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川岸 卓哉 福島原事故被害者の東京電力・国交渉の報告
伊藤 和子 映画・「約束〜名張毒ぶどう酒事件死刑囚の生涯〜」涙が止まらなくて・・・
岡田  尚 大風呂敷を広げず 勝つまでたたまず(その一)
―竹澤哲夫先生へのオマージュ―
田場 暁生 日隅一雄・情報流通促進賞/情報流通促進援助制度に応募を!
緒方  蘭 給費制廃止違憲訴訟の現状報告とご支援のお願い



福島原事故被害者の東京電力・国交渉の報告

東神奈川支部  川 岸 卓 哉

 本年二月二〇日に、衆議院第一議員会館において、福島原発事故の被害者が東京電力・国に対して行った交渉を報告する。

 今回の交渉は、昨年一一月に行われた交渉に引き続くもので、全国公害被害者総行動実行委員会をプラットホームにして、全国の原発事故被害者が一同に結集して臨んだ東電・国交渉である。今回も、福島現地の被害者の会(いわき、福島県北、南相馬、相馬・新地)、避難者の会(米沢、沖縄)、「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発事故被害弁護団、福島原発被害弁護団の各弁護団、全国公害弁護団連絡会議などから約二〇〇名が参加した。東京電力と、経産省、文科省、復興庁、環境省、厚労省といった国の各省庁を同席させ、各地の被害者が生の被害を訴える迫力ある交渉は、四時間に及んだ。

 今回は、廃炉、賠償、医療、生活再建の四つを重点項目とし、その他、原発労働者、福島原発被害補償法の制定について交渉が行われた。

 今回の交渉において、福島原発事故に対する東京電力・国の加害者としての自覚の無さが露呈したのは、避難者の健康被害の検査費用の賠償を求める場面であったといえる。東京電力は、現在、福島県の「県民健康管理調査」にかかる費用のうち相当額を東電が負担しているとして、検査費用の賠償に応じていない。そこで、交渉団がこれに対し賠償を求めたところ、東京電力の担当者は、「個別に事情を伺って決める」「中間指針を踏まえて相当因果関係のある損害を払う」などと、お決まりの無内容な回答をくり返した。これに対し、強制避難区域外である茨城から沖縄に七歳の子をつれて避難した母親が、子どもからセシウムが検出された検査結果を、東電担当者の面前に突きだし訴えた。しかし、東電担当者は「健康に影響があるかどうかはわからない。」「健康被害が出るかもしれないという不安感が合理的かどうか。」と驚くべき回答をし、会場の参加者の怒りを買い騒然となった。交渉団は、この東電担当者の発言に対し、その場に同席させていた経産省・環境省に、東京電力に対し適切に指導するよう省内に持ち帰って検討することを強く要求した。また復興庁に対し、被災者・こども支援法の進捗が不十分であることも原因であることを指摘し、検討の加速を求めた。東電・国は双方に責任をなすりつけ合う態度であるが、両者同席の下での今回の交渉は、双方の責任を明確に突きつけることとなった。

 今回の交渉では、東電に廃炉その他の問題について現地説明会を実施すると約束させたこと、検査費用・医療機関までの交通費・除雪費用などの賠償について検討すると約束させたこと、復興庁が被災者・こども支援法について検討を加速することを約束させたことなど、一歩ずつではあるが進展があった。

 本年三月一一日以降、各地で原発事故被害者が東電・国に対する集団訴訟を提起する。これらの訴訟と同時並行で、今後も具体的成果を積み重ねるべく、交渉を継続していくこととなる。全国の原発事故被害者・弁護団が結集し、東電・国に対し迫る本枠組みでの交渉の意義は大きい。より大きく発展・充実させていくよう、弁護団としても尽力していく。



映画・「約束〜名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯〜」涙が止まらなくて・・・

東京支部  伊 藤 和 子

 二月一六日から東京・渋谷のユーロスペースのロードショー公開となった、映画「約束〜名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯〜」。

 冤罪名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんを主人公にした映画です。私が弁護士になった一年目から取り組んできた死刑冤罪事件ですが、この死刑囚の人生を仲代達也さん、樹木希林さんという他に望みえないベスト・キャストで演じていただき、映画が完成しました。

 私も初日に見に行きましたが、初日とあって、立ち見が出る盛況でした。

 ちょうど、仲代さんと樹木希林さんの舞台挨拶があり、お話を聞くことができました。

 私はこんな素晴らしい名優のお二人が出演してくださったことに心から感謝していたので、お二人の姿をみただけで感無量でした。しかし、お話を聞くうちに、本当にお二人がこの事件について強い覚悟と決意のうえで、取り組んでくださったことがわかりました。司法批判を含む内容なので「もうこれで仕事がなくなる」という覚悟をもって取り組んでくださったとのこと。体制批判をする作品に参加するというのは日本でもとても大変なことなのか、と改めて思いましたが、それでも出てくださったお二人の真摯さに打たれて、最初から涙。

 仲代さんは、「私はえん罪と信じています。もし、このまま奥西さんが亡くなったら、司法が殺人者になると思っています」と強い口調で訴えられ、役者人生をかけてでも奥西さんの冤罪を訴える強い姿勢に感銘を受けました。

 そして、映画。奥西死刑囚を演じた仲代さんの演技が本当に素晴らしく、感動的なので、場面場面、すべてが泣けてしまいました。

奥西さんの母を演じた樹木希林さんは本当に迫真の演技で、子を思う母の思いを溢れるように演じられています。奥西さんの若いころを演じた山本太郎さんも、明るさ、人の好さが暗転してしまうところを実によく出されています。

 時々、本物の奥西さんの写真や映像が出てきて、それも泣けました。監督・制作陣が所属する東海テレビは長い間、名張事件の取材を続け、様々な映像・写真を保有していて、その最も印象的な場面を選びぬいて映画に差し込んでいるのです。

 映画にはもう一人重要な人物として、川村さんという神様のような支援者の方が出てきます。この支援者が奥西さんと面会することにより、死刑囚の孤立無援の戦いに一筋の光がさし、救援運動がひろがっていきます。私も心から尊敬してきた川村さん(故人)のことを思い出し、本当に落涙していました。

 奥西さんの悲しみや苦しみのシーンもいいのですが、死刑囚という絶望のなかで見出す喜びのシーンが心を打ちます。しかし、喜びの後にはいつも悲しみがくるのです。残酷なばかりにその繰り返しなのですが、それでも、奥西さんは生き抜いてきたのです。

 「約束」というタイトルの意味するところも本当にせつない。

「約束」を果たせないまま、次々にかけがえのない人たちを失い、年老いた奥西さんが、「死んでたまるか」とつぶやくシーンが胸を打ちます。

 私は現在八王子医療刑務所にいる奥西さんに時々面会にいくのですが、本当に強い人で、絶対生き続けて冤罪をはらす、絶対に負けない、という驚くほど強い意志にしばしば接します。その強靭な意志がどのように形成されてきたのか、映画は痛いほどよく描いています。

 このように、どの場面でも感情が揺すぶられ、涙が止まりませんでした。

 少し涙が収まって楽にみられるのは、事件の問題点を理論的に説明するときだけです。しかし、それでも、「冤罪はなぜ起こるのか」を映画の中で解説する元裁判官までインタビューを受けながら涙を流している映画なんですよね。

 後半に入ると、司法が何度も何度も奥西さんを翻弄し、救済の道を閉ざす決定を出し続けるシーンが続き、事件の理不尽でひどい展開をこれでもかこれでもかと見せてくれます。

 それは私自身のリアルな体験そのものでもあり、悲しい記憶の再現なのですが、映画は不当な決定を受けた直後の奥西さん、弁護人、支援者の怒り・悲しみの表情を、愛情をもって克明に描くことを通して、その対極にある司法の非情さ、冷酷さを浮き彫りにしています。

 私自身、未だかつて映画でこれほど泣き続けたことはなかったのですが、終わって周囲をみると、事件関係者でなくても、あまりの非情な展開に絶句したり、泣かずにはいられなかったようです。

 私にとって、名張事件は弁護士になりたての頃から関わっている事件であり、不当にも救済が遅れているために、ライフワークになり、日常生活の一部になってしまっています。

 毎日怒り、悲しんでいるわけにはいきませんから、あきらめず、楽観的な気持ちをもって、活動するほかありません。しかし、それが改めていかに不当で異常なことなのか、生身の人間に対してどんなに深い罪を司法が犯しているのか、渾身の怒りとやさしさをもって、描き出し、私たちの前につきつけてくれたのがこの映画です。この不正義をこのまま許していいのか!と。

 現在、第七次再審請求は最高裁に係属中です。何より、最高裁の担当裁判官・調査官にこの映画を見てほしい、人間であればだれでも怒りを感じざるを得ないと思われる、この事件の実情を受けとめて、一日も早く、生きて奥西さんを救済してほしい、と願わざるを得ません。

 そして、一人でも多くの方に見に行っていただき、事件に関心を寄せていただきたい、そして無実の人を救い出す運動に関わっていただきたいと思います。ユーロスペースでは、三月中旬まで上映していますが、観客が多ければロングランになります。全国各地での上映も予定されています。

 この事件の冤罪性が、映画を通じてひとつの社会現象のように多くの人の話題になり、注目されることは、司法にもうこれ以上救済の遅延・救済の否定を許さない、ひとつの確実な力となることでしょう。皆様のご支援・ご鑑賞をよろしくお願いいたします。



大風呂敷を広げず 勝つまでたたまず(その一)
―竹澤哲夫先生へのオマージュ―

神奈川支部  岡 田   尚

 二月九日、「竹澤哲夫さんを偲ぶ会」に参加した。一七〇名余に及ぶ方たちが参加した。竹澤先生に対する多くの人たちの尽きせぬ想いを聞きながら、文集「人権ひとすじ―竹澤哲夫を語る―」に一文を寄せるとの約束を果たしていなかった我が身を恥じて、遅ればせながら拙文を書かなければならないと思い至った。総評弁護団、日本労働弁護団での活動を基軸にしてきた私が、竹澤先生に対しこんな想いを持っているとは、知ってる人は少なかろうし、実は、おそらく竹澤先生もご存知なかったかもしれない。

 私は弁護士になったばかりの一九七四年六月、全国税関労働組合の、東京、横浜、大阪、神戸の四支部と四三〇名の組合員が提訴した賃金差別事件と三年目になろうとする一九七六年二月提訴した多摩川水害訴訟でご一緒した。いずれもが、二七年と一八年に及ぶ長期裁判であった。両方共、私が弁護団で一番の若手であった。両事件とも、勝ったり負けたりしたが、最終的には、最高裁で勝利した。いずれも国の責任を認めた画期的な判決であった。竹澤先生は二つの事件共、弁護団長として関与されたのだから、たたかいの途中でも勝利で終わった後でも、大風呂敷を広げたり、自慢話されてもいいと思うけど、全くそんな素振りはみせられなかった(私ならやるな〜)。この二つの事件と、竹澤先生の尽力がなければ、少なくともあの時期に立法化されることはなかったであろう刑事確定訴訟記録法にまつわる三題噺をして竹澤先生を偲びたい。

○「岡田さん、国にとってもこんな有難迷惑な判決はない。絶対ひっくり返せるよ」

―全税関賃金差別事件―

 全税関賃金差別事件は、東京、横浜、大阪、神戸の各地裁に同時に提訴した。弁護団長は、東京が竹澤哲夫先生(三期)、大阪が宇賀神直団員(一一期)、神戸が小牧英夫団員(一〇期)と、自由法曹団の大御所が並ぶなかで、横浜だけが圧倒的に若く、伊藤幹郎団員(二二期)が主任で、私(二六期)が事務局長的役割であった。伊藤さんと私は、組合間差別事件については、労働委員会闘争の経験から、それなりの自負を持っており、自由法曹団の大御所の先生方には、刑事弾圧や思想・信条差別事件については、遠く及ばないかも知れないが、組合間差別はむしろ横浜が引っ張って行く位の気概を持っていた。

 一九九二年一二月二四日、横浜地裁は、全面敗訴の悪夢のクリスマスプレゼントをよこした。前年の神戸の敗訴、大阪の勝利判決を受けて、「ここで横浜で勝って一気に流れを決めるぞ」との思いは強いものがあっただけに、ショックは大きかった。しかも内容がひどかった。

 賃金差別の争点である(1)組合間の賃金格差の存否(2)賃金格差が税関当局による全税関労組弱体化あるいは壊滅を狙った不当労働行為意思に基づくものであるか否か、という二点について、判決は原告主張通り認めた。賃金差別もやりました、研修差別もやりました、組合からの脱退勧奨もやりました、全税関対策を税関のみならず大蔵省関税局で統一的・組織的にやりました、と被告国が訴訟で必死になって否定したことをいとも簡単に認めてしまったのである。

普通なら、これで原告勝訴の結論である。ところが判決は、一転税関当局が全税関対策を立て、組合弱体化のために不利益取扱いをしたことを、「正しい」と認定したのである。何故正しいか。全税関は違法な組合活動をくり返す「悪い集団」であるから、当局がこれを弱体化させ、壊滅を狙い組合からの脱退勧奨をはじめ諸施策を立てるのは当然だと言うのである。

 しかも、「原告組合員の中に日本共産党員ないしその同調者と見られる職員が相当数いる」等と原告も被告も主張したことがない事実を認定し、本件はまぎれもない組合間差別事件であるのに、原告が主張していないにも拘わらず「原告らは原告らの掲げる思想・信条だけを理由に当局から不当な弾圧を受け、差別を受けたと主張する」と決めつけた。訴訟当事者の主張の中心点をここまで歪曲されたのでは裁判にならない。

 JRへの採用差別を争った全動労事件で、「国鉄の分割民営化という国是に反対した者は差別されて当然」とした二〇〇二年一〇月二四日の東京高裁判決と同旨で、裁判官の反共意識が露呈していた。

 全国弁護団会議で、若さにまかせて、威勢のいい言動をくり返していた私は、まさかの敗訴判決に頭を垂れショゲ返っていた。その時、竹澤先生は、こう言った。「岡田さん。この判決は税関当局が不当労働行為をやったと認定しているのだから、国にとっても有難迷惑、ホメ殺しの判決だよ。事実認定では勝っている。評価があまりにも片寄ってる。こんな判決は司法という大きな枠の中では絶対認められないはずだ。高裁でひっくりかえせるよ。」

 大先輩の竹澤先生からのこの慰めと激励は、申し訳なく穴でも入りたい心境だった私にとっては、ありがたく、救われる思いがした。そして高裁では、竹澤予言通り逆転勝利した。

 全税関事件では、東京は他の三支部と比べると訴訟進行がトラック二周ほど遅れていた。東京の原告団と弁護団は、そのことを全く気にしないというか配慮しないというか悠々と仲良く釣りやテニスや旅行を一緒にし、宴会では「あの」竹澤先生が座布団を二つ折りにして、それを赤子に似せて抱き、「赤城の子守歌」を歌ったりして楽しんでいた(と私には思えた)。伊藤さんや私は、「東京が賃金格差について客観的資料が豊富で一番立証が尽くされている、これに正森成二国会議員のところに送られてきたマル秘文書で不当労働行為性が十分立証できる。なんで東京はぐずぐずしているんだ」と、この遅れを批判した。竹澤先生は、「権力相手の裁判は、そう甘いもんではないよ。」と若い私たちをたしなめたかったのだろうがマトモに反論せず「東京地裁だからね。それぞれのやり方でいいんじゃない。」と言われた。そして、東京は、横浜判決から二年半後の一九九五年五月に東京地裁で勝利判決を獲得した。結局、四事案とも最高裁までいったが、東京だけが三勝〇敗だった。

 なお、この拙文の表題は、馬奈木昭雄団員の「たたかい続けるということ」(一六〇頁)に豊田誠団員のことを「大風呂敷を広げるが、それをたたむ(決着をつける)ことができる人」と紹介されていることにヒントを得て、竹澤先生的に私がもじったものである。



日隅一雄・情報流通促進賞/情報流通促進援助制度に応募を!

東京支部  田 場 暁 生

一 情報流通促進賞/情報流通促進援助制度を創設しました

 昼夜を惜しみ、表現の自由・情報公開・国民主権の促進のために活動していた日隅一雄弁護士(第二東京弁護士会)が、二〇一二年六月一二日に四九歳の若さで亡くなりました。日隅さんは産経新聞の新聞記者として出発し、一九九八年に弁護士となってからもNHK番組改変事件、沖縄密約情報公開事件、グリーンピース鯨肉事件など表現の自由と情報公開に関する多くの訴訟を手がけました。

 二〇一一年五月二五日、日隅さんは末期胆のう癌で余命半年と告知されました。当時、日隅さんは、東京電力の福島原発事故以来、連日、インターネットメディア「NPJ(News for the People in Japan)*」編集長として東電記者会見場に赴き、正確な事実を明らかにするため鋭い質問を繰り返していました。それから一年余、日隅さんは、病魔と闘いながら、東京電力の会見に通い続け、「検証福島原発事故・記者会見」(共著)、「『主権者』は誰か」、「国民が主権者になるための五つの方法」などを刊行しました。

 また、日隅さんは、「原発と報道」、「審議会」、「内部告発と秘密保全法」、「情報公開」などをテーマにしたNPJ連続対談企画など、多くの方々との対談や講演を重ねました。日隅さんの弁護士、そしてジャーナリストとしての一生は、表現の自由の確立と情報公開の推進等を通じて市民に主権を取り戻すという目標に貫かれていました。

*NPJ:弁護士やジャーナリストを中心に、憲法と人権を守る市民の側から情報発信するインターネットニュースメディア。梓澤和之弁護士や私(田場)など多くの団員が運営に関与し、憲法問題などについて連載を持ち、さらには裁判などの情報提供をいただいています。

 「日隅一雄・情報流通促進基金」は、日隅さんの生前の志と功績を発展させ、表現の自由の確立と情報公開の推進を通じて市民に主権を取り戻すために活動を続ける人々を支援することを目的として、二〇一二年一二月一二日、日隅さんをしのんで寄せられた皆さまからのご厚意をもとに設立されました。本基金では、以下の事業を行います。

(1)メディア制度の改革のための政策提言活動

(2)「日隅一雄・情報流通促進賞」の贈呈(表現の自由・情報公開・国民主権の推進等に優れた活動をした個人・団体に対する表彰・賞金の贈呈)

(3)「日隅一雄・情報流通促進援助制度」による財政援助(ジャーナリスト等の表現活動を擁護する法的サポート費用の援助)

二 日隅一雄・情報流通促進賞

 本賞は、故・日隅一雄氏が願った「市民が主人公になる社会」の実現に向けて活動する個人や団体を顕彰し、支援を行うことを目的に創設されました。本賞は、表現の自由、情報公開、国民主権などに関する幅広い活動を対象にし、選考します。自薦・他薦を問わず、どなたでも応募できます。

 対象者は、マスメディア、市民メディア、市民運動、芸術活動などを想定していますが、限定はしていません。活動の作品や成果物があるか否かも問いません。

 受賞者には、賞金三〇万円を贈呈します。以下の要綱で募集しますので、多数の応募をお待ちしています!

【募集要項】

●提出書類

 所定の応募・推薦用紙に必須事項を記入してください。

 応募・推薦用紙は「日隅一雄・情報流通促進基金」のウェブサイト(http://hizumikikin.net/award)からダウンロードしてください。

 郵送をご希望の場合は、基金事務局までご連絡ください。

●書類の受け付け方法

 受付期間内に、提出書類を「日隅一雄・情報流通促進基金」事務局まで郵送してください。FAX、電子メールでのご応募はご遠慮ください。

●選考方法

 書類選考で最終選考の候補を選び、最終選考では三人の委員(落合恵子氏、津田大介氏、岩崎貞明氏)による協議のうえ、決定します。

【締切】二〇一三年三月三一日

【発表】五月上旬に「日隅一雄・情報流通促進基金」ホームページで発表

【表彰式】六月一二日 

三 日隅一雄・情報流通促進援助制度

 本制度は、表現の自由・情報公開・国民主権の促進に資する事件について金銭的な援助(一事件上限一〇万円)を行うものです。

 この援助制度の背景には、日隅さんの実践があります。日隅さんは、類稀なる理論家であり、ジャーナリストでありましたが、それ以前に何よりも弁護士でした。前述のように、表現の自由・情報公開・国民主権にかかわる事件に全身全霊を賭けて取り組んだ日隅さんの志と功績を発展させるため、表現の自由・情報公開・国民主権の促進に資する事件に対し、援助を行います。

 なお、事件についての相談を受けている弁護士からのみ援助制度の申込みを受け付けますのでご注意ください。

【募集要項】

●提出書類

 所定の申請用紙に必須事項を記入してください。

 申請用紙は「日隅一雄・情報流通促進基金」のウェブサイト(http://hizumikikin.net/enjyo/)からダウンロードしてください。

 郵送をご希望の場合は、基金事務局までご連絡ください。

●書類の受け付け方法

 随時受付しています。相談を受けている弁護士から提出書類を「日隅一雄・情報流通促進基金」事務局まで郵送またはFAXにて送付してください。

●選考方法

 当基金の審査員による厳正な審査の結果、援助の可否を決定します。

【情報流通促進賞応募先及び情報流通促進援助制度申込先】

〒一〇一-〇〇四一 東京都千代田区神田須田町一-三

          NAビル四階

       日隅一雄・情報流通促進基金

       TEL:〇三-三二五五-八八七七

          FAX:〇三-三二五五-八八七六 

          Email:azusawa@azusawa.jp

応募・申込お待ちしています!



給費制廃止違憲訴訟の現状報告とご支援のお願い

東京支部  緒 方   蘭

一 はじめに

 二〇一一年一一月二七日から一年間、私たち新六五期は、史上初めて貸与制の下で司法修習を受けました。給費を一切受けられない状態での修習は、経済的・精神的に苦しく、また、国家が法曹養成を軽視していると感じざるを得ないものでした。

 私たちは現在の貸与制に疑問を感じ、去年の秋頃から給費制訴訟の検討を始めました。

二 現在の情勢

 内閣に設けられた「法曹養成制度関係閣僚会議」の下にある「法曹養成制度検討会議」(以下、単に「検討会議」という。)は、給費制を含む修習生の経済的支援を検討しています。しかし、本年一月三〇日、検討会議は、議論を尽くさないまま、貸与制を前提に、今後、司法修習生間の公平性を確保するために何らかの必要な措置が講じられないか検討すべきであるという方向性を打ち出しました。

 検討会議の資料等を分析した限りでは、この必要な措置は、遠方の修習地に配属された者に対する住居手当の支給等、部分的な不公平の是正のみが念頭に置かれているといえ、これでは国による法曹養成の軽視や修習生の苦しい状況を根本的に解決できません。私たちはやむなく給費制廃止違憲訴訟を提起することを決定しました。

 また、私たちは従来の運動とともに、政治的解決も視野に入れて活動していきます。検討会議は、今後、パブリックコメントの素案を四月九日に確定し、パブリックコメントを四月末から五月にかけて実施する予定です。私たちは従来の運動体と協力し合い、パブリックコメントの収集も行います。

三 訴訟団の現状

 訴訟団の獲得目標は、訴訟で勝つこと、及び、運動面から給費制を復活させることです。この訴訟は厳しい結果が予想されるため、絶対に勝つつもりで取り組む必要があります。しかし、同時に、法廷の外から国民世論を高めて裁判所を追い込んでいく運動も必要となります。

 現在、原告は約二二〇名、代理人は約三七〇名になります。

 提訴予定地は、札幌、福島、東京、名古屋、関西、広島、福岡です。提訴は準備ができた箇所から行う予定で、第一陣の提訴は、福島、東京、名古屋、広島を予定してます。なお、関西はマンパワーが足りないため、関西の原告を名古屋にあわせて提訴することも検討しています。

 提訴時期について、三月六日を第一次提訴日として検討していましたが、検討会議が一月三〇日に具体的なとりまとめをせず、また、パブリックコメントの時期も延期されたため、より良い時期に提訴するべく、提訴時期を延期することにしました。パブリックコメントの実施の時期に合わせて提訴を行う予定です。

四 訴状の内容

 私たちは、行政事件で勝訴の可能性を少しでも高くするためには、あらゆる請求と主張を立てるべきだと考えました。本訴訟では、国家賠償請求、損失補償請求(憲法二九条三項)、旧裁判所法に基づく請求、修習生が労働者に当たることを前提とする最低賃金法に基づく請求の四つの構成を検討しています。ただし、これらの請求をすべて訴状に載せるとは限りません。

 訴状は現在、弁護団以外の方にも積極的に公表し、ご意見を求めることにしております。

五 訴訟団の今後の方針とご支援のお願い

(一)今後の方針

 給費制の問題は、司法修習生の経済難の問題であると捉えられがちです。しかし、私たちは、給費制の意義の主眼は、国家が責任をもって市民のために法曹を養成する点(法曹の公益性)にあると考えております。この意義を重視して、広く国民に理解を呼びかけていきたいと思います。

 今後は、広く運動を展開していく予定です。具体的には、各県弁護士会への働きかけや、法曹以外の市民の協力を求めるサポーターズクラブの設立、関連団体との協働を検討しております。県弁護士会の中には、所属弁護士の約四分の一が代理人に就任してくれたところもあります。

(二)団員の皆様へご支援のお願い

 これまで私たちは上の期の先生方からご意見を伺うことなく自分たちで方針を決めることが多くありましたが、それでは視野の狭い訴訟団となり、運動が立ち行かなくなることを実感したため、その点を反省し改め、多くの先生方のご意見を伺いたいと考えております。とりわけ、団員の方々は大衆的裁判闘争のご経験がございますので、訴状の内容、裁判や運動の進め方等について是非ともご意見を伺いたく存じます。ぜひ本稿末尾のメールアドレスかFAXまでご意見をお送りください。

 次に、もしよろしければ、代理人への就任もお願い申し上げます。代理人への就任を希望される方は、本稿末尾のメールアドレスかFAXまで、代理人就任を希望する旨、氏名、事務所名、氏名公表の可否、実働メンバーになることの可否をご記載の上、ご連絡ください。

 さらに、大変心苦しいお願いではありますが、より大きな運動を作るために、カンパへのご協力をお願い申し上げます。

 私たちはこれからも、足りない部分を修正しながら一歩一歩頑張っていきます。今後とも団員の皆様のご理解とご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

〈振込先〉

 ゆうちょ銀行 〇〇一五〇―七―四四一五七二 

 ゆうちょ銀行以外からの振込 

        店名:〇一九 口座番号:〇四四一五七二

〈名義〉「給費訴訟を応援する会」

〈連絡先〉給費制訴訟事務局メール kyuhisosyo65jimu@gmail.com

    城北法律事務所  弁護士 種田和敏

    電 話:〇三―三九八八―四八六六

    FAX:〇三―三九八六―九〇一八

    〈HP〉http://kyuhi-sosyou.com/

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