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前川 雄司 東京都知事選での宇都宮弁護士への支援の御礼
石崎 和彦 国家公務員法違反二事件に最高裁判決
―猿払大法廷判決は事実上覆された。―(前編)
吉川 健司 福井における大飯原発運転差止訴訟提訴のご報告
広田 次男 いわき市からの報告
藤田 温久 今こそ、知恵と経験を交流し勝利への展望を
─一一・二三争議権利闘争討論集会の報告 ─
上田 月子 「労働者派遣法と有期労働契約法の抜本的再改正をめざす全国会議」のご報告
平松 真二郎 首都圏建設アスベスト訴訟・東京地裁判決
鴨田  譲 アスベスト被害
曙ブレーキ工業提訴のご報告
川人  博 本の紹介 『清冽の炎』 永尾廣久弁護士の大河小説が完結
千葉 恵子 自由法曹団女性部主催・大森典子団員による
「日本軍『慰安婦』」勉強会の感想
中野 和子
島貫 美穂子
〜女性部新年学習交流会&新人歓迎会のご案内〜
荒井 新二 若杉直美展のご案内



東京都知事選での宇都宮弁護士への支援の御礼

東京支部  前 川 雄 司

 一二月一六日に総選挙と同日実施された東京都知事選挙において、団と東京支部が支援決定した宇都宮けんじさん(宇都宮健児弁護士・日本弁護士連合会前会長)は残念ながら勝利には至りませんでした。

 開票結果は次のとおりです。

  猪 瀬 直 樹   四三三万八九三六票

  宇都宮 けんじ    九六万八九六〇票

  松 沢 しげふみ   六二万一二七八票

  笹 川 たかし    一七万九一八〇票

 なお、前回二〇一一年の開票結果は次のとおりでした。

  石 原 慎太郎   二六一万五一二〇票

  東国原 英 夫   一六九万〇六六九票

  わたなべ 美樹   一〇一万三一三二票

  小 池 あきら    六二万三九一三票

 全国の団員の皆様には募金や支持拡大などさまざまなご支援をいただき、ありがとうございました。

 一一月六日の四〇氏声明は、(1)日本国憲法を尊重し、(2)脱原発を進め、(3)教育に民主主義を取り戻し、(4)貧困・格差と闘う都知事の実現を訴え、九日に宇都宮さんが出馬を表明し、「人にやさしい東京をつくる会」の活動が始まりました。

 団は一一月一七日の常任幹事会で支援を決定し、東京支部は二一日の幹事会で支援を決定しました。

 一一月二六日には在京弁護士三七二名の賛同により共同アピールを発表し、また、宇都宮さんと「人にやさしい東京をつくる会」には著名人を含む多くの人々から応援の声が寄せられました。

 政党では、国民の生活が第一・日本未来の党、日本共産党、社会民主党、みどりの風、東京・生活者ネットワーク、緑の党、新社会党が支持を表明しました。

 支部団員と事務局員は次のような諸活動に取り組み、さまざまな新しい経験やつながりを広げました。

(1)関係する諸団体や地元の「勝手連」などとともに支持を広げるこ と

(2)目標を立てて支持を拡大すること

(3)「人にやさしい東京をつくる弁護士の会」や「人にやさしい東京 をつくる若手弁護士の会」などの活動に参加し、弁護士への支持 をひろげること

(4)「人にやさしい東京をつくる会」の法規対策に協力し、選挙活動 等の自由を広げ、妨害や弾圧と闘うこと

 それらの報告等はそれぞれの団員から投稿があるものと思います。

 それらの貴重な経験やつながりを今後の活動に生かし、「人にやさしい東京」をぜひ実現したいと思います。

 なお、寄付金控除を受けるためには次のような手続が必要とのことです。

 公職選挙法により皆様方から平成二四年一一月一二日より平成二四年一二月三一日までに「人にやさしい東京をつくる会」指定の「振込先口座」にお振込みいただいた金額が対象となります。

 寄付金控除を受けるためには、「人にやさしい東京をつくる会」が寄付者の(1)氏名、(2)住所、(3)職業、(4)寄付金額、(5)寄付年月日を記載した「寄付金控除のための書類」を作成し、総務省に提出する必要があります。

 この書類が必要な方は、送金後に上記必要事項(1)〜(5)およびどの銀行口座にお振込されたかを明記して、

 メール:kifu@utsunomiyakenji.com

 または

 FAX:〇三(三三五一)九九〇三

にお送りください。

 これらの内容が明確な方、かつ五〇〇〇円以上の寄付金をいただいた方を対象に「寄付金控除のための書類」の作成をいたします。

 その他、詳細は「人にやさしい東京をつくる会」のホームページ

  http://www.utsunomiyakenji.com/support/kifu.html

をご覧ください。


国家公務員法違反二事件に最高裁判決

―猿払大法廷判決は事実上覆された。―(前編)

東京支部  石 崎 和 彦

一 二つの国公法違反事件

 二〇一二年一二月七日最高裁第二小法廷(千葉勝美裁判長)は、国家公務員が赤旗号外と東京民報号外を配布したことが、国家公務員法一一〇条一項一九号、一〇二条一項、人事院規則一四―七第六項七号一三号に該当するとして二〇〇四年三月に起訴されていた社会保険庁職員〔目黒社会保険事務所係長〕であった堀越明男氏と赤旗号外を配布したとして二〇〇五年九月に起訴されていた厚生労働省大臣官房課長補佐であった宇治橋眞一氏に対する判決を言い渡した。

 両名共に、国家公務員が休日に国政選挙の時期に赤旗号外を撒いたという事件であるが、最高裁判決に先立つ二〇一〇年に言い渡された東京高裁での判決は、対照的であった。

 堀越明男に対する判決は、「人事院規則一四―七第六項七号一三号の規定が形式犯を定めたものだとすることは言論の自由にかかるものであるから認められない。むしろ実質的な危険の存在が要件とされている。裁判官の場合でも、『組織的、計画的又は継続的政治上の活動を能動的に行う行為』のみが禁じられているのであり、それとの対照でも一般の公務員の政治活動の禁止に対する罰則規定は慎重な判断が必要であり、裁量の余地のない職務に従事する被告人が休日に職務や職場と関係なく、公務員であることが判明しないような風体で、ポストに投函しただけの行為なので構成要件に該当せず無罪。起訴事実に国公法一〇二条一項一一〇条一項一九号人事院規則一四―七第六項七号一三号を適用するのであれば適用は憲法二一条違反である」とした。(二〇一〇年三月二九日、中山判決)。

 宇治橋眞一に対する判決は、「猿払判決は全く正しいもので、時代が変わったとして変更すべきものではない。国公法の規制は政治活動をすることによる具体的な弊害を問題にするものではなく、行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するための予防的な制度的措置であるので、政治文書の配布は政治的偏向の強い行為であり、行為のうちに抽象的危険が擬制されているものであるから、公務員の行為による現実の危険発生の有無を考慮する必要はなく有罪である」とした。(二〇一〇年五月一三日、出田判決)

 国家公務員法・人事院規則について全く異なる二つの高裁判決がなされたのである。

 堀越明男の事件に対しては、検察官が上告を、宇治橋眞一の事件に対しては弁護団が上告した。

 最高裁の判決の結果は、共に上告棄却、堀越氏無罪宇治橋氏有罪というものであった。

 あたかも、両被告人に対する高裁判決の中間を取ったようにも見えるが、実は両事件に対する今回の最高裁判決は、公務員の政治活動の自由という観点からすれば、猿払判決を覆す画期的な意味を持つものであった。

二 本判決の意味―猿払判決の事実上の変更

 この一二月七日の判決は、一九七四年の国家公務員法・人事院規則について公務員の政治活動禁止と罰則を合憲だとした猿払判決を事実上覆すものとなっている。

 猿払判決は、公務員の労働基本権を認める最高裁判決に危機意識を抱いた自民党政府が、一九六〇年代末から最高裁裁判官を入れ替え、公務員の労働基本権を認める最高裁判例を覆し、裁判所内部の統制を行って青年法律家協会の裁判官の追放を行った司法反動の一環として、一九七四年になされた大法廷判決である。

 猿払判決は、詭弁と論理のすり替えによって場無理やり現行国家公務員法一一〇条一項一九号、一〇二条一項、人事院規則一四―七第六項が合憲だとした判決で、現業公務員の選挙ポスター貼付に国公法一〇二条一項一一〇条一項一九号人事院規則一四―七第六項を適用することは違憲であるとした高裁判決を破棄した最高裁判決であって、公安警察の公務員監視と干渉の根拠とされてきたものである。

判決は、この猿払大法廷判決を事実上変更したのである。

(1) 猿払判決の法理

 猿払判決は、「もし公務員の政治的行為の全てが、自由に放任されるときは、おのずから公務員の政治的中立性が損われ、ためにその職務の遂行ひいてはその属する行政機関の公務の運営に党派的偏向を招くおそれがあり、行政の中立的運営に対する国民の信頼が損われることを免れない。」として、「全ての政治活動が自由に放任されたとき」という、およそありえない想定をして、そこから直ちに公務員の政治活動禁止の根拠とし、「本件行為のような政治的行為が公務員によってなされる場合には、当該公務員の管理職・非管理職の別、現業・非現業の別、裁量権の範囲の広狭などは法の目的を阻害する点に、差異をもたらすものではない。」「公務員の政治的行為禁止の趣旨からすれば、勤務時間の内外、国の施設の利用の有無、職務利用の有無などは、その政治的行為の禁止の合憲性を判断する上においては、必ずしも重要な意味を持つものではない」「公務員の政治的中立性を損うおそれがあるものと認められる政治的行為を禁止することは禁止目的との間に合理的な関連性があるものと認められ、たとえその禁止が公務員の職種・職務権限、勤務時間の内外、国の施設の利用の有無を区別することなく、或いは行政の中立的運営を直接、具体的に損う行為のみに限定されていないとしても、合理的関連性が失われるものではない。」として、公務員の政治活動を一律に全面的に禁止することを合憲であるとし、行政の中立的運営を直接具体的に損わない行為を禁止しても憲法二一条に違反しないとした。

 その上で、現業職員である猿払郵便局員であり猿払地区労事務局長であった被告人を有罪としたのである。

(2) 今回の判決の法理

 これに対して、今回の判決は、「行政の中立的運営が確保されるためには、公務員が政治的に公正かつ中立的な立場にたって職務の遂行に当たることが必要」とし「国民は表現の自由として政治活動の自由を保障されており、この自由は民主制の政治過程にとって不可欠の重要な権利であることに鑑みると、法令による公務員に対する政治的行為の禁止は、国民としての政治活動に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきもの」『このような一〇二条一項の文言、趣旨、目的や規制される政治活動の重要性に加え、同項の規定が刑罰法規の構成要件となることを考慮すると、国公法一〇二条一項に言う『政治的行為』とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損うおそれが観念的なものにとどまらず、現実に起こりうるものとして実質的に認められるものを指し、同項はそのような行為類型の具体的な定めを人事院規則に委任したもの』「本規則も同項の委任の範囲において公務員の職務の遂行の政治的中立性を損うおそれが実質的に認められる行為の類型を規定したものと解すべき」「本規則六項七号、一三号(五項三号)についてはそれぞれが定める行為類型に文言上該当する行為であって、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損うおそれが実質的に認められるものを当該各号の禁止の対象となる政治的行為と規定したものと解する」とした。

 人事院規則一四―七第六項に文言上該当する行為であるというだけでは足りず、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損うおそれが実質的に認められる行為でなければ、各号の規定する構成要件に該当しないと、明言したのである。

 そして、「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損うおそれが実質的に認められるかどうかは、当該公務員の地位、その職務の内容や権限等、当該公務員がした行為の性質、態様、目的、内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当である。」「具体的には、当該公務員につき、指揮命令や指導監督等を通じて他の職員の職務の遂行に一定の影響を及ぼしうる地位の有無、職務の内容や権限における裁量の有無、当該行為につき、勤務時間の内外、国乃至職場の施設の利用の有無、公務員の地位の利用の有無、公務員により組織される団体の活動としての性格の有無、公務員による行為と直接認識され得る態様の有無、行政の中立的運営と直接相反する目的や内容の有無が考慮の対象となる」とし、このような要素を検討して「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損うおそれが実質的に認められる政治的行為」だけを禁止しているのだから、国公法一〇二条一項・人事院規則一四の七第六項は合理的なものであり、憲法二一条一項三一条に反するものではないとした。その上で、「(堀越明男の本件配布行為は)管理者的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員と認識し得る態様で行われたものではないから、公務員の職務の遂行の中立性を損うおそれが実質的に認められるものとはいえない。本件配布行為は本件罰則規定の構成要件に該当しない。」としたのである。

 この判決は、あくまで国公法一〇二条一項、人事院規則一四―七第六項の解釈であるとしながら、政治活動の自由は国民の重大な権利であることや立法目的等を総合的に考えると、法令による公務員に対する政治的行為の禁止は、国民としての政治活動に対する必要やむを得ない限度に限られるべきものであるとし、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損うおそれが観念的なものにとどまらず、現実に起こりうるものとして実質的に認められるものでなければ、禁止される政治的行為ではない、としたのである。

 この手法は紛れもなく合憲限定解釈であると思われるが、千葉裁判長は補足意見を書いてまでして、合憲限定解釈ではないと強弁している。

 合憲限定解釈であるか単なる構成要件解釈であるのかはともかく、明らかに猿払判決とは異なり、合憲だと言う為に徹底的に禁止される政治活動の範囲を絞り込んだのである。(続)


福井における大飯原発運転差止訴訟提訴のご報告

福井県支部  吉 川 健 司

 二〇一二年一一月三〇日、全国各地の原告一五四名(内一一一名が福井県民)が、関西電力に対し、大飯原発三・四号機の運転差止を求めて、福井地裁に提訴しました。

 大飯原発に対する運転差止等を求める裁判としては既に大阪地裁と大津地裁に、再稼働禁止を求める仮処分が申し立てられています。

 しかし、運転差止を求める本訴は、一一月二九日に京都地裁に提訴されたものと、今回の福井地裁に対する提訴が初めてです。

 今回の提訴を求める原告らの活動は、二〇一二年二月ころから始まりました。提訴にこぎ着けるまで、約一〇か月かかったことになります。この間、世話人となった方々が、原告となる方を一五四名まで集め、組織することの苦労は、傍から見ていても、大変なものでした。

 もともと、福井県は、県内に一四基の原子炉があり、原発関連の税収は、福井県や嶺南地域の自治体の収入のかなりの割合を占めています。また、原発関連の産業により収入を得ている県民も多数います。原発推進を掲げる自民党の議員が小選挙区を独占しているという保守的な地域でもあります。それゆえ、福島第一原発事故が発生するまでは、原発に反対する県民というのは、かなりの少数派でした。

 もちろん、福島第一原発事故発生後は、福井県内においても、原発に疑問を持つ県民がかなり増えました。しかし、前述のような原発推進の仕組みにより、原発への疑問を表明することに勇気がいることは変わらないままでした。

 その中で、一一一名もの県民が原告になったことは、福井県内における脱原発への動きを実感させるものでした。また、様々な事情から原告にはならないものの、訴訟を支える会に加入した方も一五〇名に達しました。

 このような原告らの熱意におされて、脱原発弁護団全国連絡会の弁護士、もんじゅ訴訟の弁護団であった弁護士、公害・環境問題に関心のある弁護士を中心に、総勢七五名の弁護団が結成されました。

 今回の訴状において、原告団・弁護団が最大の問題としたことは、大飯原発が活断層の真上にあるのではないか、という点です。

 既にマスコミでも報道されていますが、原子力規制委員会の調査団が大飯原発敷地内にある破砕帯を調査した結果、調査団の渡辺満久・東洋大教授は、破砕帯が活断層であると指摘しました。また、少なくとも、他の調査団メンバーも、活断層であることを否定できていません。

 そして、原子力安全委員会が作成した「発電用原子炉施設の耐震安全性に関する安全審査の手引き」には、活断層上に原子炉建屋が設置されることは想定していないこと等が明記されています。これは、原子炉建屋を活断層上に設置してはならないことを意味します。

 大飯原発敷地内の破砕帯が活断層であれば、地震により、大飯原発において重大事故が発生する危険性があるため、永久に運転してはならないことになります。そして、破砕帯が活断層である可能性が否定できない以上、地震による重大事故発生という取り返しのつかない事態を防止するために、運転を止めることが必要であるといえます。

 今回の訴訟におけるもう一つの主張の柱は、福島第一原発事故の事故原因の解明が全く不十分なままであり、それゆえ、その事故原因を踏まえた安全審査指針の改訂もされておらず、新しい安全審査指針を踏まえた安全対策も確立されていない状況において、原発を再稼働させることは許されないという点です。

 例えば、従来の安全審査指針によれば、長期間の全電源喪失は考慮しなくてよいとされていました。しかし、福島第一原発事故は、長期間の全電源喪失が現実に発生することを明らかにしました。また、従来の安全審査指針は、単一故障指針を採用し、ある安全装置が一つ故障した場合においても他の装置によって事故に対処できればよいとしていました。しかし、福島第一原発事故により、一三台あった緊急電源用ディーゼル発電機のうち一二台が地震もしくは津波によって破壊され、冷却水の循環に失敗しました。単一故障指針は、現実の事故によりその妥当性を否定されたわけです。

 そもそも、現実の事故においては想定外の事態が生じうるため、予め全ての事態を予想して、事故対策を講じることは不可能です。そのため、どのような事態が生じても、重大な事故とならないようにするために、安全審査指針を定め、十分な安全マージンを確保させるというのがこれまでの原子力安全委員会等の考え方でした。ところが、福島第一原発事故は、従来の安全審査指針が全く不十分なものでしかなかったことを明らかにしました。それゆえ、対症療法的に、津波対策、電源対策をするだけでは、現実に発生しうる想定外の事態に対応できるとは限らない以上、安全審査指針の抜本的な改定と、それによる安全対策が講じられることが必要といえます。

 福島第一原発事故の発生により、これまで、原発訴訟において、住民側をことごとく敗訴させてきた裁判所の判断の妥当性が問われています。

 しかし原発推進を掲げる政党が国会において多数派を占め、また、全ての電力会社が原発の再稼働を狙っている現状において、原発訴訟において勝訴することが困難であることに変わりはありません。

 それでも、日本において二度と原発事故を起こさせないため、全力でこの裁判に取り組む決意です。


いわき市からの報告

福島支部  広 田 次 男

提訴

 二〇一二年一二月三日、福島県双葉郡からの避難者四〇名が東京電力(以下「東電」)を被告として、総額一九億四三六七万円余の支払を求める損害賠償請求訴訟を福島地裁いわき支部に提訴した。

我国初の原発事故による集団提訴であり、福島原発被害弁護団(以下「当弁護団」)は、今後、第一陣二次、三次提訴を予定し準備を進めており、原告数は最低でも数百人規模に達する予定である。

他方、いわき市の居住者を中心とする低線量被曝についても、同様に数百名規模での提訴準備が進められている。

○ 提訴の理由

 事故後、二回目の正月を迎えようとする今日まで、東電が誠意ある対応を全く示そうとしないばかりか、被害者の窮状につけ込んで、人参を鼻先にブラ下げる如き対応に終始した事に尽きる。

以下、三点の事実を指摘する。

一 (ADR)

 二〇一一年九月一日から受付の始まったADRに於いて、二〇一二年一一月二日時までの一年二ヵ月の間に於いて、全部和解成立の件数はわずか八四二件に過ぎない。八四二件に止まっている原因は、東電が被害者の要求に対して、歩み寄りをしない事に基因する。成立した八四二件の殆どは、逆に被害者が東電主張に譲歩した事により成立している。

二 (提訴前請求)

 当原告団、弁護団による提訴前の四次に亘る事前請求に於いても東電の低額回答は常軌を逸するものであった。即ち請求総額三三億六三一七万六四五六円に対し、東電回答額九四六五万六五七八円であって、その回答額は請求額のわずか二・八一パーセントの低額に過ぎなかった。

三 (具体的規準)

 各被害者の具体的な損害額および算定基準は分明ではなく、被害者は生活再建の目途を建てる事が未だに不可能な状況にある。

○ 当弁護団の提訴した他の訴訟の動向について触れておく

 二〇一二年三月二一日に福島地裁いわき支部に提訴した「石船訴訟」は一二月一二日に早くも第四回期日を迎える。

 争点は、損害額算定規準を再取得価格もしくは簿価(ないし評価額)のいずれとするかの点に絞られつつあり、他の原発訴訟についても多大の影響を与えるものと思われる。

 二〇一二年五月一五日・同九月一八日の二次に亘り、福島地裁本庁に提訴した「自死事件」は訴訟救助の是非を審理しながら精神科医師の意見書の提出を予定している。訴訟救助は最高裁での争いとなっているが、他の原発訴訟への影響もあり、判断が注目される。

 いずれの事件についても、東電は「因果関係なし」として強い抵抗の姿勢である。

○ 訴訟の背景に横たわる被害者の状況を紹介しておく

 結論として、ナニヒトツ解決せず、矛盾と混乱が深まっている。

一二月三月付新聞は、東京の弁護士が三〇人の請求者による一〇〇億円のADR申立を行った旨を報じている。

 この時期に、このような巨額のADR申立の当否は疑問であるが、展望がないとしか思えない同様な行動が繰り返されている。

 この点にも被害者の焦りが感じ取れる。

 除染作業は遅々として進まない。前提となる中間貯蔵所も、その前提である仮置き場の大半も決まらないから、「除染」されたと称する土や枝葉は庭の隅に積まれ、ブルーシートが被せられたままである。

 他方、自治体は次々と復帰宣言をして、町や村への帰郷ないしその決意を促している。「将来が見えない。現在が不安だ。国と東電は何をやるつもりだ。」等々、混迷・疑心・不安が渦巻いている。

 提訴はその方向性を指示するものとして、敢えてこの時期に行ったが、果たして弁護団の考えた様な結果を出せるか否か、予断を許さない。

○ 要望

 被害地域では圧倒的に斗う弁護士が不足しており、現場への参加を心よりお願いする次第です。

二〇一二年一二月六日


今こそ、知恵と経験を交流し勝利への展望を

─一一・二三争議権利闘争討論集会の報告 ─

神奈川支部  藤 田 温 久

 今年も、一一・二三争議権利闘争討論集会が集会実行委員会(自由法曹団神奈川支部、神奈川労働弁護団、神奈川労連、かながわ地域運動交流)の主催で、横浜市健康福祉センター(桜木町)で開催されました。同集会は、八〇年代〜九〇年代に、神奈川県内の思想差別、潮流間差別など差別争議を中心に実践的・具体的経験交流と勝利のために何が必要かを討議・研究するため活発な議論が行われていた集会を、一〇数年の中断期間を経て、昨年再開したものです。

 当日のプログラムは以下の通りです。

(1) 全体会 JAL争議の現状と展望・課題(弁護団・争議団)

(2) 分科会

 (1)第一分科会「解雇制限・整理解雇基準確立争議交流と課題」

   問題提起](団支部)藤田温久「裁判官の頭を変える裁判所内外の闘い」

   討論]資生堂、日産、いすゞ、JAL、ハリソン、神奈川フィル等(当該)、国労、全国一般、JMIU等(労組)、各弁護団、労働審判員

(2)第二分科会「労働委員会の現状・課題と活用」

   問題提起](労弁)井上啓「県労委配点状況と命令から見る現状と課題」

   討論]神奈川生協、立花学園等(当該)私教連、生協労連、全労協全国一般、自治労連、Cユニオン等(労組)、各弁護団、労側参与委員

(3)第三分科会「公務員攻撃・公の解体との闘い」

   問題提起](団支部)川口彩子「構造改革・公務の民営化とその弊害」

   討論]賃下げ裁判等(当該)国労、自治労連、国公労連、全厚生等(労組)神奈川社保庁弁護団、公のあり方懇談会

(3) 全体会

 (1)各分科会報告

(2)山家悠紀夫先生講演「消費税の大ウソ〜賃上げ・雇用創出で景気回復を」

 I 消費税増税が必要だという論拠が、以下に大ウソであるか、

 II 暮らしを良くするため、日本経済を良くするためには(1)賃金を上げること、(2)社会保障制度を充実させることが必要であること、

 III そのための財源を一時的にはどこに求め、恒久的にはどこに求めるか、を詳細なデータ、グラフなどに拠って明らかにし、経済に疎い人にも政府・財界・マスコミが流す情報が大ウソであること、暮らしと日本経済良くするためには何が必要かを心から納得できる素晴らしい講演でした。

三 総括

 参加者総数は一六〇人以上(三〇労組、一七団体、弁護士:一〇事務所二一名) 参加者は共催各団体ばかりか、その外の団体にも広がり、県労委労側参与、労働審判員等多様でした。全体会は講演、質問に対する回答いずれも非常に好評でした。労働事件を裁判所、労働委員会で闘う上でも、労働運動を闘う上でも、目指すべき方向性を論拠と共に確信できました。分科会は、それぞれ問題提起に沿った形での発言が多くなされ、有意義でした。私達が、闘う労働者をナショナルセンターの枠を超え結集し、争議団、労組、弁護団、労側参与、労働審判員、学者等あらゆる知恵と経験を持ち寄り交流することの重要性が確認できた一日でした。

 非正規切裁判や、JAL訴訟、アスベスト訴訟などで不当判決が相次いでいます。各判決の背景に、「大企業の経済活動の規制になるような判決は日本経済をだめにする」、「東日本大震災以降の日本では国家に負担を負わせるような判決は日本をダメにする」というプロバカンダに犯された裁判官の頭の中身が見えます。裁判官に限らず、財界・マスコミのプロバカンダに犯された人々の頭を変えること、そのための闘いの契機となる集会でした。なお、懇親会は野毛の「叶屋」(女優樹木希林の実家)で行い、山家先生にも出席していただき、深夜まで議論が盛り上がりました。


「労働者派遣法と有期労働契約法の抜本的再改正をめざす全国会議」のご報告

事務局次長  上 田 月 子

 平成二四年一二月八日、午後一時から、団本部において、標記の全国会議が行われた。都知事選、衆院選の八日前であり、選挙イベントや他の法律家団体の集会とも重なっていたが、全国から二四名の方にご参加いただいた。

一 報告

(1)まず、(1)政府財界の「労働規制改革」戦略、(2)改正労働者派遣法の活用と抜本的再改正の必要性、(3)有期労働契約法の活用と抜本的再改正の必要性、(4)パート法改正の動きの四点について報告がなされた。

(2)(1)政府財界の「労働規制改革」戦略については、解雇の自由化(柔軟な雇用ルール)や、雇用の基本を有期とすること、定年制を廃止して四〇歳定年とすることなどが議論されていることや、派遣に関する規制の緩和が狙われていることなどが報告された。

(3)(2)労働者派遣法の改正については、日雇派遣の原則禁止も例外が広く設けられていること、派遣元の派遣料金やマージン率の公開義務についても事業所における平均額で良いとされるなど、改正が不十分であることなどが報告され実態の掘り起こしを図るべきことが指摘された。

(4)(3)労働契約法の改正については、労働契約法一八条に関して、使用者側がクーリング期間を活用することを目論んでいること、厚労省が無期転換された労働者の解雇について「正社員と当然には同列に扱われることにならない」と指摘していること(厚労省作成のパンフレット)、一九条に関して不更新合意や更新上限期間が問題であること、などが報告された。

(5)(4)パート法改正については、雇用形態を理由とする待遇差別を絶対的に禁止し、私法的効力を有する八条を、合理的な相違を許容する均衡待遇の原則に基づく規程に改正することが労政審の建議で示唆されており、日弁連がこれに反対していることなどが報告された。

二 討論

(1)パート法八条の要件

 人材活用の仕組・運用の同一性という要件が非常に問題であり、この要件を撤廃し、仕事内容で判断すべきだとの意見が出た。

(2)労働契約法二〇条の施行通達

ア 通勤手当

 特段の理由がない限り、無期と有期の労働者で通勤手当に差を設けることに合理性は認められないとしている。そこで、特段の理由とは何かという点で議論となった。

イ 食堂の利用

 配置変更可能性で食堂の利用の可否が決まるのはおかしい、何となく有期と無期は違う、と考えるのをやめて、厳密に考えなければならない、などの意見が出た。

ウ 慶弔費

 慶弔費において均等待遇がなされていない実態が語られ、このような差別はなくすべきとの意見があった。

(3)契約解除の際の就業斡旋義務

 法律に明記されたので、契約解除の際の派遣先の就業斡旋がもはや努力義務ではないということがより明確になった。

(4)今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会

  (略称:在り方研)

 「在り方研」は、ヒアリングをする人選が偏っているという意見など、そもそも「在り方研」の「在り方」を批判しないといけないという意見が出た。「在り方研」にきちんと釘をさしていくためには、リーマンショック以降の働かせ方が変わっていないことを示し、登録派遣、製造業派遣の悲惨な現状をぶつけていくしかない、という意見が出た。

三 非正規裁判闘争の現状と課題

 ホンダ、ダイキン、日産、パナソニック、いすゞ、JALなど、およそ一〇件の裁判闘争の報告があった。 報告の中で、以下のようなことが語られた。

 不更新条項の有効性について、同様に不更新条項の有効性が争点となった明石書店事件との比較がなされた。

 偽装請負是正として直接雇用された有期労働者の二年六か月の上限規定が有効とされた。原告の一人は一八年以上も勤めていた。

 二〇〇九年三月に雇い止めとなった事案で、今年の六月五日に忌避申し立てをしたが、それ以来、審理が停止していた。尋問予定を組み直し、改めて証人申請をすることにした。

四 行動提起

 以下のような行動提起がなされた。

(1)改正労働者派遣法と改正労働契約法の検討を深め、労働組合と一緒に学習会を行おう。

(2)裁判闘争を通じて、派遣労働者、有期労働者の権利を擁護して行こう。

(3)来年三月ころにシンポジウムを行うことを検討しよう。

五 次回の労働問題委員会会議

 平成二五年一月一〇日の一八時三〇分から団本部で行うので、是非参加していただきたい。


首都圏建設アスベスト訴訟・東京地裁判決

東京支部  平 松 真 二 郎

 一二月五日、東京地方裁判所民事第四三部(始関正光裁判長)は、首都圏建設アスベスト訴訟において、国の責任を認め、原告のうち一七〇名に総額一〇億円余りの賠償を命じる原告ら勝訴判決を言い渡した。

 首都圏建設アスベスト訴訟は、建設作業に従事した際に石綿粉じんに曝露した結果、肺ガン、中皮腫、石綿肺等の重篤な石綿関連疾患に罹患した患者及び遺族が、国及び建材メーカー四二社を被告として提訴した事件である。二〇〇八年五月第一次原告が、二〇一〇年五月に第二次原告が提訴し、原告患者数はあわせて三〇八名にのぼる。石綿関連疾患には、予後が極めて悪いという特徴があり、提訴前に既に半数近くの原告が死亡しており、提訴後判決までの間に原告患者のうち一九九名が死亡している。

 東京地裁は、一九七二(昭和四七)年頃までに石綿が中皮腫あるいは肺がん等の重篤な疾患を発症させる危険があるとの知見が確立しており、労働大臣(当時)は、昭和五四年頃には、労働安全衛生法に基づき、石綿粉じん対策として防塵マスクの着用や石綿含有建材につき粉じん曝露の危険性に関する警告表示を義務付ける等の規制措置を講じる義務を負っており、これらの義務を果たすべく省令制定権限を適切に行使していれば、建設作業従事者の健康被害の拡大を相当程度防止できたと判示し、この不作為は国賠法一条一項の適用上違法であると判断した。

 しかしながら、労働安全衛生法の保護対象は「労働者」に限られるとして、「一人親方」「零細事業主」については、同法の保護対象外であるとして、原告らのうち一三五名について請求を棄却する判断を示している。このような判断は、建設作業現場における作業実態としては違いはなく、石綿粉じんへの曝露実態にも違いがないにもかかわらず、形式的な就労形態によって救済対象を「労働者」に限定し、そうでない者との線引きを図るものであって不当な法解釈であると言わざるを得ない。

 また、判決では、建基法に基づく規制権限の不行使については、違法性を認めなかった。弁護団では、「労働者」として扱われない「一人親方」や「零細事業主」についても、建設大臣は建基法に基づき工事関係者の保護義務を負っており、「労働者」を含む全ての建設作業従事者の生命・健康が保護されるよう適時適切に規制権限を行使して、救済対象外の者が出ないようにすべきであったと主張してきたところであって、労働者と「一人親方」とを線引きして保護対象とする判断は到底容認できるものではない。

 さらに、判決は、被告建材メーカーらが、条理あるいは信義則に基づいて警告表示義務を負っていながら、その義務の履行を怠った過失を認めながら、建材メーカー間の関連共同性を認めず、各メーカーが製造販売した石綿建材と各原告の疾患発症との間の因果関係が不明であるとして、被告メーカーの責任を認めない判断を示している。

 これらの判断は、石綿粉じんの危険性を認識しながら、利益追求のために警告表示義務を怠った被告メーカーを免罪するものであって、不正義な判断であると言うほかない。

 本判決は、被告メーカーの責任を免罪した点で極めて不十分な判決にとどまるものではあるが、一方では建設作業従事者に石綿関連疾患を発生させた国の責任を認めており、原告団及び弁護団が目指してきた「アスベスト被害根絶」に向けて前進したものであろう。

 今後は、被告メーカーの法的責任を明確にさせるべく、また「一人親方」等の救済を勝ち取るべく東京高裁に控訴し、控訴審での戦いにまい進することなる。

 東京地裁判決が、各地で戦われている建設アスベスト訴訟に少しでも良い影響が及ぶことを願うところである。


アスベスト被害

曙ブレーキ工業提訴のご報告

埼玉支部  鴨 田   譲

一 はじめに

「西のクボタ、東の曙」。曙ブレーキ工業は、埼玉県羽生市に国内本社を置く世界的な自動車部品メーカーであり、関西の株式会社クボタと並んで石綿を大量に使用する代表的な企業といわれてきました。曙ブレーキは、主に自動車用・鉄道用ブレーキの生産を行ってきましたが、そのブレーキ製品の生産過程では、大量のアスベスト粉じんが発生していました。今回原告となった方は、曙ブレーキ羽生工場において石綿製品の製造作業に従事してきた労働者あるいはその遺族の合計一四名です。多くの方は一九六〇年代から曙ブレーキでの労働に従事し、中には一九五〇年代から、実に四〇年以上の長期にわたって働いてきた方もいます。ブレーキ製品の製造過程において、原告らは、その作業中に石綿粉じんを大量に吸引し続け、その結果として石綿関連疾患に罹患し、遺族原告は大切な家族を失いました。しかし、原告らはその受けた被害に関して、加害者である曙ブレーキから今日に至るまでなんらの謝罪も受けておらず、また謝罪の証としての賠償も受けておりません。そこで、曙ブレーキの法的責任を明らかにし、原告らに対する誠意ある謝罪と被害に見合った賠償の実現を目指して、埼玉の自由法曹団員を中心に「曙ブレーキ工業被害対策弁護団」(団長・南雲芳夫、事務局長・竹内和正)を結成し、被害者の会や支援者との話し合いを重ね、一一月二八日、さいたま地裁に訴訟提起を致しました。

二 訴訟提起までの道のり

 曙ブレーキ弁護団は、被害者の会、支援者らとともに二年以上前から曙ブレーキのアスベスト被害の実態把握に努め、相談会等を複数回実施しました。その上で、本年三月一二日には、被害者の会、支援者、弁護団の二〇名以上で、曙ブレーキ羽生工場に赴き、直接被害者への謝罪、賠償、誠実協議の申し入れを行いました。しかし、曙ブレーキは要望書を受け取るのみで何ら回答はしませんでした。

 その後、曙ブレーキは代理人を通じて見舞金の提案等を行ってきましたが、これは曙ブレーキの損害賠償責任を認めるものではないため金額もこちらの要求とはかけ離れたもので、また、謝罪の意思も感じられないものでした。

 曙ブレーキのこのような誠意ない態度に、被害者の会も弁護団も、曙ブレーキと話合いを続けてもこちらの要求が認められることはないと判断し、今回の訴訟提起に踏み切りました。

三 訴訟提起当日の様子

 訴訟提起当日は、まず、原告団、弁護団、土建組合員の方などの支援者で決起集会を行いました。原告の方の「ようやく今日の日を迎えられた。」という言葉から、これまで被害を受けながらも声を上げられずに苦しんできたことがうかがえました。

 その後、マスコミを呼び、「曙ブレーキ工業は、アスベスト被害の責任を認め償え!」と書かれた横断幕を掲げ、さいたま地裁までの一〇〇メートルほどを三〇名以上で行進しました。訴状が受理されたあとは記者会見を行いました。原告の方々から、アスベスト被害の苦しみと曙ブレーキに対する想いを語って頂きましたが、石綿関連疾患の重篤さ、家族を亡くした悲しみ、曙ブレーキの不誠実な対応への怒りに満ちていました。

四 今後の予定

今後、弁護団は二年以内の解決を目指して訴訟活動をしていきます。それとともに、曙ブレーキのアスベスト被害者はまだまだいるはずですので、元従業員やその家族を対象に説明会を実施し、新たな原告を募り、二次提訴もしていく方針です。


本の紹介 『清冽の炎』 永尾廣久弁護士の大河小説が完結

東京支部  川 人   博

 永尾廣久弁護士(福岡)が七年間にわたって執筆してきた青春大河小説『清冽の炎』が完結した(全七巻、著者名神水理一郎は、永尾氏が思いをこめたペンネーム)。

 第一巻から第五巻までの小説の舞台は、一九六八〜六九頃を中心とした大学闘争の時代。そして今年秋に刊行された第六巻、第七巻は、一九八〇年、九〇年代を経て二一世紀のいまを描いている。登場人物は、一九六〇年代後半から七〇年代前半にかけて学生時代にセツルメント活動に参加した人々〈団塊〉とその子たち〈団塊ジュニア〉が中心である。といっても、いまの若い世代にとっては、セツルメント活動といってもピンとこない人がほとんどだろう。先だって法学系学生に尋ねてみたら、「settlement=和解のことですか?」と答えた者がいた。学生サークルとしてのセツルメント活動とは、学生が工場地帯などの地域に入り、たとえばこどもたちに勉強を教えたりするボランティア活動の一種で、かつては大都市の地域ごとにとても盛んだった。私が入学した一九六八年当時のキャンパスには、これらセツルメントサークルへの勧誘立て看板が林立していた。

 第一巻から第五巻では、セツルメントで活動し、また大学闘争に参加して、熱い青春時代を送った学生たちの姿が描かれたが、近刊の第六巻、第七巻では、数十年の歳月のなかで、彼らがどのような職業に就き生きてきたのか、そして彼らの子たちが父親母親をどのように見ていま何を考えて生きようとしているのかが描かれている。

 全国の弁護士の皆さんには、以下のような理由で、ぜひご一読を薦めたい。

 その一。弁護士になった登場人物、法廷シーンなどを通じて、とくに、団塊、団塊ジュニアの弁護士の皆さんには、自らの弁護士、法律家の原点を見つめ直す良い機会となると思われる。さまざまなタイプの弁護士が登場して、ほかに裁判官、官僚、企業人事部の描写など考えさせられる内容が盛りだくさんである。

 その二。いまでは消滅した学生セツルメント活動ではあるが、その神髄は、現代のさまざまなボランティア活動にもつながる多くの示唆を与えてくれると思う。とくに感じたのは、多くのセツラー(セツルメント活動参加者)がその後の人生を通じて、学生時代の活動を楽しくなつかしい思い出として抱き続けていること。この楽しさとは何によってもたらされているのだろうか。

 その三。一九六八年当時に関心をもつ方々には、大学闘争(この小説では主として東大闘争)の真実は何であり、それはどのように評価されるべきかについて、この小説を題材として考察していただきたい。「大学闘争=全共闘運動」という形に歪曲されてきた歴史観・運動観を批判的に検証していく貴重な教材といえる。と同時に「非全共闘」、「反全共闘」の活動の意義と問題点を考えていく資料でもあると思う。

 その四。著者によれば、「さっぱり売れないのが、とても残念です」とのこと。著者らしいジョークを含んだ本音と受けとっています。著者にこれまで何かしらお世話になった方々には、著者の長年の執筆活動に敬意を表して、「義理」でもぜひ一読をお願いしたい。「全七巻を読むのはきつい」という方は、六巻と七巻だけでもぜひ。六巻と七巻には、五巻までのあらすじも詳しく説明されていますので、十分理解可能です。読後には、きっといまを生き抜く何かを得ることができるでしょう。


自由法曹団女性部主催・大森典子団員による

「日本軍『慰安婦』」勉強会の感想

東京支部  千 葉 恵 子

 二〇一二年一二月一七日、 大森典子部員による「日本軍『慰安婦』」についての女性部主催の勉強会がありましたので、感想を書きたいと思います。

 私は、この問題については裁判はもう終わっているので、現状はどうなっているのかと思い、学習会に参加しました。ところが、勉強会でこの問題は終わっていない、それどころか、動いているということを知り、とても刺激を受けました。

 確かに二〇〇七年四月二七日に最高裁が上告を棄却する判決、決定を出して裁判としては終わっています。けれども、それ以後も大森部員は、中国の被害者の方を訪問して、日本の状況を説明して励ましている、解決へ向けて活動していることを知り、大森部員の活動のすごさ、ねばり強さに感銘を受けました。

 勉強会での被害女性に対する性暴力、扱いのひどさ、それがその後もその女性の精神にどれだけの影響を与えるかの話しについては、とても辛く、自分がそんなことをされたら、そして娘がそんなことになったらと思うと本当に耐えられないという気持ちになりました。

 勉強会では経過についておおよそ

・一九九一年に金学順さんが初めて名乗り出たこと

・一九九三年の河野洋平内閣官房長官の談話のもつ意義

・一九九五年の女性のためのアジア平和国民基金が被害女性を分断 し、日本人にも補償済との認識を持たせてしまったこと

・二〇〇〇年から二〇〇八年まで民主、共産、社民で解決促進法を 提出していたけれど、二〇〇九年に民主党政権になった途端に民 主党は提案すらしなくなったこと

 などについての話しがありました。

 さらに、二〇〇七年にアメリカ、オランダ、カナダ、EUで日本政府に謝罪と賠償を求める決議がなされたこと、その事も契機として安倍晋三総理がお腹がいたくなり、辞めたことについても触れられ、今振り返ると、なぜこの人が今さらの思いへとつながりました。

 国際関係として、

(1)二〇一一年八月三〇日に韓国の憲法裁判所で、韓国政府が、従軍慰安婦の賠償請求について日本政府と日韓請求権協定の手続に従って解決せずにいる不作為決定を違憲であるとする決定を出したことにより、

 二〇一一年、何度か韓国政府から日本政府に対して協議の申し入れがなされたが、対応がないこと

(2)二〇〇八年一〇月に国連自由権規約委員会より「慰安婦」制度について法的責任を受入、被害者に受け入れられかつ尊厳を回復するような方法で無条件に謝罪し、存命の加害者を訴追し、すべての生存者に権利の問題として十分な補償をするための迅速且つ効果的な立法・行政上の措置をとり、この問題について学生及び一般大衆を教育し、被害者の名誉を傷つけ、あるいはこの事件を否定するいかなる企ても反駁し制裁すべきである

 との勧告を受けているにもかかわらず、全く進んでいない現状などを聞き、今日の問題として感じました。

 さらに、二〇一二年八月には

 橋下大阪市長が「軍に暴行、脅迫を受けて連れてこられたという証拠はない。」「河野談話は最悪」、

 石原東京都知事(当時)が「ああいう貧しい時代には売春は非常に利益のある商売だった。貧しい人達は仕方なしに、しかし決して嫌々でなしにあの商売を選んだ。」「訳がわからずに認めた河野洋平っていうバカが、日韓関係を駄目にした。」と発言したという話しに他の国、国連が言うことが全て正しいということはないと思いますが 自分の「常識」「主張」だけが正しいと思い、被害を受けた人に思いを馳せられない人は本当にひどいと思いました。

 長くなりましたが、まとめますと大森部員の勉強会はとても素晴らしかったです。

 資料としてブックレット(六〇〇円)、「歴史の事実と向き合ってー中国人「慰安婦」被害者とともに」 大森典子部員著、二〇〇八年一二月二〇日初版、新日本出版社(一六〇〇円)などをお持ちいただきました。

 その後の、忘年会もお食事、飲み物がおいしく、雰囲気のあるお店で話しも楽しかったです。

 新年学習会は、一月一六日、五時三〇分から弁護士会館で行います。一時間ほどの学習会の後、新年会を行いますので、是非ご参加下さい。


〜女性部新年学習交流会&新人歓迎会のご案内〜

東京支部  中 野 和 子(女性部部長)
千葉支部  島 貫 美 穂 子(事務局・担当)

 部員の皆様、六五期の皆様におかれましては、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

 さて、このたび、六五期の皆様への歓迎の意を込めまして、下記のとおり新人歓迎会(兼新年学習交流会)を行います。

 ふるってご参加くださいますようお願い申し上げます。

 準備の都合・予約等がありますので、恐縮ですが、平成二五年一月一〇日(木)までに出欠席をお知らせ下さい。

☆新年学習交流会☆

《 日 時 》二〇一三年一月一六日(水) 一七時三〇分〜一八時三〇分

《 場 所 》弁護士会館 一〇〇八号室(一〇階)

《 テーマ 》サービス業としての弁護士の心得と接客マナー 〜プロから学ぶ!接客術〜

 (株)資生堂元監査役、ニ弁「男女共同参画基本計画」策定当時から有識者委員を歴任され、現在、都労働委使用者側委員もつとめておられる大矢和子先生をお招きして、社会人・弁護士としての心得、依頼者・職場関係者との接し方・距離の持ち方(クレーム対応も含む)、法廷・打合せなど各場面にあった化粧の仕方などについて、ご講義いただきます。

☆新年会兼新人歓迎会☆

《 日 時 》同日 一八時四〇分〜(上記交流会終了後)

《 場 所 》日比谷、銀座近辺のお店(追ってご連絡致します)

     会費は、五五〇〇円+お飲み物代となります。(六五期は無料です)

 二〇一二年一月一六日(水)一七時三〇分〜一八時三〇分 

 新年学習交流会実施場所:弁護士会館一〇〇八号室(一〇階)

自由法曹団女性部新人歓迎会出欠アンケート(回答用紙)

下記のいずれかに○をつけて一月一〇日(木)までにご返信下さい
  弁護士 島貫 美穂子(千葉中央法律事務所)行き
             電 話 〇四三-二二五-四五六七
             FAX 〇四三-二二五-一五〇七

新年学習交流会に     出席します     欠席します

新人歓迎会に       出席します     欠席します

支部・期(      )支部・(  )期

事務所 (             )法律事務所

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   ※MLに登録させていただきます。

 団女性部の活動についてのご意見、ご要望等ございましたら、ご遠慮なくお寄せ下さい。

 今後の活動に活かしてまいりたいと存じます。


若杉直美展のご案内

東京支部  荒 井 新 二

 今年は、古希団員になられた方からご丁寧に、団から贈られた記念品についてのご礼状を、例年になく多くいただきました。

 記念品は小さな急須ですが、作家である陶芸家若杉 集氏は、環境を大事にのモットーで、最小限の土で作陶し続けておられます。

 既報のとおり栃木県・益子在住の若杉氏は、大震災で被災されました。今年東京で開かれた個展で、奥様が三・一一の年末に亡くられたことを聞きました。同じ作家仲間であった奥様(直美さん)は絵付け練込みの食器シリーズを追求され、おふたりの共同展を楽しみにしていました。度重なる悲報に激励の言葉もみあたらず、ともかく団からの仕事を継続していって頂きたいとの執行部からの申し入れを伝えました。

 その奥様の遺作展が下記のとおり開催されるとのことです。

 私から団員のみなさまにご案内申し上げる次第です。

「若杉直美遺作展」 協力 若杉集氏

 期 間  二〇一二年一二月一八日から一二月二四日

 場 所  中央区銀座五―五―九 阿部ビル四F
       AC・ギャラリー

 電 話  〇三―三五七三―三六七六