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穂積 匡史 「つくる会」系教科書採択問題、今年が正念場!
安部 千春 永万寺事件六回目の勝訴
山下  潔 シドニー・ブエノスアイレス無罪評決、無罪判決を経験して(国際人権活動に理解を)
大久保 賢一 比例定数削減と「一票の価値の平等」の関連について
赤嶺 朝子 民弁交流会に参加して
榎本 信行 武藤軍一郎「砂川闘争の記
―ある農学徒の青春」のお勧め
−新年学習交流会&新人歓迎会のご案内−



「つくる会」系教科書採択問題、今年が正念場!

神奈川支部  穂 積 匡 史

一 「つくる会」系教科書

 いわゆる「つくる会」系教科書と言われる「自由社」版の歴史教科書。憲法の三大原則を明記せず、天皇の「人間宣言」の内容の説明も省く一方、憲法九条については「国家としての主体性を否定するもの」という見解を紹介するなど、憲法および平和主義に否定的な意図が散見されます。他方で、過去の戦争で日本人がいかに「よく戦った」かが繰り返し記述されるなど、国家の戦争に協力することを一方的に肯定、賛美する傾向が顕著です。

二 横浜市における採択の動き

 この自由社版を、横浜市教育委員会は、市内一八採択地区のうち八地区の公立中学校で使用する歴史教科書として、異例の無記名投票により採択しました(二〇〇九年八月)。また、二〇一〇年四月には、横浜市教職員組合(浜教組)が自由社版の問題点を指摘した資料集を組合員に配付したのに対し、市教委が警告を発しました。(これに対して、自由法曹団神奈川支部が神奈川労働弁護団、青法協神奈川支部、社文センター神奈川支部と連名で抗議声明を発表したことなどの経緯については団通信一三五四号の阪田団員の記事を参照ください。)

 その後、横浜市議会で浜教組委員長の参考人招致を決定、教職員団体の活動を制限する立法を求める意見書を提出しようとする(最終的には常任委員会を通過するも本会議で否決)など、横浜市内では「つくる会」系教科書を巡る動きが活発化しています。

 その横浜市で今年八月、地区別採択を取り止め、市内全校一括で教科書採択が行われます。これにより、「つくる会」系教科書が市内全校で使用される可能性があり、その場合、次の採択までの四年間で延べ一〇万人の中学生が「つくる会」系教科書で学ぶことになると予測されています。

 また、最大の政令指定都市である横浜市で「つくる会」系教科書が採択されれば、全国の教科書採択へ与える影響も甚大です。

三 何が問題か

 「できん者はできんままで結構。戦後五〇年、落ちこぼれの底辺を上げることばかりに注いできた労力を、これからはできる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。一〇〇人に一人でいい、やがて彼らが国を引っ張っていきます。限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養ってもらえばいいんです。」

 これは国の教育課程審議会の会長を務めたこともある三浦朱門氏が二〇〇〇年七月のインタビューで語った言葉です。

 その後二〇〇六年には教育基本法が改定され、「教育の目標」の一つに国を愛することが書き込まれました。

 一人の「できる者」からの指示に従い「よく戦う」ことが「実直な精神」であるとすれば、「実直な精神だけ」を養った九九人が引っ張られて行く先にあるのは一体・・・。

 歴史はよりよい未来を築くための人類の財産です。もちろん「つくる会」系教科書の問題点は平和主義や愛国心教育に関する事柄に留まるものではありませんが、これに限ってみても、過去の惨禍を顧みて自国の戦争放棄を謳った憲法九条は、諸外国へも戦争放棄を広めて行くための大切な宝であり、そのような九条を手にするに至った歴史を学ぶのに、「つくる会」系教科書が相応しいとは到底思えません。

四 今後の取組み

 神奈川支部では、今年八月の横浜市における採択が今後の全国での採択を巡る重要な分岐点になると考え、「憲法の国民主権、基本的人権、平和主義に基づく教科書を採択」することを求める市教委宛の請願署名に取り組むとともに、二月一八日(金)には横浜教科書採択連絡会の主催する関内ホールでの一〇〇〇人集会に協力します。今年五月には自由社と同じ「つくる会」系と言われる育鵬社からも教科書が出版される予定です。法律家の視点からこれらの教科書の内容を検証し批判していくことも大切です。

 今年が正念場です。団員各位に取組みとご協力をお願いいたします。


永万寺事件六回目の勝訴

福岡支部  安 部 千 春

一 永万寺事件とは

 永万寺の門徒は六〇〇〇世帯、法中と呼ばれる一〇家の僧侶がそれぞれの担当地域を持ち、法中はその担当地域で法務活動をし、もらったお布施で生活してきた。住職は原則として葬儀のみを法中と行い、そのお布施で生活してきた。

 平成八年九月住職はこの法中制度を一方的に廃止し、それに反対する法中全員を解雇した。

二 裁判に加わる

 法中は地位確認の本訴をしたが敗訴した。その判決文を入手した私は控訴審に加わることにした。

 私は弁護士は役者であり、法廷は芝居であると考えている。永万寺の裁判には住職についた門徒と法中側に残った門徒が法廷傍聴に押し寄せ、傍聴席を満席にしている。私はこのような法廷をこよなく好きである。燃えるのである。

三 争点は何か

 原告の主張は以下のとおりである。

 「第二次長州征伐で高杉晋作ひきいる騎兵隊が小笠原を攻めたときに、小笠原は小倉城に火を放って逃げた。その火事の延焼で永万寺も燃えた。

 明治になって永万寺を再建する時に法中の先祖が五〇〇円を寄付し、その代わりに担当地区をもらい、代々法中として法務活動をしてきた」

 一審はその証拠がないと判示した。控訴審でいまさら証拠を探しても見つからない。私は法中の地位は時効で取得したと主張した。

四 裁判で勝つには

 裁判で勝つには相手は極悪非道で強欲で、こっちはその被害者であると主張することである。私は原告らに解雇されて収入がなくなり、どんなに困っているかを書いた陳述書を書かせた。裁判所がこちらの主張に同調してくれれば立派な裁判官が理屈は考えてくれる。

 「時効もいいですが、もっといい理屈があるのでは?」と裁判官は私たちに言った。私達は「永万寺の法中になった時に担当地域も決まるのでその時に契約が成立し法中の地位を取得した」と主張した。

 相手方の弁護士は「この法廷はおかしい。裁判長が控訴人弁護士に答えを教えている」と怒った。

 裁判長は「忌避をなさいますか?」といったが「忌避をしたい気持ちですが次回まで検討します」といっただけで忌避はなかった。

五 裁判の経過

 控訴審で私たちは勝訴した。相手方が上告し、上告は却下され、契約上の地位は認められた、しかし永万寺は法中を解雇したと主張しているので解雇が正当かどうかを原審でやり直しをしなさいと原審に差し戻された。

 私たちは差し戻しの原審でも勝ち、控訴審、上告審と勝ち続け勝利した。最高裁で勝訴した後、永万寺は解雇は撤回したが、担当地区の門徒は返さない。永万寺は法中を解雇した後新たな僧侶を雇い、その人達に法務活動をさせていた。やむなく法中は永万寺を被告として債務不履行による損害賠償の裁判を始めた。

六 損害賠償裁判

 今度は被告には光母子殺人事件で有名な安田弁護士がついた。普通の民事裁判で田舎では異義などいわない、相手が「異議」というので私も異議をそのまま言った。激しい闘いになった。

 傍聴者で満席の法廷である。一回ごとの法廷で勝たなければならない、四〇年も弁護士をしていると法廷を楽しむことができるようになる。異議を出されても無視して質問を続ける。

私の質問:法中らが寺をつくることは可能ですか。

安田弁護士:誤導だと思うんですけど、現物のA案を見ていただいたら、非法人教会の設立については、その後、責任を持って法人の設立の方に努力するということが出てるんです。ですから、非法人教会だけじゃないんです。

私の質問:わかっていますって。それで、私の質問は、法中らが寺をつくることは可能ですかという質問です。

証人の答:それは、独立を認めたから、別れてすることには賛成しました。

 平成二二年一二月二一日、私達はまたもや勝訴した。六回目の勝利である。一億八七〇〇万円の損害賠償が認められた。


シドニー・ブエノスアイレス無罪評決、無罪判決を経験して(国際人権活動に理解を)

大阪支部  山 下   潔

 私らは、オーストラリアの「メルボルン事件」を取り組んだ。日本人五名の観光客がマレーシアでスーツケースの底に麻薬を入れられ、メルボルン空港で逮捕され、懲役二〇年一名、一五年四名が服役した。オーストラリアが個人通報制度を批准していたため、五名の人達はオーストラリア政府を相手にジュネーブの国際機関(国際自由権規約委員会)に救済のため主として通訳の不備を訴え、個人通報した。仮釈放で五年短縮されて実名報道で帰国した。(日弁連では個人通報制度実現のために委員会が発足し、本年二月二五日(金)午後六時から明治大学で市民集会が開かれる。)「個人通報制度」を一人でも多く六法全書条約編で「国際人権規約」をみてほしい。日本政府は個人通報制度を批准しないのである。このメルボルン事件の経験は、日本人の外国の刑事事件で二つの無罪評決・判決を獲得することができた。

 一つはシドニー事件陪審裁判無罪評決である。日本人がシドニーに麻薬(スピード)を「生一本」という日本酒の瓶の中に濃縮されていたのであるが、バンコックからシドニーに運んだ事件である。一升瓶の中に麻薬が混入していていることを知らなかったためとはいえ、裁判は困難な戦いであったが、シドニー市民一二人は無罪評決をしてくれた。

 二つは地球の反対側であるブエノスアイレス事件である。昆虫の輸出の許可書の偽造をめぐり、税関法違反で日系のアルゼンチン弁護士が担当した。しかし、この不当な弁護士を解任して国選弁護人を選び、日本人がスペイン語を話すこと、読むことができない一点突破で法廷にのぞみ、アルゼンチン検察官は、日本人に対して無罪請求をして無罪判決が獲得できた。

 この三つの事件を通じて共通することは、全ての人々が貧しいこと、誰も救済の手を差し伸べなかったこと(自由法曹団の人も含む)である。

 また、法律扶助制度を活用できないこと、外国にある日本大使館の支援も十分でないこと、などである。とにかくお金がいる。この人たちはいったい誰を頼ればよいのか、差し伸べる人が皆無の極限状況にあったことである。

 この日本人達は「ダメモト」であったのか最後に私達に「助けてくれ」と求めてきた。自由法曹団の中で法曹人口三〇〇〇人問題で肯定の意見が多いと聞く。この事件は、若手の弁護士が参加したが、その若手は貧しかった。三つの事件は古手の弁護士とカンパによって支えられた。新自由主義(規則緩和)の思潮の流れの中で尊敬される弁護士として維持するには、お金がないと人権活動が十分できないことを国際人権活動を通じ肌身で知ることになる。人権活動とは何かが問われており、三〇〇〇人問題は深い意味をもっている。国際人権活動に一層の御理解と御協力をのぞみたい。


比例定数削減と「一票の価値の平等」の関連について

埼玉支部  大 久 保 賢 一

問題の所在

 一二月常幹の報告書が届いた。その中で、比例定数の削減問題について、「民主党が一票の格差是正という方針をとるとき、定数削減の話が一緒にされることの危険性を一般市民は特に分かっていないと思う。一票の格差が是正されれば何でもよいという話ではない。」(毛利・京都)という意見が述べられている。私も、この指摘に共感する。確かに、一票の格差が解消されればそれで事足りるということではないのである。

 そして、この比例定数削減問題と一票の価値の関係については、「一般市民」だけではなく、弁護士の中でも「分かっていない」人は決して少なくない。例えば、埼玉弁護士会で、比例定数削減問題についての会長声明を出そうとした時、一票の格差問題と関連付けるべきだし、その人たちと連携すべきだ、との意見が出された経緯がある。そうでないと、比例定数削減反対の会長声明に賛成できないというのである。ここでも、一票の格差と比例定数削減についての関連性は理解されていなかったのである。

 結論的にいえば、(民主党が予定している)完全小選挙区制のもとでも、各選挙区の一票の価値を平等にすることは可能である。けれども、大量の死票を生み出すという小選挙区制の弊害は解消されないのである。一票の価値は平等だが、選挙民の政治的意思は議会に反映されないという現象が生ずるのである。これが選挙権の「投票価値」と「結果価値」の問題であり、一票の価値と比例定数削減の関係なのである。

「投票価値」と「結果価値」

 「投票価値」の平等は、代表選出にあたり、自己の投票が平等に数えられることを要請する。「投票価値」の不平等は、例えば、納税額の多い選挙人や学歴の高い選挙人の投票を二票と数えるというような場合だけでなく、選挙区ごとの定数と選挙人の不均衡によって、同様の現象が起きることになる。これが、議員定数不均衡問題である。選挙区制度をとる限り、一定の不均衡が生ずることはありうるし、それが平等原則違反となる場合があることは、その通りある。私たちもそれに着目しなければならない。

 小選挙区制の問題点は、候補者への投票率と議席の乖離である。大量の死票の発生といってもよい。この否定的現象は、「民意の集約」というイデオロギーで合理化されている。選挙民に投票させるが、議席には反映させないという制度である。これが、「結果価値」の問題である。

 国民を代表する議会の構成は、選挙民・有権者の意思をできるだけ正確に反映すべきであるという社会学的代表制の考え方からすると、選挙制度は国民世論と近似的な結果を要請する。その意味での憲法適合性がとわれることになる。現行の衆議院の選挙制度は、この批判を避けるために、比例制を並立したのである。

 投票価値の平等も結果価値の平等も、比例代表制を採用することによって解消することは可能である。憲法規範論からしても、また、少数者の意見と運動が社会を変えるという歴史観からしても、比例代表制が望ましいと考えられる。

 ところで、投票価値の平等は、比例制を排除するものではないが、比例制でなくとも実現することは可能である。一票の価値が平等となるように、選挙区と選挙人のバランスを取ればいいからである。小選挙区制のもとでも、一票の投票価値の格差をなくすことは可能であるが、それによって、小選挙区制の問題点は何ら解決されない。民意が「集約」され、大量の死票が生み出され、民意と議会の乖離生ずることになるからである。

 このように、投票価値の平等の問題と、比例代表定数を削減し、完全小選挙区制度に近づけようとする問題は、国民代表をどのように選出するのか、それは平等原則やその他の憲法規範との整合性はどうなのかという共通性はあるが、全く異なる位相もあるのである。

換言すれば、投票価値の問題と関連付けなくても、比例定数の削減問題は設定できるし、また、そうしなければならないのである。

この違いを認識したうえで、比例代表定員削減が、この国の民主主義と参政権という人権に重大な悪影響を及ぼすことになるのだ、ということを主張すべきだと考える。

「一人一票の価値」と新自由主義

 加えて、この一票の価値の平等を主張に対しては次のような見解もある。

 加藤寛崇弁護士の「『一人一票の実現』を掲げる新自由主義勢力』という論考である(三重合同法律事務所ニュース二〇一一年一月号)。結論を紹介すると「大企業側の弁護士が、『一人一票』の運動に取り組むのは奇異な動きではなく、むしろ新自由主義的改革を推し進めるためというごく自然な行動である。大都市の大企業であるマスコミかこれを好意的に取り上げるのも当然です。」。この運動は、「新自由主義的改革という時流に合致した動きだけに、今後も違憲判決が出て来ると思われますが、あまり前向きなものとばかりは評価できないように思われます。」というものである。「地方優遇の選挙制度は、新自由主義的改革に合わなくなってきたからである。」というのが論拠である。投票価値の平等を建前として、新自由主義的改革を推し進めるというのも、あながち穿った見方ではないといえよう。もちろん、このような評価については異論もあるであろう。

小括

 私は、一票の価値の平等は必要なことだと思う、差等選挙など歴史の遺物だからである。けれどもそこで思考を停止させてしまうのではなくなぜ、その価値が平等でなければならないのかが問われるべきだと考えている。その平等性は国政参加のシステムとの関連で語られるべきであり、完全小選挙区制を容認したり、比例代表制を無視したりする言説に与することはできない。国民の政治的意思を歪める議会が国民主権国家にあってよいわけがない。

 民主主義は、単純な多数決原理だけで構成されているものではなく、共通の事柄を決定する上で自由に議論し、その決定に参加する機会が保障されていなければならない。したがって、代議制度の下では、その議会に各個人の意思が反映するように、代表を選出することが要請されることになる。個人の自由を主張するものが、その議会に他の個人の主張が反映しない制度を導入したとしても、それは早晩破綻し、新たな制度が求められるようになるであろう(イギリスを見よ)。

 そして、今、少数派であったとしても、明日の多数派となり、新たな社会を打ち立ててきたことは、歴史的事実であるだけではなく、人々の自然な営みでもあるだろう。少数派の排除は社会の進歩を押しとどめる役割を果たすことにもなるであろう。

私たちは、定数不均衡問題を超えて、比例定数削減に反対しなければならないのである。

二〇一一年一月一四日


民弁交流会に参加して

沖縄支部  赤 嶺 朝 子

 二〇一〇年一一月七日から一〇日、第四回民弁・自由法曹団沖縄支部交流会が韓国で行われ、初めて参加しました。

一 交流のきっかけ

 民弁との交流会は、二〇〇六年の団総会で横須賀の山崎さんが事件の報告をした際、民弁のクォン弁護士が韓国内で発生した米軍戦車による中学生轢死事件について発言したのに対し、沖縄支部の仲山団員がクォン弁護士に励ましの握手を求めたことがきっかけです。

 交流会は、翌年に民弁側が沖縄に訪れて以来、民弁と沖縄支部が韓国と沖縄を交互に行き来し、毎年行われています。

二 初日

 今回の交流会は、沖縄側は普天間基地控訴審判決と高江ヘリパッド訴訟の現状を、民弁側は天安艦事件とピョンテクオサン基地第二滑走路建設承認の取消しを求める行政訴訟の経過と展望の報告をしました。

 天安艦事件について、韓国政府が発表した内容(北朝鮮が天安艦を攻撃した)について、政府発表を信頼する国民は三二・五パーセントにすぎないことや政府と異なる見解を主張する民間専門家を名誉毀損罪で起訴するなど、日本国内で報道されない内容が報告され、驚きの連続でした。

 また、第二滑走路建設承認取消訴訟では、「承認」の処分性が問題となっており、取消の理由として建設事業において法定の環境アセスメントを経ていないことなどを主張しており、辺野古アセス訴訟と同様な問題を抱えていました。

 飛行機の到着時間の関係で、議論の時間が十分にとれませんでしたが、とても有意義な報告内容でした。

 その後、懇親会会場に移動し、エイを丸ごと燻製にした料理など韓国人でも珍しい韓国南部料理を堪能しました。

 民弁の参加者の中には、憲法訴訟を提起している弁護士がいました。この方は、徴兵制で軍隊に入隊中、軍隊内においてチョムスキー等の著作本が閲覧禁止になったことについて異議を唱えたため軍隊から罷免された弁護士です。韓国では、公務員を罷免されると弁護士資格が五年間停止されるので、この弁護士は罷免を争い憲法訴訟を提起し係争中だそうです。

 また、刑事被告人にされている弁護士もいました。この方は、民弁の南北統一委員会の弁護士で、国家保安法違反で起訴されていました。この方も有罪になると弁護士資格が五年間停止されるそうです。

 二次会においても、デモの最中に逮捕されたと話す弁護士もおり、衝撃的でした。

三 米軍基地巡り

 二日目は、オサン米軍基地と群山米軍基地を見学しました。

 オサン米軍基地は、ソウルの南約四〇キロのピョンテク市内にある基地です。米軍基地の第二滑走路を建設するために、韓国政府が建設予定地に生活していた住民から、家や土地、生活の糧である農地を奪い、複数の村を撤去させていました。

 撤去させられた村の元区長から、住民は転居先で生活の糧である農地がなく、転居先から仕事を求めて出て行かざるを得なくなり、コミュニティーが破壊されているとの説明を受けました。

 また、撤去後該当地域が長年の間放置されているため、住民が国に対し建設まで農地として使用させてほしいと要求しても、韓国政府はこれを拒否しているそうです。

 米軍基地周辺では、沖縄と同様に爆音の問題が生じており、爆音訴訟も提起されています。民弁の弁護士一人で四〇〇名余りの住民を原告として訴えを提起し、健康被害を立証するため低額な調査費で論文を書く学者を探すなどの困難を乗り越え、勝訴判決を勝ち取り判例となったそうです。現在では、周辺住民約一万四〇〇〇名が爆音訴訟を提起しています。

 復帰前の沖縄と同じように米軍基地建設のために住民から土地を奪うことが現在おきている光景に衝撃を受けると供に、復帰後、沖縄県内に米軍基地をつくらせていないこと、辺野古や高江に基地を作らせていないことの重みに気付きました。

四 さいごに

 今回初めて外国の米軍基地を見学して、普天間基地を県外・国外に移設したとしても、沖縄の苦しみを県外や他国の住民に押し付けることになるだけだと痛感しました。米軍基地を撤去するためには、各地域を連帯していかなければ実質的な解決になりません。

 そのためには、交流会を積み重ね、それぞれの地域での訴訟活動等を報告・共有することが必要で、交流を継続していくためにはお互いの言語を習得する必要があると痛感しました。


武藤軍一郎「砂川闘争の記

―ある農学徒の青春」のお勧め

東京支部  榎 本 信 行

 憲法を学ぶものなら誰でも知っている「伊達判決」を受けた元被告の体験記である。判決が出たのは、一九五九年三月だから、五一年後に初めて明かされた記録である。

 伊達判決は、砂川闘争を戦った労働者、農民、学生が「安保条約に基づく刑事特別法」によって逮捕、起訴された件について下された判決である。 

 判決は、安保条約を違憲とし、後跳躍上告されて、最高裁で破棄差戻になったが、今日でも高く評価されている。この判決を導き出したのが、七人の若者である。その一人が本書の著者武藤軍一郎氏である。武藤氏は、当時東京農工大学の学生で、仲間とともに砂川闘争に参加し、デモを組んで基地に侵入したというものである。

 伊達判決では無罪となり、後罰金刑になるという経過をたどるが、その後就職などどうしたのだろうか気になるところである。本書は、そんなことも含めて、当時の学生運動の状況、安保闘争の状況などが描かれ、著者の青春を語っている。著者は、その後九州大学の教授になったので、達意の文章で語られている。弁護士(弁護団)の活躍も無論触れられているので、団員必読の書である。是非、お勧めしたい。(発行・花伝社、二五〇〇円+税)


−新年学習交流会&新人歓迎会のご案内−


部  長 弁護士 千 葉 一 美
電 話 03−3447−1361
事務局長 弁護士  岸   松 江
電 話 03−3355−0611
事務局長 弁護士 千 葉 恵 子
電 話 03−3463−4351

 下記のとおり新年学習交流会と新年会兼新人歓迎会を行います。

 女性部部員の方々,新人の方々はぜひご参加くださいますようお願い申し上げます。

 準備の都合・予約等がありますので、平成22年1月30日までに出欠席をお知らせ下さい。

☆新年学習交流会☆

《 日 時 》 2010年2月3日(木)16時〜18時20分
《 場 所 》 東京法律事務所3階
         東京都新宿区四谷1丁目2番地伊藤ビル 03-3355-0611
         四ッ谷駅下車(四ッ谷口)徒歩2分
          http://www.tokyolaw.gr.jp/info/info.html

《 テーマ 》 知っておきたいメンタルヘルス
 精神科医の日下朗先生をお招きして、最近の労働現場の状況、精神疾患罹患者の職場復帰、弁護士自身のメンタルヘルスなどについてお話を伺います。

☆新年会兼新人歓迎会☆

《 日 時 》 2010年2月3日(木)18時30分〜
《 場 所 》 「カミーヤ」 http://www.yotsuya.com/S87074.html
        四ッ谷駅近くのイタリア料理レストランです。
       会費5000円程度を予定しています(63期は無料)。

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下記のいずれかに○をつけて 1月30日までにご返信下さい
弁護士 岸 松江 行き(FAX03−3357−5742)

新年学習交流会に     出席します     欠席します

新人歓迎会に        出席します     欠席します

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