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加藤 健次 二〇〇九年長崎・雲仙総会 開かれる
上田  裕 保全異議審でも完全勝利!!
〜いすゞ自動車に差額賃金の仮払いを認めた決定を認可〜
畑田 真希子 核兵器廃絶に向けて
石田  享 松川裁判がわかる好個の良書を座右に
「辺野古への新基地建設と県内移設に反対する沖縄県民大会」への参加の呼びかけ



二〇〇九年長崎・雲仙総会 開かれる

前事務局長  加 藤 健 次

 一〇月二五、二六の両日、長崎市の雲仙温泉で自由法曹団の二〇〇九年総会が開催された。四〇〇名(うち弁護士三〇〇名)が参加した。

 総会は、横山巌(長崎支部)、東島浩幸(佐賀支部)、杉本朗(神奈川支部)の各団員が議長団となって進められた。松井団長の開会挨拶、地元長崎支部の熊谷悟郎団員からの歓迎挨拶に続き、長崎県弁護士会・原章夫会長、全労連・小田川義和事務局長、日本国民救援会・本藤修副会長から来賓のご挨拶をいただいた。また、日本共産党・仁比聡平参議院議員からのメッセージが紹介された。

 引き続き古稀団員の表彰が行われた。今年の古稀団員は九名で、うち五名が参加された。表彰の後、斎藤展夫団員(東京支部)、吉村拓団員(福岡支部)、猪俣貞夫団員(神奈川支部)、平山知子団員(東京支部)、井貫武亮団員(千葉支部)からご挨拶をいただいた。いずれも個性あふれる感動的なお話しであった。

 続いて鷲見賢一郎幹事長から、本総会にあたっての議案の提案と問題提起がなされた。民主党中心政権の成立という新たな情勢の下で、情勢をよく学びながら、憲法・平和を守るたたかい、大量解雇阻止と労働者派遣法抜本改正、裁判員裁判の実践と制度改善などに積極的に取り組むことが提起された。また、諸要求を実現するためにも、衆議院比例定数の削減に反対し、民意の反映される選挙制度を求めるたたかいに取り組むことが呼びかけられた。普天間基地の「移設」をめぐってアメリカ政府高官が辺野古への新基地建設を強要し、これに対して岡田外相が「県外移設は考えられない」などと公約違反の発言をする中で、普天間基地の無条件撤去の世論を急速に広げていくこと、総会でも特別決議をあげることが提案された。 さらに、支部・県の活動の強化や団事務所の建設の問題にも積極的に取り組んでいくことが提起された。報告を通じて、私たちが変革の立場で諸課題に立ち向かっていくことが強調された。

 一日目の全体会終了後、四つの分散会に分かれて議案に対する討論が行われた。今年は、各分散会毎に、(1)憲法と平和・民主主義、(2)労働と貧困、(3)裁判員裁判、(4)団の将来問題と法曹人口問題についての問題提起者から報告を受け、議論を行った。この間の実践の報告を含めて、各分散会で活発な議論がなされた。

 二日目の全体会では、以下の発言がなされた。

○小野寺信勝団員(熊本支部)・・・外国人研修技能実習生問題について(当事者も発言)

○山口真美団員(東京支部)・・・改憲手続法の廃止・凍結を求める課題について

○仲山忠克団員(沖縄支部)・・・民主党政権下における沖縄・普天間基地問題

○大久保賢一団員(埼玉支部)・・・「核兵器のない世界」に向けて団も奮闘を

○大山勇一団員(東京支部)・・・労働者派遣法の抜本改正をめぐる情勢と課題

○西田穣団員(東京支部)・・・葛飾ビラ配布弾圧事件最高裁でのたたかいについて

○泉澤章団員(東京支部)・・・足利事件で明らかとなった取調べ状況と取調べ過程の「全面可視化」へ向けてのたたかい

○村山晃団員(京都支部)・・・市民のための司法をめざす課題と法曹人口問題

○谷脇和仁団員(四国総支部)・・・四国での支部活動と団事務所建設の課題

 なお、時間の関係で、以下の団員の発言については、発言要旨の紹介のみを行った。

○笹本潤団員(東京支部)・・・核兵器廃絶への運動への法律家の取り組みと東アジアの平和と安保

○三浦直子団員(東京支部)・・・松川事件六〇周年記念集会の報告と感想

 討論の最後に鷲見幹事長がまとめの発言を行い、その後、議案、予算・決算が採決、承認された。続いて、以下の決議が採択された。

○改憲手続法の廃止・凍結を求める決議

○民意を大きくゆがめ、少数政党を排除する衆議院比例定数削減に反対する決議

○労働者派遣法の派遣労働者保護法への抜本改正を直ちに実現することを求める決議

○松下PDP事件について派遣先企業の雇用責任を認める公正判決を求める決議

○憲法二八条に基づき勤労者の団結権や団体交渉権を認める公正判決を求める決議

○葛飾ビラ配布弾圧事件につき荒川庸生氏の無罪判決を求める決議

○取り調べの全面可視化法の早期成立を求める決議

○司法修習生の修習資金貸与制度の実施に反対し、給費制度の復活を求める決議

○アメリカ政府の辺野古新基地建設の強要に抗議し、米軍普天間基地の早期無条件撤去を求める決議

 引き続き、選挙管理委員会から、幹事は信任投票で選出された旨の報告がなされた。団長は、前日に、無投票で選出された旨の報告がなされた。総会を一時中断して拡大幹事会を開催し、規約に基づき、新入団員五名の入団の承認、常任幹事、幹事長、事務局長、事務局次長の選任を行った。

 退任した役員は次のとおりであり、退任の挨拶があった。

団長 松井繁明 (東京支部)
事務局長 加藤健次 (東京支部)
事務局次長 大山勇一 (東京支部)
神原元 (神奈川支部)
半田みどり (大阪支部)
三澤麻衣子 (東京支部)
菅野園子  (東京支部)

 新役員は次のとおりであり、新任の菊池団長、杉本事務局長から挨拶がなされた。

団長 菊池紘 (東京支部 新任)
幹事長 鷲見賢一郎 (東京支部 再任)
事務局長 杉本朗 (神奈川支部 新任)
伊須慎一郎 (埼玉支部 再任)
西田穣 (東京支部 再任)
福山和人 (京都支部 再任)
愛須勝也 (大阪支部 新任)
小林善亮 (東京支部 新任)
坂本雅弥 (東京支部 新任)
近藤ちとせ (神奈川支部 新任)
佐藤生 (東京支部 新任)

 閉会にあたって、二〇一〇年五月集会(五月二三〜二四日、二二日にプレ企画を予定)開催地の青森県・横山慶一団員から歓迎のメッセージが紹介され、最後に、長崎支部の相良勝美団員の閉会挨拶をもって総会を閉じた。

 総会前日の一〇月二四日にプレ企画「被爆者問題と原爆症認定集団訴訟の現状と課題」が行われた。団内外から八三名が参加した。

 最初に、地元長崎で核兵器廃絶を目指す一万人署名活動に取り組んでいる高校生が被爆者から聞き取りを行ったDVDを上映し、六名の高校生から、署名運動や「高校生平和大使」としての国連での訴えについての報告がなされた。どの報告も新鮮で参加者に感動を与えるものであった。

 その後、長崎被災協の山田拓民氏から、自らの被爆体験もふまえ、「被爆者の要求と国の被爆者対策」と題する報告がなされ、長崎支部の中村尚達団員から、「原爆症集団訴訟の現状と課題」と題する報告が行われた。その後、各地の原爆症認定訴訟の報告も含めた討議を行った。全国の原爆症認定訴訟の到達点を確認するとともに、核兵器による被害の深刻さと国の責任による救済の必要性を実感させられた。参加者一同、あらためて核兵器廃絶への決意を共有することのできた企画であった。

 多くの団員・事務局の皆さんの参加と協力によって無事総会を終えることができました。総会での議論を力に、新たな情勢の下で大いに実践に取り組みましょう。

 最後になりましたが、総会成功のためにご尽力いただいた長崎支部の団員、事務局の皆さん、関係者の方々に、この場を借りて改めてお礼申しあげます。



保全異議審でも完全勝利!!

〜いすゞ自動車に差額賃金の仮払いを認めた決定を認可〜

埼玉支部  上 田   裕

一 事案の概要

 本件は、二〇〇八年一一月一七日に、いすゞ自動車が、不況による減産を理由として、同年一二月二六日付けで、栃木工場及び藤沢工場の期間労働者を全員解雇(期間途中での解雇)する予告を行ったことに端を発します。

 その後、いすゞ自動車は、同年一二月二四日に解雇を撤回しましたが、同時に、労働契約の合意解約に応じる者には、期間満了日までの平均賃金の八五%相当額及び期間満了まで勤続したことを前提とした満期慰労金を二〇〇九年一月一五日までに支払うが、応じない者には、契約期間満了日まで、一律に休業を命じ、平均賃金の六〇%相当額と、契約期間満了日に満期慰労金を支払うとするという一方的な対応に出ました。

 このようないすゞ自動車の対応は、多くの期間労働者を退職に追い込む不当なものです。実際、期間労働者に与えられた、考慮期間は、僅かに二日間でした。

二 仮処分の申立て(宇都宮地方裁判所栃木支部)

 二〇〇八年一二月四日、栃木工場の期間労働者三名は、いすゞ自動車の中途解雇予告を不服として、宇都宮地方裁判所栃木支部に対し、解雇予告効力停止の仮処分の申立をしました。既に述べたとおり、いすゞ自動車が解雇予告を撤回し、賃金カットという暴挙に出たことから、以後は、カットされた四〇%の賃金の仮払いを求める仮処分に切り替えて審尋が進行していきました。

三 宇都宮地方裁判所栃木支部による完全勝利決定

 仮処分の申立てから、七回にわたる審尋期日を経て、二〇〇九年五月一一日に、当方の請求を全面的に認める決定が出されました。

 判断の内容は、(1)カットされた部分についての賃金請求権は民法五三六条二項により認められること、(2)同条項中の「債権者の責めに帰すべき事由」(のないこと)の主張立証責任は、いすゞ自動車側にあること、(3)使用者側(いすゞ自動車側)に労働の受領拒絶の合理性がない限り、労働者の賃金請求権が消滅することはないこと、(4)いすゞの一方的な休業命令に合理性は認められないこと、(5)期間労働者の特殊性及び仮処分制度の法的保護の見地から、過去分の仮払いの必要性が認められることを柱にして、請求の全てが認められました。

 詳しくは、伊須団員が同仮処分決定の詳細を報告した、団通信一三〇九号を参照されたい。

四 いすゞ自動車からの保全異議申立て

 いすゞ自動車は、二〇〇九年六月二九日に、同決定に対する保全異議申立てました。

 申立ての内容は、期間労働者については、就業規則上、休業手当を平均賃金の六割とする合意があること、休業の必要性、期間労働者と正社員・再雇用労働者との差異を主張して、正社員等に対して休業手当を一〇〇%支払い、期間労働者には六〇%しか支払わないことについて合理性があること、現に生活している以上、保全の必要性はないこと等を主張するものでした。

五 いすゞ自動車弁護団の取り組み

 これに対して、弁護団は、当事者・労働組合(JMIU)と協力して、ラインで稼働する期間労働者と正社員との間には、仕事内容に差異がないこと、均衡処遇(同一の仕事をする正社員と期間労働者との間の均衡)の重要性、生産調整の不当性、いすゞ自動車から解雇予告が通告されて以降、現在に至るまでの各債権者の生活実態(収支の状況を詳細に追跡したもの)を陳述書化する等、原決定の正当性を基礎づけ、賃金カットの不当性・保全の必要性を訴え続けました。

六 原決定を認可する決定(宇都宮地方裁判所栃木支部)

 弁護団の活動の甲斐あって、宇都宮地方裁判所栃木支部は、平成二一年一〇月二〇日、いすゞ自動車に対して、カットした賃金(いずれも過去分)の仮払いを認めた原決定を認可する決定を下しました。

 判断の枠組みは、原決定と同様ですが(団通信一三〇九号参照)、本報告においては、本決定において、特筆すべき点を紹介します。

(1)休業命令・賃金カットの合理性判断要素として均衡処遇の理念を重視

 本件では、期間従業員と同じく休業命令を出している正社員には、一〇〇%の休業手当を支払っていますが、期間従業員に対しては、六〇%相当額しか支払っていません。この点について、裁判所は、労働契約法三条の中に「均衡処遇の理念が盛り込まれており、この均衡処遇の理念は、主として、正社員と非正社員の待遇格差について要請されている」こと及び二〇〇九年九月の与党三党による連立政権合意として、「男・女、正規・非正規間の均等待遇の実現を図る」ことが「雇用対策の強化」の項目において公表されていることにも言及して、賃金カットの合理性判断の重要な要素であることを明示しました。

 その上で、裁判所は、「債務者の直接生産部門に従事する正社員と期間労働者は、混在して生産業務に当たっており、実際に従事する仕事の内容に格段の差異はない」と認定しました。

(2)労働組合との差別的交渉を問題視

 さらに、均衡処遇の要素として、(1)の他に、債権者らが加入する労働組合(JMIU)との差別的な交渉態度を問題視しています。

 裁判所は、期間労働者の所属する組合との間では、「事前に所属労働組合に協議の申し入れをせず、その合意を得ず、むしろその意見に反して、各人の契約期間の満了日までの三か月以上という、包括的、かつ、一律の長期間にわたる休業を強行し、各人にとって過酷な賃金カットをし、その後も、所属労働組合との団体交渉において全く譲歩する余地をみせずに、間断なく、これを継続し、一方、正社員に対しては、事前に所属労働組合に協議の申し入れをして、その合意を得た上で、一か月だけの数日間という個別の休業日を設定し、しかも、その間の賃金全額を保障する、という顕著な差異を設けることは、およそ、「均衡」とは、対極をなす処遇上の差別というべきである。」と判示し、「債務者における正社員と非正社員との間の「均衡」を欠く、顕著な差別の扱いは、…司法の判断において、到底看過することができない。」などとして、正社員との差別的取扱、債権者所属の労働組合との差別的交渉を理由に、債務者には、「責めに帰すことができない事由」がないとして、民法五三六条二項に基づく差額の賃金請求権の存在を肯定しました。

(3)保全の必要性(過去分の賃金の仮払いの必要性)

 本決定では、過去分の賃金仮払いの必要性について、「保全の必要性の判断は、…労働者ないしその家族の生活保障の観点において、単に生命を維持する必要最低限度の生活としてではなく、人間の尊厳にふさわしい生活、すなわち、個人として尊重され、幸福の追求をし、健康で、文化的な生活を営むことができることを保障するものとして、規範的な評価として行うことが相当であると解される(憲法一三条、二五条一項参照)。そして、このような評価の観点からいっても、一律でなく、債権者個人個人の生活の実情に応じた配慮をすることが重要である。」と判示し、憲法の理念にも触れる良識ある判断を下しています。

 そして、生活上当然に発生する不定期な支払い等に触れ、「賃金仮払いの保全の必要性の判断における債権者の生活の実情としての債権者の生計の収支の状況は、当該仮払いを求める賃金の支払期日の一か月毎に峻別、分断して評価される必然性はない」と判断し、債権者の生計収支判断について連続的・一体的に捉えるべきであるという判断枠組みを示しました。当該判断に関連して、同じくいすゞ自動車の藤沢工場で稼働していた期間労働者についての差額賃金の仮払を求めた裁判で、生計収支について一ヶ月毎に分断的に捉えて、保全の必要性(過去分の賃金の仮払いの必要性)を否定した、横浜地方裁判所の判断(横浜地方裁判所平成二一年七月二二日決定)を批判しました。

(4)小括

 以上のような点を判断に追加して、原決定を認可しました。説得力に溢れた素晴らしい内容の決定です。

七 本決定を今後の裁判の弾みに

 本決定は、前述のように、同じくいすゞ自動車の藤沢工場で稼働していた期間労働者についての差額賃金の仮払を求めた裁判で、保全の必要性を否定した、横浜地方裁判所の判断(横浜地方裁判所平成二一年七月二二日決定)の誤りを指摘しており、現在東京高等裁判所に係属中の右決定についての即時抗告審に大きな影響を与え得るものであると確信しています。

 また、同決定は、当事者、労働組合、いすゞ自動車弁護団の結束をさらに強固なものとし、現在、東京地方裁判所に係属中の期間労働者の地位確認等請求訴訟への取り組みの弾みとなりました。



核兵器廃絶に向けて

東京南部法律事務所  畑 田 真 希 子

 当事務所では「二〇一〇年核不拡散条約(NPT)再検討会議にむけて」のアピール署名に取り組んでいます。この署名は来年に行われる核不拡散条約再検討会議に提出予定です。多くの方に御賛同頂き、一〇月二六日現在二五〇〇筆の署名と約三〇万円の募金をお寄せ頂きました。あまりの反響にただただ驚くばかりです。

 署名用紙のコピーを何枚もとって集めて下さる方、署名用紙をわざわざ事務所まで取りにお越しになる方、署名とともに賛同のお手紙も数多くお寄せ頂き、所員一同感激しています。 

 また地域でも月に一回JR蒲田駅頭で核廃絶の署名活動を行っています。目立った反響はあまりないものの、中高生や若者が署名をしてくれたことに世論も少しずつ核廃絶に動き出していることを実感しました。

 二〇〇九年一〇月九日バラク・オバマ大統領にノーベル平和賞が授与されました。就任一年目での受賞に賛否両論はありますが、私はノーベル平和賞を授与したことで核兵器廃絶を有言実行にうつさなければならなくなったのではないかと思います。

 近頃マスコミでも核廃絶問題が多々取り上げられるようになってきました。世界が核廃絶に動き出した証拠です。

 私は事務所に原爆症認定訴訟の弁護団員がいることもあり、核廃絶には多少なりとも関心を持っていましたが、長崎での原水禁世界大会に参加し、世界から必ず核を廃絶しなければならないと確信しました。世界大会には約七〇〇〇人の参加があり会場に入りきれないほどの人と熱気で、核廃絶に向けて世界が動き出していることを実感しました。 

 世界大会では原爆症認定集団訴訟弁護団が壇上から原爆症の訴訟終結に関して政府と確認書を交わしたことを報告すると、会場は拍手喝采に包まれました。その中には事務所の弁護士がいて誇らしく思いました。

 二年連続広島、長崎の原水禁世界大会に参加させて頂き、原子爆弾の被害の悲惨さを目の当たりにしました。一発の原子爆弾が一瞬にして街を焼け野原にしてしまう原爆の威力はすさまじいものです。長崎、広島の原爆資料館には投下時間に止まった時計、爆風で一瞬にして残った人の影、本当に人なのかと思うほど焼けただれた手肌など、あまりにも生々しく目を背けたくなるような光景でした。長崎の平和の泉にある当時九才の山口幸子さんの碑文を前に水を求め呻き叫びながら死んでいく人々の光景が目に浮かびました。

 このような現状があるにも関わらず、まだまだ核兵器は世界中にあり、核実験が行われています。唯一の被爆国である日本だからこそ、核兵器廃絶にむけて世界に発信すべきなのです。核廃絶実現にむけ、二〇一〇年核不拡散条約会議に多くの署名を提出するために活動を行っていきたいと思います。



松川裁判がわかる好個の良書を座右に

静岡県支部  石 田   享

 此度、伊部正之・福島大学名誉教授の労作「松川裁判から、いま何を学ぷか(戦後最大の冤罪事件の全容)」が出版されました(岩波書店、定価本体二五〇〇円)。

 著者の伊部先生は杜会政策、労動間題、アフリカ南部の人種差別問題などを本来の専門とされ、福島県内の地域産業にも造詣の深い方ですが、また一九八八年に福島大学に松川資料室が開設されていますが、その準備段階の一九八四年から今日まで松川裁判(裁判、救援運動など)の資料の蒐集・整理と活用に精魂を傾けられました。その成果として「松川学」の基礎がつくられ、それが今回出版された著述に集約されている、と思われます。

 おそらく、著者は「松川資料室」に蒐集、所蔵された一〇万点にのぼる資料(広津和郎「松川の塔碑文草案」一九六四年七月などを含め主なものを列挙すれば、松川裁判と同国賠裁判の資料、弁護団資料、単行本、雑誌、週刊誌、グラフ雑誌、同人誌、松川運動資料、手紙・ハガキ・電報、ノート・日記、写真、獄中絵画、ポスター、新聞記事、映画・スライド・ビデオ、記念品、関連事件資料、門田実・差戻審裁判長資料、等々)の山の中に、半ばうずもれながら懸命に書き上げられたものであろう、と想像されます。事件発生六〇周年の日に、あとがきが書かれました。

 皆様がどのような角度から読まれても、半永久的に活用できる松川裁判と松川運動の好個の著作です。団員の皆様が是非とも座右に備えられますよう紹介します。

(二〇〇九・一〇二一六記)



「辺野古への新基地建設と県内移設に反対する沖縄県民大会」への参加の呼びかけ


 ゲーツ米長官の来日に続き、一一月一一、一二日のオバマ米大統領の来日、来年一月の名護市長選と、普天間基地移設問題をめぐって緊迫した情勢が続きます。アメリカの強要に抗して、米軍普天間基地の早期無条件撤去を勝ち取るために、本土からも一一月八日の沖縄県民大会に多数参加しましょう。現在のところ、東京支部、大阪支部の団員が何名か参加する予定ですが、多数の団員の参加を呼びかけます。

 県民大会の前後には団沖縄支部との懇談会も予定していますので、よろしくお願いします。

「辺野古への新基地建設と県内移設に反対する沖縄県民大会」

と き:一一月八日(日)午後二時から

ところ:沖縄県宜野湾市海浜公園屋外劇場

    (集会場の舞台前に自由法曹団の旗がたっています)

主 催:県民大会実行委員会

    (TEL〇九八―八六〇―七四三八)

懇談会:県民大会の前後に自由法曹団沖縄支部と懇談会を持ちます。

※問合せは、自由法曹団沖縄支部
    (ゆい法律事務所:電話〇九八―八五五―七四三五)まで

【民主党及び三党連立政権の公約】

(1)民主党「沖縄ビジョン2008」

 「普天間基地の再編についても、県外移設の道を引き続き模索すべきである。言うまでもなく、戦略環境の変化を踏まえて、国外移設を目指す」

(2)民主党マニフェスト

 「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や日米軍事基地のあり方についても見直しの方向で臨む。」

(3)連立政権樹立に当たっての三党政策合意

 「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む。」