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篠原 義仁 暑中お見舞い申しあげます
牛久保 秀樹 日航案件でILO勧告が出される
原 希世巳 「エネルギー・環境に関する選択肢」のパブコメに取り組もう
坂井 興一 そこまでやりますか!
東弁蒲田相談センター開設問題
根本 明子 事務所学習会を開催しました



暑中お見舞い申しあげます

団 長  篠 原 義 仁

 梅雨とは思えない台風のような日がつづいたかと思うと、むし暑い日がまた続いています。いかがお過ごしでしょうか。

 六月六日の政府による大飯原発再稼働の決定以降、原発NO、脱原発の声は日増しに大きくなり、毎週金曜日夜の首相官邸・国会周辺の再稼働反対の抗議行動は一〇万人を超える規模で継続的に取組まれ、これに全国各地の行動が呼応する形で展開されています。インターネットメディアと融合した脱原発を求める市民運動は、一人ひとりの自発的市民の参加が次なる参加を生み、大きな「音」扱いにしていた野田政権にも確実に届き、七月一三日には、交通の安全確保の名のもとでのバリケード規制に対峙して、ひるむことなくつづけています。

 七月一六日には、著名人の呼びかけによる「さようなら原発一〇万人集会」が代々木公園で開催され、主催者の想定を大きく上まわる一七万人の参加でその成功をかちとりました。これに各地の動きも加わり、「列島共鳴」の大きなうねりが作り出されています。

 他方、福島原発事故に対する完全賠償の取組みについていえば、七月五日の国会事故調最終報告にもあるとおり、「原発事故は人災」で「東電と国の責任」はより一層明白となっています。

 加害者と被害者という対立構造をもつ原発被害で、(1)公害の根絶 (2)被害の全面救済 (3)環境再生とまちづくりの三本柱を基本とする要求を握って離さない闘いは喫緊の課題として重要性を増しています。

 そして、その課題は、自主交渉による解決に進展がみられないなかで福島の浜通り・中通りに結集する被害者を中心に、多くの団員も参加して、国と東電を被告とする国賠訴訟の検討が進んでいます。

 各地では、これまた多くの団員が参加して、従前の原発差止訴訟の経験に学んで新たに九州の玄海・川内、北海道の泊、静岡の浜岡等で差止訴訟が提起され、大飯原発の再稼働についても新たな差止訴訟が準備されています。

 原発NOの市民運動と結合しての、原発再稼働を阻止する闘いと福島原発被害の全面かつ完全賠償を求める闘いは、団をはじめとする民主的諸団体の協力、共闘のもとでの実践的追及が必至となっています。

 眼を憲法問題に転じてみると、三・一一東日本大震災・福島原発事故を契機に、非常事態に対処することを口実に憲法改悪の動きが強まっています。

 休眠状態にあった、衆参両院の憲法調査会も活動を開始し、衆議院の調査会では、第一章の「天皇」の規定から現在では第二章の「戦争の放棄」、第三章の「国民の権利及び義務」の規定へまで議論が進み、参議院の調査会では、非常事態規定の議論に始まり、今後のテーマとしては、二院制の問題や新しい人権の問題を取り上げることが予定されています。

 一方、自民党は、憲法「改正」草案を発表し(調査会での自民党の意見は、この草案に沿ったもの)、立ち上がれ日本も「大綱案」を、みんなの党も「考え方」を発表し、憲法改悪の気運の盛りあげに躍起となっています。

 団は近々にも、自民党の「改正」草案の批判を中心にその他の草案批判も盛り込んで、反論の意見書を作成する予定ですが、情勢の変化に対応する機敏な対応が求められる情勢となっています。

 また、この間、国民の間には余り知られていないところですが、民主(分裂前)、自民、公明、みんなの党外の各党議員で構成されている「衆参対等一院制国会実現議員同盟」は、定数五〇〇人以内の一院制とする憲法改正草案を衆院議長に提出しました(みんなの党や維新の会は、一院制に加え、首相公選制をも打ち出しています)。

 いずれにしても、自民党の改悪草案をはじめ、憲法九条を中心に民主的諸条項に対する改悪の動きは、無視しえない様相を呈し、「九条の会」運動をはじめとする憲法を擁護し、より豊かに発展させる闘いの意義はますます重要となっています。

 野田政権は、「身を斬る」と弁明しつつ、「社会保障との一体改革」を口実に、それは名ばかりで、本質は消費税増税と社会保障の一体改悪を目論んで自公両党と談合政治を推進し、ただひたすら消費税増税法案の成立に突っ走っています。「身を斬る」のが本音なら、三二〇億円にものぼる政党助成金を廃止して、国会議員の歳費や優遇措置に斬り込んだり、まず何よりも軍事費を削減し、大企業や高額所得者への税制制度を見直したり、ムダなダムや環境破壊の幹線道路計画、大型公共事業の中止を図るべきところ、全くそれには手をつけず、あろうことか、民意の切り捨てとなる、衆議院の比例定数の大幅削減を狙って小選挙区制を温存した上での選挙制度の改悪を画策しています。しかし、一年有余にわたる画策は、私たちの運動で、現時点にあってはこれを阻止し、「ピンチをチャンスに」を合言葉とする運動は、小選挙区制を廃止し、民意の反映する選挙制度の確立という要求を基本にして、着実に前進しています。

 憲法と安保条約との関連でも沖縄の普天間問題、オスプレイの配備、秘密保全法、マイナンバー法案、TPPの課題など、その反動的施策の展開は枚挙にいとまがありません。

 わが国の平和と民主主義を守り、発展させる課題は、いよいよ重要となっています。

 昨年一〇月、自由法曹団は創立九〇周年の記念行事を企画しました。

 暑い夏にひと休み、というわけにはゆかない情勢のなかで、団はこの九〇年の歴史と伝統のうえに立って、民主的諸団体との連携を強めて、さらに奮闘してゆきたいと考えています。ひきつづくご協力をお願いする次第です。


日航案件でILO勧告が出される

東京支部  牛 久 保 秀 樹

 ILO結社の自由委員会、ILO理事会は、本年六月日本政府に、日航整理解雇の解決にむけて、是正勧告を公表した。

 今回の勧告で、日航の整理解雇案件は、ILO結社の自由委員会のフォローアップ(追跡検証)手続きの対象となり、ILOの監視下におかれることとなった。今後、ILOは、政府・申立人からの追加情報を受けて、追加勧告だすこととなる。国労案件の場合、九次まで、勧告が出され、国際基準局長も勧告の実施を求めて来日している。

 勧告では、「労働者の削減計画がある場合、その交渉を担当する労働組合の役員、労働者代表は、雇用のことで、優先的に配慮されなければならない」とする先例を引用して、組合役員・労働者代表の雇用確保を実現して、有効な交渉を行うことを求めている。最も根幹となる勧告部分は、リストラ計画の労働者への悪影響を最小限にするよう、労働組合との十分かつ率直な協議を、今から実施することを求めたことである。「悪影響を最小限にする」という内容には、当然、解雇撤回も含まれ、解雇の必要性、労働者の人員数、新規採用との関係、それら全てのことが、対象とされて、協議が開催されるべき、そのことを、日本政府の責任で実施するよう要請している。

 そして、解雇無効を求めている裁判の結論、企業再生支援機構の不当労働行為の東京地方裁判所の判決を報告するように求めている。国労事案の経験からみると、ILOは、東京高裁判決、最高裁判決が出される都度、解決に向けた重要な示唆を提示してきている。日航事件についても、ILOは、判決の報告を受けて、同様の対応を行うことになる。

 勧告文は、賛同者として、全労連、全労協とともに、正式に、一〇万人のパイロットが加入するIFALPA(国際定期航空操縦士協会連合会)、四五〇万人を組織するITF(国際運輸労連)を位置付けている。準当事者として、勧告遵守に向けて、国際労働運動の尽力が期待できる。

 今回の勧告をみて、日航事件に対するILOの重要な決意を感じる。国労案件が解決したにも関わらず、どうして、このような事件が起きるのだろうかという、疑念がある。同時に、この日航事件が、世界の航空労働者全体へ持つ影響をILOが危惧していることによる。世界の航空産業でリストラがなされるとしても、まず、企業側と労働組合とが十分な真摯な交渉を行うこと、そのことは、何としても譲れない原則であることを、ILOは、この勧告で再確認したことになる。

 このILO勧告を活用して、運動を広めて、勧告の遵守を政府と経営者に求めていくこと、そのためにも、まず、この勧告の意義を、運動全体が、共通して理解することが必要と思われる。関係資料を入手いただき、運動前進に向けて、団員諸氏の援助をお願いしたい。


「エネルギー・環境に関する選択肢」のパブコメに取り組もう

東京支部  原  希 世 巳

一 新たなエネルギー戦略

 政府のエネルギー環境会議は、六月二九日に「エネルギー・環境に関する選択肢」を発表した。

 このエネルギー環境会議は、昨年の福島原発事故により、従来の「原子力は安全」との大前提に基づく原子力発電に依存したエネルギー選択(二〇一〇年のエネルギー基本計画では原子力発電を二〇三〇年までに五割に拡大するとしていた)を抜本的に見直すため、昨年六月に設置されたものである。

 政府は、今回発表された三つの選択肢について国民的議論を開始し、この夏頃、「革新的エネルギー戦略」を決定するとしている。

二 三つの選択肢とは

 エネルギー環境会議は、「原発依存度を下げ、化石燃料依存度を下げ、CO2削減できるシナリオ」として以下の三つの選択肢を提案した。果たして本当にそうであろうか。

(1)ゼロシナリオ・・・二〇三〇年までに原発比率をゼロにする。再生可能エネルギーは現状の一〇%から三五%に拡大を目指す。化石燃料依存度は現状の六五%レベルにとどまる。省エネ・CO2対策により、温室効果ガスは九〇年比二三%削減。

(2)一五シナリオ・・・二〇三〇年の原発依存度一五%。核燃料再処理あり得る。再生可能エネルギー三〇%を目指す。化石燃料依存度は五五%。温室効果ガスは九〇年比二三%減。

(3)二〇〜二五シナリオ・・・二〇三〇年の原発依存度二〇〜二五%。核燃料再処理あり得る。再生可能エネルギー二五〜三〇%。化石燃料依存度は五〇%。温室効果ガスは九〇年比二五%減。

三 ゼロシナリオ以外は論外

 福島原発事故以前の原子力依存度は二六%であった。「二〇〜二五シナリオ」は福島以前の水準を維持すると言っているのである。しかも政府の「四〇年廃炉」の方針によれば、現状の半分近い原発を、更新・新設しないとできないことになる。およそ論外もいいところである。

 「一五シナリオ」では「四〇年廃炉」前の原発の八〇%を稼働させることになる。従来の実績はおおむね六〜七〇%である。あの浜岡も動かさなくてはならない。これも論外である。

 あわせてこの二つでは、危険かつ実現可能性もなく(「もんじゅ」を見れば明らか)、途方もない費用を使う「核燃料再処理を継続」のシナリオが目立たぬようにセットされている。「原子力村」の執念である。

四 ゼロシナリオも駄目!

 ゼロシナリオは他の二つと比べればましのように見える。しかしこの案は二〇三〇年まであと一八年間原発を続けると言っているのである。原発については国民的合意ができない限り再稼働すべきではない。

 しかも、二〇二〇年に温室効果ガス二五%削減との鳩山首相の国際的な約束を一〇年先送りしている。脱原発と温暖化対策の両立は可能であり、それこそが今後の課題とならなくてはならない。

 また三案に共通なのは、電力消費削減は二〇三〇年になっても二〇一〇年比で一〇%しか削減されていないことである。大量生産・大量エネルギー消費社会を改めていく政策も、CO2排出の三分の二を占める発電所や工場への対策も、何もない。

 結局「選択肢」には国民が選べるものは何もないということになる。必要なことは原発ゼロを前提に、いかにしてエネルギー自給を目指していくか、これを戦略的に検討していくことであったはずである。

五 国民的議論を巻き起こそう

 政府は三つの選択肢に関するパブコメを八月一二日まで受け付けるとしている。募集からわずか一ヶ月間である。また八月上旬まで全国一一箇所で意見聴取会が開かれているが、電力会社の社員が「国民意見」として原発推進を求めるなど何ともいびつな運営がされている。

 電力会社は「存亡の危機」と位置づけてパブコメに取り組むだろうと推測される。まだ間に合うので、取り急ぎ読者諸氏にお願いします。「三選択肢はどれも駄目。原発は即ゼロとするエネルギー戦略を確立せよ。」との趣旨で負けずにパブコメを組織して下さい。枝野大臣は「三つのシナリオだけにはこだわらない」と国会答弁しています(パブコメのサイトは次の通り。「エネルギー選択パブコメ」で呼び出せます)。

http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120702/20120702.pdf


そこまでやりますか!
東弁蒲田相談センター開設問題

東京支部  坂 井 興 一

 (事業拠点事務所)先頃、東弁斎藤会長ご一行が蒲田センター開設にあたっての大田区長ほかの地元関係者への挨拶回りの一環として、京浜東北線蒲田駅前の小生事務所を来訪された。センターは同じビル、一〇月一日・法の日からの営業開始で、土日夜間を問わず、相談全件初回無料を売り文句にし、「城南地区の事業拠点、新たな試みとして電話相談や弁護士の紹介も、これまでと違い地域密着型」と云った記念祝賀会のご案内を持参された。招待客リストの大田・品川区の地元は全警察関係者も含む公的お偉方ばかり。これでは会員が置き去りではないかと関係者が注文を付けたら、末尾に付け足した当事務所の名があった。兎も角、スンナリとは受け止められなかったので、会長も属する東弁期成会宛の要請書を、東弁理事者と常議員会正副議長にも参考書面として送ってあった。ちなみに当事務所員は東弁・二弁半々だが、東弁はみな期成会員であり、前理事者からの持ち越し案件とは云え、それだけでもややこしい話になる。(要請概要)東弁は都市型公設事務所開設一〇周年を迎え、更に旺盛なパブリック事務所展開を志向されるのかと思っていたが、今般の蒲田センターは、従来・特別公益目的型のものとは明らかに違って、「若手の業務(収入)支援を通しての会事業収入増をも期待する出先事業型事務所」である。それ故の、一般相談も含め初回相談無料(運営規則案八条(有料)の例外としての附則二(無料))での直受による業務を予定していて、希望者が多い民事当番弁護士を標榜する画期的方針なので、ならば、アクセス改善・人権保障と云った公益目的型や刑事弁護ものとは基本的に違って、業務と収入を主目的とする制度での見切り発車は好ましくない。そもそも蒲田センターの「初回タダ」を売りにしての直受誘引は、それが公的看板の事業体故に、今までの各種各地パブリックセンター同様、関係地域の公務署・商工会・区工業連・町会連合等の広報・推薦で独占的地位を占め、その圧倒的優位性と競争条件の著しい不公平の疑問がある。理事者側は、「初回無料程度のことは大したことではない」、「仕事にあぶれている若手援助対策である」等と軽く考えておられるが、「直受誘引の依頼事件着手金・報酬からの負担金収入」を強く期待するから、「事件受任」に至る二回目以降の相談は、依頼者との信頼関係醸成のための協議に委ねられ、料金チェックを励行する意味もない。また、出先地域の公的団体の広報紹介便宜基準は「政派・傾向団体的でないこと」・「商用・有料でないこと」であり、蒲田センターは、「民業」同様であるに係わらず、表向き公設・公益的なもので、「(初回)相談はタダ」故に、優先・独占的に紹介の機会が与えられ、行政などは公益的業務以外のものでも、「初回以降のことは関知しない(しなくていい)」となり、センター側も「あとは担当相談員(弁護士)の腕次第」となるでしょうと。(考慮されたいこと)既設の、受け手探しが大変なアクセス改善・救済センター型では、奉仕事案での納付(負担)金期待は無理で、勢い、多額の援助金を出して赤字補填するしかなく、それを承知の上で会の使命感から「法テラス」に先行したり、その代わりに頑張っていたが、新設の蒲田センターは、「(若手等)担当者の業務支援・援助」を通しての会活動・公益活動への財政テコ入れを企図し、となると「土日・夜間営業も当然、それを承知する会員の登録(名簿式)、及び出先職員については変則勤務可のパート・臨時職員の採用」、「業務従事弁護士へは成果主義となり、日当等は原則無し」、「自らの才覚で直受して収入を確保し」、「兎も角上納できる仕事振りを!」となってしまう。会は「意欲ある人がやるので人件費負担圧縮、管財事件と似た事業型業務展開で上納期待は大」との、まことにビジネスライクの「会センター斡旋・紹介弁護士による民業」施設となる。これを他業界に喩えれば、「初回診察料無料の都立病院出先診療センター」乃至は「医師会立病院センター」が土日夜間可・年中無休」を謳い文句にするようなもの。蒲田センターの問題は、畢竟、営業面での公的優位性を武器にした不公正競争問題であり、これは我々が幾ら努力しても及ばず、本来普遍性を持った筈の「弁護士業務基本有料制」が、よりにもよって一般会員支援・後見役である会によってなし崩しになるのは、若手対策・蒲田限定だからと云って看過できない。結局、以降は「会員(開業)法律事務所時代」から「弁護士会・テラス直営各地各種センター時代」へと切り替わっていく嚆矢になる。日弁連レベルでも、「公設事務所・法律相談センター」七月特集号報告には、「無料化は自治体や裁判所からの紹介も期待できる反面、個々の法律事務所の有料相談に与える影響」等を考慮してそこまで踏み切る会はない旨、記述しているのに、赤字の既存センターが営業センター化することの見通し(東弁会報リブラ七月号竹之内前会長インタビューは、この方向の必要性を強調)と、傘下会員の事業基盤を会の公的権威とその発揚を名分にして否定しかねない今次の流儀を、若手支援・蒲田限定でとか、初回限定と言いながら二回以降も事実上無料化となるとかを看過していいのか。一・二弁との調整は失敗と聞くが、単独見切り発車でいいのか、またコールセンター機能を重視すると言うが、その対象エリア(と明記する神奈川・埼玉・千葉)の隣接会への手当・根回しが抜けていることや、地元関係者で対抗上生じうる事務職員労働条件劣化懸念(長時間・夜間・土日対応とパート・派遣化の促進傾向)」等、様々な疑問があるが、当方も徒に事を構えることなく、意欲的な会センターの発足を祝福する度量は失いたくないとは思料している故、率直真摯な対応を望みたい、と云うものである。(問題の意義)蒲田センターは、人件費コスト最少・営業意欲全開型である故、事務職員を含む勤務条件にも大きな影響を及ぼしそうであり、東京城南のみならず、隣接三県、また、日弁連相談センター関係を通して全国展開の可能性さえある。然しその大義名分として、東弁前竹之内会長曰くには、「より大きく言えば、権力に対する批判勢力として、市民運動や労働運動などが衰退しつつある状況下で弁護士会が果たす役割を大きくして行くことが必要」と説示されている。気負いの東弁が全国に先駆けて善を為すのはよいが、それが何やら自由法曹団系の我々が目指した、人民奉仕の志しとその物質的基盤である事務所の全国的・地域的ゾーン展開と同じようなものを会が実現するのだと取れる。その一方での真に権威的・体制的な招待客一覧とのギャップがある。問題の身近なところで、東部法律事務所とビルを同じくする錦糸町センターは三会共同で業務時間も常識的だが、今回の蒲田は「民事当番弁護型」の、人件費負担が気にならない登録名簿紹介・派遣型で、電話と相談タダ故の公的諸団体総応援となる直受誘引で、経営(運営)側には真に魅力的、そして事実上複数事務所的メリットを享受できそうな登録(弁)もご同慶であろう。もともと、人口増政策への安易な賛同に源を発し、その結果でもある「若手・ビギナーズ対策」が絡んだ厄介な問題である。一面で、センターによる事件掘り起こしの反射経済効を指摘する人もいるが、会の権威・信用を背景にする側を相手にするやりにくさもある。ともあれ、アクセス改善を名分に突進一路に傾斜した従来の公益・専任スタッフ型センターの赤字問題解決の展望がない故の強行方針なので、一・二弁が反対するから方針変更があるかも!とは、大甘かと云うのが目下の情勢であろうか。


事務所学習会を開催しました

埼玉支部  根 本 明 子

 去る六月六日、当事務所は、恒例の事務所学習会を開催しました。

当事務所では、毎年概ね二回、地域の方に向けて、学習会を開催しています。毎回、その時期に合ったテーマを設定し、そのテーマの専門家を招き、講演をいただいています。例えば、昨年の春は、原発事故をテーマに科学ジャーナリストに、秋は、世界経済をテーマに経済学部教授に、講演していただきました。

 先日の学習会では、「子どもの貧困を考える〜貧困の連鎖を断つために〜」というテーマの下、貧困世帯の教育問題に取り組んでいらっしゃる高校教員の白鳥勲先生に講演をいただきました。

 生活保護受給世帯の子どもたちは、そうでない世帯の子どもたちと比べ、高校進学率が低いという指摘があります。埼玉県では、県の事業として、生活保護受給世帯の中学生の学習を支援する「アスポート教育支援事業」が行われており、白鳥先生は、この事業の中心的役割を担っています。学習会において、白鳥先生には、教育現場で直面した貧困家庭の子どもたちの現状や、世代間で連鎖する貧困を克服する取り組みについて、お話しいただきました。

 講演の後は質疑応答の時間を設け、約二時間で閉会しました。

 今回の学習会の参加者は八十名(所員を含む)で、その属性は様々でしたが、日頃当事務所とお付き合いのある地域の方々、教員、議員が多数参加されました。

 参加者が多数に及んだため、会場は満席となり、質疑応答の際も、閉会時間ぎりぎりまで参加者から質問が寄せられるなど、盛況のうちに終わることができました。

 次回の学習会は、今秋を予定しています。テーマはまだ決まっていませんが、今回行ったアンケート結果も考慮して、地域の方が関心を寄せるテーマを設定したいと考えています。