員制度を参加者に実体験してもらおうと企画されたものです。

 司法刑事プロジェクトのメンバーを中心に、団員が裁判官などに配役され、裁判員役は当日参加者の中から募ることになりました。

 もっとも、日本母親大会には他にも魅力的な分科会が目白押しであり、団員の中からは「はたして、裁判員分科会に参加者はあるのか」という不安の声が絶えませんでした。私自身も、裁判員役を参加者から募る以上は最低でも六人の参加者がないと厳しいなあ、とまで思ったものです。

 しかし、いざ当日になってみると、会場である立命館大学に辿り着くまでが大変なほどの渋滞が発生しており、人込みをかき分けて陪審員法廷に行けば、開始一時間前であるのに、すでに数人が来場していました。そして、開始時刻には団員の不安も吹き飛ぶほどの満員となり、設置された六〇数席のほか補助椅子を出しても足りず、立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。

 また、裁判員役に立候補する人がいなかった場合に備えて、日本国民救援会京都府本部の方々に「万が一の場合には・・・」とお願いしていたのですが、心配するまでもなく参加者の手が挙がり、母親大会分科会「裁判員裁判模擬法廷」が始まりました。

二 白熱する法廷劇

 前日には陪審法廷で本番さながらの通し練習をして、評議の時間を十分に確保できることを確認していたのですが、当日は裁判員役の方々から熱心な補充質問があり、予定時間を大幅にオーバーしてしまいました。結局、評議の時間を十分にとることができなくなったものの、裁判員役からの臆することない質問と、出演者である団員のバトルは、見ごたえ十分なものでした。

 また、今回のシナリオでは自白調書の任意性を争点の一つとし、取調べ捜査官の証言を弾劾する証拠として、取調べ状況を録画したビデオを上映しました。捜査官役の岡根団員の高圧的取調べと、これに屈して自白調書に署名する被告人役秋山団員の熱演は、参加者に取調べ全面可視化の必要性を強く訴えました。

三 午後の講演会

 午後からは、高山団員により裁判員制度についての講演があり、配布資料を追加印刷しても足りないほどの参加者がありました。高山団員からは、裁判員制度の民主主義的意義、旧来の刑事裁判の問題点、戦前の陪審制との相違点、裁判員制度が抱える問題点など、参加者にわかりやすく話されました。

 講演後には、質問・意見交換の時間が設けられました。参加者からは、死刑に関与することや被告人からの報復に対する不安感や、立法過程において国民の理解が得られていないのではないかなどの意見が寄せられました。また、裁判員役を体験した参加者からは、教師という職業から見た事実認定についての感想などの声がありました。

四 裁判員分科会で見えたもの

 今回の企画では、まず参加者確保に不安がありましたが、結果的には午前の裁判員裁判模擬法廷・午後の講演会ともに満席であり、参加者は延べ一〇〇名以上になると思われます。多くの参加者があったことは、裁判員制度に対する評価・意見の違いがあるとはいえ、裁判員裁判に対する市民の関心が高まっていることを示しているものと思われます。

 アンケートでは、午前の模擬裁判、午後の裁判員制度の説明については、「良かった」「分かりやすかった」という感想が多く、企画としては成功したように思います。

 また、「密室での取調べ、自白の強要など、旧来の刑事裁判の問題点に気づかされた」、「国民が刑事裁判に参加することの意義は、職業裁判官の体質を一般国民の参加によりチェックするということだと分かった」「裁判員の役割は、有罪か『有罪でないか』の判断であること、検察官立証のチェックであることが分かった」という感想も多く見られました。これらの感想からは、今回の裁判員分科会は、刑事裁判法廷を疑似体験することで法廷の雰囲気を味わうとともに、旧来の刑事裁判の問題点を浮き彫りにし、裁判員制度の意義と裁判員の役割について参加者の理解を深めることに役立ったことが窺われます。

 しかし、「裁判員制度を知れば知るほど、自分にできるのだろうかという不安感が増加する」、「被告人の一生を左右する判断をすることは荷が重い」、「それでも私はやりたくない」という意見も散見されました。また、「裁判員制度導入は、国民の理解を得られていない、唐突に始まった感がある」との意見もありました。これらは、これまでは裁判員になる市民の立場からの議論が深まっておらず、法曹三者からも市民の声を議論の中に取り込むことが不十分であったことの現れのように感じます。

 確かに、東京地裁において第一号の裁判員裁判が実施され、各地でこれに続く裁判員裁判が予定されている現在も、裁判員制度に対する反対意見や廃止論は根強いものがあります。しかし、刑事司法への国民参加という裁判員制度の意義を積極的にとらえ、三年後の見直しに向けて問題点を顕出することが、現時点での課題であると私自身は考えています。そのために、今後も模擬裁判や学習会を通じて市民の声に耳を傾け、裁判員の意義と必要性が実効性を持つよう努めたいと思います。

・・・それにしても、京都支部の団員の皆さんは芸達者です。



コラム“残波岬”

東京支部  神 田   高

 ここ数年、夏休みに息子の友だち家族とオキナワにいく。久しぶりに妻の実家のある恩納村の南側に位置する読谷村の瀬名波にいく。九五年の少女暴行事件に対する怒りに端を発した“米軍基地縮小・撤去”の県民総ぐるみの闘いの中で、“米軍には土地を使わせない”反戦地主の代理人として収用委員会、法廷闘争に参加し、瀬名波の通信傍受基地内の地権者である反戦地主を担当した。

 今年いってみると、サトウキビ畑の間に林立していた広大なアンテナ群はすべて撤去されて、雑草が生い茂っていた。その代わり、わずかに残された中心施設内には、パラボラアンテナをつけた通信施設が建築中であった。“いやがらせ”のためこの施設の脇のわずか一〇〇坪程度の農地の返還を米軍が拒み続けていたが、収用委員会で不当性を訴え、結局米軍は返還をせざるをえなかった。

 “象のオリ”(読谷村楚辺)はどうなっているかなとふと思い、小五になった息子の玄を連れて(妻に運転してもらい)、世界遺産にもなった座喜味城趾の優美な石組みの上に立った。ここからは、南に名勝“残波岬”、その先に沖縄戦で米軍が上陸した南西部の平原が見渡せる。しかし、“象のオリ”(中国大陸からの通信傍受用の巨大アンテナ施設)のあった草地には何もなくなっていた。涼風が石組みの上を浚うように流れ、息子に「ほら、“象のオリ”なくなっているでしょ。」「お父さんたちが裁判やって、アメリカから返させたんだよ。分かる。」(チョッと誇張はあったが・・)と話すと「うん。前見た。」と答えた。

 そのあと、オリのあった楚辺にむかう。一本の道路の脇から残波岬へつながる道路の西側の草地にオリはあったはずだが、あったのは、ゴルフ練習用のホールを示す棒だけだった。あとは雑草地となって、東シナ海までつながっていた。引き抜かれ放置された「農地法云々」の木の看板は、芭蕉の夏草を詠んだ名句を思い出させた。

 米軍基地、“象のオリ”はなくなったんだ。“基地はなくなるものだ”と実感した。

 楚辺にくる途中に寄った読谷村役場内の“憲法九条”の石碑を見たときの「頑張ってるな。」との思いが、またよみがえった。

 著書『アメリカ帝国への報復』で“九・一一同時多発テロ”を予測したとされるチャルマーズ・ジョンソンは、論文「軍事ケインズ主義の終焉」(雑誌『世界』〇八年四月号)の最後に、“「唯一の超大国」の終わり”の中で、「世界への影響力を保つためには強大な軍事力を盾とするしかない」との経済学者のフリードマンを批判して、帝国が破綻しないための緊急策として、「まず・・この帝国が世界各地に築いた八〇〇を超える軍事基地を撤去する事業に着手す」べきだと主張している。

 『アメリカ帝国への報復』の翻訳者は、「ジョンソンは、一九九七年の経済危機によってアメリカ、ヨーロッパ、東アジアが勢力を競い合う三極世界への移行が始まったと見ているが、その一極をになう東アジアの大国として、日本がはたすべき役割を私たちは考えなければならないだろう。独立国である日本にアメリカ軍の基地がなぜ存在するのか、アメリカ軍を今後も駐留させるべきなのかという問題も、突き詰めれば憲法論議にまで発展するだろうが、徹底的に考えなおしてみるきっかけを本書は与えて」いると結んでいる。

 米軍基地は永久不変なものでは全くない。オキナワから基地がなくなるとき、沖縄はあらたな夜明けを迎える。それは、日本の夜明けでもある。そのときは、そう遠くない。残波岬から中国大陸まで続く、東シナ海の大海原は、そう語っているように思われた。

※九月一二日琉球新報は、米政府が米軍三沢基地に配備しているF一六戦闘機約四〇機をすべて撤収させるとともに、嘉手納基地のF一五戦闘機五〇機余の一部を削減させる構想を日本側に打診した、と一面トップで伝えている。これは、「オバマ政権の発足に伴う国防戦略の見直しを反映した動き」だという。



ドキュメンタリー映画

「弁護士 布施辰治」製作始まる

製作と上映にご協力を!

大阪支部  石 川 元 也

 「生くべくんば民衆とともに 死すべくんば民衆のために」、自由法曹団創設者の一人、布施辰治弁護士の生誕一三〇年、韓国併合一〇〇年企画として、ドキュメンタリー映画「弁護士 布施辰治」の製作がスタートした。

 本年七月三一日、その製作委員会が正式に発足した。同郷の出身で、自ら布施辰治の孫弟子と自負される元日弁連会長の阿部三郎さんが製作委員会代表を引き受けられ、各界から二六名の代表委員が名を連ねた。監督は、映画「赤貧洗うがごとき〜田中正造と野に叫ぶ人々」や「つくられる自白 志布志の悲劇」などの監督、池田博穂さん、伊藤真・伊藤塾塾長、山泉進・明治大学副学長、大石進・元日本評論社社長(布施の孫)、森正・名古屋市立大学名誉教授などなじみの顔が並ぶ。わが自由法曹団員では、松井繁明団長、鈴木亜英日本国民救援会会長のほか、庄司捷彦、郷成文そして石川が委員になっている。

 ご承知のとおり、近年の布施辰治の顕彰運動は、二〇〇〇年二月二九日、(三・一独立運動記念日の前夜、)韓国文化放送が、「日本人シンドラー 布施辰治」と題する一時間特集番組を放映したことに始まる。(このビデオの複製を求められた団員は、一〇〇人を超えた。)その後、布施は、二〇〇四年には、日本人として初めての建国勲章を韓国政府から受けた。

 映画の脚本では、戦前、戦後の布施辰治の闘いの人生が、記録フイルムの映像と多くの人々によるインタビューで語られる。庄司捷彦さんのインタビューでは、祖父が同じ村の出身で面倒を見てもらい、のち弁護士になったことが語られる。大塚一男さん、竹沢哲夫さんからは戦後の闘いをともにした活動が語られる。布施の三男、杜生(トルストイにちなんで命名)は、私の旧制松高の先輩に当たるが、治安維持法違反で下獄中の一九四四年二月、栄養失調などで亡くなる。布施は「俺の息子ゆえに殺された」と憤り、戦後の若者の辯護に息子を重ね合わせたという。最後は、郷里の女川中の生徒たちが、文化祭で郷土の先輩布施辰治の人類愛を発表して好評を博したこと、さらに翌年の修学旅行では、韓国にその足跡を訪ね、創作劇を発表するなど、若い世代にひきつがれていく感動的な場面で終わる。

 製作は本年八月スタート、来年二〇一〇年三月完成を目指している。

 製作開始とともに、地元石巻市の方でも支援運動が拡がっていると聞くが、それは、庄司さんから報告していただけると思う。

 いま、司馬遼太郎の「坂の上の雲」の放映が、NHKから三年の大河ドラマとして予定されている。司馬史観では、朝鮮人民の存在や自立は眼中になく、朝鮮は空白で、ロシア、日本、清国などの取り合いのまとだ。日清戦争も日露戦争も自衛戦争だというのである。朝鮮人民の独立運動を支援した布施の活動は、こうした司馬史観を批判する有力な素材ともなるであろう。

 さて、お願いである。製作費は五〇〇〇万円はかかるという。

製作支援出資金 一口五万円、 賛同金 一口 一万円

 どうか、全団員にご協力をおねがいしたい。



松川事件発生六〇周年記念事業の成功のために団員の協力を!

事務局長  加 藤 健 次

 今年は、松川事件発生から六〇周年となります。すでにご案内のとおり、松川事件六〇周年記念事業が開催されます。松川事件は、団の活動の「原点」とも言うべき事件です。昨年の福島総会では、「松川事件と大衆的裁判闘争」と題したプレ企画を行いました。

 六〇周年の節目に、松川事件の教訓を改めて確認し、後生に伝えていくことは大変重要です。松川事件六〇周年事業の成功のために、団員のご協力を心から訴えます。

一 松川事件発生六〇周年記念全国集会に参加しましょう。

 ○日 時 一〇月一七日午後一時三〇分〜
                 一〇月一八日午前一二時三〇分

 ○場 所 福島大学

二 協賛募金に協力しましょう。

  郵便振込口座記号番号 二一九〇―四―一五一三五
                  日本国民救援会福島県本部

三 「真実は壁を透して」(復刻版・頒価一五〇〇円)を普及しましょう。

団通信本号に福島県松川運動記念会のニュースを同封しました。全国集会の詳しい内容等が記載されていますので、ぜひご覧下さい。

★松川事件六〇周年記念全国集会実行委員会のホームページができました。

  http:matukawa60.com→こちらまでアクセス下さい。